”他力本願な不死”と”自由気ままな指揮者”も来るそうですよ?   作:バリアリーフ

45 / 63
休日って素晴らしいですね!!
一話進められましたよ!?


撃退

「祭君がいればこんな作業すぐに終わるのでしょうけど」

 

飛鳥の呟きどおりアンダーウッドの瓦礫の撤去作業が進められている。

アーシャ、ヴェーザーの活躍により被害がある程度抑えられてはいるモノの、

巨人族に荒らされた地域は悲惨であった。

 

「モノ造りに長けた種が少ないみたいね南側は。

北側なら可能性もあったかもしれないけれど」

 

飛鳥と耀は手当たり次第にヘッドホンを直せるものがいないかを聞いて回った。

撤去や復旧の為に走り回りながらも、

二人の話に耳を傾けてくれる南の住人達は優しかった。

チカラにはなりたいが生憎そういった技術やギフトは持ち合わせていないと。

返ってくる答えはこればかりだった。

 

「やっぱり直せないのかなぁ」

 

「難しいかもしれないわね。

十六夜君の機嫌を取る方法も考えておきましょ」

 

「うん・・・・・・でも機嫌を取る方法って?」

 

「そうね、第一候補としては・・・・・・黒ウサギとラビットイーターをセットで贈」

「らせるわけないでしょうこのお馬鹿様!!」

 

スパァーンッ!!となんだか久しぶりな気がするハリセン。

 

「いいかもしれないけど、

・・・・・・やっぱりダメ」

 

耀がこの提案を却下したことに黒ウサギは驚きを露わにする。

 

「まさか!まさか耀さんが黒ウサギ弄りを止める日がこようとは!!」

 

(春日部さんの気持ちを考えれば当たり前ね少し反省しなきゃ)

 

(すごく楽しそうだけど十六夜が黒ウサギを弄るのってすごくモヤモヤする。

・・・・・・一緒にだったら楽しめるかな?)

 

感涙の黒ウサギをよそに別の計画が進みそうであることは置いといて。

 

「どうして話してくださらなかったんですか」

 

ジンたちもサラとの話を終えて戻ってきている。

 

「そうでございます!まさか戦果を偽るほど悩んでいらっしゃったなんて!」

 

ハッと二人は視線を合わせ、続いてジャックを見た。

 

「ヤホホ・・・ここに来るまでにお話しさせていただいたのですが。

祭殿に手紙でお伝えしていたので、てっきりみなさんご存知だと」

 

「祭君も知ってたの!?」

 

「てか何時の間に手紙とかやり取りしてたのさ~」

 

「”火竜誕生祭”が終わって少しした頃でしょうか。

偶然とある市場でお会いして、それ以来”不死トモ”として仲良くさせていただいてますよ」

 

「こいつは、もう一人戦果を誤魔化してやがるな」

 

「ああ、うん。そだね~」

 

「ジャックさんもアーシャさんも、敗北したゲームをとても参考になったと

誇らしげに語ってくださいました。

耀さんも私たちをもっと信じてくださいまし」

 

「違うのよ黒ウサギ、コレは私が提案したことで」

 

「いいの飛鳥。私の弱さが招いたことだから。

黒ウサギもジンも、ごめんなさい」

 

「いえ、僕たちも同志の事をしっかり見れていなかった責任がありますから。

頭を上げてください、それと・・・」

 

ジンが飛鳥の持つヘッドホンの残骸を見る。

 

「ヘッドホンの件は僕から提案があります」

 

「「へ?」」

 

予想外のところから解決策が出てきたことで素っ頓狂な声を二人は出してしまう。

しかし解決策を聞く暇はなく、緊急を知らせる鐘が鳴り響いた。

 

 

*

 

 

戦闘を担当する”一本角”と”五爪”が壊滅状態に陥っている。

鐘の音を聞き樹の根を出た一同が戦場を見えるところに出るまで時間をかけたわけではない。

 

「どういうこと!?襲撃の間隔が早すぎるわ!!」

 

「さっきよりも数が多いな。こっちが本命か?」

 

『お前たち、すぐに逃げろ!

