”他力本願な不死”と”自由気ままな指揮者”も来るそうですよ? 作:バリアリーフ
そしてお待たせし続けた月弧さんとのコラボ後編!
本当にお待たせしました。
やはり大ボリュームにはなってしまいました。
夜が明けそれぞれのチームが移動をはじめ行動を開始する。
*
対アモン
「頼華とのコンビは初めてだね~」
「要となら何とかなりそうだしよかった~」
魔狼の悪魔アモンとの戦いは要と頼華の二人に任された。
情報不足を補える応用力のある人材で組まれたコンビだ。
「メインは要に任せちゃって大丈夫~?」
「いいけど頼華でも戦えるんじゃない?」
「まあイケそうなんだけど瞬間火力がね~」
「じゃあ今回は任せて!」
「よろしく!」
サムズアップを同時にする二人。
ノリとコンビネーションの相性がよさそうであるのもコンビの理由の一つ。
*
対天逆鬼
「さて風明、昨日から続きだがよろしく頼むぜ!」
「十六夜こそ大丈夫か?
龍によればかなりすばしっこいらしいが」
「まあそこはうちのおせっかいが気を回してくれてるからな」
十六夜がポケットからメモを取り出して風明に渡した。
それを開けて風明は納得する。
「まあやったことはないけどイケるんじゃねえか!」
「よしっ!じゃあまずは雑魚掃除だ!!」
十六夜が地を、風明が空を駆け、
わらわらと湧いてくる餓鬼を蹴散らしにかかる。
*
対デュラハン
「なんでこの組み合わせ?」
「今回、僕と龍明の目的は撃破じゃないから」
龍明と祭はデュラハンを捜し、洋装街を歩いている。
「狙いは昨日聞いた光の正体を暴く事。
三人にはそれぞれ撃破時のタイミングで連絡を取り合ってほしいんだ」
「正確には復活させる光が現れたタイミングと方向か」
「理解が速くて助かるよ。
その大元を探すために他のメンバーには浜辺を中心に散らばってもらってるからね」
「その散ってもらってるメンバーとの連絡はどうするんだ?」
「基本的にはペストたち” ハーメルン”の連絡網を使わせてもらう。
全体の中継をジンに頼んであるし、
外門内の簡易通信ギフトをサンドラさんから前日に受け取ってるから」
「なるほど、でもデュラハンを倒しても構わないんだよな?」
「ははは。それフラグらしいぞ?」
二人の前に立つ首なしの騎士。
「皆でちょっとしたゲームでもしないか?」
「ゲーム?」
「僕と風と要、それに祭、頼華、十六夜の六人で、
撃破数を競うってのはどうだろう?」
「面白そうだけど」
「他の四人は乗ったよ」
「なら僕一人乗らない訳にはいかないな」
二人が話している間にもデュラハンがランスを構えて突撃してくるのを躱して、
攻撃を入れていく。
四度の接触があり、わずかに距離が生まれたタイミングで”契約書類”が出現した。
『ギフトゲーム名 ”撃破王”
プレイヤー一覧
・安倍 要
・安倍 風明
・安倍 風明
・逆廻 十六夜
・周防院 頼華
・仲邑 祭
勝利条件
・対象の撃破回数の最も多いプレイヤーを優勝者とする。
敗北条件
・対象の撃破回数が最も少ないプレイヤーは罰ゲーム対象となる。
特記事項
・優勝者は罰ゲームの内容の決定権を持つ。
・撃破対象は「悪魔・アモン」「鬼・天逆鬼」「妖怪・デュラハン」とし、
再生不可能になるまで撃破がカウントされるものとする。
宣誓
上記を尊重し、誇りと御旗の下”安倍 要”、”安倍 風明”、”安倍 龍明”、”逆廻 十六夜”、”周防院 頼華”、”仲邑 祭”はギフトゲームに参加します。
”サラマンドラ”印』
「”サラマンドラ”?」
「祭が通信ギフトを受け取ってたように、あらかじめね」
「まあこのくらいなら」
「このくらい?」
「皆のやる気が問題だったから、起爆剤くらいにはちょうどいいかと思って」
「そうか。
最後に、連携はするがとどめを譲る気はない!」
「望むところ!」
再びデュラハンと対峙し、二人が首なしの騎士を仕留めるために構えた。
*
「だめだ!やっぱ要強えー!!」
「ほらほら!2回分リードだよ!」
アモンを見つけてから既に要は4度の撃破。
それに対して頼華は2度。
眷属である魔狼をあしらいながらも目的のアモンを軽々と倒し続けられるくらいには、
この二人は強者であった。
「くっそ!禁鞭本気出せって~!!」
「頼華の方がどこか本気じゃないんじゃない?」
意志ある十二神将の力を借りて戦う要からのアドバイス。
今要は朱雀の力を借り、神炎の大剣で無双している。
「どうなの禁鞭?」
単純に会話ができるわけではないが、
それでも頼華は語りかけることにしている。
「はい5回目~!」
「あ!ちょっ!?」
「やっぱりまた浜辺の方角から」
アモンを復活させるための光は、
夜を過ごした浜辺の方角から飛んできている。
「じゃあレティシア達にはそっちに向かってもらうね~」
「やった!今一位だ!」
要が大剣を片手に”契約書類”を広げている。
「因みに頼華が二位、あとは十六夜と龍にぃが一回ずつみたい」
「こうなったら新しく思いついた必殺技を使うしかないようだな!」
「何それ必殺技!?」
「まだ誰にも教えていない必殺技!
