”他力本願な不死”と”自由気ままな指揮者”も来るそうですよ?   作:バリアリーフ

1 / 63
初コラボ!!
月狐さんの『異形の陰陽師が異世界から来るそうですよ?』とコラボさせていただきました。

ついついはしゃいで大ボリューム!
今後のハードルを上げまくったバカ作者です。

要さん、風明君、龍明君の三人をお呼びしてお送りします!

本編と並行して進めます。
なので次回は収穫祭を更新すると思いますのでご了承ください。(__)


コラボ!異世界の同志との共演
巻き込まれた陰陽師


夕焼けの森の中を白銀の髪の少女が彷徨っていた。

 

「風にぃも龍にぃもいないし、気配も感じ取れないし。

これは私だけが召喚()ばれちゃったのかな?」

 

少女がしばらく歩いていると遠くから戦闘音が近づいてくることに気が付いた。

 

「やっぱり”ノーネーム”の誰かかな?

このパターンは初めてかも!」

 

どこか慣れた様子の少女は音のする方へ向かった。

 

 

「しつこいわね!」

 

「糞っ!普通の狼じゃねえなコイツら!!」

 

「ヴェーザー!

あなたは囲まれないようにだけ気を配って!」

 

「了解だマスター!」

 

ペストとヴェーザー、そして飛鳥が次々と現れる狼の群れと持久戦を演じていた。

 

「ディーンの修理が終わってれば!!」

 

「今そんなこと言ってる場合じゃ無いでしょう!」

 

「分かってるわよ!!」

 

ペスト自身かつての神霊クラスの力を行使できていればと悔やむが、

それもまた言っては詮無い事。

怨嗟の衝撃波で一体、また一体と蹴散らしていく。

 

「飛鳥、手伝うよ!」

 

「へ?」

 

少女は戦闘域に入るなり大鎌を用いて狼を薙ぎ払ってゆく。

少女の実力は頭一つ抜きんでていたため、加勢から程なく狼の群れを全滅させた。

 

「助けてくれてありがとう。

えっと、もしかして安倍 要(あべ かなめ)さんかしら?」

 

「そうだよ。でもよく知ってたね?」

 

「祭君たちから少し聞いていたから。

ごめんなさいね、戦いに巻き込んでしまって」

 

「気にしないで、私も別分岐だとはいえ”ノーネーム”の同志だから。

ほんとに聞いてた通りヴェーザー達もいるんだね」

 

「簡単には聞いてるだろうが今は俺たちもマスターも魔王としての活動はしてねえ」

 

「そちらの私たちと因縁があったとしてもこちらでは仲良くやりましょう」

 

「こちらこそよろしくね。

それで他のみんなは?狼相手に手こずるとは思えないんだけど?」

 

この少女、要は多くの別分岐の同志達との交流がある。

そこで自分たちと異なる”ノーネーム”の話もたくさん聞いていた。

 

「もう少しで今日の戦闘も終わりね。

詳しくは皆と合流してからの方がいいんじゃない?」

 

「そうね。ちょっと面倒なことになってるのよ」

 

「今日の戦闘?面倒なことって?」

 

「驚かないでね要さん。今私たちは悪魔、鬼、妖怪を同時に相手どって戦っているの」

 

「本当にどういう状況なの?」

 

 

 

 

 

 

「いや~龍明が来てくれて助かったよ~」

 

「頼華は相変わらずだね」

 

「のんきに会話してないで手伝わんか!!」

 

「はいは~い」

 

マンドラにこれ以上怒られないうちに手近な餓鬼たちを倒してゆく。

和装で灰色の髪の青年、安倍 龍明(あべ りゅうめい)もまた要と同じく別分岐の”ノーネーム”の同志だ。

彼は鎌鼬のチカラで瞬く間に餓鬼を切り刻んだ。

 

「とりあえず近くの耀とレティシアにも龍明の事は伝えといたから」

 

「ありがとう、落ち着いたらしっかりと自己紹介するよ」

 

「とりあえず耀たちがボスの相手してるはずだから付いて来て~」

 

「分かった。

その前にマンドラさん、初めまして安倍龍明です」

 

「”サラマンドラ”のマンドラ=ドルトレイクだ」

 

説明の長くなりそうな別分岐という部分は一時省略して、挨拶と握手を交わす。

そして頼華の用意した『通過加速』のルートを追いかける。

 

