”他力本願な不死”と”自由気ままな指揮者”も来るそうですよ? 作:バリアリーフ
やっと一話進んだ
プライベートが忙しくなるとか・・・・・・
”アンダーウッドの大瀑布”。
見の前に広がるその景色は圧巻の一言。
「世界樹~~!!」
「いえいえ。確かに大きさではそう思えるのも分かりますが、
あれは水樹ですよ頼華さん。
”ノーネーム”の水樹も元々アンダーウッドで生まれた苗だったそうです!」
興奮して声をあげた頼華とそれを訂正する黒ウサギ。
「でも本当に凄い!河川をまたぐほど大きな樹なんて初めて!!」
「そうね!あの根を利用してる都市部もとても興味をそそられるわ!」
問題児三人とも”アンダーウッドの大瀑布”の景観に大満足大興奮といった様子。
そのはしゃぐ姿は年相応の少年少女。
「あれなんだろ?」
「鳥か~!?飛行機か~!?」
「いや、あそこに飛んでいるのは・・・・・・」
上空を見上げた一同、黒ウサギは言葉を濁して答えず聞き覚えのある声がした。
『友よ、久しぶりだな。わが故郷へようこそ!』
「白夜叉んとこのグリフォン?久しぶり~」
「頼華なん「勘!」で、そう。
久しぶり、故郷だったんだ!」
『ああ、”サウザンドアイズ”出展するからな。
友の友と”箱庭の貴族も久しぶりだ』
「YES!お久しぶりなのです!」
「久しぶり、でいいのよね?」
「恐らく・・・」
「ジンとヴェーザーは初対面でしょ~」
『”ジン=ラッセル”の名は私も聞き及んでいる』
「こっちから飛鳥、ジン、頼華、あと執事見習いのヴェーザー」
「俺はまだ見習いなのかよ」
「レティシアの許可がないとね~」
『申し遅れた。私は騎手からグリーと呼ばれている。
友たちもそう呼んでくれ!」
「わかった。よろしくねグリー」
「ええっとグリーさん?あそこを飛んでいる鳥?なのだけれど」
『む?ペリュドンの奴らか。
収穫祭中は近づくなと警告しておいたのに、
それほどまでに人を殺したいかっ』
「どういうこと?食人種なの?」
「いえ殺人種といった方がいいでしょう。
元はアトランティス大陸から来たとされる外来種で、
先天的に自分と異なった影を持つという呪いを掛けられています。
その呪いを解く方法が”人を殺すこと”なんです」
「影くらい気にしなきゃいいのに~」
『呪いを解くことでペリュドンは自由を得るのだ。
だからといって認めるわけではないがな、再三の警告を無視したのだ。
今夜は耀たちにペリュドンの串焼きを振る舞うことになるな』
黒ウサギが同時通訳することで全員がグリーの言葉を理解する。
「じゃあもし私があの幻獣からギフトを貰ってたら」
「止めておいた方がいいでしょう。
そのまま襲ってくるかもしれませんし、最悪呪いを受ける可能性もあります」
釘を刺され少しうつむく耀。
『友たちよ、街までは距離がある。
よければ私の背にのせ送ってゆこう!』
「本当でございますか!!」
グリーの提案を聞き楽しそうにはしゃぐ黒ウサギ達。
「ありがとう。私は自分で飛んでみようと思ってる」
『そうか。知っているだろうが私は速いぞ?』
「その勝負オレも乗ったー!」
「いいのか?グリフォンの速度についていくのは並みじゃないぞ?」
自身も空を飛ぶことができるヴェーザーだが、
大人しくジンたちをグリーの背にのせ自分も乗り込んでいる。
自分の得手不得手を理解しているが故だろう。
「オレだって空を駆けられるんだし、せっかくだからね~」
こうしてグリーと耀、頼華は空をアンダーウッドの街をめざし駆け出した。
グリーは自分のすぐ隣を並走飛行する耀へ賛辞を贈る。
「全力ではないものの僅か数ヶ月で私についてくるとは驚いたぞ!」
「グリーから貰ったギフトだけじゃないから、
他にも黒ウサギから”風天のサンスクリット”も貰ったし」
耀に言われて、フフンと嬉しそうに胸を張る黒ウサギ。
その黒ウサギに抱かれる三毛猫は風圧によって顔の皮が波うち悲惨で笑えない顔に。
その後ろのジンは既に吹き飛び命綱はあるもヴェーザーにローブを掴まれ何とか、
空中引き回しを逃れており、反対の手で手綱にしがみつく飛鳥を支え、
腕、肩、そして口にくわえた荷物が暴れ、目に見えてストレスがたまって行くものの、
口がふさがれているので文句も言えない。
『おjゅぉおおおぉぉ!!!速どおとすぃてて旦那につうたぇてええええぇぇ!!」
黒ウサギを除いた総意。
「グリー背中のみんなが大変!!」
『ふむ。初めて乗る者達には酷な速度であったか」