その名も『演出効果』!!」
「へ?」
「この技の恐ろしさ!とくと味わうがいい!」
「なんで私に使うみたいになってんの!?」
「”ノーネーム”周防院頼華!!いざ参る!!」
「!!」
禁鞭を構えて名乗りを上げた頼華。
その名乗りを聞いていた要は驚いた。
名乗りに合わせ『文字』が空間に浮かび上がったのだ。
『自分の名』を背負って突貫する頼華。
「行くぞ禁鞭!」
要の前を行く頼華。
そこからは頼華の背中しか見えないが、何故か鋭い目線と手に持つ禁鞭のカットインが入る。
「これで終わりだあ!」
頼華が振るう禁鞭、その攻撃に”無駄な”軌跡が追加されアモンが倒れる。
その間際にアモンに背を向け振り返る頼華。
正に、というタイミングでアモンの身体が爆発した。
「これが・・・『演出効果』のチカラ!」
「ぶっちゃけ全部”演出”でしかないから攻撃力上がったりするわけでもないんだけどね~」
「ねえ!頼華!これ私もイケる!?」
「モチ!」
サムズアップといい笑顔で要に応える。
「『朱雀解除』十二神将紅蓮『顕現―――――煉獄の槍』!!」
朱雀の力を持つ大剣が消え、替わりに煉獄の槍が具現化する。
要を中心として渦巻く炎閃が迸る。
その炎閃を振り払うように要が槍を構え、アモンに向ける。
すると起き上がったばかりのアモンまで、散った炎閃が突撃の道を縁取った。
「はああああああぁぁぁぁぁ!!」
アモンに向けて真っ直ぐと。
貫いた魔狼の心臓から燃え上がり、断末魔を上げてアモンが倒れる。
「なにこれ超気持ちいんだけど!!」
「超テンションあがるでしょ~!!」
「うん!でもこれでダブルスコア~!」
「しまったーーー!!!」
*
「別分岐でもさすがは十六夜だな」
「いや、それでも辛いぜ?
