”他力本願な不死”と”自由気ままな指揮者”も来るそうですよ? 作:バリアリーフ
悪乗りは仕様です
「ギフトゲームが全面禁止?このあたり一帯でか?」
「YES!コレはちょっとした一大事でございます!」
「え~ギフトゲームができないと、
オレたち何にもできないのと変わんない~」
「確かに、貧乏は辛いな」
不自由までは行かないまでも、過ぎた贅沢をできるほどの余裕はない。
近いうちにゲーム外の収入減を確保しなければと、祭は考えていた。
「もしかして・・・・・・魔王が現れたの?」
「それなら黒ウサギがパニクッって、もっとめんどくさいんじゃない~?」
「なんてこと言うんですか!」
頼華は飄々と黒ウサギをからかっている。
「街はそんな剣呑な雰囲気じゃない。なんていうか困ってる?」
住人達も行商人もあっちへこっちへと行ったり来たり。
「水を求める人ばかりなのはどうしてでしょうか?」
「それは南側より干ばつがやってくるそうなのです」
「「「「「はあ?」」」」」
問題児たちの反応も当然だろう
台風などの移動性の気象現象ではない干ばつに、やってくる
などという動詞を付けられいきなり理解できるわけもない。
「もしかして黒ウサギ、”魃”でも現れたか?」
「YES!流石は十六夜さん。
ですが長い系譜の中で神気を失ってしまっているそうです」
「その魃って幻獣?」
「祭、説明してやれよ得意だろ」
十六夜に振られるが、首を振り
「あいにく僕も知らないことは説明できないよ」
「嘘!『そういえば聞いたことがある』ってなるんじゃないの!?」
「僕の知識は、『死』や『殺害方法』といったことを中心に広がってるから、
酷く偏ってるんだよ」
その後十六夜と黒ウサギに説明役を返し、魃について教えてもらった。
「なるほど、それで水を買い漁っているわけね」
「はい、コレは我々”ノーネーム”が備蓄を増やすチャンスでございます!」
「確かにあの水樹なら俺たちが生活する分以上の水を生み出せるからな」
水樹の苗が”ノーネーム”にやってきてから、彼らは水に困ることなく生活を送っている。
その余剰分の水を他のコミュニティに売り、利益を得ようということだそうだ。
「ですので皆さんには魃についての情報収集をお願いしたいのです」
「ゲームのない暇つぶしにはちょうどいいか」
「日照りを起こすなんて、グラー○ンみたいじゃないか、
ココはマスターか、いやハイパーで行けるかな~?」
「幻獣の情報収集なら春日部さんの出番かしら?」
「うん、確認だけど腕が一本、足が一本の怪鳥・・・・・・でいいの?」
「YES。個体差はありますが”左右の足の大きさが違う怪鳥”を探していただければよろしいかと。
あるいは不自然に陽炎が発生してる場所を探してもいいかもしれません」
こうして五人は都市の外へ魃を探しに出かけた。
*
「しかし暑いな」
「ええ暑いわね」
「同じく」
「そうだね~」
「・・・・・・」
「なんだ祭バテたか?」
「いや、頼華は汗もかかずにすごいなと」
「「「え?」」」
「体質だよ~?」
その時頼華の周りが不自然に揺らぐ。
「おいコラ、自分一人で涼んでんじゃねえよ」
「何の事~?」
「自分の周りだけギフトで気温を下げてるよね?」
