”他力本願な不死”と”自由気ままな指揮者”も来るそうですよ?   作:バリアリーフ

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調子に乗り過ぎて12000字を超えるという事態。
少し話を発展させるために頑張ってみました。


3つの作戦会議

「殿下ー!何処行ったのー?」

 

「殿下を見つけられた方はお近くのリンちゃんまでご一報くださーい!」

 

「八雲さん何ですかそれ?」

 

「いやあ殿下がうっかりツッコミに来てくれないかなあと」

 

「殿下がギャグキャラやる訳ないじゃないですか」

 

「コレは失敬」

 

リンと呼ばれた黒髪の少女と、

八雲と呼ばれた碧髪の青年が吸血鬼の古城を歩き回っている。

 

リンは黒いノースリーブワンピースという軽装に腰にいくつものナイフを下げたホルスター。

八雲はスタイリッシュに改造された着物に袴を纏い、不可思議な形状の手甲を左腕に付けている。

また八雲は短髪の髪に五十は下らない髪飾りを着けている。

 

「殿下もだけどアウラさんもグライアさんもちょっと見かけないねえ」

 

人探しの最中だというのに八雲という青年はのんきである。

 

「それはあなた達がここを離れてから。私はずっとここにいたわよ」

 

古城の玉座。

二人が戻ったそこでローブのフードをかぶった妙齢の女性、アウラが奥で腰かけている。

 

「ところでアウラさん、殿下知りません?」

 

「グライアと城下町の方を見に行かれたわ」

 

「どうも」

 

「じゃあ私たちでお留守番ですね」

 

「殿下たちが戻ってくるまでのんびりしてますか」

 

床に大の字で寝転がる八雲。

それを二人は気にしない。

 

「ねえアウラさん、この娘ホントに魔王なんですよね。

こんなに可愛らしいのに信じられないなー」

 

興味本位でほっぺをつつこうとリンは指を伸ばした。

 

「止めとけリン。それは疑似餌だ。

うかつに触れると襲われるぞ」

 

「殿下!おじ様も!!」

 

『そう喚かなくとも聞こえている』

 

「殿下もそういうことなら早く言っといて欲しかったな。

うっかり触っちゃってた(・・・・・・・)よ」

 

八雲が起き上がりながら言った言葉にアウラとグライアは驚いた。

リンと殿下も表には出さなかったが内心冷や汗ものだった。

 

(殿下とリンが言っていたギフトの効果、ということね)

 

(まるで認知できていない。事実なら申し分ない切り札となろう)

 

(偶然でも八雲を引き込めたのは幸運だったな)

 

(殿下以上に八雲さんの事は秘密にしないとなー)

 

 

***

 

これは二週間前。

八雲はとある外門の街で行き倒れていた。

浮浪者や乞食が多いそこでは大して珍しいものではなかった。

 

「ねえ殿下、この人大丈夫かな?」

 

「ほっとけリン、じきに追いはぎか何かに身ぐるみはがされるだけ・・・」

(なぜコイツは今だ無事なんだ?)

 

殿下の疑問は瞬く間に膨らむ。

身なりの整ったこの男、空腹ならともかく行き倒れるような雑魚ではなさそうだ。

旗印こそ見当たらないものの手甲と髪飾りは共にギフトであることは確実。

 

着物の袖にあったギフトカードを見つけたリンが叫ぶ。

 

「殿下!これ!!」

 

リンの慌てように驚きつつもギフトカードを確認した殿下はフリーズした。

 

「殿下!殿下!この人助けよう!

何とか引き込んで味方にしなきゃ!!」

 

「ああ。リン、グライアを今すぐ連れて来い。

俺はここでコイツを見張っておく」

 

「りょうかい!」

 

リンの姿が消え、残った殿下が倒れている八雲を見下ろす。

 

外界(そと)にギフトカードはない。

分かったのは『八雲(やくも)』という名前と、

ギフトカードを手にできるだけの実力者か組織に属していたということ)

 

 

「ん、んん~~。ふぁぁあ~~あ」

 

「目が覚めたか?」

 

小さな部屋、窓のない岩肌の小部屋。

そこにあるベッドの上で八雲は目覚めた。

 

「ん?誰?」

 

「悪いが本名を教えるわけにいかないんだ。

とりあえず殿下と呼んでくれ」

 

「分かった殿下ね。

自分は、・・・・・・・・・自分の事、殿下は何か知ってる?」

 

「記憶喪失か」

 

「どうやらそうっぽいね」

 

「少し待っていろ」

 

「水でいいから飲み物もってきてもらえると尚助かるよ!」

 