でもこれは確かに俺ぐらいしか、ギリで春日部ならできるか?」
基本として天逆鬼を倒せるのか。
前日にこいつだけ一度目の撃破ができていなかった。
その為、まずはおせっかいの策にのってみることにした。
風明は愛宕天狗の力を使い、
強力な下降気流、いわゆるダウンバーストと同じものを発生させる。
これにより天逆鬼を地面に押さえつけそれを狩る。
更に天逆鬼が強力であった場合に備えて追加の策。
ダウンバーストによって地表にぶつかった空気が四散する。
その空気をダウンバーストを起こしている範囲の外側に沿わせ、竜巻型の上昇気流とし循環させる。
これを持って風の牢獄を築き、
作戦の鍵としてその暴風の闘技場で動ける十六夜をアタッカーとして配置する。
「でも今後は直接説明させた方がいいぞ」
「そうだな。
まさか絵心がないのに図で説明しようとするとは俺も思わなかった」
問題は祭が渡したメモに在った。
十六夜の言うとおり図で示された策が、
壊滅的に下手だった。
風明と十六夜は頭の回転も速く、
祭との付き合い、人間性を知っているが故に
これなら文字だけの説明の方がまだ速かった。
「風明、このままじゃ俺が一方的に狩っていくことになるが、
それじゃあ俺がつまらねえし、こんな形でビリを作るのも気分が悪い」
「心配しなくても俺にだって作戦はあったさ。
まあ見てろよ」
風の牢獄を
愛宕天狗の羽根団扇を一度、二度と振るう。
一度目で羽根が拡散され、二度目でそれらが天逆鬼に襲い掛かる。
光を受け起き上がり際の天逆鬼、
その身を容赦なく旋刃となった羽根が切り刻む。
『ギャググググァ!!」
断末魔を上げて倒れる天逆鬼、
そして風の牢獄内で押しつぶされた餓鬼たちも刻まれ倒れている。
「雑魚もポイントになってたら俺の圧勝だったな」
「やるじゃねえか。
なら俺も雑魚狩りの腕を見せねえとな!」
軽く跳び上がった十六夜はダウンバーストの加速を得て地面を殴りつけた。
「どあらぁ!」
十六夜が殴りつけた一点を中心に地が裂け盛り返り、
砕けた地面の矢じりが爆散する。
爆心地の十六夜には砂利の礫ほどで気になるほどの物でもないが、
周りの餓鬼にはその一つ一つが致命傷、あるいは必殺の威力があった。
衝撃によって生まれた揺れが治まるころには、
辺りは餓鬼の死体で満たされていた。
「このくらいじゃないと張り合いがないな」
「それは俺の台詞だ」
「ここからはスコア勝負、覚悟しろよ十六夜!」
「誰に言ってやがる!風明こそ後で泣いても知らねえぜ!」
天逆鬼が逃げて姿をくらましたことに二人が気づくまであと一分。
*
「流石にそう都合よくはないか」
「まあ騎士の方が本体なのは当然だろう」
デュラハンとの戦闘で祭は首なしの騎馬がゲームにどうカウントされるかを知るため、
徹底的に攻撃を集中させていた。
結果として騎馬は倒すことができても光で復活はするが、
デュラハンではないためカウントはされない。
祭が騎馬と戦っている間に龍明がデュラハンと戦い、
まずは一度撃破することができた。
「順調に皆撃破してるみたいだけど祭はいいのか?」
「負けたくはないが、それ以上にね」
「疑問でも?」
騎馬とデュラハンの連携を二人は躱し闘いながら会話する。
アモンや天逆鬼の周りには眷属の狼や餓鬼などの雑魚が数として存在するが、
デュラハンだけは騎馬のみで他のサポートがない。
その分の余裕の差が―――実際他でも余裕はあるが―――会話をしながら戦うことに繋がっている。
「龍明もデュラハンが死の宣告者であることは知ってるだろう」
「ああ」
「初めはやられた外門に死を運ぶ存在、という認識だったんだが」
「そうか!この外門は
「そう言うこと」
五三九一〇二外門は、少なくとも彼らが見た限りかなりの期間人が生活していた形跡がない。
その事に引っ掛かりを覚えた。
「そこに今回の事件の鍵があると、そう考えてる訳か」
「まだもう少しありそうだけど・・・・・・」
「なら追加情報、
残り二か所も浜辺の方かららしい」
「索敵を浜辺を中心地にするように伝えるよ」
「三人で出した暫定解答は上位の鬼か悪魔の策謀」
「それが一番ありそうだね。
切り裂くなら結合部を狙ってくれるか?」
「構わないが直に狙っても攻撃は通るのに?」
「どうせならあの鎧剥き去ってズタズタにしてやりたいなと思って」
「面白そうだ!」
龍明と祭は別の遊びを思いついたようで、
デュラハンと騎馬の鎧甲冑を剥がしにかかる。
鎧の結合部に巨龍の胃酸を浴びせかけ、強度を下げては銃弾を浴びせ疲労を蓄積させる。
そこまでくれば龍明のギフト、”窮奇”でなく
「以前俺たちの所に来た時より随分とめんどくさいことになってるな!」
「めんどくさいか!言いえて妙だな!」
「なによりえげつないモノ手に入れたもんだ」
「えげつない?」
「俺も風も昨日の仕打ちを忘れたわけじゃないぞ」
「仕打ち、・・・・・・ああ悪い。
男にどれだけ効くかちょっと知りたくなってな。
もしかしてそのためのゲームか!?」
「やっと気づいたか!」
「となるとマズイなっ!!」
ここにきて祭がなりふり構わずデュラハンを撃破しにかかる。
「させるか!!」
デュラハンを焼きにかかった炎を龍明の風の刃が切り裂いて、
左右に分かれた炎の熱を受けた刃が騎士を両断した。
「卑怯だぞ龍明!」
「どっちがだ!!」
「アレは卑怯じゃなくて性格の悪さゆえだ!」
「なお悪い!!