 

「レティシア!」

 

「分かっている!」

 

耀とレティシアの飛行可能な二人で敵を追いかける。

敵の鬼は体を一尺ほどに縮め、かやぶきの廃村を駆け回って逃げる。

 

かなり素早しっこく、屋根を跳び回ったり、家屋に隠れたり。

耀が感知できて初めてまともに追いかけることがやっとできる、といった状況だった。

 

この鬼を追い回している間にも餓鬼が生み出されては散らばったり、

耀たちの邪魔をしたりと迷惑極まりなかった。

そして、

 

『キャギャギャギャ!』

 

追いかける二人をおちょくってくるのでとてもムカつく。

 

「お待た~」

 

「もう二人とも遅い!」

 

「助っ人もいるから三人だよ~」

 

「頼華!」

 

「はいよ!『離脱禁止』!」

 

「って逃げたぞ!?」

 

「え!?ウソ~!?」

 

頼華の『離脱禁止』の空間の端から逃げ出した鬼はそのまま姿をくらました。

 

「今日も惨敗」

 

「仕方ない、また戻って作戦の立て直しだ」

 

「ゴメンね~。今本気でめんどくさいのを相手にしててさ~」

 

「構わないよ。それに一度合流するなら要や風とも合流できるかもしれないし」

 

 

 

 

 

 

洋装の街並みに騎馬が駆ける音がこだまする。

 

「悪いが今少し余裕がない」

 

「気にするな祭。十六夜、四つ先の角を左だ!」

 

「助かるぜ風明!」

 

黒髪を縛った青年安倍 風明(あべ ふうめい)は背中から天狗の翼を生やして空を舞い、

標的である妖怪の位置を伝えていた。

 

「行くぜデュラハン!!」

 

十六夜の拳が首なしの甲冑騎士に命中する。

落馬した騎士を素早く首なしの騎馬が拾い上げ、

再び背に乗せ疾走する。

 

「逃がすか!」

 

回り込んだ祭が酸をまき散らして騎馬の足と騎士の鎧を焼く。

すれ違いざまに騎士がランスで祭を薙ぎ払った。

 

「とにかくコイツをどうにかすればいいんだろ!」

 

風明が愛宕天狗の羽根団扇を出し、

鋭さを増した無数の羽根を雨と降らせる。

 

「出し惜しんでも仕方ねえ!」

 

十六夜が極光を手に携えて追撃を重ねる。

 

『GGGGUUUUUUUOOOOOOOOOO』

 

騎乗したまま騎馬ごと倒れるデュラハン。

 

「何とかなったか?」

 

倒れたデュラハンの周りを三人が囲む。

とつじょ光が彼方より飛来してデュラハンに吸い込まれた。

 

「マズイ!?一度さがれ!!」

 

風明の警告に二人が飛び退く。

息を吹き返したデュラハンのランスの先が十六夜の首筋をかすめた。

 

「ッチ!」

 

三人が飛び退いてできた隙間をデュラハンが走り去る。

 

「逃げられたか」

 

「時間だ十六夜。風明も付いて来てくれるか?

他のグループに要たちがいれば合流できると思う」

 

「ああ、分かった」

 

 

 

 

 

 

箱庭五三九一〇二外門。

メラヒトの浜辺。

 

離れ小島の廃村、狼の出現した森、首なしの騎士が駆ける街の、

三地域のほぼ中間にあるこの地を仮の野営地とし、集まることになっていた。

 

そこにあまりに見合わないコテージが存在する。

階層支配者に与えられる(白夜叉の気遣いによる)携帯式宿泊ギフトである。

ギフトカードに収納できる宿泊施設として、主に中層以上のコミュニティなどがよく購入しているそうだ。

その中でもサンドラには超高級ホテル並みの設備が整ったものを与えられている。

 

合流を終えた”ノーネーム”、”サラマンドラ”、”      ハーメルン”。

そして新たに合流した異世界の同志を紹介する運びとなった。

 

「こことは違う別次元の”ノーネーム”からきました安倍 要です!」

 

「同じく安倍 風明だ。よろしく!」

 

「僕は安倍 龍明です。よろしくお願いします!」

 

三人が手短に自己紹介を終えた。

 

「久しぶりに会えてうれしいよ三人とも」

 

「こっちこそ祭も頼華も元気そうだね」

 

