”他力本願な不死”と”自由気ままな指揮者”も来るそうですよ? 作:バリアリーフ
ここから少しずつチート化、魔改造進めていこうと思います。
巨龍飛翔
「レティシアお疲れ様~」
「別にどうということはないよ、ライカ」
子供たちを宿舎まで引率し終えたレティシアは頼華に出迎えられた。
相変わらずレティシア大好きな彼は、早速抱きついている。
「結局、全員で収穫祭に参加することになったね~」
「十六夜も怒っていたよ。
始めからそうしろとな」
「まあ祭のやることだし気にしても仕方ないって」
二人が離れてベッドに腰掛けたのと同じくして、
二人を引き裂く琴線の音が響いた。
「・・えっ!?」
脱力感に襲われふらついたレティシア、それを支える間もなく琴線の音が続く。
《 目覚めよ、林檎の如き黄金の囁きよ 》
その詩が聞こえた時にはレティシアは倒れ、
頼華の意識も飛びかけ、指を折った痛みで無理やり繋ぎとめる。
「何で?音は『遮断』してるはずなのに・・・!?」
『神格を有した楽器にその程度の対策でどうこうできるものか!』
声の主、ローブの詩人が現れレティシアを脇に抱え上げた。
「おいコラ・・!!誰の許可貰ってそんなことしてんだよ」
多重に『通過加速』を展開して殴りかかる。
だが拳が届くよりも速く、琴線の音が鳴り響き意識が混濁する。
直線的な攻撃は難なくかわされ、天雷が宿舎の壁を穿ち、
レティシアが抱えられたままローブの詩人が飛翔した。
「・・・ライ、カ!」
今にも飛びそうな意識の中、頼華は追いかける。
『面倒だ。君にはここで退場戴こう』
頼華の手は届かない。
天雷に撃たれ、わずかな煙を上げ墜落してゆく。
「ライカ、・・ライカっ!!」
ただ落ちてゆく頼華に手を伸ばすことすらできず
悔しさと怒りに視界がゆがむ。
『じきに辛い思いも感じなくなる、ドラキュラの姫。
貴女には今一度魔王に
その言葉にレティシアは絶望した。
かつて魔王だった時の自分。
そしてそれが今、何を意味するのかを理解して。
*
*
宿舎のすぐ近くに落ちた天雷の轟音に飛鳥は跳び起きた。
「きゃっ!?何!!」
「随分と悠長に寝ていましたね」
突然覚醒した意識にフェイス・レスの声が届く。
揺らめく赤い光に照らされ彼女の仮面を見つける。
「何故貴女がここにいるの!?」
素早くギフトカードに手を伸ばしたとき、
ュンと風切り音が僅かにしたかと思えば後ろから絶叫が聞こえ、
巨大な指と槍の穂先が両脇を転がった。
驚き振り返れば、宿舎の壁は崩れ巨人たち、
そして燃える街と遠巻きに魔獣の姿も確認できた。
「また襲撃!?追い払ったばかりじゃない!」
「本当にそんな中でよく眠っていられましたね。
その図太い神経はむしろ称賛するべきでしょうか?」
「貴女そんなこと言ってる場合じゃ」
ちらりとフェイスの視線を受けたが彼女はそれ以上何も言わず壁の穴から飛び降りた。
飛鳥は悔しさでいっぱいになりながらも理解した。
自分が眠っているときになぜ彼女がいたのか。
この部屋の中で異常は先ほど転がってきた穂先と指だけ。
ただ守られていた。
弱いモノとして。
屈辱にいつまでも震えていられない。
自分で両頬を打って気合を入れた。
「どうせ不届きモノなのだから八つ当たりくらい許してもらいましょう!」
”踊る騎士”を装備して飛鳥も部屋から飛び降りた。
*
ジンとペスト、ラッテンとヴェーザーは改めて主催者に挨拶をするために集まっていた。
その向かう途中、緊急を告げる鐘が鳴り響いたのだ。
「マスター、俺はチビどものところへまずは向かう」
「ならラッテンは私と」
「ラッテンは魔笛を使ってください」
ジンがぺつとの言葉を断ち切った。
「魔笛で子供たちと、混乱している他の参加者たちも纏めて操って構いません。
ヴェーザーは避難の為に潰れた導線を確保、障害の排除を。
ペストは僕と共に巨人、魔獣を排除しつつ追加の侵入を防ぎに向かいます」
「ジン、あなた!」
「行動を開始してください!」
「分かったわ。二人とも任せるわよ」
「ええ、マスター♪」
「了解、マスター!」
二手に分かれ移動を開始した。
(あの連中のリーダーをしているだけあって、
それなりに成長せざるを得ない訳ね。
自分の同志を仮にも操らせるなんて決断をするなとはね)
ペストは契約を結んだマスター、ジンの評価を上方修正した。
「そんな足じゃ遅すぎるわ!」
自分の後ろで遅れるジンを漆黒の風で絡め取り、
自分の飛翔に合わせて運ぶ。
「ちょ、ペスト!
これは流石に怖いからっ!!」
「大丈夫よ、契約があるしワザと落としたりしないわよ」
「そっちじゃなくて!