「俺に小間使いをさせる奴は初めてだ」

 

「祝、初めての小間使いだな」

 

殿下が部屋を出て扉を閉める。

そのすぐ外にはグライアが控えていた。

 

「おかしな真似をする気は無さそうだ」

 

『記憶喪失というのも嘘ではなさそうです』

 

グライアの優れた五感により心音や体温などで判断したこと。

それを殿下は疑わなかった。

 

「今全てを話すことはできないがこちら側に引き込みたい。

全員でまずはアイツを落とす」

 

『分かりました』

 

タイミングよくリンとアウラが、軽食をのせたお盆を持ってやってきた。

 

「ちょうどいい。アイツが目を覚ましたから全員で話をする」

 

『記憶喪失のようだ。

嘘の反応はなかったが警戒はしておいてくれ』

 

「じゃあまずは自己紹介からですね」

 

リンは勢いよく小部屋の扉を開けた。

 

「八雲さん起きたんですね!

おはようございまーす!」

 

「うん、おはよう。

自分の事、八雲って呼んだね。

それが自分の名前ってことでいいのかな?」

 

「ああ、よろしくな」

 

「こちらこそ。

そっちの三人の事聞く前にそのごはん貰える?」

 

「いいですよ、どうぞ食べてください!」

 

「いったっだきまーす!!」

 

ひったくるようにパンとサラダのボウルを手に取りムシャムシャと食べていく。

あっという間に完食し、コップの水を飲みほした」

 

「ごちそーさまでした」

 

八雲の食いっぷりにややあっけにとられていたものの、

代表してアウラが自己紹介を始めた。

 

「私はアウラ、そっちにいるのが順にグライア、リンよ。

三人とも殿下の部下にあたるわ」

 

因みにグライアは部屋に入るために人化している。

 

「アウラ、グライア、リンね。

八雲です。よろしく。

それから助けてもらってありがとう。ご馳走様でした」

 

纏めて挨拶を済ませる八雲。

 

「お粗末様でした。

それで八雲さん、記憶喪失らしいですけど憶えてることはありますか?」

 

今度はリンが対応する。

 

「いや全く。君たちに助けられてベッドの上。

それが全部だ。

しいて言えば、ひどく頭が痛かった気がする」

 

「そうですか。どう思います?」

 

「何らかのゲームに敗れて記憶を奪われたと考えるのが一番自然だが」

 

「コイツのギフトを考えればその可能性は低い」

 

「殿下の言うとおりか「はい質問!ギフト?って何」

 

「「「「・・・・・・」」」」

 

((((そこの記憶から無いのか))))

 

ギフトについて、そして関連的に箱庭についてギフトゲームについて。

そしてコミュニティ、魔王やその他諸々の説明に二十五分。

 

「よし、だいたい理解した」

 

「そこで八雲さんに相談というかお願いなのですが」

 

「自分にも殿下の部下になってほしい」

 

「はい、その通りです」

 

「逆に聞くよ。

記憶がない、記憶が戻れば離れる、最悪裏切るかもしれない奴を味方にするの?」

 

「それだけお前という人材が欲しい」

 

「わかった。でも条件が一つ。

自分自身、馴染んでないけど自分は『八雲』だ。

お前呼びは止めてくれ殿下。でなきゃ忠臣にはなれない」

 

「わかった。改めてよろしく頼むぞ、八雲」

 

「こちらこそ。

自分の事を信用できると判断したら、その都度いろいろ教えてほしい」

 

「どういうことだ?」

 

「自分の名前をどうやって知ったかとか。

迂闊に話せないこともあるんでしょ」

 

「約束しよう」

 

「三人とも新入りだがよろしくお願いします。っと」

 

 

***

 

 

「それで殿下この後は?」

 

「ゲームが中断されたのは知っているな」

 

「ええ勿論ですわ」

 

「アウラとリンには頃合いを見て”アンダーウッド”を攻め落としてもらう。

タイミングは俺が指示する」

 

「分かりましたわ」

 

「じゃあ自分とグライアさんは?」

 

「グー爺には念のためこの城を任せる。

八雲は俺と共に二人が仕掛けるタイミングで戦場を離れる」

 

『初陣にはまだ早いだろう。

もう少しギフトを使いこなせるようになれ』

 

「りょーかい」

 

「じゃあ八雲さん、殿下の事お願いしますね」

 

「どちらかと言えば自分が殿下にお願いされる方だな」

 

(実際にその割合の方が高いのですがね)

 

殿下たち(・・・・)にとって切り札となる八雲の存在は何としても隠し通すことで統一した。

 