「飛鳥、頼華が浮気するらしい」
「それは大変レティシアに
「『範囲拡大』」
「やましい事でもあるのか?え?」
「ないよ~?仲間思いの頼華さんはとってもいい人~」
「何でもいいわ」
「「「「生き返る~~」」」」
「あんまり広げたくないから離れないでよ~?」
*
「それにしてもすごいわね」
「何が?」
「あの水樹よ、箱庭に来た日に植えてそれほど日が経ってないでしょう。
それなのにあそこまで大きく成長するんですもの」
「もう本拠の二階ぐらいの高さだし~」
「霊格を上げるのに”ノーネーム”ちょうどよかったんだろう」
「祭君、それってどう言うことなの?」
「基本的に功績を蓄えることで霊格が上がる。
水樹は”ノーネーム”百二十八人と一匹の生活を賄うという功績を今蓄え続けている。
同時に水不足に困っていた黒ウサギや子供たちの世話や感謝の気持ちが、
信仰のかけらのように扱われているんじゃないかな」
「ヤハハ、元から素養の高い水樹の霊格に、
功績と信仰まで合わされば急成長もするわなあ」
「なら水を売っていろんな人たちが感謝されれば」
「功績だけでしょ~」
「え?」
「感謝されるのは”ノーネーム”あるいはジン君だろうね」
「そっか・・・・・・」
「気にするな春日部、水樹が大きくなるのはありがたいが
そいつが俺たちの目標じゃねえだろ?」
「うん魔王を倒す」
「それよりも今は魃を見つけないとね」
「アレっぽい?」
「どこ!?」
頼華の指差す先に陽炎が見え、揺らめく二つの影が同時に見えた。
「二匹いたのか」
「待ってユニコーンが襲われてる!」
「頼華『音声伝播』!」
この一言で頼華と飛鳥は役割を理解する。
「ハイよ!」
「『止まりなさい』!」
飛鳥のギフトにより動きを止めた魃、
既に十六夜と耀が肉薄し射程にとらえていた。
「左だ!」「右に!」
二人は魃どうしがぶつかるように内側に蹴りぬいた。
魃は互いに頭を打ち倒れる。
「ビクトリー!」
「いや駄目だろ」
遅れていた飛鳥たちも魃の前へやってくる。
「そうね、これで水は売れなくなったわね」
「いつも通り”サウザンドアイズ”に持ってこっか~」
「ところでユニコーンはどこだろう?」
・・・・・・
「「「「あ」」」」」
*
「一体誰が、”
「「「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」」」」」
「黙らっしゃい!!!」
「ううう~~~。せっかく備蓄を増やせるチャンスでしたのに。
なんで倒してしまったのですか?」
その言葉を待っていたと言わんばかりに配置についた問題児たち。
「なんで倒したと聞かれれば」
「答えてあげるが世の情け」
「・・・・・・・」
(飛鳥、セリフセリフ)
(わかったわよ、もう)
「世界の干ばつ防ぐため//」
「都市の平和を守るため」
「たまたま出会った魃を蹴りぬく」
「クリーンヒットな回し蹴り」
「十六夜!」
「飛鳥!」
「耀!」
「祭!」
「頼華!」
「箱庭駆ける、ジン=ラッセルの”ノーネーム”」
「ギフトゲームただ今絶賛受付中!」
「「「かかってこい!!」」」
「こんのお馬鹿様~~~~!!!」
スパパパパパーーーン!!