祭と要、二人が再開の挨拶を交わす。

 

「そいつらが二人が飛ばされた世界の同志か」

 

「ああ、三人とも。特に要は十六夜より強いかもしれないよ?」

 

「へえ?」

 

「ちょっと祭!?それは言い過ぎだから!」

 

「あくまで僕の印象だから」

 

僅かにじゃれあっていると三人の前にサンドラが立った。

 

「三名とも突然戦闘に巻き込んでしまい申し訳ありません。

本来ならすぐに”サラマンドラ”か”ノーネーム”の本拠にお送りしたいのですが」

 

「”境界門”まで距離があるんだ。

送ることもできるんだがそうすると明日の戦闘に割く人員がね」

 

「気にしないでくださいサンドラさん。

それに大変なんでしょ?私たちも手伝うよ!

ね!風にぃ!龍にぃ!」

 

「「ああ!」」

 

三人の助力は嬉しい誤算であったがそれを簡単に受け入れるのは少し躊躇われた。

 

「正直助かるけど、いいのか?」

 

「二人には私たちも手伝ってもらったしお互い様」

 

「ということだそうだ。

ジン君、三人ともこちらにいる間僕たちの同志ということでいいかな?」

 

「勿論です!!できるなら皆さんを歓迎する催しでも開きたかったですが」

 

「それはこの事件片づけちゃってからでいいんじゃないかな?」

 

「ということで”サラマンドラ”のお二人も宜しいですか?」

 

「こちらとしては戦力が増えることに何の異論もない」

 

「はンっ!そりゃあお前が役に立たねえからなあ!」

 

ヴェーザーがマンドラに突っかかる。

 

「なんだと貴様!お前の方こそ以前よりも霊格が落ちているじゃないか!

せいぜい足手まといにならぬことだな!」

 

喧嘩をマンドラが買い、言い争いが始まる。

 

「兄様!」

 

「ヴェーザー!」

 

「サンドラは黙っていろこいつは昼から!」

 

「なんだ!?うちのマスターを悪く言いやがったくせに!」

 

サンドラ、ペストそれぞれが制止しようとするのも聴かずに熱を上げる二人。

 

「ヴェーザーもいい加減にしなさいよ」

 

流石にラッテンが見かねて止めに入ろうとするが、

 

「「うるさい!!」」

 

二人は頭に血が上りきってもう周りのことが目に入っていない。

 

「「まるで風(龍)だな!あぁん!!?」」

 

ただの感想だったはずが安倍家の兄二人にも誘爆した。

 

「おい今のはどういう意味だ!?」

 

「どういう意味も自分の胸に手を当てて考えれば分かるだろ?」

 

「それはこっちのセリフだ龍!」

 

「もう二人ともその辺にしとかないと「要さん」

 

要が二人の兄に注意しようと声をかけたところ、

祭がそれを遮ってきた。

 

「ちょっと僕に任せてもらってもいいかな?」

「でも二人は私以外に止められるほど」

「自分たちで争うのをやめるように仕向ければいいんです」

 

そう言う祭は羊皮紙にさらさらと何かを書き進めて、

 

「サンドラさん、これに主催者権限を施してもらえますか?

そのあとあの部屋に四人をぶち込みます」

 

祭から羊皮紙を受け取ったサンドラは内容を確認すると、

自らに与えられた主催者権限の力を用い、”契約書類”とした。

 

「なるほど、これなら自発的に動かざるを得ませんね」

 

 

 

 

『ギフトゲーム名 ”兄たちへの罰則”

 

 

参加資格

 

ゲーム領域に罰則目的で閉じ込められたもの。

(軽度の過失、あるいは罰則に値する言動をとったものが対象とする)

 

 

クリア条件

 

室内の掃除を完了させる。

なお完了まで扉の鍵は開錠されない。

 

 

プレイヤー禁止事項

 

室内、及び室内の備品の損壊を含む破壊。

 

 

 

宣誓

参加資格を満たしたものに執行する限り、この試練(ゲーム)が正当であることを保証します。

 

 

”サラマンドラ”印』

 

 

 

 

「確かにいい考えね。

言い争いを続けていてはずっと部屋から出られない訳だものね」

 

”契約書類”を覗き込んだペストも頷く。

 

「それと頼華、『防音』もしておいてくれるか」

 

「あいよ~」

 

「という感じです」

 