分かっててもこの風は!!」
少し蒼くなってワタワタと宙をもがいている。
ペストはその姿を見て口角を上げた。
「ア~、コレカラチョット飛バスケド、
大事ナますたーハチャント守ラナイトイケナイワヨネェ」
「ペスト、何で台詞が棒読みなのかな・・・?」
ワザとらしく唇に指を添え笑顔で振りむくペスト。
嫌な予感に襲われたジンは、そのまま黒い風に全身を包み込まれ、
視界を全て奪われたまま連れて行かれる。
ジェットコースターのように
何時どんな軌道で飛び回るか分からないというのは相当怖い。
加えてペストの黒死病の風に包まれていれば、なおのこと。
当然のことながらペストは移動にまったく関係無い動きで振り回していた。
まさか襲撃にまったく関係ない絶叫があったなんて誰も思わなかっただろう。
*
「クソッ!
戦場を物色していた祭は開幕前に先制攻撃を仕掛けたモノの、
大きなダメージを与えるに至らない。
強敵、障害と認めた巨人族の一部が祭に向け進軍。
それを受け流すように躱しては武器を一つ、また一つと取り込み奪ってゆく。
(これで僕を狙い続けてくれればいいが・・・)
「巨人のわりにたいしたことないですね。
すみません。どうやら買いかぶり過ぎていました!」
言葉が通じるかは分からないがそれでも挑発はしておく。
速度は無いが少しずつ”アンダーウッド”と”境界門”から距離を取る。
そして戦場にも巨龍の鱗が降り注ぎ、数々の魔獣蛇蝎が生まれだした。
「新入りさんは見境なしですか」
自分たちは巨人、魔獣の双方を必ず撃退しなければならないが、
巨人は優先順位として”アンダーウッド”を狙い邪魔であれば魔獣を蹴散らす。
敵対勢力の差によって不利になることは目に見えている。
此方側の主軸として戦う”龍角を持つ鷲獅子”連盟も
既に多くが戦闘不能かそれに準ずるダメージを負っている。
そして黒い”契約書類”が舞い散り、その一枚を掴み流し読んだ。
(ゲームマスターにレティシア!?せめて二分)
変わらず巨人族や魔獣と戦いながらの移動。
ゲームに取り掛かるだけの余裕は祭にはなかった。
「このままじゃマズイ・・・・はは!
十六夜が暴れ出したか!なら戦況も一気に傾、き・・・」
祭が見たのは、打ち倒された巨人が振り回されて、
他の巨人をストライク、そして勢いのまま投げ飛ばされたというモノ。
「あのバカなんで態々”アンダーウッド”の方向に・・・・・・
ダーツじゃないんだから」
そう。
十六夜はあろうことか”アンダーウッド”目がけ投げ飛ばしたのだ。
そしてしっかりと突き刺さった。
それが祭には衝撃的だったようで、頭を抱えてツッコミまで入れている。
(急いでくれよ黒ウサギ、本体が大人しいうちに・・・)
*
「三毛猫急いで!黒ウサギや飛鳥のところへ」
『しかしお嬢!』
「大丈夫私はそんなに簡単にやられない。
それにあの子を見失うわけにいかないから」
巨龍の鱗より変化した触手の化け物に、木霊の少女が連れ去られた。
匂いによる追跡は可能でも距離を空けられるのはマズイ。
目の前で背を燃やして進む火蜥蜴も片づけなければならない。
「行って!!」
耀の言葉で三毛猫は駆け出す。
見送るよりも速く旋風で身を包み火蜥蜴に一撃を叩き込んだ。
被害を抑えるためにも水路に叩き落すつもりだったのだが、
スレスレのところで踏みとどまられた。
「このっ!」
首に追撃を入れ怯んだところにもう一発。
水路の水面を転がり火蜥蜴は対岸で倒れた。
それを確認したとほぼ同じく黒ウサギの声が”アンダーウッド”中に響き渡った。
『「“審判権限”の発動が受理されました!
ただいまから“SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING”は一時休戦し、審議決議を執り行います!
プレイヤー側、ホスト側は共に交戦を中止し、速やかに交渉テーブルの準備に移行してください!
繰り返し
『GYEEEEEEEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaayyeeeeeeEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaa!!!!!』
触手の怪物を追いかけながら、黒ウサギの声を聞いていると
突然巨龍が雄たけびをあげ、暴風という言葉では生ぬるいほどの風が吹き荒れ、
人も魔物も瓦礫も巨人もそのいっさいが巻き上げられた。
「なにこれ!?!空気の腕に振り回されてるみたい!
上手く飛べないっ!!」
シュトロムの放つ暴風の中を飛び回っていた耀にとって風の中を飛べないというのは驚きだった。
直観的に飛ぶことを止め幹に
耀は巻き上げられた魔物の中に先ほどの少女ごと空に上がって行く魔物を見た。
(・・・皆、ごめん。
私ほっとけない!)
