”他力本願な不死”と”自由気ままな指揮者”も来るそうですよ?   作:バリアリーフ

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今回はかなり時間がかかってしまいました。

その分やりたいことやれたんで構いません。



ちょっとした休日の話

少し日が昇った時刻、コンコン、コンコンと4回控え目なノックが響く。

まどろみの中にいた飛鳥はもやがかかった頭で考える。

 

(今日はギフトゲームの予定も・・・)

 

「おはようございます飛鳥お嬢様。

朝食のご用意ができておりますが如何なさいますか?」

 

「・・・支度をしてから降りるわ」

 

「かしこまりました」

 

コツコツコツと足音が遠ざかってゆく。

 

「ちょっと待って祭君!!?」

 

突然覚醒して起き上がり扉を勢いよくあけた先には、

 

「おはようございます。

御髪(おぐし)が乱れておりますよ、飛鳥お嬢様」

 

「おはよう・・・、

・・・・・・・・・・・・!!」

 

慌てて扉を閉じ部屋に舞い戻った。

 

「えっと、どういうこと??」

 

飛鳥の瞳に焼きつく祭は、

燕尾服に白手袋、髪をアップにまとめ上げ柔らかく微笑んでいた。

 

つまり完全無欠に疑いようなく執事だった。

 

 

*

 

 

髪の乱れをただしいつものドレスに着替えた飛鳥は、

食堂として使っている部屋へと降りる。

そこにはジン、十六夜、耀、頼華、黒ウサギ、そしてレティシアも私服で座っていた。

 

「遅いよ飛鳥」

 

「ごめんなさい。

でもこれはどういうことなのかしら?」

 

「祭の罰ゲームだよ~」

 

先日のサーカスの一件で祭は一日執事をすることになっていた。

 

「そういえば、でも律儀にそれをするなんて驚いたわ」

 

「まあ面白そうだし、レティシアも久しぶりに休暇なんだし良いんじゃないの~?」

 

「私も昨日、仕事を任せてほしいと言われてな」

 

「皆様お待たせいたしました」

 

祭が年長組の子たちを引き連れ、朝食の配膳にやってきた。

今日の朝食はオーソドックスな和食。

白米に豆腐の味噌汁と白身の焼き魚、お浸しの小鉢。

 

「ごゆっくりお召し上がりください」

 

「祭さんは食べないんですか?」

 

「頭首様方が食べ終わられましたらいただきますので」

 

壁際へ下がり一礼する。

 

「随分と本格的じゃねえか」

 

「ああ、ラッテンとヴェーザーにも見習わせたいものだ」

 

「恐れ入ります」

 

「ささ皆さんせっかくのご飯が冷めてしまうのです!」

 

「「「「「「いただきます!!」」」」」」

 

「僕に任せてリリちゃん達も食べておいで」

 

「でも」

 

祭は静かに首を振る。

 

「気にしないでいいと思うよ~」

 

「祭は案外ガンコ」

 

二人の言葉を聞いて、

リリ達は少し申し訳なさそうにお辞儀をして部屋を出た。

 

「その服ヴェーザー達のとはデザインが違うな?」

 

器用に魚の骨を取り除く十六夜が質問する。

祭は耀のご飯のおかわりをよそいながら答えた。

 

「”サウザンドアイズ”に探しに出かけたときに、

ちょうど呉服コミュニティの方が商談にいらっしゃっていたようで。

一着したてていただいたのです」

 

「じゃあオーダーメイドなんですか!?」

 

「はい。ですが僕個人のポケットマネーから出してますのでご安心ください」

 

「徹底してんなあ」

 

「お注ぎいたしますか?」

 

「え?ええ。いただくわ」

 

空になった飛鳥のコップに水を注ぐ。

 

「どうかなさいましたか黒ウサギさん?」

 

黒ウサギの視線を感じ取った祭が問いかける。

 

「あ、いえ。その燕尾服なのですが・・・

何でしょううまく言えないのです」

 

「・・・・・・恐らく黒ウサギさんの服と同じ製作元ですから、

この服の意匠に見覚えがあったのでは?」

 

黒ウサギの疑問にも答えながら、

耀の六杯目のおかわりをよそうことも忘れない。

 

「そうなのですか!?」

 

「ええ、その呉服コミュニティは白夜叉さん御用達だそうで」

 

「じゃあ飛鳥のドレスもそうだね」

 

「やはりそうでしたか」

 

