”他力本願な不死”と”自由気ままな指揮者”も来るそうですよ?   作:バリアリーフ

12 / 63
進まないよう~(自己責任)




それではご覧ください


交渉と取引と駆け引きと

”サウザンンドアイズ”の店先までやってきた六人。

ジンは念のためと、本拠での留守番を命じている。

 

「時間外だけど大丈夫?」

 

「皆様が来られたら通すように、

オーナーから賜っておりますので」

 

昨日の女性店員が”ノーネーム”を案内する。

彼女にも思うところがあってか、仕事と割り切ってか

接し方に変化がうかがえる。

 

昨日と同じく白夜叉の私室。

 

「中でオーナーとルイオス様がお待ちです」

 

「そのルイオスってのが?」

 

「”ペルセウス”の党首様です」

 

黒ウサギの返答に不敵に笑う十六夜。

入室した彼らを迎えたのは、低俗な歓迎だった。

 

「噂には聞いていたけど本当に東側にウサギがいるなんて思わなかった!

つーかミニスカにガーターソックスって随分エロいな!

うちのコミュニティに来いよ。三食首輪付きで毎晩可愛がるぜ?」

 

ルイオスの言葉にムッと嫌悪感を示し、

黒ウサギの前に立ちふさがる飛鳥。

 

「先に断わっておくけど、この美脚は私たちのモノよ」

 

「そうですそうです!黒ウサギの脚は、って違いますよ飛鳥さん!!」

 

「そうだぜお嬢様。この美脚は既に俺のモノだ」

 

「そうですそうですこの脚は、ってだまらっしゃい!!!」

 

「そうだよ十六夜~、曜日で割り振ったでしょ~?」

 

「YES月曜日から順番なんかございません!!!!」

 

「よかろう、ならば言い値で」

 

「売!り!ま!せ!ん!

いい加減にしてください。頼華さんはレティシア様がいるでしょう。

黒ウサギも怒りますよ!!」

 

「からかうのは別腹~」

「馬鹿だな。怒らせてんだよ」

 

スパパァーン!!とハリセンが翻る。

今回の説明を受けていた祭は、さすがに自重していたのだが、

のちに聞くと、黒ウサギの気持ちを少しだけ理解できた、とのことだった。

 

 

 

 

「以上が”ペルセウス”から受けた暴挙の限りです。

”ノーネーム”への侮辱は両コミュニティの決闘によって

 

 

「いやだ」

 

 

「・・・・・・はい?」

 

突然の拒絶に黒ウサギは固まる。

 

「決闘だなんて冗談じゃない。そんな証拠がどこにあるんだ?」

 

これに内心舌打ちをする十六夜。

(あの場に祭が居りゃ、録画なりなんなり出来てたかもしれねえが・・・)

実際に祭が”情報収納”で取り込んでいる中にそういった機器は存在する。

しかし今それを言っても、詮無いことである。

 

「どうしてもって言うなら証拠集めを手伝ってもいいよ?

結果困るのは誰だか知らないけどね」

 

ここへ来て初めて白夜叉がバツの悪そうな顔をする。

 

白夜叉の支援なくして”ノーネーム”の存続は在りえなかったし、

レティシアの手引きまでしてくれた。

これ以上の迷惑をかけるのは黒ウサギにできることではなかった。

 

「もういいかなあ?

箱庭の外まで商談をまとめに行かなきゃならないんだ」

 

「箱庭の外ですって!?彼らヴァンパイアは

”箱庭の騎士”は箱庭の中でしか太陽の光を受けられないのですよ!!」

 

「知ってるさ。おかげで価格のつり上げが簡単に進んでねえ。

でもギリギリになって、あの吸血鬼がさあ

魔王にギフトを譲り渡しやがって、価値が下がっちまったよ」

 

「!」

 

「ギフトを捨ててまで何がしたかったんだろうねえ、黒ウサギさん?」

 