って待て祭、光が来ない!?」
「!?」
確実にデュラハンは撃破されている。
だというのにも関わらず復活させるための光が一向にやってこない。
祭はジンに、龍明は要と風明に連絡を取った。
「要たちも復活がなく困惑してる」
「捜索のみんなも光の出現がなくなって、
要
「・・・・・・・まさか!!」
「「同時撃破!!」」
「シンプルイズベストってことか」
「同時に攻めてきておいて共闘しない時点で疑うべきだったな」
「互いのテリトリーを決め離れて襲撃することで、
同時撃破されるリスクを軽減させる。
ベタだが効果的な戦略だ」
思いがけない戦果に二人も、
そして離れた場所で戦っていた同志達も、
重要なことが思考の端から零れてしまっていた。
敵を復活させていた光の正体とはいったいなんだったのか。
光球となったデュラハンの身体が繰り出す突進に、
二人が撥ね飛ばられる。
「ぐっぅ!」
「っな」
光球はそのまま空へ揚がり、浜辺の方角へと飛び去った。
「起きろ祭!」
「分かってる!」
ダメージこそほぼなかったが、
隙を突かれたことを悔やみ、怒りに変え追撃の為にひた走る。
*
海は時化、雷雲が生まれ天候が悪化した浜辺。
その海上に禍禍しさを放つ巨大な物体が浮かんでいる。
最初に浜辺に戻ったのは風明と十六夜だった。
「サンドラ!春日部!二人だけかっ!?」
「餓鬼や狼たちが突然現れて!」
捜索を担当していた中で飛行戦力である二人が海上の物体への接近を試みて、
吐き出される黒紫の炎に阻まれていた。
火竜の亜龍であるサンドラが躱していることから察するに、
特異性の強い危険な代物なのだろう。
少し離れた場所から戦闘音らしき音も聞こえてくる。
「奴が本体だったわけか!!」
「海面の渦潮、吐き出される炎。
あれが
舞首
神奈川県真鶴町に伝わる怨霊で、
言い争いから殺し合いになった三人の武士が切り合った首が、
海に落ちてなお争い喰らいあって生まれた怪異とされる。
『気を付けて皆!
あの炎、呪詛も含まれてるって!』
頼華たちが戦闘領域に入ったようで声が届いた。
舞首の伝承の中には互いを罵り合い続けていた。
というものがあり、その伝承が炎に呪詛の属性を付与させたようだった。
「頼華!全員の声繋げられるか!?」
『任せて、ちょうだい!』
『風にぃ聞こえる?』
『問題ない流石だな』
『それでどうするのアレ?
