”他力本願な不死”と”自由気ままな指揮者”も来るそうですよ? 作:バリアリーフ
「十六夜さん、ご無事でしたか!?」
「こっちは問題ない。他の連中は?」
「残念ながら、十六夜さんと黒ウサギを除けば無事とは・・・・・・」
大祭運営本陣営、大広間。
なんとか合流できたのは十六夜、ジン、黒ウサギの三人だけ。
「まず耀さんですが、敵の魔笛の影響を受け今動ける状態にありません」
「春日部の聴覚が仇になったか。
お嬢様と頼華は?一緒じゃなかったのか?」
「すみません。
飛鳥さんのギフトを受けてからどうやって逃げてきたか分からないんです」
「耀さんを抱えたジン坊ちゃんが黒ウサギのところにやってきて、
すぐに”審判権限”を発動させたのですが」
「何もお前らを攻めてるわけじゃねえ」
「ああ・・・・・・今回は僕の責任だ」
「祭さん!よかった」
リリに支えられ三人とところへ祭が歩いてくる。
「先にレティシアに会って話を聞いてきた。
分かる限りを全て話す」
「手短にな」
「まず飛鳥さんは連れて行かれた」
「そんなっ!!」
「僕が白夜叉のところに着いたとき、
頼華と飛鳥さんの二人しかいなかった。
魔笛の影響で頼華は”空間信号”をうまく使えない様子だった。
三人で白装束の女にかかったんだが、返り討ちだ。
頼華が弾き飛ばされ壁の向こう側に、恐らく”透過”の影響だろう。
壁の中か、もっと奥か。まだ見つかっていない。
倒れた飛鳥さんを抱え、僕に近づいてくる途中で中断がかかった」
「すみません黒ウサギがもっと早く発動していれば・・・・・・」
「いや十分だ。祭まで捕まってれば、それこそ手の打ちようがなかった。
レティシアは、戦ったヤツについて何と言っていた?」
「白い巨兵の名は『シュトロム』。
斑模様の方が魔王の本命で名前は名乗らなかったが、
ギフトネームは『黒死斑の魔王』と言ったそうだ」
ジンが驚愕の声をあげる中、十六夜は何か別の事を考えている。
「『黒死斑の魔王』!!」
「それからその魔王は、『気に入った』『手ごまにする』とも発言したらしい。
それから審議決議が行われることを狙っていた可能性があると」
「それは本当でございますか!?」
「レティシアはそう感じたみたい。
恐らく奴らの狙いは」
「人材の徴用」
「だろうね」
陰鬱な空気が立ち込める大広間の扉が開け放たれ、
サンドラとマンドラの二人が入ってくる。
「今より魔王との審議決議に向かいます。
同行者は四名。
まずは”箱庭の貴族”である黒ウサギ。
”サラマンドラ”からはマンドラ。
そのほかに”ハーメルンの笛吹き”に詳しいものがいるなら協力してほしい。
誰か立候補するものはいませんか?」
大広間にざわめきが走る中、十六夜がジンを持ち上げ、
「”ハーメルンの笛吹き”についてなら、
このジン=ラッセルが誰よりも知ってるぞ!」
「ジンが?」
「めっちゃ知ってるぞ!とにかく詳しいぞ!役に立つぞ!
この件で”サラマンドラ”に貢献できるのは”ノーネーム”のリーダー、
ジン=ラッセルをおいて他にはいないぞ!!」
「他に申し出が無ければ”ノーネーム”のジン=ラッセルにお願いしますが、よろしいか?」
サンドラの決定に異議を申し立てるものはおらず、
だが交渉を”ノーネーム”に任せるのが不安なのかざわめきが増す。
「僕たち”ノーネーム”は”名”と”旗印”を取り戻すため、
”打倒魔王”を掲げたコミュニティです!
僕に任せていただけませんか!!」
ジンの宣誓に騒ぎが治まる。
「サンドラ様、最後の同行者ですが僕が推薦しても宜しいですか?」
「何方でしょう?」
(十六夜だ)
(えっ!?)