黒ウサギは思い出す。

十六夜と対峙した時のレティシアは以前の実力の十分の一にも満たなかった。

自分の魂ともいえる”恩恵”を削り、自分たちのところへ駆けつけた。

それほどまでの彼女の献身が黒ウサギの胸に刺さる。

 

 

 

「取引をしよう。

君が生涯僕に隷属するなら、吸血鬼の身柄を”ノーネーム”に引き渡そう」

 

 

「行きましょう黒ウサギ!こんな奴の話を聞く義理はないわ!」

 

「ま、待ってください飛鳥さん!」

 

飛鳥に手を引かれるも動こうとしない黒ウサギ。

 

「君は”月のウサギ”だろ?

仲間のために煉獄の炎に焼かれるのが本望だろ?」

 

黒ウサギの様子に隙を見つけたルイオスは畳み掛ける。

 

「ウサギは義理とか人情とか大好きだろ?

吸血鬼の思いに応えるなら、どうすればいいかなんて簡単だろ?

ただ君が一こ

 

『黙りなさい!』

 

飛鳥の力によって強制的に口を閉じられる。

 

「貴方は不快だわ。そのまま『地に頭を伏せていなさい!』」

 

「おんな!そんなのがつじるのは

 

格下だけだ、馬鹿が!!」

 

怒りに任せルイオスはギフトカードから鎌を取り出し

飛鳥に切りかかる。

 

その刃から飛鳥を守るように体を滑り込ませる祭と、

鎌を掴み受け止めた十六夜によって飛鳥は助けられる。

 

「邪魔するなよ、餓鬼」

 

「こんな程度が邪魔だとか底が知れるぜ?”ペルセウス”」

 

「助かったよ十六夜。

飛鳥さんもありがとう、あのままじゃ黒ウサギも危なかった」

 

「危なかった?個人的な取引の邪魔だ、失せろ餓鬼ども」

 

「黒ウサギ。この取引受けちゃだめだよ、絶対に。

だってこの人、

 

 

 

レティシアさんを解放する気なんてサラサラないから」

 

「どういうことですか!?」

 

驚き声を荒げる黒ウサギ。

他の同士達驚きと困惑の表情をし、白夜叉でさえ衝撃を受けたようだ。

ただ一人は不愉快そうに祭を睨んでいる。

 

「気づくのが遅れてたらアウトでしたよ、ルイオスさん。

とてもしたたかな方ですね、

流石は商業コミュニティに属するリーダーと言ったところですか?」

 

「何の話だ?」

 

「あなたの言葉遊び(・・・・)を褒めているんですよ。

『黒ウサギの隷属』を目くらましにして『身柄を引き渡す』という言葉を、

『レティシアさんの隷属を解く事』だと誤認させたんですよね」

 

「「「「「!!」」」」」

 

真相を理解し黒ウサギは青ざめた。

もし自分があのまま・・・・・・

 

「じゃあ黒ウサギが応じてたら」

 

「取引までの『保管場所』が”ノーネーム”になっただけだ」

 

「そんな!酷い!!」

 

「みんなも落ち着いて!

この交渉、任せてもらえないか?」

 

祭ひとりに託すのはさすがに不安なのか、

是も否も返ってこない。

 

最初に口を開いたのは頼華。

 

「祭~。頼んだ!」

 

その言葉に、みんなが倣い腰を下ろした。

 

「ではルイオスさん、まずは同士が()を出した件についてお詫びします」

 

「へえ、それで?」

 

「ただルイオスさんも少々過剰防衛ではなかったかと思いまして、

この二つを、いえ本日(・・)のいさかいの全てを不問としていただけませんか?」

 

「うちの連中が不法侵入したとか、そういった言いがかり(・・・・・)も引っ込めると?」

 

今までの主張をことごとく覆すという発言に、ルイオスは不審げな顔をみせる。

 

「はい、やったやってないの水掛け論は不毛ですから、

それから黒ウサギに対する個人的な(・・・・)取引も、

フェアだと彼女が判断するなら続けていただいても構いません」

 

(黒ウサギの事は要求をのませる餌。

ならコイツの狙いはなんだ?)