テキパキと空いた皿を下げ、食後のお茶の準備までしている。

 

「でもすごいね~。

オレ達が何か言う前に祭が動いてくれるんだもん」

 

「それはいつも食事をご一緒させていただいてるからでございます。

あとは少々のイカサマを」

 

「イカサマですか?」

 

「はい。リリちゃん達にお願いして献立を少し変えさせていただきましたので」

 

「そこまで観察されているとは恐れ入った」

 

「まったくだ。私も後学のためにいろいろと教えてほしい」

 

十六夜とレティシアに絶賛され気恥ずかしそうにする祭。

執事となって初めて感情を露わにした瞬間だろう。

 

「ご要望とあらば後程」

 

「ぜひお願いするよ」

 

「畏まりました」

 

「どうしたの飛鳥(ほうひはのはうは)?」

 

食事が進んでいない飛鳥が気になったのだろう、

耀が口いっぱいにご飯を入れて尋ねる。

 

「なんでもないわ。

春日部さんも口に食べ物を入れながら話すのを止めなさい」

 

「和食はお口に合いませんでしたか?」

 

「そうではないの、少し考え事をしていただけよ」

 

飛鳥は再び箸を進める。

祭は疑問を感じるもそれ以上は追及しない。

 

ここで十六夜が悪戯を思いついたように笑った。

 

「祭はお嬢様が気になって仕方ねえだろうが、

ちゃんと仕事はしてほしいもんだ。

つう訳で俺もおかわりだ、大盛りで頼むぜ?」

 

「ごめん十六夜、さっき私がおかわりした時におひつが空になっちゃったみたい」

 

もちろん十六夜はそのことに気付いている。

代わりのおひつを台所まで取りに行けばいいだけなのだが、

飛鳥に気を取られて執事の職務を忘れていたといちゃもんでもつける気なのだろう。

 

「まさかとは思うが?」

 

「ご心配なく。既に用意してございます」

 

空になったおひつを取り込み、

代わりにご飯いっぱいのおひつを祭は出した。

ギフトあればこその早業である。

そして粛々と十六夜の茶碗にご飯を盛るのであった。

 

「「「「「おお~~!!」」」」」

 

「お待たせいたしました十六夜様」

 

「おう」

 

十六夜の目の前には白い湯気を立ち昇らせる大盛りごはんが置かれた。

十六夜自身も悪戯が失敗したのだが不思議と悪い気がしないのであった。

 

飛鳥は黙々と箸を進め、そのやり取りに目を向けることはなかった。

 

 

*

 

 

「はあ・・・・・・・」

 

自分の部屋に戻った飛鳥はベッドに身を投げ出した。

 

「・・・・・・・・・・・」

 

枕を抱え何度も寝返りを打つ。

モヤモヤした感情が渦巻き、どうにも気持ち悪い。

 

「・・・・・・むぅ」

 

よく見れば頬がわずかに赤い。

 

(なんであんなにかっこいいのよ!聞いてないわっ!!)

 

執事服を華麗に着こなし(オーダーメイドなのだから当然なのだが)、

隙なく仕事をこなす様が脳裏に焼き付いて離れない。

 

窓より差し込む日差しなどで補正がかかり、

更にかっこよく見えてしまう。

 

ベッドの上をゴロゴロと転げまわり悶える。

息切れするほどゴロゴロやったころにコンコンコンとノックが三回。

 

「誰!?」

 

慌てて体を起こしベッドに腰掛け、誰何(すいか)を問う。

 

「ああ私、ラッテン。シーツの回収に来たのだけど?」

 

「開いてるわ、どうぞ」

 

「失礼するわね、部屋にいないと思ってたから驚いたわ」

 

部屋の主の所在に関わらず、ノックから入るあたりはレティシアに仕込まれたものだろう。

飛鳥はラッテンの邪魔にならないように物書き机へ移動する。

 

”火竜誕生祭”での因縁がある二人だが、

お互いが一々掘り返さないタイプであるため関係はこじれずに、

むしろ良好といえる関係を築いていた。

 

「飛鳥は出かけたりしないのかしら?」

 

「ギフトゲームの予定もないから」

 

「そう。あとなんでこんなに皺(しわ)だらけなのよ」

 

「うっ・・・・」

 

悶えてゴロゴロしてたとは流石に言うわけにいかない。

もし知られようものなら十六夜たちを巻き込んで盛大に冷やかされるのは明らかだ。

 

「それより飛鳥の彼氏どうにかしてほしいのだけど?