祭の囁きにジン、十六夜の二人が驚きの顔を見せる。
祭の目は強く訴えていた。
二人はその意志に従った。
「わが同志、逆廻十六夜を指名します!」
「よろしく頼むぜ!サンドラ様!!」
「分かりました。それでは付いて来てください」
サンドラとマンドラが背を向け歩み出す。
「僕は今から血を提供してくる。僕の血なら対抗薬を作れる」
「それで俺に交渉役を回したわけか」
「ああ、そしてジン。
君に交渉のコツを三つ伝える。
一つ、不安を殺せ。押し殺すんじゃない。
「はい」
「二つ、カードの切り時を見極めろ。
コレは十六夜がフォローしてくれ」
「わかった」
「三つ、笑うこと。いろいろな笑い方が使える」
「・・・・・・分かりました」
「どうした”ノーネーム”早く来い!!」
マンドラの怒声が響く。
「行ってきます!」
「任せた」
ジンと黒ウサギが駆け出す。
「一人で抱えてんじゃねえよ」
十六夜はくぎを刺し、後に続いた。
「全く敵わないな。
リリちゃん、悪いけど医務室までお願いできるかな?」
「勿論です!私も”ノーネーム”の一員!
何でもおっしゃってください」
*
「ギフトゲーム”The PIED PIPER of HAMELIM”の審議決議及び交渉を始めます」
黒ウサギが長机の端に立ち、こちら側にサンドラ、マンドラ、十六夜、ジンの順に腰かけ、
向かいにヴェーザー、魔王の少女、ラッテンが座っている。
「まず”主催者”側に問います。此度のゲームですが、」
「不備はないわ。
白夜叉の封印も、ゲームのクリア条件も全て整えたうえでのゲームよ。
審議を問われる謂れはないわ。
無実の罪でゲームを中断されていい迷惑。
何が言いたいか分かる?」
「不正がなかった場合は、有利な条件で再開させろと?」
「その通りよ。
さあウサギさん、私たちの無実を証明して頂戴!」
予想していたとはいえ、ここまではっきりと攻めてくるとまでは考えていなかった。
黒ウサギはわずかに動揺するも、すぐに箱庭の中枢へアクセスを開始する。
(向こうの態度、不正はないものと考えておけよ。
下手に動揺を見せると付け込まれるぞ)
十六夜がサンドラたちに注意を促す。
「此度のゲームに不備・不正は存在しないとのことです」
「当然よ。ところでジャッジマスター、ゲームの再開は最長で何時になるのかしら?」
「さ、最長ですか?ええと、今回の場合ですと
・・・・・・・・・一か月でしょうか」
「じゃ、それで手
「待ちな!」
「待ってください!」
十六夜とジンが声をあげ制止する。
「謎解きの時間が欲しくないの?」
「いや、ありがたいぜ?だけど今回はな・・・・・・
御チビ、先に言え」
「主催者に問います。貴女の両隣は”ラッテン”と”ヴェーザー”、そして”シュトロム”という巨兵。
ならば貴女は”
「ペストだと!?」
「正解よ。貴方名前は?」
「”ノーネーム”ジン=ラッセルです」
「覚えておくわ。
でも残念、もうすでに参加者の中に黒死病を潜伏させているわ。
加えて再開の日程を左右できるという言質もとった」
「ジャッジマスター!彼らは意図的にゲームの説明を伏せていた疑いが」
「ダメですサンドラ様!ルール外の説明、
ましてや中断前に病原菌を潜伏させていればそこに説明義務はありません」
「よく分かってるじゃない。
ここにいる人たちが参加者の主力と考えていいのかしら?」
「・・・・・・・・・」
「マスター。それで間違いないだろうが、俺たちの初舞台に茶々入れてくれたんだ。
もう少しくらい吹っかけてやろうぜ」
「そうね。
ここにいるメンバーと白夜叉、後私たちが選ぶ参加者が、
”グリムグリモワール・ハーメルン”に下るならほかの参加者の命は保証してあげる」
「なっ、」
「ありがとうヴェーザー。ヴァンパイアを手に入れそこなうところだったわ」
「私が捕まえた赤いドレスの子もいい感じですよマスター♪
他にも面白そうな子が何人か」
「そう、それは楽しみね。
下層の平和と秩序を守るマスターさん、ご決断を」
冷笑を浮かべ、決断を迫るペスト。
脅しではない殺気をはらむ笑顔に戸惑う一同。
「そうはいっても”打倒魔王”を掲げた俺たちは降参できねえ。
一か月待つのも退屈だ」
「一か月後に再開すれば、僕たちは死んでしまいます。
そうなれば、『手ごま』は手に入りませんよ?」
寸でのところでジンと十六夜が、再開日時に交渉を引き戻す。
「それが何?」
「僕も”ノーネーム”だから分かります。
人材が欲しいんですよね?