「OK!じゃあぶち込もう!」

 

このやり取りの間も言い争っていた二組。

 

「四名様ご案な~い!」

 

頼華が開けた扉に続々とぶち込まれていった。

 

「ちゃんと反省してくださいね兄様」

 

「ヴェーザー、頭を冷やすことね」

 

「よかったね二人とも、祭が優しくて」

 

三人の少女の言葉を最後に扉が閉められた。

 

ガチャン

 

 

「マスターいくらなんでも衝撃波はやり過ぎだろ!」

 

「糞!サンドラが連中に毒されている!」

 

「ええい龍!お前のせいだ!」

 

「ふざけるなよ風!そもそもお前が「ムキ!」は?」

 

不吉な声を聞き四人が部屋の奥に視線を向ける。

そこにはエレガントなポージングをした”アレ”が三体並んでいる。

 

そして視界に飛び込んできた”契約書類”と、

二本の箒と一つの塵取り。

そして一枚のぞうきん。

 

このあと掃除道具の取り合いが起きたのは言うまでもない。

 

 

「ああぁ~。

要~、言っとくけど祭は優しくないよ~」

 

「?」

 

部屋を『防音』にしている頼華は中に”ナニ”が存在してどうなっているかが分かる。

しかしそれを要は知らないので首をかしげていた。

 

「おや?男性陣が少ないが?」

 

「せっかくたくさん料理(つく)ったのにね」

 

キッチンからレティシアと耀が大皿に料理をのせやってきた。

 

「じゃあ要には食事ついでに今の状況を話しておくよ」

 

「うん、それはいいけど飛鳥は気にしないの?」

 

要は祭との距離感が現在、こちらの飛鳥よりも近いことを気遣ってくれる。

 

「ええ、祭君からくだけて話すことも聞いてるし、

今はそういうスイッチが入っちゃってるだけだから」

 

「いらない心配だったね」

 

続けてボウルいっぱいのポテトサラダが食卓に並ぶ。

 

「それでどういったことになってるの?

というか黒ウサギは連れてきてないんだね」

 

「じゃあそのことから。

今回の敵は魔王じゃない。

正確には主催者権限を持たない鬼。悪魔、妖怪の共闘群だ」

 

自分のさらにスパゲティを盛りながら祭が話す。

 

「”審判権限”を利用できないからな。

白雪と一緒に本拠で留守番させてる。

ああ、後でそっちの俺がどんな風か教えてくれるか?」

 

「分かった。こっちの十六夜がどんな風かも土産話にしてあげたいから教えてね!」

 

「おう!構わねえぜ!!」

 

祭の説明にサンドラとジンが続く。

 

「今私たちが居るのは北側の五三九一〇二外門です。

今回の敵によって既に外門を七桁を4つ、六桁を1つ壊滅させられています」

 

「そんなに!?」

 

「強さそのものは六桁クラスなんですが、

それが三体同時に、そして妙な不死性を持っているようで」

 

レティシアは今、メイドとして全員の食事をとりわけたり等しながら話を受け取った。

 

「そこで”ノーネーム”の書庫から伝承に関わるものを引っ張り出したり、

殺し方を多く知る祭をはじめとして戦力として皆が”サラマンドラ”より依頼を受けたのだ」

 

「ですが僕たちが参戦してから二日。

正直にゲームルールというヒントが無くてかなり難航しているところだよ」

 

誰の目もはばからず頭を抱える祭というのも珍しい。

 

「妙な不死性ってのは具体的にはどういうことなの?」

 

「俺が今日デュラハンを仕留めたときは、

一度倒した感覚はあったんだが、そのあと妙な光を受けて蘇りやがった」

 

「私も森の奥にある洞くつに魔狼を追い込んで、

洞くつ全てを焼きつくしたはずなんですが、

洞くつ内に光が飛び込んでいったかと思ったら魔狼が」

 

「サンドラが相手にしていた魔狼だけど、

悪魔アモン、蛇の尾を持つ魔狼で間違いないと思う」

 

コテージで一人伝承を当たっていたジンが、

テーブルにアモンについて記されたページを開け書物をのせた。

 

「それで私たちなのね。

残念だけど伝承のグリモワールと”幻想魔道書(グリム・グリモワール)”とは無関係よ」

 

「その光が不死性の原因ってのは分かったけど、それ以上はね」

 