緩やかに減速し、一度停止する。
余裕を取り戻した飛鳥は息を整えると眼下を見下ろし、
「あらためて観てもすばらしい眺めね、
彫られた崖を、いえ、樹の根が進むのに合わせて崖が掘られているのかしら?」
「ええ、それに加えて水樹としての恩恵によって水害から守られ成長した都市でもあります」
ヴェーザーに鞍に戻してもらったジンが答える。
『だが十年前に、魔王との戦争に巻き込まれしまった。
多くのコミュニティの協力を得てようやくこの景観を取り戻したのだ」
感慨深げに”アンダーウッド”を見やるグリーは更に言葉を繋ぐ。
『今回の収穫祭は、”アンダーウッド”の再興を世に知らしめる意味でも開催されている。
だからこそいかなる失敗も許されない。友たちも収穫祭を盛り上げてほしい!』
「もちろんだよ!私たちに任せて!!」
黒ウサギの通訳を聞き飛鳥もジンも頷く。
「ところであのバカが追い付いて来ないがいいのか」
精神を落ち着かせたヴェーザーの言葉にみんなが思い出す。
ちょうど狙っていたかのようにそのバカの声だけが聞こえた。
「意地張ってごべーーん!!
アレ取り消すわけにいガねえかなぁーー!!
駄目かなー!!!頼むからよー!!!
オレを背中に乗せてくれェ!!!!」
見ればちょっとマジな感じで泣きながら追いかけてくる頼華の姿がそこにあった。
自分の移動速度に合わせて足場を作り、尚且つ空気抵抗を抑え、
グリーたちの速度に合わせるために加速して、
足場の計算がずれ、より酷いものになってゆく。
グリフォンは、耀をして『空を踏みしめて走る』が、やはり飛んでいるのだ。
本当に空を駆けて共に行こうとした頼華は明らかに間違えていたのだ。
「だから言ったのによ」
*
グリーに送ってもらい”アンダーウッド”に到着。
ここでグリーと別れ、グリーはペリュドンを追い払いに向かって行った。
「いや~~楽しかった~!」
背に乗せてもらってからは終始上機嫌だった頼華は、
テンションが上がったまま一番近くの出店を物色している。
「「ねえおじさん、これって何?」~?」
「「ん?」」
頼華の声と重なる声、その声の主を見れば見知ったゴスロリツインテール。
”ウィル・オ・ウィスプ”のアーシャだった。
「なんだよ!お前らも収穫祭に来てたのかよ!」
「アーシャ、そのような言葉遣いは教えていませんよ」
「おっす!ジャックも久しぶり~」
ジャックも合流しにぎやかさがいっそう増す。
「ところで嬢ちゃん達、買うの?買わないの?」
熊の獣人だろう店のオッチャンに凄まれ、アーシャと頼華は勢いで購入してしまう。
「まいど。ソイツは水樹の若葉と削り出した幹を元にした調湿効果のある置物でな。
ちょっとした広間くらいならそれ一つで効果は十分だ。
”アンダーウッド”じゃ分からねえだろうが嬢ちゃんたちが本拠に戻ったら試してくれ!
きっと気に入ると思うぜ!」
代金を受け取ったオッチャンは気さくな雰囲気で商品の説明をしてくれた。
「ねえオッチャン、代金一緒ならこっちの花束型のに変えていい~?」
「ん?彼女にプレゼントか?いいぞ!」
「サンキュ~!」
「じゃあな~”六本傷”をよろしく!」
オッチャンの出店を後にして、招待客として用意されている宿舎へ向かう。
「じゃあアーシャ達も招待されてるんだ」
「まさか同じ宿舎だとはなあ!せっかくだし案内してやるよ!」
「早く荷物を降ろしたかったんだよね~」
「コラ待て。そういうことは自分で持ってから言いやがれ」
「ヤホホホ。随分馴染んだものですねえ」
「ええ、今では”ノーネーム”の執事一号として立派に働いてるわ」
「現実にそうだから何も言わねえが、その嬉しそうな眼を止めろ」
「あれれ?私そんな眼をしてましたか?これはうっかりしてました」
「”ノーネーム”預かりだけど上下は決めてないからね?」
「分かってる。でも苦労人オーラが出始めてる」
「何だよそれ!なんかおっかねえ!」
「あら、この中じゃ貴女が次席よ」
「ちょっとまったーーーああぁぁ!!」
「初期症状の叫びツッコミが出ておりますな~」
ワイワイガヤガヤと注目を集め進む一同、
たった八人ながら既に祭りの賑わいがそこにある。
「ところでジャックさん、フェルナさんは元気にしていらっしゃいますか?」
「ええ、”トリックスター”の時の記憶は失っていますが、
毎日元気に本拠を走り回っております」
「今日も連れてけって泣きわめかれてな。
なだめるのにすんげぇ疲れた」
「元気だったらオールオッケー!