センパイがお前たちも見習えってお小言言ってきたわ」

 

「彼氏って貴女ねえ」

 

「彼氏でしょ。あんな告白受けといて」

 

飛鳥自身、彼氏彼女という言葉が気恥ずかしく、

自分でもどこか受け入れきれていないのだ。

時代というモノが培った価値観はそうやすやすとは変えがたい。

 

「そう言うラッテンこそどうなの、ヴェーザーとは」

 

「っはあ!?」

 

予想外すぎる返しだからか、在りえなさすぎる考えだからか、

ラッテンは持ち運びやすいよう畳んだシーツを床にたたきつける。

 

「えっと何?飛鳥ってそこまで馬鹿だったの?

わたしとヴェーザーは確かに別々の悪魔だけど、

霊格の元は同じのいわば姉弟(きょうだい)みたいなものよ?

恋愛に興味がないわけじゃないけれど相手ぐらいは選ぶわ!」

 

「そ、そう。ごめんなさいね・・・」

 

ハーメルンの魔書から切り離されいくらか霊格が縮小したラッテンだが、

以前戦った時以上のプレッシャーに思わずたじろいでしまった。

 

「祭君が執事をするのは今日だけだから」

 

「小賢しいくらいに悪知恵が働いて、仕事は優秀。

オマケにギフトも強力だなんて出来過ぎてるわ」

 

「愚痴ばかり言ってないで仕事しないと、

またレティシアに怒られるわよ?

今日休みを貰ったとは言ってたけどあの性格でしょう」

 

「はいはい”ノーネーム”のため頑張らせていただきますよ」

 

ラッテンはシーツと枕も一緒に持って出ていこうとする。

 

「布団は干さないのかしら?」

 

「寝転んで考え事でもしてたんでしょう。

昼前にまた来るからそれまでには空けといてよ」

 

扉を開けラッテンは出て行ってしまった。

 

「随分気を使えるのね」

 

飛鳥は再び、ベッドにコロンと身を預ける。

 

 

*

 

 

昼が過ぎ家事がひと段落して祭は農地の手伝いをする。

今日は土地の再生が進んだ区画を、

作物を植える準備を整える作業がメインとなる。

 

農業に役立ちそうな書物を一通り取り込んできたので、

行き詰まるたびに書物を開いて方針を決め作業を再開する。

これを何度か繰り返して一時間が過ぎるころには辺り一帯が整えられていた。

 

「数の暴力とは恐ろしいものだ」

 

子供たちの約半数と共に作業にあたっていたのだが、

正直なところ祭自身ここまで早く終わるとは思っていなかった。

 

「祭様ー!おにぎりを持ってきました!!」

 

遠くからリリが数人の子供たちと共にやってきた。

 

「よしみんな!休憩にしよう。

道具を置いて手を洗っておいで!」

 

「「「「「「「はーーーい!!!」」」」」」」

 

元気よく返事をする子供たち。

箱庭に召喚されてしばらくたつが、この多重大音量の返事だけは慣れることがなかった。

 

「リリちゃん達もありがとう」

 

「いえ私達の事は気になさらないでください」

 

あらかじめ頼んでおいた事なのだが、

きりのいい時にリリ達が来てくれたことはありがたい。

よく顔を合わせる年長組の子たちならば、

だいたいどんな子なのか分かっているが、

年少組の子たちは接点が少なく名前を覚えることで精いっぱいという子もいる。

 

「どう?やってる~?」

 

頼華とレティシアが連れ立ってやってきた。

 

「ちょうど今休憩に入った所でございます」

 

「今ぐらいは畏まらなくていいのにさ~」

 

「今日一日は徹底的に執事なのだな」

 

「その通りでございます」

 

「リリ達も気にする必要は無いぞ。

これは主たちが遊んでいるようなものだからな」

 

「は、はい・・・」

 

リリ達にしてみれば、プレイヤーとして活躍している人が、

いきなり使用人として自分たちと共に働くというのは在りえなかったことだ。

レティシアがメイドとして働きはじめていなければ、

もっと取り乱していただろう。

 

「せっかくだしオレ達もおにぎり貰っちゃっても大丈夫?」

 

「はい!たくさん作りましたので!!」

 

「どうぞ」

 

手早く周辺を片づけた祭はシートを広げ、

腰を下ろせる場を用意する。

子供たちのほとんどが気後れしてしまい、

結局同席したのはリリだけで後の子たちは別のグループを作っている。

 