少し早く食事を終えた飛鳥も苦い顔をしている。

 

「うん、今日やっと初めて倒せたってのもあるんだけどね」

 

「昨日はマッチングが悪くて逃げ回られて終了~。

んで祭が情報からマッチメイクしたんだけど」

 

「デュラハン撃破一回、アモン推定撃破一回、鬼の親玉撃破失敗」

 

「いやオレが『離脱禁止』しても逃げちゃうんだから無理だって~」

 

「特に破られたような感覚はなかったのだろうライカ?」

 

「そうだね~。

素通りされた感じだね~」

 

「・・・あれは天邪鬼(あまのじゃく)だ」

 

「龍にぃ。反省した?」

 

「しました」

 

「なんでヴェーザーたちまでやつれてるのよ?

部屋の掃除くらい、いつも本拠でやってるでしょ」

 

「予想外すぎる事態に手間取った」

 

「そうですよ。

兄様も普段なさっていらっしゃらなくても、

四人で協力すればもっと早く終わる広さです!」

 

「いやサンドラ「おい」済まない。

我々の胸の内に留め置く約束だったな」

 

「ああ、要たちに怖い思いをさせるわけにいかない」

 

((((そしてどこかで祭に一発カマす!!))))

 

お兄ちゃん’sには正に試練だったようだ。

共に乗り越えた四人に絆のようなものが伺える。

 

「要、また二人が揉めるならこっちに送ってくれればいいから。

まあできるのならなんだけど」

 

「ありがとう。でもそんなことにはならないと思う。

私が叱った方が速いのもあるけど」

 

「もしかして祭さ~、例の”お説教部屋”にも?」

 

「ああ」

 

「それで龍明さん。天邪鬼と今おっしゃいましたが」

 

「正確には天邪鬼の亜種で”天逆鬼”と書くあまのじゃくだと思う。

色々な事象や行動なんかを反転させたりするのが特徴かな」

 

「見ただけなのによく分かるね~」

 

「それはまあ、俺たちは陰陽師だからな」

 

「やっぱりその安倍家だったか」

 

「じゃあ頼華の空間の外に侵入(・・)したってこと?」

 

「春日部の考え方で間違いないだろうぜ」

 

「皆も席について待っていてくれすぐに温めなおすからな」

 

「ありがとうございますレティシア殿」

 

「『防音』にしてたのに、なんかの通信ギフトもってんの~?」

 

「まあな、俺たちで共通のギフトだから誰でもって訳でもないが」

 

「念話みたいなもんか?」

 

「そう認識してもらうのが正しいね」

 

「ですが一つこれで分かったことのありますね。

その”天逆鬼”ですか、その影響があることで夕刻が活動のタイムリミットなんでしょう」

 

「どういうことなの」

 

「逢魔が時ね」

 

飛鳥が尋ね要が答えた。

 

「酉の刻、だいたい日暮れ頃の午後五時から七時の時間帯の別称で、

人間の時間である昼間と魔物の時間である夜の切り替わる時間帯なんだけど」

 

「それが逆転して、夜に奴らは活動しないって訳だな」

 

「まあ、そういうこと。

出来れば明日には一体は始末したいんだが、

復活させた光の正体がなぁ・・・」

 

「その三体を隷属させてる何者かがいるのかも」

 

「だとしても共通点がないんだ。

三人は何か心当たりがないか?」

 

話を振られて要たちは視線を合わせた。

 

「デュラハンとしか対峙してないから、

日本外の妖怪という点ではあまり多くの知識はないぞ」

 

「天逆鬼もいくらか強い個体というくらいですよ」

 

「私はアモンを見てないけど、

眷属の狼にしてはちょっと変だったかな?」

 

「へん?」

 

「そのアモンは悪魔なんでしょ。

それなのに少し妖気が混じってたから」

 

「それは妙だな」

 

キッチンから料理を温めていたレティシアの声がした。

 

「悪魔と妖怪の混血というのはあり得ない訳ではないが、

かなりの希少種となってより特徴が顕著になるのが一般的だ」

 

料理を運びながらも経験からの見解を話してくれる。

 

「そうなんだよね。

だから私もちょっと変だなって」

 

「妖気を放つ悪魔。復活の光。

一つの疑問が解消されたと思ったらまた一つ。

・・・ああ要を悪く言ってるわけじゃないから」

 