「とにかく殿下の存在をバレないように、でいいんだな」

 

「そうです。殿下も気を付けてくださいね」

 

「ああ」

 

『殿下、お耳に入れておきたいことが」

 

「何だ?」

 

『例の”名無し”の一味に”生命の目録”の所持者がいるとの噂が」

 

「本当か」

 

『あくまで噂の域です。しかし事実であれば由々しき事態です」

 

「”生命の目録”って?」

 

「後で教えてあげますね」

 

できるだけ(・・・・・)詳しくね」

 

「はい!」

 

ヒソヒソと八雲とリンが話していると結論が出たらしく、

発見次第奪い取ることになったようだ。

 

「私も戦利品を試してみたいと思っていたところです」

 

「戦利品?」

 

八雲の問いかけにアウラはギフトカードから奪い取った戦利品、”バロールの死眼”を披露した。

 

 

 

 

 

 

「作戦会議を始める前にいいかしら」

 

収穫祭本陣営に集まった十六夜たち。

そこで行われる攻略会議の為に、サラやフェイス・レスといった主力がいる。

 

「何でしょう飛鳥さん」

 

「何で”六本傷”の店員さんがここにいるのかしら?」

 

「二一〇五三八〇外門の支店にいた店員か?」

 

「そうですよ常連さん!」

 

「キャロロ様は”六本傷”の党首代行として出席されています」

 

「ちょっとした諜報活動ですよ。

皆さんのいい噂もちゃんと(ボス)の耳に入ってますから」

 

キャロロの言葉を聞いてあくどい笑みを浮かべた者がいる。

 

「そんな話を聞いちまったら今後あの店は使えねえなあお嬢様?」

 

「そうね十六夜君。

全て筒抜けになるなんて、今までも作戦を立てたりしていたのにねえ?」

 

「ここは一つ”地域支配者”としてビラでも作ってばら撒くかね。

『”六本傷”の旗本に間諜の影あり』とかなんとか」

 

「ちょちょ!ちょっと待ってくださいよ!!

そんなことされたらウチの店がやっていけなくなりますよ!!」

 

「そんなこと私たちの知ったことじゃないわ」

 

「それでも見逃してほしいっていうなら・・・・」

 

「ちょっと二人とも待ちなさい」

 

「ラッテン、何か言いたいことでもあるっていうの?」

 

「ええ当然よ!」

 

「ラッテンお姉さん!」

 

問題児二人の強請(ゆす)りに横槍を入れたラッテンに、

キャロロは勝手に感動して今にも泣きそうである。

ただ、ジンと黒ウサギはこの流れを知っていた。

 

「”六本傷”が支店を出してるのは二一〇五三八〇外門(ウチ)だけじゃないでしょう?」

 

「はにゃ!?」

 

「東の”サウザンドアイズ”、北の”サラマンドラ”と交流を持ってるわけだし、

”階層支配者”達にも手伝わせた方がいいわ!」

 

「なるほど!」

 

「一理あるわね!」

 

もうプルプル震えて青ざめて涙も引っ込んでいる。

 

「み、・・・皆さんに限り、

今後当店での全メニューを、格安の一割」

 

「「「三割!!」」」

 

「うにゃあああああぁぁぁぁ、ぁ、ぁあ」

 

「そう言えば三六八八一〇二外門の支店で新作スイーツを発売するのよねえ?」

 

「ゴタゴタが片付き次第取り寄せさせていただきますぅ」

 

「楽しみにしているわ♪」

 

いろいろ決壊したキャロロはサラに泣き付き、

ハイタッチで喜ぶ問題児二人と元魔王の配下。

苦労人二人はただ黙ったまま同じことを思った。

 

((キャロロさん、強く生きましょう))

 

既にあきらめの境地!

 

「会議を進めてください」

 

フェイスのこの言葉がなければあと二十分は始まらなかっただろう。

 

 

 

議長として進行をするサラがコホンとわざとらしく注目を集める。

 

「会議の前に皆に言っておくことがある。

そしてこの場にいるモノだけの秘匿としてくれ。

お願いではなく命令として受け取って欲しい」

 

サラの深刻な声音に一同はわずかな緊張の後に頷いた。

 

「先ずは北と東よりの伝令でそれぞれに魔王が現れ、

白夜叉様、そして”サラマンドラ”、”鬼姫連盟”が戦っているため援軍は期待できない」

 

「ちょっと待ってサラ!