「何でそんなに器用にこなしちゃうわけ~?」

 

「向こうにいたときの経験ゆえでしょうか」

 

「一体どんな経験すればそんなに万能になれるんだよ~」

 

「いろいろです」

 

「あの、わたしはお二人がどのような生活をされていたのか聞いてみたいです!」

 

驚いたことにリリから提案がなされる。

瞳も尻尾も興味津々といった風で祭と頼華は顔を見合わせる。

 

「僕がどんな生活を送っていたかを話すのは・・・」

 

死にたがり時代の話をするのは教育上よろしくない。

そう判断しての発言だったのだが思わぬ援軍が現れる。

 

「ならば頼華のことを聞かせてくれないか?

私もとても興味がある」

 

レティシアの助勢により頼華が話す流れとなる。

 

「オレ~?まあいいけど」

 

手にした鮭おにぎりを食べ終わり、お茶を啜ると頼華は話し出した。

 

「ん~いろいろ荒れてた時代に生まれたからオレも結構特殊だったかな~。

ストリートチルドレンってわかる~?

要するにオレ、孤児(みなしご)だったんだよね~」

 

あっけらかんとなかなかの事実を打ち明ける。

 

「金持ちと貧乏人の落差が酷くて、

まあぶっちゃけ盗みで生活してた部分もある」

 

「それはまた」

 

「ああでも金持ちから、それもヤクザとかチンピラみたいなのからしか盗んでないから。

それに普通に日雇いとかで働いたりもしてたし~」

 

「なかなか苦労していたのだな」

 

「好き勝手やってただけだって~。

似たような貧乏人で集まって助け合いで暮らしてた感じかな~?

だからまあ”ノーネーム”での生活とあんまり変わんないかも」

 

「確かに頼華様は箱庭にいらしてすぐに馴染まれていた気がします」

 

「向こうでも子供だけでいろいろやってたこともあったしね~。

あとなにかききたいことある~?」

 

「では僕から、頼華様が普段多用される台詞などの知識は、

どこから手に入れていたのですか?

聞く限りそういった作品に触れられる余裕は無さそうでしたが」

 

「道楽で集めてる屋敷に忍び込んで楽しませていただきました!!」

 

意味なく両手ガッツポーズ。

 

「あの時もまあ楽しかったかな~。

今は毎日楽しくて仕方ないね~」

 

「僕も同意見です。

箱庭に来て以来、充実した日々を過ごしていますね」

 

「それは私たちとしてもうれしい限りだ。

黒ウサギが聞けば喜ぶだろうな」

 

「はい!皆さんを呼ぶためにみんなで苦労した甲斐がありました!」

 

リリの尻尾がパタパタとそれは嬉しそうに動き、それを見た三人は心を和ませる。

 

「それならばもうひと頑張り致しましょう。

夕食の支度までには種まきを終わらせないと」

 

「レティシアがよければだけど手伝っていかない?」

 

「もちろん構わないよ」

 

「いいんですか!?お二人とも今日はお休みじゃ・・・」

 

「いいのいいの~。

それより体動かしてリリちゃんの美味しいご飯を食べるのが目的だからさ~」

 

「ハードルが上がってしまったなリリ」

 

「コレは献立を考え直さないといけませんね」

 

「腕によりをかけてお作りします!!」

 

ムンと気合を入れるリリ、

”ノーネーム”最高の癒し系は元気に厨房まで駆けて行った。

 

「本当によろしいのですか?」

 

「これで手伝わなかったら飯抜きになっちゃうって」

 

「それで今日は何を植えるのだ?」

 

「育ちの早い夏野菜を」

 

その後子供たちを集め再開された作業は

またも一時間を切る超スピードで終わりを告げた。

 

 

*

 

 

コンコン、コンコン。

 

「どうぞ、入って」

 

「失礼いたします」

 

夕食を終え祭は飛鳥の部屋に呼ばれていた。

 

「お話があるとのことでしたので、

ご一緒にハーブティーは如何でしょうか?」

 

「いただくわ」

 

慣れた手つきでポットに茶葉を入れお湯を注ぐ。

もう一つ用意されている方のポットにはカモミールが入れられている。

 

「飛鳥お嬢様はハーブの風味はどのくらいがお好みですか?」

 

「そこまでのこだわりはないわ。

それと今は普段通りで構わないわよ」

 

「・・わかりました」

 

紅茶が7にハーブティーが3のブレンド。

祭はかすかに感じる程度の軽めのブレンドを差し出す。

そして自分の分を淹れポットを取り込むと椅子に腰かけた。

 

「それでお話とは?」

 

「そうね、いくつかあるのだけど・・・

どうしてそこまで執事の仕事がこなせるのかしら?