吸着させていた手を放し、
暴風に身を任せ空へ。
巨龍の身に集められた魔獣たちは再び巨龍の中へと消えてゆく。
そのうち数体から、少女のように捕らわれ巻き上げられた人たちが巨龍の背に転がされ、
巨体に隠れていた空飛ぶ城に降ろされた。
「君たち大丈夫?」
「はい、怪我はしてないみたいです」
「嬢ちゃんは問題なさそうだな。
自分で飛んできたって感じだったな」
少女と傷耳の猫の獣人が答えた。
*
緊急でこしらえた治療所は怪我人であふれていた。
治療所内を”ノーネーム”の子供たちが包帯やタオル、お湯を持って走り回っている。
何かできることを自分たちにもさせてほしいと子供たちの方から願い出てきたのだ。
その姿に触発され、各コミュニティの子供達や戦力として戦えなかった者達が治療の為に動いている。
審議決議の受理から僅かに残った戦闘可能な巨人を倒した後十六夜たちは集まった。
「”
「祭君は戦場の奥で戦っていたのでしょう。
まだ”アンダーウッド”に着いてないというだけということも」
「いや、祭はこっちに来る前に”足”を用意したと言ってたからそれはない。
春日部みたいに空を飛べないにしても合流できてないのは何らかの事情があったと言える」
「レティシアが連れ去られたというのも・・・」
「ああ、でなきゃコイツが倒れてる訳がねえ」
十六夜と飛鳥は簡易ベッド、重症の頼華の隣にいる。
「頼華君の回復は厳しそうね」
「”ペルセウス”んときは意識があったからギフトで無理やり回復したんだろう」
十六夜は頼華のやけど跡を見ていぶかしむ。
雷に撃たれて生まれる電紋だけでなく炎に焼かれて生まれるやけども存在したからだ。
『その坊主を、助けてやってくれ』
黒ウサギに抱えられやってきた三毛猫が鳴いた。
その言葉を、事情を聞いた黒ウサギが話す。
「頼華さんはボロボロのまま三毛猫さんを助けるために魔獣と戦ったそうです」
三毛猫自身も傷だらけだが頼華の傷を心配し、
するりと黒ウサギの腕からベッドへ降りた。
「皆さん、耀さんの行方が分かりました。
魔獣と共に空へあげられた子供を追って耀さんも飛び去ったそうです」
ジンがペスト達を連れ報告を済ませた。
「そうか。
なら後は祭の行方だけだな」
「ねえ黒ウサギ、審議決議はどうなるの?」
「主催者側からの応答がありませんのであまり多くは決められませんが、
少なくとも一週間の休戦期間は得られるかと」
「休戦中の方針などを決める為、これから”龍角を持つ鷲獅子”連盟と会議があります」
「それであんた達の意見も聞きたいそうよ」
「分かった。行くのは俺とお嬢様、黒ウサギの三人か?」
「竪琴の件でラッテンにも来てもらおうと思ってます」
「私も?それは構わないけど」
ラッテンはペストに伺いを立てるように視線を送り、
「構わないわ。
私とヴェーザーはとりあえずここで待ってることにするわ」
「では頼華さんのことおねがいします!」
ジンを先頭に治療所を後にする。
「・・・・・・マスターも向こうでよかったんじゃねえのか?」
「頼まれたのもあるけど頼華を放っておく訳にもいかないでしょ。
このバカの事、あなたも嫌いじゃないんでしょう」
「そりゃあなぁ」
「それに見張りがヴェーザー一人だったら
「なに!?」
「・・・・・・狸寝入り、結構自信あったんだけど」
頼華の瞼が持ち上がる。
「あんたとあの吸血鬼がどんな関係なのかも聞いてる。
純粋な助言として言っておくわ。
このまま戦ったところで死ぬだけよ」
「傷なら治せるんだけど」
「そうじゃねえ。
血が上った今のお前じゃ俺にも勝てねえってことだ」
「そんなにひどい?」
「分かってない時点で相当ひどいことを自覚しなさい」
「それもそうだね。
今は皆に任せてちょっと寝ることにする」
「ああ、今は休んどけ」
「三毛猫も耀になんか言われて頑張ってたんでしょ。
一緒に寝て回復しよっか」
にゃあと鳴くがその言葉を訳せるものはここには居ない。
「くっはっっっ。
ごめん、全然わかんないや」
笑って二度三毛猫を撫でてやると、頼華は眠りについた。
三毛猫もすぐ隣で身を丸くして眠った。
「・・・・・・・・・。
ようやく落ち着けそうね」
ため息をついたペストはそばにあった椅子に腰を下ろした。
「随分と頼華のことを気にかけてるじゃねえかマスター」
「気にかけてる?
違うわよヴェーザー。私は
「??」
「”火竜誕生祭”の時からそうだった。
休戦期間中に私たちのところにやってきたのは百歩譲って偶然で片づけてもいい。
でも私たちと”魔王”と楽しく過ごすなんて今考えればおかしいじゃない」
「言われてみればそうだな」
「相手に関係なく心に入り込める。
”ノーネーム”の誰のどんなギフトより私はそれが恐ろしく思えるのよ」
「・・・・・・」
「味方でいるうちは頼もしいのだけれどね」
「ならさっさと使用人頭を助け出して、手綱握ってもらわなきゃいけねえな」
「そうね」