魔王がタイミングを合わせて襲ってきたってこと!?」

 

「そうとらえて間違いないだろうぜ、お嬢様。

だがそうなると色々と意味合いが変わってくる、

まあ誰かはそれを想定してたがな」

 

「どういうことですか?」

 

「なら御チビに問題だ。

今、魔王を相手取ってる連中の共通点は何だ?」

 

「それは・・・、

全て”階層支配者”です。”龍角を持つ鷲獅子”連盟は候補ですが」

 

「第二問。

”龍角を持つ鷲獅子”連盟は何故候補なんだ?」

 

「まどろっこしい問答は止めましょう」

 

ジンの回答をラッテンが遮った。

 

「私たちが”サラマンドラ”と白夜叉を襲い、

南で別の魔王が”アヴァロン”を襲ったから。

十六夜、貴方の予想通り”階層支配者”潰したい勢力の仕業よ」

 

「「「!!」」」

 

「お粗末にも私たちは貴方たちに敗れて失敗したけどね」

 

「ならば教えてもらうぞ敵の正体、構成、狙い、全て!」

 

「残念だけど私たちも多くは知らないわ。

『上』と交渉してたのは基本的にマスターだし、

マスター自身ほとんど一方通行ぎみにしかやり取りしてなかったしね」

 

「・・・・・・むぅ」

 

「敵の狙いだけであれば分からなくもありません。

恐らくは”全権階層支配者(アンダーエリアマスター)”でしょう」

 

此処まで沈黙を保ってきたフェイスの発言。

そしてそれは聞きなれない言葉だった。

 

「その”全権階層支配者”ってのはなんだ?騎士様」

 

「私もクイーンに聞いた程度の知識ですが、

下層を納める”階層支配者”が壊滅、あるいは一人となった時に選出され、

暫てい四桁の地位と相応のギフトを与える制度であると」

 

「暫定四桁ですって!」

 

「今の白夜叉と同格レベルの扱いって訳か」

 

「今まで就任したのは白夜叉、レティシア=ドラクレアの二名だけと聞いています」

 

「レティシア様がですか!?」

 

「”箱庭の貴族”はご存じないのですか?」

 

「黒ウサギは一族の中でもブッチギリで若輩なもので・・・」

 

「三年前の時点でガキ過ぎた御チビはともかく、黒ウサギ。

それくらい知ってやがれ」

 

「もしこれがレティシアのゲームの鍵だったとしたら戦犯よ」

 

「仕方ないわよ、”貴族”なんてのは身分にあぐらかいて、

ポヤポヤふらふら生きてるものなんだから」

 

「ちょ!!由緒正しき”箱庭の貴族”にそのような暴言は」

 

「「「無知な黒ウサギが悪い」」」

 

「ハィ」

 

本陣営の隅でへにょる猫店員(爆)と”箱庭の貴族(恥)”。

そう言った特殊趣味のものが見れば萌えるかもしれない光景だが、

この場にいるモノにとってはうっとおしいだけである。

 

「ところでサラ、さっき『先ずは』って言ってたけど、

他にも何かあるの?」

 

「ああ、実は”黄金の竪琴”と共に”バロールの死眼”も奪われたのだ」

 

「おいおい」

 

「何でそんな危険物を簡単に盗まれてるのよ」

 

「でも適性がなければ使いこなせないのでしょう」

 

「無理して使いこなす必要は無いのかもしれません。

竪琴の奏者が今回の企みの首謀者側のモノであれば、

巨人族は使い捨ての兵なのかも」

 

「御チビの推論は当たりだと思うぜ。

それに竪琴とまとめて奪われてるのが何より痛い」

 

片や神格を持つ魔の音色を奏でる楽器。

片や開眼と共に死をもたらす最凶の魔眼。

 

「となると基本的には地上で巨人と竪琴の奏者を迎え撃つ部隊と、

空飛ぶ古城に乗り込んで連れてかれた連中の救出とゲームクリアに必要な情報を集める部隊。

大きく分けるとこの二つが必要だな」

 

「聞いたところ連盟の”六本傷”頭首ガロロ=ガンタック様も、

同志の身代わりとなって連れ去られたと」

 

ジンが十六夜の言葉を受け話したことに、

へにょっていたキャロロが戻ってきた。

 

「今は勝手なこと言える立場じゃないのは分かってるけど。

私は(ボス)を何としても助けたい。

でも私達は戦う力を全然持ってないから・・・」

 

「安心していいわ。

古城には私たちの同志もいる。

強さは貴女も知っているでしょう?」

 

うつむいていたキャロロに飛鳥が励ましの言葉をかける。

 

「十中八九、二人いる。

それに騎士様が”ウィル・オ・ウィスプ”代表でここにいるんだ。

消去法でジャックたちも向こうだろうな」

 

「それでも救出部隊は早く送るべきです。サラ様」

 

「それについては連盟内から空を飛べるものを集めているところだ。

ゲストたちからも義勇軍を結成する動きもある。

今少し待って欲しい」

 

「皆さん!