「そんなことわかってるよ」

 

皆が考え込んでしまい沈黙が訪れる。

結局そのままその日の考察で進展はなかった。

そして食事も終わり解散の流れとなった。

 

 

その後、リビングにはマンドラと十六夜、ラッテン、レティシアと祭が残って酒盛りをしていた。

 

「また面白いメンバーだな」

 

「いつもは僕と十六夜だけで、レティシアさんたちは参加されませんからね」

 

「なに、久しぶりに飲むのも悪くないと思ってな。

だが私はラッテンよりヴェーザーの方が飲むと思っていたのだがな」

 

「飲むのは飲むけど本当に潰れる気で飲むタイプだから自重してるのよ」

 

「俺はマンドラが残るとは思わなかった。

お前は平気なのか?」

 

「無論だ。自分で限界も分かっている。

お前たちこそいいのか?外界には制限があるのだろう?」

 

「俺はそんなの気にするタイプじゃねえからな」

 

「僕の時代では15に引き下げられてます。

それに僕は酔いませんから」

 

「ほんとに強いぞ祭は、酒だけは俺も勝てないって諦めてるからな」

 

「何の話?」

 

「ああ要か。僕が酔わないって話。

今日は飲み比べじゃないからね」

 

「分かってるって。

それよりほんと祭って強いよね」

 

「それほどなの?」

 

「まあ原因みたいなものはあるんだけど」

 

本日のお供、スコッチウィスキー。

快適な室温に保たれるとはいえ少し肌寒い。

お湯割りで体を温め、あてには()って味付けした小魚とスモークチーズを。

 

「どうせだ、それを聞かせろよ」

 

「まあ僕は構わないけど、皆も聞きたいの?」

 

「そうね、少し興味あるかしら?」

 

「せっかくだ聞いておこう」

 

マンドラもまた無言で聞く姿勢を取っている。

 

「OK。

十六夜とレティシアさん以外は初めて聞くだろうけど、

外界にいる時は自分の死に方を探してた時期があってね」

 

「かなり試してたんだろ」

 

「ああ、その中で死因の一つにアルコール中毒ってあるだろう」

 

「それで限界まで飲みまくってみたってこと!?」

 

「いや要、お前まだ祭がどれほどぶっ壊れてるか分かってねえぜ」

 

「え?」

 

「それで祭はどうしたのだ?」

 

「『酒におぼれる』って言葉があるだろう」

 

「・・・嘘でしょ」

 

「稼いだお金で酒造の製造用の酒樽を一つ買いとって飛び込んだ」

 

「「「うわお」」」

 

「結局死ねなくてそのあと血管に直接入れたりもしたんだけどね」

 

「貴様は馬鹿か!!?」

 

「昔はホントに馬鹿だったと思うよ」

 

くだらない話だと笑って話す祭は自分のグラスを飲み干す。

 

「後その方法で自殺するのはお勧めしないよ、

体が酒臭くなって臭いがなくなるまで一月以上かかったから」

 

「誰も試さねえよ!!」

 

「まあそれ以来アルコールに酔うことが全くなくなったんだよね」

 

「流石に私も血中に直接はマズイな」

 

「レティシア殿、誰でも普通はそうですよ」

 

「そうだ要、そっちの俺の事を教えてくれよ」

 

「じゃあ私が十六夜と付き合ってることは聞いてる?」

 

「マジか!?」

 

「聞いてないんだ。

そうだね、こっちの十六夜とやっぱり同じ部分はあるよ。

でも私の十六夜の方がカッコイイかな♪」

 

「度数高いものじゃないんですがねえ」

 

「酔って惚気るタイプね!

それでどんなところがいいわけ?」

 

「えっとね~?

すごく大切にしてくれてね!と~っても優しいんだよ!」

 

「あと意外と嫉妬深いかもしれないな。

『要に手ぇ出したら、分かってんだろうな!?』って凄まれたから。

愛されてますね」

 

「独占欲だろうな」

 

「おいこら。何で揃ってこっちを見やがる」

 

「正面なのだから仕方ない」←マンドラ

「だってどんな反応するのか気になるじゃない」←ラッテン

「十六夜でも動揺するのかと思ってな」←レティシア

「こっちの十六夜に想い人はいないのかと」←祭

 

「せめてマンドラくらいって待て祭!!」

 

「それで要ほかには?」

 