そして白夜叉様に救援の知らせを届けてくれ!!」

 

「グリー!!」

 

やってきたグリーの姿は疲労困憊。

翼は荒れ、後ろ足にも痛々しい傷を負っている。

急いで黒ウサギが止血の応急処置にかかる。

 

『すまない。彼奴等の主力に化け物がいる。

まともに戦うことができないせいでこの体たらくだ」

 

傷つきながらも戦況を伝えようとしてくれるグリー。

琴線をはじく音が響き、意識が揺らぎそうになった。

 

「これって!!」

 

『この音だ、これのせいで見張りが意識を失い、襲撃を許した。

仮面の騎士も攻めあぐねている!』

 

「仮面の騎士!?ジャックさん!」

 

「ええ!フェイス・レスが戦っているのですね。

行きますよアーシャ!」

 

「ああ!クイーンのお気に入りに何かあったらヤベェ!!」

 

その時響く竪琴の音がかき消される。

 

「戦場(音源)と離れてりゃこんなもんか」

 

ヴェーザーがギフトカードより魔笛を取り出している。

 

「ラッテン程じゃねえが俺も魔笛を操る悪魔だからな。

気休め程度なら打ち消してやるよ」

 

「ヴェーザー、お願いがあります」

 

「せいぜい盛り上げといてやるよ。

ちんたらしてっとぶっとばすぜ?行くぞお前ら」

 

「お前らとか略すな!あたしにはアーシャって名前があるんだ!!」

 

「はいはいアーシャな」

 

「オレも先行ってるよ~」

 

第一陣の出動を見送りジンが耀の前に歩み出る。

 

「この状況を逆転する策があります。

そのカギになるのは耀さん貴女です、行けますか」

 

「私にできることなら何でもするよ。教えて!」

 

 

*

 

 

高度おおよそ1000メートル。

耀はジンの作戦に従い待機していた。

 

『”サウザンドアイズ”から受け取ったギフトがあれば戦場を一時的に混乱させることができます。

その瞬間に耀さんには上空から竪琴の術者を見つけ急襲。

一撃離脱の要領で竪琴の奪取をお願いします』

 

勝敗を決める一手を任され耀は少なからず緊張していた。

単独での大役は初めてであるため不安を感じている。

 

「十六夜なら真正面から倒しちゃうんだろうな」

 

十六夜との実力の差。

分かってはいるがそのままでいる気はない。

彼の隣に立つためにもこの作戦は成功させたかった。

 

そしてふと、うまくいった後に彼のように笑えるのかと考え、

 

「やははははきゃあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!」

 

笑い声が悲鳴にシフトした。

全身を沸騰したかのように真っ赤にさせ器用に上空をのた打ち回っている。

とにかく恥ずかしかった。

 

他人がいなくてよかった。

考えていたことを知られでもしたら恥ずかしさで自殺しかねない。

十六夜が隣にいるかのように感じ、

十六夜と一緒にいることを想像し、

十六夜のの笑い声を想像し、

十六夜の笑顔が自分「きゃああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

半永久の無限ループに陥っている。

作戦開始までに落ち着けるのだろうか?

 

 

*

 

 

戦場を駆けるグリーは身の軽さを感じている。

 

『飛鳥のギフトは凄いな!

私の霊格が上がったかのようにさえ感じる!」

 

飛鳥、ジン、黒ウサギを背に乗せ巨人たちの間を飛び回る。

 

「凄いのねグリーは、傷ついてもこれ程に敵陣深くまで」

 

(確かにグリーさんのおかげですが、飛鳥さんのギフトが無ければこれ程は、

となると飛鳥さんのギフトは・・・)

 

「ちょっと遅いんじゃねえか」

 

頼華とヴェーザーの元までたどり着き、ヴェーザーが不満を愚痴る。

少し離れた場所では次々と倒れていく巨人たちとジャックたちの炎が見える。

 

「ありがとうございますグリーさん。

此処まで切り込めれば大丈夫なはず」

 

「もう俺も限界だ早くしてくれやリーダーさんよお!」

 

「ヴェーザーったらせっかちさんなんだから~」

 

「うるせえ!」

 

二人で戦線を請け負っていたにしては異様にテンションが高い。

 

「私達はジン君に敵を近づけさせなければいいのよね?」

 

「YES!不逞な輩は私どもが排除します!

