取るに足らない存在
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木に成ったとある葉。巨木に出来た一枚の葉は大元である木とは到底異質な存在として誕生した。
葉は巨木を成長させるために力を行使した。そして、虫に捕食され、その生涯を終えた。
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「はぁ…はぁ…」
人里離れた妖怪の山の麓で少年は立っていた。身体中には擦り傷や打撲後がある。その手に持つ木の棒は半ば途中でへし折れて既に使い物にならない。肩で生きをしながらヨロヨロと木に背中を付けて座り込む。少年の目の前には大きな、とても大きな妖怪がいた。茶黒い体毛で覆われた熊のような妖怪。身体の中心に木の棒が刺さった妖怪がいた。
少年は息を吐きだし自身の手を見る。自分がしでかしたことを理解できなかった。唯の人間であった少年に妖怪を倒す力などは存在しないはずなのに今の状況はどういうことなのだと少年は必死に学のない頭で考えるがどうしても考えがまとまらない。丁度1年前に両親に捨てられた少年はこれまで必死に生きてきた。口に入れられるものなら何でも食べた。きのこを食べて死にかけたこともある。妖怪に喰われないために必死に隠れたこともある。
そして、今回少年は等々妖怪に追い詰められ、ただ捕食される運命となっていた。しかしそれを覆したのは少年だ。喰われてたまるかと叫びながら少年は妖怪と戦った。妖怪の攻撃を必死に避け、折れた木の枝を振り回し、地面を転がりながら生き延びようと必死に生きた。そして、少年は妖怪を倒した。偶然かもしれない、少年の力かもしれない。だが、いずれにせよ少年の手に持った棒が妖怪に突き刺さり、妖怪は絶命したのだ。
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川の上にある枝の葉に止まった虫は空を見上げた。
考える力に乏しい虫は空を見つめながらどうやって生きていくのかを必死に考えた。
幸いにも虫には力があった。虫は気付いてはいないが妖怪を打倒し得る力が。
この世の中を必死に生きていくのだと虫は考え、魚に捕食され、その生涯を終えた。
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少年は朦朧とする意識の中で棒を持つ感触が現実であると思えなかった。そこでやっと少年は考えが纏まる。自身を捨てた直後に両親は妖怪に殺された。必死に生き延びたが少年には妖怪という存在の恐怖をこれでもかと思い知らされた。そんな自分が最期に妖怪を倒す夢を見たのだと思い知った。
少年が思い返せば濃密な1年だった。両親に捨てられ大人を信じれなくなり里には帰れなかった。妖怪が怖かったのに河童に助けられたこともある。疫神様に変な目で見られたこともある。必死に生き延びて少年は瞳を閉じようとしていた。この瞳を閉じれば自分は終わると理解できている。心では閉じたくないと、終わりたくないと叫びながらも少年の意思に反して瞳は閉じていく。
「あれ?どうしてこんな所に子供が」
意識を失った少年を見つけたのは一人の巫女だった。
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川底を泳ぐある川魚。群れの意思と相反するその魚は確かに自己を持っていた。
自分は他の魚とは違う存在なのだと理解していた。しかし、未だ力をろくに持っていなかった魚は時を待った。自身の野望を完遂するために。
目指すは川の統一。支配をするのだと心に秘めて、魚は捕まった。
「うーん、食べるかなぁ」
青い服に青い髪、緑の帽子を被った河童、河城にとりに捕まり魚はその生涯を終えた。
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正史ではここで少年は終わるはずであった。しかしある存在が消滅したことによって変化した事象が少年を生かす事になった。少年は幻想の里に何をもたらすのか……運命の括りから乖離した少年は己が道を進む。