高速回転して呪いと炎まき散らすとか迷惑極まりないけど』
サンドラと耀も一度降りて合流する。
『すみませんが今回私は戦力になれそうにありません。
火炎系の攻撃が全て向こうの火力に変換されてしまいます』
『風も、駄目。
直接殴ろうにも近づけなかった』
海面を燃やし、たなびく呪詛の炎。
それを真っ二つにする蓬矢。
海岸線の先、そこに立つ龍明と祭、飛鳥の姿があった。
『遅くなった』
『飛鳥さんの支援射撃で呪詛はどうにかなる!』
『今のうちに対策を立てて!』
飛鳥が蓬矢を霊弓につがえ、
一射、また一射と射る。
呪詛の炎が祓われ、その隙に合流した一同が急いで作戦を立てる。
「おおよそ明らかになってるのは生まれた伝承のみ」
「なら
「でもなんかそれだけって気がしないんだよね~」
「それよりも外側の膜が邪魔だな」
「中のメインを殺るにしてもまずアレを剥がさないと」
「しゃーねえ。止めは任せるぞ!」
十六夜が覚悟を決め超跳躍し、
溢れ出る極光を集束させた柱を叩きつけた。
「よしこれで!っっ!??」
うす膜のように存在していた靄部分が晴れたかに見えた。
しかしその部分を補うように
黒き光が集まり膜を修復してゆく。
「今度は逆かよっ!!」
頼華の出した『進入禁止』の足場に着地した十六夜が舌打ちと共にゴチる。
「雑魚を一掃しなければボス攻略は無理と来たか」
「ごめん風にぃ龍にぃ」
「気にするな」
「数をやるなら俺たちの方がいくらかいいからな」
「んじゃオレもそっちにしとこうかな~」
「頼華頼む」
「レティシア誘って合体奥義といきますか~!」
頼華、風明、龍明が森に散った狼と餓鬼を狩りつくしに走る。
「それじゃあメインを料理するレシピだが」
祭が討伐の為の作戦を話し出す。
*
「ただ倒すだけってのもつまんないし、
前からこういうのをやってみたかった!!」
レティシアと合流して頼華が初めに提案をしてきた。
「なかなか面白そうだな!」
「せっかくだしやってみるか!」
「ならば奴らの密集地、その中心へ行くとしよう!」
” ハーメルン”のメンバーにはジンたちを連れ上空に避難してもらった。
場所を移し地に降りた四人がそれぞれ背を合わせ東西南北を向く。
「団体さんが次々来るぞ!」
「なに、皆の力であれば造作もないだろうさ」
「それじゃあ頼華、企画者としてキメてくれ!」
「いっくぜ~!!
これがオレらの合体奥義『爆撃ドミノ!!』」
頼華の声に合わせ、いっせいに
レティシアの影の刺撃が、風明の天狗の刃が、頼華の打鞭が、龍明の鎌鼬が、
中心より無尽蔵に拡がり隙間なく降り注ぐ。
その光景はまさにドミノで描かれる華の如く、
次々に葬られてゆく狼、刻まれる餓鬼、巻き込まれてなぎ倒される木樹。
「これほどまでに一気呵成に倒されると今までの苦労は何だったのかという気持ちになる」
ヴェーザーの足に捕まり上空よりこれを見ていたマンドラの言葉通り、
切り拓かれた森に立つのは四人以外に存在しなかった。
「あとは任せたぞ要、皆」
*
「さあ俺たちの番みたいだぜ!」
「お願い飛鳥!」
「任せて!
”六条祓いの霊弓”よ!
眼前に揺蕩う悪しき澱みを撃ち祓え!!」
飛鳥の”威光”のチカラを上乗せされた霊弓から、
蓬矢が放たれ舞首を包んでいたうす膜を貫き消滅させた。
中からデュラハン、天逆鬼、アモンをぐちゃぐちゃにひっつけたような、
不快極まりない容姿の舞首の本体が姿を見せる。
「三人ともお願い!!」
露わになった舞首。
そのアモンの身体に要が十二神将”紅蓮”を顕現させ煉獄の槍を。
天逆鬼の身体に耀が”生命の目録”から火竜の宝剣を。
デュラハンの身体にサンドラが大火球から造った戦斧を。
同時に叩き込んだ。
だが舞首は三人の炎撃を吸収するべく、
炎を吐き出すことを止め吸い込み始めた。
ギリギリのところで舞首の許容力が上回り全ての炎撃が吸い込まれる。
「十六夜!今!」
「任せとけええぇぇぇぇ!!」
あらかじめ遥か上空に飛んでいた十六夜が、
組んだ両腕を鎚として海に叩きつけるべく振りおろす。
「行くぞ!祭!!」
落下地点の海面に足場を作って立つ祭の元に舞首が落ちる。
舞首は叩きつけられるよりも先に、取り込んだ炎撃を上乗せした呪詛の炎を祭に吐きつけた。
「それを待っていた!」
呪詛の炎を全身に浴びて取り込む祭。
そして舞首の巨体が足場もろとも祭を海中に押し込んだ。
いっきに海底まで押し込まれた祭は舞首の身体に掴みかかった。
(お前の炎が海水を焼けないのは確認済み!
利子も付けて返してやるよ!)