この後、一週間芸人のコミュニティと勘違いされ
問題児たちはさすがに反省したらしい。
*
魃を換金するため”サウザンドアイズ”
いつもの女性店員がやや不機嫌そうな顔をしているのは気のせいだろう。
「うちはノーネームお断りだと再三お伝えしているはずですが」
「そう言わずに換金してくれ」
「換金ばかりでお金を落としていただけないと利益が出ません」
「じゃあ今度利益になるお話を持ってきます」
唐突に話に割り込んだ祭に店員は驚く。
「ハイ分かりましたとはいきません。
どのようなお話でしょう?」
「とても重要なことですからリーダーと一緒に来た時に、
白夜叉さんに直接お話しいたします。
どれだけの利益かは、こちらの相場を知らないので答えられません」
「・・・・・・・・・・・・
分かりました。店の鑑定士を呼んでまいります」
「ありがとう店員さん」
「翠(すい)です」
「「「「「え?」」」」」
「今後お客として来ていただく以上、名乗らないのは失礼ですから」
そう言い残し、店の中に消えていく翠。
「かなり高い買い物をしたようね」
「飛鳥さんが皮肉とは・・・・・・」
「それで祭~今度は何企んでんの~」
「何も」
「隠すなよ、洗いざらいはいてもらおうか」
「本当に何も、これから必死で企むしかないね」
「まじ?」
「まじです」
「まあまあ皆さんよろしいじゃありませんか。
これでもう門前払いを受けることが無くなるのです」
これだけで嬉しそうにはしゃぐ黒ウサギ。
これまでの苦労がやっと報われた気分なのだろう。
*
換金を終え、本拠に戻った一同
飛鳥は一人、汗を流しに向かったらしい。
頼華のおかげであまり汗をかかなくて済んだとはいえ
身を綺麗にしたいのは確かだ。
「僕も飛鳥さんのあとに貰おうかな」
「いいの?飛鳥結構長いよ?」
「じゃあ先にジン君のところへ行こうかな」
「もう何か思いついたのか?」
「ただそのことを伝えるだけ、あとは雑談でもしてるよ」
「じゃあオレ達は筍フルコースを堪能してくるよ~」
「ちゃんと残しておいてくれよ?」
皆と別れ、ジンの執務室に向かう祭
その廊下で、一人の男の子を目にする。
「祭のお兄ちゃん!」
「ジットくんだったね、こんなところでどうしたんだい?」
ジットは年長組の子供たちの一人で、
小麦色に焼けた肌の男の子だ。
「なんかユニコーンが来てたから気になって」
窓から外を覗くとジットの言うとおり、ユニコーンが別館の入り口の前にいた。
おそらくは昼間のユニコーンだろう。
「おいらの父ちゃんは、翻訳のギフトを持ってたから。
もしかしたらおいらも力になれるかなって思ったんだけど、
全然ダメ。さっぱり分かんないや」
「確かに力になれることを見つけるのはいいことだよ。
でも今すぐ見つけなきゃいけないわけじゃないだろう?」
「そうなんだけど・・・・・・」
「だけど?」
「お兄ちゃんたちやジンも頑張ってくれてるのに、
おいらたち全然役に立ててないから」
祭は感心するとともに困惑した。
言葉振りから、力不足を思い悩んでいるのはこの子だけではないと気づき
その向上心と焦燥を、素直にすばらしいと感じた。
同時にコミュニティに対する心構えが、自分の方が劣っているのではと
自問自答する。
「お兄ちゃん?」
「ああごめんね、ちょっと考えたんだけど、
翻訳のギフトといってもいろいろあるんじゃないかな?
たまたまユニコーンや、出会ったことのある動物に
合わなかっただけかもしれないよ」
「そうかなあ?」
「どうだろうね、もしかしたら翻訳じゃなくて
全く別のギフトを持っているからかもしれないしね。
だからどんなことでもやってみればいい、
当たりを一回で引こうなんて生意気だぞコノ~」
ジットの髪をくしゃくしゃにする。
「わわ、止めてってば~」
沈んだ表情は消え、くすぐったそうにするジット。
「ほら、みんなとご飯の時間じゃないのか?」
「うん、祭のお兄ちゃんは?」
「ジンに連絡があるから、
それに先にお風呂に入ってから食べようと思ってね」
「分かった!話聞いてくれてありがとー!!」
廊下を駆けていくジット。
それを見送り、再びジンの執務室へ向かうが、
その執務室の方から声が聞こえてくる。
*
(農地の再生と南の収穫祭、それに路銀ねえ)
二つ隣の部屋でジンたちの会話を
(宇宙服から集音装置を取り出して)盗み聞きしていた。
「ほんとに真っ直ぐで一生懸命で・・・・」
「だがジン、お前のその案は却下だ」
とても悪い笑みを浮かべたが誰も知る者はいない。
「一つ真剣に企んでみますか」
店員さんの名前は、インスピレーションです
いったい祭は何を企むのか?
それは次回
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