ありがとうございます!!

”六本傷”頭首代行として私もお力になれるよう頑張りますね!!」

 

キャロロは支店で働いている時以上に輝いた笑顔で立ち上がった。

 

「おいコラ黒ウサギ!

お前はいつまでへこたれてる気だ。

”箱庭の貴族”は献身の象徴なんだろ!

レティシアをもう一回取り戻すためにゲームをするってのになんだその態度は!!」

 

「十六夜さん」

 

「”ペルセウス”ん時の威勢はどうした!?

そのままでいる方が恥だ!違うか!!」

 

堪りかねた十六夜の激に黒ウサギも闘志を燃やして立ち上がった。

 

「見っともないところをお見せしました。

奪われたものは取り返す!同志も”旗”も”名前”も!!

フェイス・レス様、レティシア様と”全権階層支配者”について教えてくださいまし。

ゲームに関わりがあるかは分かりませんが知っておきたいのです」

 

「私からもお願いするわ。

同志の事、もっと知っておきたいの」

 

「分かりました」

 

 

 

 

「巨人よりも面倒くさいな、この(こけ)ゾンビ」

 

古城に降ろされた祭は探索中に人型の怪植物に襲われ戦っていた。

しかし倒してもキリがなく現れるこの苔ゾンビに手を焼いていた。

 

「中途半端に水気があるせいで普通の炎じゃ効きが悪い!」

 

素早い人間程度だが核となる部分は頑丈で

外界から持ち込んでいた対戦車ライフルを数発でやっと破壊できるといった具合だ。

それほどまでの弾数はなく、また複数体を同時に相手どるのは面倒だった。

 

纏めて吹き飛ばすこともできるが、

古城の離れたところに魔獣に捕まったであろう人たちが見えたため、

迂闊に城に被害を及ぼしたくもなかった。

 

自分自身で加減ができないのは祭の戦闘スタイルの数少ない欠点でもあった。

 

「     ・・・・見捨てはしないのだと!!!」

 

「おうさ!やっちまおうぜジャックさん!」

 

ちまちま戦いながら移動していると聞き覚えのある声がして、

見覚えのある業火(ゲヘナ)を灯したランタンがある。

 

これ幸いと祭は苔ゾンビを引き連れて駆け出し、上階となっている部分から跳んだ。

 

「ジャーック!!!こっちも一緒に焼き払ってくれッ!!」

 

祭をみとめたジャックはいつもの軽快な笑い声と共に業火を召喚した。

 

業火に包まれる間際に祭は、上空へ上がる耀の姿を見た。

 

 

「ジャックさん、いくらアイツでも業火はまずかったんじゃ・・・」

 

「大丈夫ですよアーシャ。彼なら」

 

「熱いでも痛いでもない感覚というのも新鮮だったよ」

 

「ほらね。普通の人間ならそんなものを感じる前に焼却されて消えますから」

 

「祭もジャックも会話がおっかないよ」

 

「いや嬢ちゃん!おっかないで済む話じゃねえからな!!」

 

上空に退避していた耀と抱えられていた猫獣人のガロロ、木霊のキリノが合流した。

 

「ところで何で執事服なんだよ」

 

アーシャのツッコミ通り、祭は普段着のコートからいつかの執事服になっている。

 

「うっかり服ごと焼かれに行ってしまったから、

慌てて出した(着た)のがこれだったんだよ」

 

「何はともあれ。ガロロ大老がいらっしゃるのは僥倖ですね。

簡易的なリーダーとなってくださる方がいるのはありがたいです」

 

「では貴方が”六本傷”の頭首様ですか?」

 

「おうよ。”六本傷”頭首のガロロ=ガンタックだ。

お前さんの噂もいろいろ聞いてるぜ、よろしくな」

 

「こちらこそ。この辺りにベースキャンプでも作って情報交換といきましょう」

 

「では私たちは他の連れてこられた参加者を呼んできますので、

今後の方針はガロロ大老にお任せいたしますね」

 

「今後の方針?」

 

「急ぎゲームをクリアしなければなりませんので」

 

「まさか全員?」

 

「えっと祭どういうこと?」

 

「これが僕の”契約書類”、僕はすぐに巨龍に仕掛けたからだけど、

此処に主催者の旗印があるだろう。

これがペナルティ対象者の印、だろうジャック?」

 