「おい流してん「優しいんだけど私が無茶した時とか凄く心配してくれるのも嬉しいんだよね」

 

「そこのところどうなのよ?」

 

「要より顔が赤いが?」

 

「酔っただけだ!」

 

「よし十六夜も私の十六夜みたいにバッと告白しちゃえ!」

 

「風明っ!龍明っ!」

 

いくら最強問題児筆頭である逆廻十六夜とはいえ、

ほぼ(・・)自分のノロケ暴露を前に限界を迎えたようだ。

十六夜に叫びを聞いて、階上から風明が降りてくる。

 

「どうした、って要の奴ができあがってるな」

 

「龍明はどうした?」

 

「まだ上がってないんだよ超7並べ」

 

「なにそれ?」

 

「トランプ2セットでやるだけの7並べだ。

なかなか戻ってこないと思ったら、さては酒に気付いて」

 

説明をしながら要を連れて行こうとするが、要はいやがる。

 

「もっと飲む!」

 

「仕方ないな、騰蛇(とうだ)。手伝ってくれ」

 

風明の呼びかけに応じて、

褐色の肌に深く黒さのある紅い髪の武人のような男が現れた。

 

「なによ紅蓮!」

 

「『俺のいないところで飲みすぎるようなら止めてくれ』と十六夜にも頼まれているからな」

 

そのまま騰蛇に担がれて、要は連行されていった。

 

「それと聞きたいんだが、ジンが強すぎる」

 

「は?」

 

「超7並べだ。遠慮なしのガチでやってるんだがまだ誰も勝てない」

 

「僕としてはもうちょっと巧く勝ち星を操作できるようにさせたいんですけどね」

 

「やっぱりお前が原因か!」

 

「まあまあ、なら今度はダウトをやるようにしては?

ジン君はまだ消しきれてない嘘のクセがありますから。

それをみんなの前で言えばその流れになりますし」

 

「まあ負けっぱなしじゃ寝つきが悪いしやってみるわ」

 

グラス一杯分だけ飲んで風明は階段を上る。

 

「そうだ。

誰が好きなんだ十六夜!」

「ボロ負けしやがれ!!」

 

そのままケラケラ笑ってゲームに戻って行った。

 

「先に言っとくぞ。これ以上続けるなら」

 

「分かっている」

 

「そこまで根掘り葉掘り聞く気はないわよ」

 

「ならいい」

 

「それよりもジンの教育がそんな方向に進んでいたとは驚いた」

 

「それに関しちゃ知識面は俺が、思考面は祭がそれぞれスパルタでしごいてるからな」

 

「これはマンドラもうかうかしていられんぞ?」

 

「分かっております。

それにあの彼には前回の一件以来一目置いている」

 

「へえ?プライドの塊かと思ったら案外謙虚なのね」

 

「いやラッテン、マンドラはプライドが高いこそ人を認める男だ」

 

「そうなんだ」

 

「じゃあ十六夜、明日の確認がてら付き合ってくれ」

 

「んん?ああイイゼ!」

 

「なら私はそろそろ休むとしよう。

ラッテン、二人で飲み終わったら片づけを頼めるか」

 

「ええ、任せておいて」

 

そしてリビングにはマンドラとラッテンが残った。

 

 

夜の浜辺を祭と十六夜。

 

「気が利くじゃねえか」

 

「まあ、それなりに」

 

「それで、今推測はいくつある?」

 

「2つ」

 

「聞かせろ」

 

「まずは上位の悪魔か鬼か妖怪か。

それは分からないが何者かの意図のもと動く兵である可能性」

 

「妥当なところだ。

一番わかりやすいが三匹を倒し終えて疲弊しているところを狙われ、

そいつが魔王だとマズイな」

 

「ああ、このパターンはもう出たとこ勝負になる」

 

「それで二つ目は?」

 

「四匹目の存在。

まだ見つかっていない復活専門の四匹目の可能性」

 

「なるほど順序を誤ると永久に倒せないってヤツか」

 

「だがどうもしっくりこないんだよ」

 

「まだ情報が足りねえか」

 

「十六夜には明日、天逆鬼を任せようと思う」

 

「てっきりデュラハン継続だと思ってたが?」

 

「まあちょっとな」

 

「なら明日の戦果を楽しみにしてるさ」

 

晦日(つごもり)の月が海面を照らしている。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。