今こそジン坊ちゃんの受け継いだギフトの出番でございます!!」

 

黒ウサギの言葉に応じ、ジンは右手の嵌めた”グリムグリモワール・ハーメルン”の指輪を掲げた。

 

 

「隷属の契りに従い、再び顕現せよ。”黒死斑の御子(ブラック・パーチャー)”!!!」

 

 

漆黒の風が戦場に吹き荒れ、その発生源にある魔法陣に浮かぶ笛吹道化の旗印。

 

「待ちわびたぜ、マスター」

 

ヴェーザーは攻撃の手を止め主の再召喚を待つ。

戦場に広がった風が集束し人型を取り、そして、

 

「どこに逃げたの、白夜叉あああああああああああッぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「は?」

 

まるで無関係の駄神の名を叫んでいる。

あっけにとられるヴェーザー以下四名と一頭。

 

なおも吹き荒れる漆黒の風(八つ当たり)によって一〇〇もの巨人が倒れる。

 

「待ってジン君!ペストが新しいギフトなの!?」

 

「はい。”The PIED PIPER of HAMERUN”のクリア条件をすべて満たしたことで、

彼女を隷属させられることになりました。

ハーメルンの魔導書の影響下にないため以前の神霊クラスほどではありませんが、

彼女の黒死病を操る力はケルト系の巨人には最高の相性です!」

 

「出てきなさい白夜叉、よくもよくもよくも!!

よくも元魔王である私にあんな下劣でイヤラシイ服装の数々をっ!!」

 

「ウオオオオオオオォォォォォォ」

 

「邪魔!!」

 

怒りのまま力を振るうペストは巨人たちを圧倒し戦力差がひっくり返る。

吹き荒れる漆黒の風も敵対する巨人以外を傷つけることはなかった。

 

「白夜叉への復讐なら手伝うから少しは落ち着けよ。マスター」

 

かけられた声にペストの手が止まる。

 

「久しぶりだなマスター。元気そうじゃねえか」

 

「あなた・・・・なんで生きて・・・・・」

 

「どこかのおせっかいが一緒に死なせてくれなかったからな。

ラッテンもここにゃ居ねえが生きてるぜ」

 

「・・・・・・・・・・・ッ!!!

こんな雑魚さっさと倒すわよ!!

ヴェーザー!!」

 

「その言葉を待っていた!!」

 

主と従者。

その二人に、敵はなく瞬く間に殲滅させられてゆく巨人。

一つの違和感を挙げるなら二人の服装がメイド服と執事服であること。

 

「ツッコんじゃいけないわよね」

 

「止めとこっか~なんかいい雰囲気だしさ~」

 

完全に覆った戦況に琴線をはじく音が響く。

そして濃霧がやはり一帯を包み込んだ。

 

「出番です耀さん・・・・あとは頼みました」

 

 

*

 

 

耀が羞恥の底から這いあがってきたのは濃霧が発生するギリギリ少し前。

幸か不幸か知らないがもう緊張なんてない。

 

深呼吸して超音波によって竪琴の主を探す。

 

(五感を狂わせるこの音でも、この方法でなら居場所を割り出せる)

 

ラッテンとの戦闘で逆位相の音波で相殺する術を持っているが、

楽器そのものに神格が付与されたこの竪琴は完全に相殺しきるにはレベルがたりない。

しかし今回はただの一撃で決着がつくためその対策は必要というわけでない。

 

(・・・・・・・見つけた!)

 

竪琴目がけ急降下する耀。

念には念を入れ空気抵抗による落下音も最小限にし、

それによって通常飛行以上の速度を得る。

 

はるか上空よりの襲撃者に、竪琴の主はまるで反応もできぬままに竪琴を奪われる。

二次関数の放物線よりも鋭い軌道で耀は再び上空へ反転。

奏者を失ったことで竪琴の効力は消えうせ濃霧も一緒に晴れ渡った。

 

「ゃった・・・・・・やった!」

 

奪い取った竪琴を抱き、耀は喜びに震え勝利を噛みしめるのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。