「ええ」

 

「そう言うことか俺のにも刻まれてるな」

 

ガロロの言葉に驚いた耀は自分の”契約書類”を取り出し見た。

そこには同じように旗印が描かれている。

 

「私まだレティシアと戦ってないのに!?」

 

「巨龍が生み出した魔獣とは戦ったはずだ。

下手をしたら触れただけ、一方的な攻撃を受けただけでも

対象扱いになるのかもしれない」

 

「悠長に下の連中の助けを待ってるわけにもいかないか」

 

「先ずは全員合流して落ち着きましょうか」

 

「ヤホホホ。そうですね」

 

「あたしが呼んでくるよ、ジャックさんはここにいて」

 

「僕と耀さんは少し離れてもいいですか」

 

「ええ、ですがあまり遠くには行かないでくださいね」

 

「わかってる。耀さん少し付き合ってください」

 

「うん」

 

祭の後に続いて廃屋の一つの中へ。

首から下げているヘッドホンに手を当て耀の方から切り出した。

 

「このヘッドホンの事だよね」

 

「はい。ですが安心してください。

十六夜は怒ってませんから」

 

「知ってるの!?」

 

「『こんなんじゃ探偵小説のネタにもならないな』だそうですよ。

三毛猫の抜け毛を見せてくれました」

 

「そっか」

 

「ちゃんと謝りさえすれば大丈夫でしょう。

それより形変わってませんかソレ?」

 

「うん、いろいろあって・・・」

 

二人してネコミミヘッドホンを見つめる。

妙な沈黙。

 

「・・・・なんだかんだで似合うんじゃないですか?」

 

「祭もそう思う!!?」

 

予想外の食いつきに祭はたじろいだ。

 

「十六夜の自由気ままな感じって意外と猫っぽいし私も似合うと思うんだ!」

 

「えっと、・・・・・・

耀さん十六夜に惚れてます?」

 

「・・・・・・・・・/////」

 

「ああ、はい。とりあえず秘密にしておきますね」

 

絶妙な気まずさが廃屋を満たした。

不用意に苦手分野(恋愛ごと)に踏み込んでしまい話を続けられない祭、

あっさり自分の恋心を暴かれてしまいどう反応していいか分からない耀。

 

「その、二人も抱えて飛び回っていたんですか?」

 

あからさまな話題転換しか思いつかなかった。

 

「他にも何人か子供たちがいた」

 

「それは凄いですね!あの苔ゾンビ意外と強いですから」

 

「うん?でもそこまで苦戦しなかった」

 

「何か心当たりはありますか?」

 

祭は先ほどとは変わり、真剣な考察モードに切り替わっている。

 

「心当たり・・・・・・。

になるか分からないけど、フェイスって仮面の騎士に、

『”目録”からのサンプリング、”進化”と”合成”をするのが本来の役割のはず』って、

”生命の目録”を見せたときに言われたかな」

 

「サンプリング、”進化”、”合成”。

今までに出会った動物たちの中で友達になれなかったことはありますか?」

 

「時間がかかったことはあるけどいないかな」

 

「ならもしかすると。

耀さんには悪いですけど、友達にならずとも力を手に入れることができるのかもしれません」

 

「でも他に心当たりないよ」

 

「僕も自分で言ってさっき気づいたんだけど、

触れただけで条件を満たすんじゃないかな”生命の目録”も。

それが巨人からのチカラか苔ゾンビからかは分からないけど」

 

「冬獣夏草だってガロロさんが言ってた。

でもそっか、・・・・・・友達じゃなくてもよかったんだ」

 

「あるいは今まで友達になった動物たちの力が統合されたか」

 

「え?」

 

「友達の中にいるかは知らないけど、象や熊なんかのチカラに特化した動物たちの、

チカラのギフトが足し算状に作用したか」

 

「それは、なんかありそうだね」

 

「あとは。これは本当に確証がないんだけど植物のチカラ。

今まで言葉を交わせていなかったから気づかなかっただけで、

大切にしていた植物からも力を貰えていたとかね」

 

「植物からも?」

 

「そう”生命の目録(ゲノム・ツリー)”。”ゲノム”という言葉があったからね。

”ゲノム”、つまり遺伝子情報を持つならば、

動物以外の植物や昆虫なんかからも力を借りられるんじゃないかと考えていたんだ」

 

「でも植物のチカラって私もよく分からないけど・・・」

 