舞首自身の呪詛の炎とプロミネンスを右と左、
それぞれから放ち、舞首の身体を焼きながら押し上げる。
プロミネンスの絶対的な高熱が周りの海水を瞬く間に気化させ海に大穴があいた。
「要ええぇぇ!!やれええええぇぇぇ!!!」
上空に”九尾”のチカラを部分的に解放し狐耳と二尾を生やし、
神器の鈴である”
「これで、終わりです!!」
金色の光に満ち、妖力を集中させた要は大上段に構え、
打ち上げられた舞首を一刀のもとに切り捨てた。
*
箱庭五四五四五外門。
”サラマンドラ”本拠。
”階層支配者”であり”サラマンドラ”頭首であるサンドラと腹心のマンドラが直々に出張った案件ということも手伝って、
祝勝会は豪華なものが執り行われた。
「皆さん、この度はご協力ありがとうございました」
「気にしないでください。僕たちも”ノーネーム”の同志ですから」
「それにしても手強かったというかめんどくさい敵だったね」
「ああ、あんなのが自然発生したとも思えないし、
色々と大丈夫なのか?」
「また出てきたらその時も倒すだけだし~」
「それはそうだけどな」
サンドラが謝辞を述べ、
出される料理の数々に舌鼓を討つ面々や対応する者達。
「風明の言うように自然に生まれるモノでもないだろ」
「そうね、アモンとデュラハンは西洋、
天逆鬼は少なくとも東洋の妖怪でしょ。
だったら生活圏というか関わりが生まれるとも思えないし」
「やはり何者かの策謀によって生み出されたと考えるのが妥当だろう」
「でも半分は偶然だと思いますよ」
「祭、半分ってどういうこと?」
「要たちの方が詳しいだろうけど、
蠱毒の法をによって生み出されたものだとみてる」
「なるほど本来なら三体のどれかがいくらか強化された個体として生まれるはずが、
偶然にも同時に殺し合ったあいつらが舞首としての霊格を得る結果になった、か」
祭の考えに風明が補足して頷く。
「確かにそれなら今回ほど面倒な敵は生まれにくいかな」
「それでも今回の件を引き起こした何某かいる以上、
警戒と捜査は必要だろう」
「各”階層支配者”に報告した上で協力体制を築くつもりです」
「これで問題はひとまず片付きましたね」
締めくくった祭がテーブルに料理を取りに行こうとした時、
「何を言ってるんだろうな祭は」
「ああまったくどうしたって言うんだ、
一番の問題を片づけていないというのに」
風明と龍明が腕を組み、わざとらしく話す。
「一番の問題?」
「「これだっ!!」」
二人が取り出しみせたのは”契約書類”。
(あぁ忘れてた)
「そう言えば賭けてたな」
「何それ?私は知らないわよ」
「ずるいよ十六夜たちだけ」
「ま~ま~。
で、誰が優勝したの~?」
「優勝は9回撃破で要だな」
「前半のリードがよかったかな!」
「そしてそして!」
「大注目の最下位はーーー!!」
「「祭だああぁぁ!!」」
「でかした!!」「やっちまえ!」
祭に恨みを持つマンドラとヴェーザーが声をあげる。
「確かに僕が最下位かもしれないが罰ゲームを決めるのは要のはずだ!」
「じゃあ祭が一番恥ずかしいと思うこと」
「へ?」
「珍しいな祭がそんな間抜けな声を出すとは」
「なんか祭って何やっても平気ですって顔しそうじゃない?