いくら経験が豊富でも実際に働いたことがないとあそこまでは動けないのではなくて?」

 

「この服を用意していただいたときに、

執事コミュニティ”セバスチャン”というところを紹介していただいたんです。

そこで”執事検定”というゲームをしまして」

 

「何そのゲーム?」

 

「執事の技能を試すというモノです。

そこであらかた必要なことを覚えてきたまでですよ」

 

「なるほどね。

じゃあウチの二人も送り込もうかしら?」

 

「止めておいた方がいいかもしれませんね。

異常なスパルタでしたし、何より完璧な執事というのはあの二人には似合わないでしょう?」

 

「それもそうね。

ねえ祭君、私達今のままじゃだめだと思うの」

 

「僕に愛想が尽きましたか?」

 

「茶化さないで!」

 

「すみません。

これからどう強くなっていくか・・・

ということですね」

 

「ええ、十六夜君や黒ウサギはそもそもの土台が違うから参考にならないし、

春日部さんや頼華君のように自身を強化するギフトがあるわけじゃない」

 

飛鳥は自分自身の地力の弱さにコンプレックスを感じている。

言ってしまえばない物ねだりだが、逆に言えばそれは飛鳥の向上心でもあった。

 

ここで祭はすぐに答えを出さず黙り込んだ。

幾つかの回答はある。

しかしそれは彼女の望むものではないだろう。

そこで別の切り口から話し出す。

 

「僕と飛鳥さんの持つギフトは個人、単体で力を発揮するものではありません」

 

「もちろんわかっているわ」

 

飛鳥が望むのは飛鳥自身が強くなること。

それも長期的な研鑚を積む時間はないという。

 

「どれだけなら待てますか?」

 

祭は静かにリミットを尋ねた。

 

「・・・・・・・・・」

 

飛鳥も本当ならば今すぐと答えたい。

だがそれが不可能であることも理解はしている。

 

祭もまた同じ課題に直面していた。

頼華も耀も祭に強くなる方法を相談に来ている。

今の祭が持つ強みはアイディア。

だが以前黒ウサギと戦うことになり、それだけではどうにもならないことを痛感している。

 

どれだけ思考を発展させても頭打ちになってしまう。

いくら祭がアイディアを出すことに長けていると言ったところで、

それは思考方法が他者と違うというだけでアイディアの元となる情報がなければどうにもならない。

 

それぞれの持つギフトについてはまだ不明な点もあるにはあるが、

今ある情報での考察はもう嫌というほどした。

”火龍誕生祭”で新たにギフトを得たのは飛鳥だけで、

”ディーン””踊る騎士”共に物理戦闘に強みを持つ恩恵でアイディアによるトリックプレーにはあまり適さない。

 

残るは飛鳥が元より所有していた”威光”だけなのだが、

この恩恵はサポート向きで強くなるには必要だが即物的なものでない。

 

箱庭にやってきて二か月程で魔王と戦うことになった。

偶然で済ませることもできるが、

”打倒魔王”を掲げ活動していくことで運命のめぐりが変化し影響したのかもしれない。

明日にでも新たな魔王と戦わなければならないかもしれない。

 

解決策の一つは新しいギフトを得ること。

もう一つは既存のギフトの新たな可能性を発掘する事。

 

「あきらめましょうか」

 

「へっ!?」

 

たっぷり三分もの沈黙の後発せられた言葉に、

耳を疑い目を丸くする飛鳥。

 

「どれだけ考えても時間はかかります。

早急に、という点は諦めるしかありません。

複数の奇跡が重なるほどの幸運がなければどうにもなりません」

 

「ああ、そういうこと。

でも何かしらの方法があるんじゃないかしら」

 

「急がば回れですよ。

飛鳥さんの、特に”威光”に関しては何らかのきっかけで新たな可能性に出会えるかもしれませんが、

今は”ディーン”という大戦力の増加を喜んでおきましょう」

 

「そうなのだけれど・・・・・・

どうして祭君は、待つことができるの?」

 

「・・・・・・イカレているから、ですね。

推定50年先の老衰を待っていた人間ですから」

 

「またそういったことを、

いい加減自分を悪くいうのは止めなさい」

 

「悪く言っているわけではありませんよ。

このズレこそが僕らしさだと思っています。

加えてとても気に入っているんですよ?