「表立っては発現していなくても今まで存在していたんじゃないかな。

動物たちのチカラだけで、耀さんの打たれ強さなんかはちょっと説明しきれないんだよ。

初めて白夜叉のところでゲームをした時、極寒に耐えられたこと。

ペストと戦って黒死病を克服したこと、僕は本当は回復できるとまで思ってなかった。

その時から疑問だったんだよ。

その仮結論が植物の”生命力”。

地球上でもっとも系譜を重ねてきた植物のチカラ」

 

「植物の”生命力”」

 

「もっとも特殊な植物のチカラも借りられるだろうけどね」

 

「ラビットイーターとか?」

 

「そうなれば耀さんは対黒ウサギ最強ですね」

 

「触ったよブラック★ラビットイーター」

 

「まじで?」

 

「まじで!」

 

予想外すぎて素が出てしまった祭。

勝者のぶいサインをする耀。

 

「今度黒ウサギがやらかしたらよろしく」

 

「任せて」

 

黒ウサギ処刑人が誕生したころ少し騒がしくなってきた。

アーシャが避難していた人たちを連れてきたみたいだ。

 

「そろそろ戻りましょうか」

 

「うん。

あ、祭!自分で言うから十六夜には何も言わないでね」

 

(どっちの事かはわからないけど)

「勿論ですよ」

 

 

古城に運ばれたのは逃げる能力に劣った子供が多かった。

 

「”ノーネーム”の子たちはいないね」

 

「それはお前さんの所だからだろうな、ジン=ラッセルの”ノーネーム”。

”避難訓練”をゲーム化して商品化した大元だろ。

ウチの(せがれ)が『先を越された』って悔しがってたぜ」

 

「じゃあ祭のおかげだね」

 

「子供たちを連れてくる提案をしたのは僕ですからね。

これで何かあったらジャックに叱られていたでしょう」

 

「主力の居ない本拠に子供たちをおいてきたくなかったのは分かりますヨ。

それで叱ったりなんかしません」

 

会話をしながらも簡単な食事を用意していく。

ガロロやジャックがギフトカードから乾燥食材と水樹の幹を出し、

祭も執事をやった時に多くの調味料なんかを取り込んでいたらしく、

敵地でありながらまともな食事にありつけそうである。

 

「対魔王を謳うなら持久戦の用意は必要だぜ嬢ちゃんたち。

ギフトカードに水樹の幹や枝、水珠を用意しておくのは魔王戦の常識だ。

お前さんらには”箱庭の貴族”が同志にいるから長期戦になることも特に多いはずだ」

 

「自分たちの領地で採れた野菜や牧畜の干し肉も恩恵としてギフトカードには入れられますからね」

 

「兵糧攻めは最も効果的な戦略の一つですからね」

 

「最低の戦略だと思う。

でもそういうことなら白夜叉もギフトカードをくれたときに教えてくれればいいのに」

 

「案外、長期戦になる前に一撃で魔王に勝って来たから知らなかったとか」

 

「あーマジでありそうだなそれ」

 

「どっちかっつうと食わずに戦い続けられるからだろうぜ。

聞いた話、半年戦い続けてたとか昔はザラだったそうだからな」

 

「「「最強の”階層支配者”マジ半端無い」」」

 

こうして落ち着いて食事ができるのも、

ジャックがランタンの使い魔たちで見張りをしてくれているおかげだ。

 

ひと段落してガロロは今後の行動を決めるために、

ジャック、アーシャ、耀、祭、子供たちの代表でキリノを集め作戦会議を開いた。

 

「ここにいる全員がもれなくペナルティ対称なわけだが、

行動指針について意見があるヤツは居るか?」

 

「ハイ」

 

即座に耀が挙手した。

 

「私はここに残って全員でゲームクリアを目指すべきだと思う」

 

「・・・ほう?」

 

「祭殿はどう思いますか?」

 

「中断による解除が望めない以上、妥当な判断じゃないかな」

 

「中断って、主催者が時間稼ぎに記述したんじゃないのか?」

 

「いやレティシアは自分でも元魔王だったと言っていた。

そしてコレはその時のゲームなんだと思う。

だったら前回のゲームは中断されたはずなんだ」

 

「確かにクリアされたゲームを魔王が再用するとは聞いたことがありませんね」

 

「今はそれはどうでもいい。

耀嬢ちゃんは全員でと言ったな。

子供たちにまで戦わせる気か?」

 

「戦う必要はない。

あの冬獣夏草も私たちだけでもなんとかなりそうだし」

 

「そうじゃねえんだ、悪いな聞き方が違った。

子供たちはそれを了承してるのか?」

 

一同の視線がキリノに集まる。

 

「ご心配ありがとうございます。

ですが私たちも”アンダーウッド”の同志。

眠ったままの大精霊(かあさん)の窮地を放っておけません!」

 