 

ルイオスの中で更に不審が募る。

 

「お前たちのメリットは何だ?」

 

「先ほど言った通りです。

『本日のいさかいの全てを不問としていただく』それだけです。

我々はしがない名無し(・・・)のコミュニティですから」

 

したてに出た祭の言葉にルイオスが笑みを浮かべた。

 

「・・・・・・いいよ。

僕はとっても心が広いからその要求を呑んであげる。

身の程を弁えてるやつは嫌いじゃないからね」

 

「ありがとうございますルイオスさん!それでは

 

 

”ノーネーム”は”ペルセウス”決闘を申し込みます」

 

 

「はぁ!?」

 

「「「え!?」」」

 

状況を理解できないルイオスは不機嫌そうに言葉をつづける。

 

「お前は馬鹿か?今それを不問にしてやった所だろ」

 

「先ほど黒ウサギが申し込んだ決闘は、

不問にしていただいた言いがかりが理由のモノ。

今僕が申し込んだのは、

ただの”ノーネーム”とただの”ペルセウス”の間で行われる決闘です」

 

「あっそ、じゃあ受ける必要なんかないし、僕は帰らせてもらうよ」

 

「分かりました。腰抜けリーダーさん(・・・・・・・・・)

 

「おい、今なんて言った?」

 

「箱庭中が蔑むような名無しの挑戦も受けられない腰抜けと言いました。

耳まで悪いんですか?大変ですね」

 

「貴様!」

 

「まだ日付が変わる(・・・・・・)には早いですよ、おまぬけさん」

 

「ヤハハハ!そういうことかよ。

ホントに性格悪いなお前!」

 

祭の言葉で皆が理解した。

彼が勝ち取ったのは一日限りの免罪符。

そう、日付が変わるまでの間であれば、

どのような侮蔑も嘲笑も、実力行使さえも不問となる。

 

あとは決闘に持ち込むだけ、

問題児たちの独壇場である。

 

「我慢した甲斐があったわ。さっさと逃げ帰って下さる?」

「臆病者に用はない」

「まだいたの~?」

「へタレだから仕方ねえか」

「部下に泣き付けば?」

「目障り」

「本当に腰が抜けたのかしら?」

「雑魚にも程があるぞ?」

etc.etc

 

要するに『さっさと決闘うけやがれ』ということだ。

 

「ええい!五月蠅い!!

”ペルセウス”に挑戦したいなら”クラーケン”と”グライアイ”倒してからだ。

名無しだろうと、他のコミュニティだろうとそれができなければ、

一切受け付けない。一切だ!!」

 

怒りに震えるルイオスが言い放つ。

が、

 

「だってさ、さあ帰って決闘の準備だ」

 

「「「「おー!」」」」

 

免罪符ですら囮。

真の狙いは情報を引きずり出すこと。

 

 

情報漏えいありがとう(・・・・・・・・・・)

 

「ッチ。吸血鬼がどうなっても

 

「どうぞ商談に向かってください」

 

「貴方と違って有能な部下たちが留守(・・)を守ってくれるわ」

 

「白夜叉、出世払いになるが

”クラーケン”と”グライアイ”の居場所を教えてくれ」

 

「よいよい。面白い余興の礼じゃ、ついでに足も用意してやろう」

 

白夜叉もまた頭に来ていた。

”サウザンドアイズ”の旗に泥を塗られ、

お気に入り(黒ウサギ)を独占しようなど許せるものではなかったのだ。

 

 

”ノーネーム”一同と白夜叉が退室し取り残されたルイオスは、

屈辱的な敗北を与え、返り討ちにすることを誓う。

 

 

 




ギフトカードみたくブラックな祭でした。

次回でなんとかペルセウス戦には・・・・・・


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。