それに僕の場合、”情報収納”は強者の力を借りることで効果を発揮します。

出会いがなければ大した力はありません」

 

「随分と『他力本願』なのね」

 

「いいじゃないですか『他力本願』。

『敵の力(・)』を利用して、『仲間の協力(・・)』を得てこそ、

僕は本当の『全力(・・)』だと考えています」

 

なんの裏もない祭の本心だということが分かる。

この言葉に乗せられた信頼を感じ取り、飛鳥はドキリと胸が高鳴る。

 

「適材適所、弱点の克服も大事ですが長所を生かしましょう。

それに飛鳥さんも僕の助言という協力を求めているじゃありませんか」

 

悪戯を成功させたように笑顔を見せる祭に、飛鳥は再びドキリとさせられ、

顔を赤らめて抗議する。

 

「それとコレは別の話でしょう!

私が言いたいのは一人で戦わなければいけない時の話!」

 

「なら僕はそうならないように知恵を絞りますよ」

 

「どうしてそうなるのよ!」

 

ここで初めて祭が視線を逸らした。

 

「何か言えない理由でもあるのかしら?」

 

「いえ、ただ僕の我が儘というか・・・

貴女を、飛鳥さんをまもりたいから」

 

18歳の男の子としての表情がそこにあった。

箱庭に来て初めての、いやむしろ祭の人生で初めての表情かもしれない。

この言葉と表情だけで満たされてしまう自分は、なんて安い女なのだろうと自嘲するも、

それも悪くないと飛鳥はこの感情を享受した。

 

「ただ守られている気はなくてよ」

 

「わかっていますよ。

今度新しい恩恵を探して遠出でもしませんか」

 

「しっかりとエスコートしてね」

 

「もちろんでございます飛鳥お嬢様!

私目にお任せください」

 

「期待しているわ!」

 

 

*

 

 

「おはようみんな!」

 

「おは~」

 

「おはよう祭」

 

「やっぱり昨日で便利屋は終わりか、

少し残念だな」

 

「十六夜がそこまで言うとは、思ったより好評だったわけか」

 

「ええ、とてもよくお似合いでお仕事も素晴らしいものでございました!」

 

「私で最後だったみたいね」

 

「おはようございます飛鳥さん」

 

「ええ、おはよう」

 

飛鳥が席に着くとすぐにレティシアが年長組の子ども達と共に入ってくる。

 

「今日の朝食には新しい料理に挑戦してみた。

参考にしたいので感想を教えてほしい」

 

「分かりました。それではいただきましょう」

 

「「「「「「「いただきます」」」」」」」

 

レティシアの言っていた新料理はサッパリとした煮つけで非常に好評であった。

 

「ところで祭、なんで昨日は執事をやったの?

あのくらいの口約束ならうやむやにできたんじゃない」

 

「オレも気になってたんだよね~」

 

どうやら皆もこのことは気になっていたようで、

食事の手が止まり耳を傾けている。

 

「一つの基準になるじゃないですか」

 

「基準ですか?」

 

「はい、次に罰ゲームを受ける人の基準に」

 

「「「「「「「!!」」」」」」」

 

「まさか僕一人にのみ罰ゲームがあるなんてことはないですよね」

 

「すべては俺等の逃げ道を塞ぐためってか」

 

「いやいや、ほんのお遊びでしょ~?

本気だったら酷くない?」

 

「酷いだなんて心外だけど、

もしかしてみんな忘れてるのかな?」

 

「そうね、すっかり忘れていたわ。

むしろその笑顔で忘れさせられていたと言った方がいいかしら」

 

「さあどうでしょう」

 

「えっと・・・?」

 

「僕は本来性格が悪いんだ」

 

「これからノーミスで過ごすとか無理ゲーだって~」

 

「大丈夫、ミスじゃなくても罰ゲームになるから」

 

「これを期に皆さんの問題行動が減少すればよいのですが・・・」

 

「何言ってんだ黒ウサギ」

 

「え?」

 

「「「「え?」」」」

 

この日、黒ウサギは着せ替えフルコースの罰を受けた。

ギリギリ健全と(白夜叉が)言い張る卑猥な衣装も含めて。

 

 




とりあえず次からやっと本編に戻れる。

といっても最初にオリジナル絡めますがね。
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