だから罰ゲームも祭自身にっ「ありがとう!!ありがとう!!」
要の話にマンドラが両手で握手をし感謝している。
「さあさあ祭!」
「何が恥ずかしいんだ?ん?んん?」
ここぞとばかりに詰め寄る風明と龍明。
「おい二人とも!」
それを十六夜の一声が遮った。
「スピーチ用のマイクを渡さないでどうする!」
会場に備えられていたマイクを投げてよこす十六夜。
彼も前日冷やかされたことを根に持っていた。
そしてこの場に何人の問題児がいるのかということ。
祭は最後の望みを賭け周りを見渡すが、
飛鳥も期待した眼差しを向け、
常識人代表のサンドラも余興としての認識で楽しみですと言わんばかり。
「祭、諦めたら試合終了ですよ」
満面の笑みでサムズアップする頼華に応援の気持ち無し。
「あ、でも待って『演出効果』。どぞー!」
舞台は整えられた、整えられてしまった。
諦めてマイクを握りしめ祭は宣言した。
「僕は、女装をすることが恥ずかしい・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
『女装』の文字を背負った祭。
沈黙がこれでもかというほど痛々しい。
「っ安心して祭君!私たちが可愛くしてあげるから」
「いや飛鳥さん可愛くとかそういうこと、・・・・・・達?」
「せっかくだ祭もメイドを経験してみるといい」
「ちょうど髪も長いし面白くなりそうね」
「サンドラ、メイド服ってある?」
「”サラマンドラ”で使用しているものの予備でよければ!」
「サイズはあるかしら?」
「こんなことならメイク道具もギフトカードに入れてくればよかった~」
女性陣が全員もれなくノリノリだった。
「さあ行きましょう祭君!」
瞳からハイライトが消えた祭が女性陣に
「要、今日一番の仕事したな」
「ああ、自慢の義妹だ」
「ドレスアップが終わるまで飲んで待つとしようぜ!」
*
一時間ほどたったころ、男性陣も酒が入り程よくできあがったころ。
会場の扉が開かれ耀が倒れ込んできた。
「どうした春日部!?」
慌てて駆け寄った十六夜。
耀の顔は上気して赤く染まっておりその眼には涙がたまっている。
「っっっっもっっっむりっっぉなっかっっっっったぃっっっ!!」
なおも痙攣が続き過呼吸気味に苦しそうな耀を十六夜が椅子まで運んだ。
「ヤバいかも」
「ああ、春日部が命がけで教えてくれなけりゃ」
「特にヴェーザー気を付けたほうがいいよ~」
「心配すんなって大丈夫だろ」
丁寧にヴェーザーがフラグを立てると。
再び扉が開かれて飛鳥が先に入ってきた。
「待たせてゴメンなさい、紹介するわ!
祭君改め、まつりちゃんよ!!」
飛鳥が入口から退き、
そこにコツコツと足音が聞こえてくる。
こげ茶色の落ち着いた色合いに黒のラインを入れたロングワンピースのメイド服。
アクセントに胸元のリボンには明るい蜜柑色。
合わせるヘッドドレスには同じく蜜柑色の生地に白のフリルがあしらわれている。
長い黒髪はウェーブがかけられてひろがっており、
薄くではあるがメイクも施され紅も刺していることが分かる。
ただ頬の赤みはメイクではないのだろう。
身体の前で組んでいる手や恥ずかしさで伏し目がちになっている仕草も、
トータルでそれは似合っているといっていいだろう。
「ほら、まつり!」
「はい。
ご主人様方、お待たせしてしまいま「「「「「「ブハハハハハハハハハハははははははははははははははははっははhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh」」」」」」
大爆笑。
開始4秒で6KOを記録。
ただ一つ祭の
全てが台無しである。
「大丈夫よ!まつりちゃんは可愛いわ!」
「なぐさめないでくださいおねがいします」
もうそのまま泣き崩れてしまいたいまつりちゃんだった。
「駄目だっ殺されっっ」
「腹筋殺されるってっっはっはははははは」
「サンドラ、ペストとラッテンは?」
「パウダールームにまだいるよ。”黒死斑の御子”が皆さんみたいになってラッテンが付き添ってる」
「ジン君は平気なの?」
「ええ・・・・・・もっと幼いころに同じ目にあってますから」
フッとジンの瞳が昏くなった。
「祭も罰ゲームは女装だけだからもう普通にしていいよ」
「・・・・・・もういやだ」
要の撃墜スコア。
アモン撃破9 舞首とどめ 男性陣8 耀 ペスト
総数20の撃墜王に輝いた。
*
あっという間に時間が過ぎ、夜には別れの時間となった。
「そろそろみたいだね~」
「随分と楽しめたよ!ありがとう」
「こちらこそ手を貸してくれて助かった!」
「機会があれば私もそちらに行ってみたいわ」
「うん、別の自分ってのも気になるし」
「自由に遊びに来れたりすればいいんだけどな」
「その時があれば歓迎しますね」
「じゃあな、そっちの俺にもよろしく言っといてくれ」
三人を囲むように光が立ち上り、次第に発光が強くなる。
「また何かあったら助けるよ
「ありがとう
そして自分たちの住む箱庭”ノーネーム”に三人は帰った。
なんとか納得できるくらいの物にはなった(かな?)
月弧さん。
要さん、風明君、龍明君の三人を貸していただき誠にありがとうございます。
ご迷惑もおかけしましたが無事コラボを書きあげられました。