主力の人数が少ないと苦労しますから」
「こいつらの他に魔王側らしき人材の報告はあったか?」
突然問われ、しばし沈黙するマンドラ。
「・・・・・・・・・いや、こやつら以外に戦ったのは笛の音に操られたものだけだ」
「戦力が欲しいならひと月はやめませんか?」
「本当に面白いわねジン!いいわ二十日後よ。
それなら病死前の人材を
「では発症したものを殺す!」
マンドラの過激な発言に、全員が目をむく。
その瞳に揺るぎはない。
「例外はない、たとえサンドラだろうと、”箱庭の貴族”であろうと、
この私であろうと例外なく殺す」
「ルールはまだ改変できるか黒ウサギ」
「へ?・・・・・・・・あ、YES!」
十六夜が閃き、黒ウサギも気が付く。
「俺たちは”自決・同士討ちを禁ずる”と付け加えるから三日後に負けろ」
「二週間」
ペストは即断し、交渉を打ち切ろうとする。
「黒ウサギの扱いはどうなってる?」
「”審判権限”の縛りでゲームには参加できません。
主催者側の許可があれば別ですが」
「なら黒ウサギを付ける。
”箱庭の貴族”の箔は魔王様でも欲しいだろ?」
「ええとっても欲しいわ。十日後よ」
「マスター!?”箱庭の貴族”が参戦しては・・・・・・」
「仕方ないでしょ、欲しいんだもの」
「ますたぁぁ」
ペストの見た目相応の反応にラッテンの力が抜ける。
「もうこれ以上は絞れねえだろ、
マスターこのあたりで」
「ゲームに期限を付けます」
意を決したジンが発言した。
「ゲーム再開は五日後。
その二十四時間後に終了とし、その時点で主催者側の勝利で構いません」
「主催者の総取りを覚悟するというの?」
「はい」
「それは良いわね。でも一週間後よ」
「仕方ありません。こちらも一週間後で呑みます」
「決まりね、それじゃあ追加するルールだけど」
「これ以上要求するというの!?」
ペストの発言にサンドラが怒りをあらわにする。
「ええ今決めたのはあくまで再開の日取りに関するルール。
そっちがいろいろ勝手に盛り込んだんでしょ?」
「そんな暴論がっ」
「大丈夫だよ、サンドラ。
もう十分過ぎるルールを追加したから」
「何を言ってるのかしら?」
「主催者側に勝利条件を差し上げたんです。
これ以上はありません。
『ホストプレイヤー側勝利条件・全プレイヤーの屈服、及び殺害』
これは最初から達成できないんですから」
「何をバカなことをいってるの」
「僕のコミュニティには、”不死”のギフトを持つ同志がいます。
彼は絶対に魔王には屈しません。絶対です」
ジンは力強く断言する。それを聞きラッテンが、
「なら私の笛で服従させてあげるわ」
「残念だったな、あいつは鼓膜破ってでも戦うぜ?
不死だから、自分が傷つくのを気にも留めないような死にたがりだ」
「加えて僕たちは、”打倒魔王”のコミュニティ。
その志を屈服させられるものならどうぞ」
絶対の自信の下、ペストに笑いかける。
反対にペストは今までの余裕ある表情を崩し怒りにゆがむ。
「一週間後に生きていられたとして、勝てるというの?」
「勝ちます」
「・・・・・・・・・・・・・・・そうよく分かったわ。
一週間後にまた会いましょう。
必ず私の玩具にしてあげる」
最後に不敵に笑うペストは、従者二人と共に黒い風で身を包み消え去った。
後には改訂された”契約書類”だけが残った。
『ギフトゲーム名 ”The PIED PIPER of HAMERUN”
・プレイヤー一覧
・現時点で三九九九九九九外門・四〇〇〇〇〇〇外門・境界壁に存在する参加者・主催者の全コミュニティ。(“箱庭の貴族”を含む)
・プレイヤー側・ホスト指定ゲームマスター
・ 太陽の運行者・星霊・白夜叉(現在非参戦のため、中断時の接触禁止)。
・プレイヤー側・禁止事項
・自決及び同士討ちによる討ち死に。
・休止期間中にゲームテリトリー(舞台区画)からの脱出を禁ず。
・休止期間中の自由行動範囲は、大祭本陣営より500m四方に限る。
・ホストマスター側 勝利条件
・全プレイヤーの屈服・及び殺害。
・八日後の時間制限を迎えると無条件勝利。
・プレイヤー側 勝利条件
一、ゲームマスターを打倒。
二、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ。
・休止期間
・一週間を、相互不可侵の時間として設ける。
宣誓
上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
“グリムグリモワール・ハーメルン”印』
オリジナル少ないですが、ジン君の成長を書きたかったんです