子守頑張れ!アーシャならできる!」
「そういうのは抱きしめてやりながら、ゆっくり話せば理解してくれんぞ」
「「「え!?」」」
「なんだよ、俺がどれだけチビどもの相手してるか知ってんだろ」
「知ってても驚くって~」
(どうしよう、分かってたけどなんかショック)
(私なんてまだギクシャクしちゃうこともあるのに)
(よく知らねえけどよ、保育スキル高すぎだろ)
三人の嫉妬と羨望の眼差しを受けるが、ヴェーザーはよく分かっていないようで、
見当違いなことを考えている顔だった。
「マジか~。
「そうこうしているうちに宿舎に着いたようですよ皆様!」
一度それぞれが荷物を部屋に置くために分かれ、
再度合流まで少しの休憩となった。
*
休憩をはさみクールダウンした訳もなく、
やはり一同は騒がしい。
「あそこで売ってる”白牛”の焼きたてチーズ”って」
「ダメですよ。食べ歩きは”主催者”への挨拶が「美味しいね」もう買い終わってしかも食べてる!?」
「甘い!この”ルビーフルーツのかち割り”よりも甘い!!」
「どこで買ったの!」
「向こうの”六本傷”の赤いテント~」
「これもなかなか」
「何で張り合ってんだよ!」
「「市場調査!」」
「なら私も協力するわ」
「え?」
「え?」
耀の手にある袋に手を伸ばした飛鳥だが、
この上なく自然に耀の口へ運ばれ、頼華も自分の分を食べつくす。
「そう言う態度ならこっちにも考えがあるわ!
右から一品ずつちょうだい!」
「待て待て待て待て待て!早まるな食いきれねえって!!!」
「がんばるね~アーシャも」
焚き付けた一人である頼華は他人事のように、
いつの間にか手に入れた風船ヨーヨーをバヨンバヨンしている。
反対の手には新しく買った鶏肉の串焼きがあった。
耀は耀で南特有の野菜のサンドイッチとリンゴ飴を齧っている。
「そこのエレベータに乗れば、”主催者”の待つ本陣がありますから、
本当に一度買い食いは止めてください!」
最年少の苦労人ジンによって、やっと落ち着きを取り戻す。
(((後から来る十六夜(祭君)(レティシア)の為に美味しい物もっと見つけておきたかったんだけど))な~)
滑車式のエレベーターは八人全員で乗り込んでも広々としており、
揺れもなく快適であった。
「そういえば”六本傷”も主催なわけ~?」
「はい。”一本角”、”二翼”、”三本の尾”、”四本足”、”五爪”、そして”六本傷”。
この六つのコミュニティで”龍角を持つ鷲獅子”連盟。
今回の主催コミュニティでございます」
「連盟って?」
「まあ基本は魔王対策だ。
連盟のコミュニティが魔王に襲われたら、
加盟コミュニティはそのゲームに参戦が可能になる」
「まあ条件もありますし、参戦するかは任意ですので気休め程度ですがね」
本陣前の受付に付きジンたちが受付をしている。
その受付をしている少女がチラチラと耀の方を伺っている。
「?」
「”火竜誕生祭”の時に助けた子、憶えてない~?」
「えっと・・・」
「まあ耀は次から次へ飛び回ってたから無理ねえだろ」
「あの!耀様、アーシャ様、頼華様!
先日は助けていただきありがとうございました!!
お陰でコミュニティの一人も欠けることなく帰ってくることができました!!」
「オレ達も?」
「はい!弟たちも助けていただいたと聞きました!」
「そうだったの、じゃああなた達が招待状を?」
「はい。
それから”一本角”の頭首で”龍角を持つ鷲獅子”の議長でもあるサラ=ドルトレイク様からの招待状も」
「サラ=ドルトレイクって確か!」
「サンドラたちのお姉さん?」
「はい。北側を離れられたのは聞いていましたが、
まさか”アンダーウッド”にいらっしゃったなんて驚きでございます!」
「もしや途中で見かけた水晶の水路に使われていたのは・・・」
「下手な勘繰りはよしてくれるか?ジン=ラッセル殿」
一同の知らない声が背後から聞こえた。
いや二人は知った声であった。
「「サラ様!!」」