東方忘却録   作:茶ゴス

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藍視点


過去の産物

 今日は朝から紫様がいない。定期的に幻想郷の外の様子を見にいっているのだ。なんでも、幻想郷の存在を感付かれないためなんだとか…

 流石は紫様だと思う。やはりあの人は真に仕えるのに相応しい人だ。過去の私は間違えていなかったのだな。

 

 さて、余談はさておき、はやく屋敷の掃除を済ませねば。今日は久しぶりに書庫の方をするとしよう。あそこは紫様が集めてくる本が納められてるため、とんでもない書数になっている。数日おきに空気は入れ替えているが、掃除となると非常に根気のいる作業となる。今日中に紫様は帰ってこないとの事なので、掃除に重点を置いてもいいだろう。橙を構えてやれないのが心残りだが、あの子も私の立派な式。今頃は外でそこらの妖精と戯れているだろう。

 

 

「にしても、本当に広い」

 

 

 紫様が持ってきては広げを繰り返しているため、この部屋自体がとんでも無い広さになっている。取り敢えず掃除に取り掛かる前に私と橙の食事を用意しておこう。流石に夕餉までには終わらせたい所だな。

 少し軋む音を出す廊下を歩きながらふと思い出す。紫様は以前面白い事を言っていた気がする。千年以上前の月面戦争、紫様が妖怪を引き連れ月と争ったらしい。当時の私はまだ式では無かったため詳しくは知らないが、月の戦力は紫様の予想以上に強大で、妖怪たちは敗走したそうだ。だが、結果的に見ればその戦争は痛み分けで終わった。誰が何をしたのかを紫様自身わからなかったそうだが、それでも月人を敗走させたらしい。紫様はそれ以上月に戦争をしかけるのは不毛だと判断したのだろう。それ以降はそんな気も無くなったとまで言っていた。だが、流石に気になる。何が月人を敗走まで追いやったのか、少し掃除を兼ねて書庫で調べてみるのもいいかもしれない。

 

 台所につき、山菜の煮汁を炊く。今朝橙が採ってきた川魚に紫様が持ってきた塩を塗り囲炉裏に火をつけ竹串に刺した魚を遠火で焼いておく。暫くはそのままにして置かなければならない。次は米を軽く洗い釜に入れ、炊く。

 この屋敷には紫様と橙がいるから少しばかり食事の量が増えてしまう。今日は紫様が居ないが、それでも育ち盛りの橙が相当量を食べてしまう。西行寺幽々子のような大喰らいでは無いにしろ紫様も相当量を食べてしまう。今思えば幻想郷の者達は総じて大喰らいではないだろうか。博麗の巫女もそうだと聞いたこともある。まあ、実力者に限っての話だから幻想郷全体というわけではないだろう。もしかしたら沢山食べる者は力を増すのでは?ならもっと橙には食べさせないとな。あの子は八雲家内で少し負い目を感じているようだし、時間が空いている時にでも修行をつけてやるか。

 

 

 

「らんさまーー!!」

 

 

 どうやら橙が帰ってきたようだ。まだ少し昼には早い時間なのだけど、お腹でも空いたのだろうな。

 まあ丁度いいか。少し魚は時間がかかる。あまり時間を割かれるのであれば書庫の掃除は諦めなければならなかっただろう。

 

 

「橙、少し頼みがあるのだけど」

 

「なんですか?」

 

「川魚の焼き目を見ておいてくれ。それ以外は大体が終わっているからな。私は今から書庫の方の掃除をするから、焼けたら呼んでくれ。昼食にしよう」

 

「わかりました!!」

 

 

 元気があってよろしい。頭を撫でてやると2本の尻尾が嬉しそうにゆらゆらと揺れているのがわかる。

 名残惜しいが橙の頭から手を離し台所から離れる。橙が手をぶんぶん振っているのが少し微笑ましいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 書庫に着いた。埃を落としながら蜘蛛の巣をかるく払っていく。やはり随分と溜まっているな。定期的に掃除したほうがいいのかもしれないが、普段は紫様の側にいるため掃除をする機会が巡ってこない。人に頼るわけにもいかないため、ため息を吐いて続けていく。月の戦争の本は恐らくは中心部にあると思う。この部屋はどんどん大きくしていったため、昔の書物は自然と中心に集まってくる。円を描くように書庫内を掃除していく。最後に中心を掃除するためだが、やっぱり広いなここは。

 ん?何か挟まっているな…

 

 

「らんさま!焼けましたよ!!」

 

「ん?橙か、今行く」

 

 

 もうそんなに立っていたのか。見つけた紙、内容は『思い出して』と書かれたものを元の場所に戻して外へ向かう。

 書庫から出て軽く埃を払ってから橙の後を追う。とてとてと歩く姿はやはり微笑ましいな。にしてもなんだか今日は機嫌がいい気がする。

 

 

「何かあったのか?橙」

 

「えへへー新しい友達が出来ました!!」

 

「ほう?一体どんなやつだ?」

 

「うーん、妖怪かなぁ。白い妖怪!何でも知ってたんだ!!」

 

「そうかそうか。良い奴に会えたんだな。名前はなんというのだ?」

 

「えっとですね…あれ?なんだっけ?」

 

「なんだ橙。友達の名前くらい覚えないとダメだぞ?」

 

「はぁーい」

 

 

 しゅんとなってる橙の頭を撫でる。

 それにしても白い妖怪か。何でも知っていると言えば稗田阿求などを連想するが、彼女は人間で妖怪ではない。

 白い妖怪、半妖ならば森近霖之助等がいるが、橙は何度かあったこともあるからそれもないだろう。では一体何者だろうか。新たな妖怪が幻想入りしてきたのか、はたまたずっと隠れ潜んでいたのかわからないが……

 

 

「少しばかり調べる必要があるかもな」

 

「??どうしました?藍様」

 

「いや、何でもない」

 

 

 紫様が帰ってきたら聞いてみるとしようか。

 

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