「そうか。若い奴がそう言ってんなら俺も腹ァ括ろうじゃねえか。

だが具体的な方針が無けりゃ賛成はしねえ」

 

「祭は攻略方法どこまで分かってる?」

 

「いや中断方法ばかり考えていて攻略の方はまだ。

あまりにバカらしくて中断させる気ない方法で少し呆けてたところ」

 

「思いついたのかよ」

 

「そう。一応私は暫定的な回答が思いついたというか」

 

「本当ですか!!」

 

「スゲーじゃん!!!」

 

「ああ!初日で謎解きが終わってりゃ勝ちの目は十分過ぎる」

 

「それで確認しておきたいことがあって、

やっぱり話す前に自分で検証してもおきたいからいくつか聞いてもいいかな?」

 

「そう言うことなら何でも聞いてくれ!!」

 

「じゃあ前提として、吸血鬼は箱庭の外から来た外来種なんだよね?」

 

「ああ、そうらしいな。

この城も文献じゃ、外界に居られなくなったときに国ごとやってきた名残だとか」

 

「僕もここにきてすぐに少し調べたら、

それらしい痕跡があったよ」

 

「吸血鬼たちは箱庭に来るまで太陽の光を浴びることができなかったそうですからね。

それが原因で箱庭にやってきたのかもしれません」

 

「そして箱庭で太陽の光を享受できることに感謝し、

箱庭の為に戦ったことで”箱庭の騎士”と呼び称されるようになった」

 

「でも”階層支配者”がいるのに”箱庭の騎士”なんて二つ名を与えられたのは、

ひょっとして吸血鬼が一時”階層支配者”だったんじゃない?」

 

「いい線行ってるが2/3ぐらいが正解だな」

 

「”箱庭の騎士”が”階層支配者”制度を作るために尽力したくらいは知ってるが」

 

「それは間違っちゃいねえよ。

その上位で”全権階層支配者”ってのがあったんだ。

箱庭が安定期を迎えた頃に下層を見守るために作られてな。

その”全権階層支配者”に初めて就いたのがレティシアだった」

 

「「「「!!」」」」

 

「そして就任に際し与えられた太陽主権の一つを持って上層に戦争を仕掛けようとしたらしい。

それがきっかけとなって他の吸血鬼と対立して、吸血鬼たちを虐殺する魔王となった。

俺が伝え聞いたのはそんな話だったな」

 

「「・・・・・・」」

 

ガロロの話す吸血鬼、レティシアについての歴史は二人の知るレティシア像とはかけ離れていた。

 

「真実が知りたければレティシアさんを助け出して聞けばいい」

 

「そうだね。きっと何かの間違いだろうし」

 

「大まかにはこんな感じだが他に何が聞きたい?」

 

「もう大丈夫。

というかこの城が異世界で造られたのさえ確認できればよかったから」

 

「おいなんだよそれ!」

 

「このゲームのタイトル”SUN SYNCHRONOUS ORBIT”は直訳で太陽同期軌道。

つまりは太陽と特定の角度を持って飛ぶ人工衛星の事なんだと思う」

 

「なるほど、”太陽”に”人工衛星””軌道”か。

じゃあ嬢ちゃんは”獣の帯”を”獣帯(ゾディアック)”と読んだわけだな」

 

「うん」

 

「「ゾディアック?」」

 

聞きなれない言葉にアーシャとキリノの疑問が重なる。

 

「”獣帯”とは”黄道帯”や”黄道の十二宮”を表す別称の事で、

獅子座や射手座など太陽軌道を30度ずつ分割して・・・・!!」

 

「まさかっ!!」

 

「うん、第三の勝利条件の”砕かれた星空を集め、獣の帯を玉座に捧げよ”

これは”獣帯によって分割された星座を集めて玉座に捧げる”ってことなんじゃないかな?」

 

「ヤホホ・・・・グッドですよ春日部嬢!

今の推理は多くのワードに符合します!!」

 

「でも星座を集めるってのがよく分からないし・・・」

 

「それなら恐らくこれの事だと思いますよ」

 

祭は取り込んでいた双子座の記号が刻まれた欠片を見せる。

 

「十二星座それぞれに対応する欠片がどこかにあるんじゃないかな」

 

「何で持ってんだよ!てかこれもうクリア見えたじゃねえか!!」

 

「少し調べたってさっき言っただろう。

それにまだ確定までは行かないさ」

 

「いやいや大躍進もいいとこだ!!

それじゃあ早速、他の連中にも説明をしないといけねえ!!」

 

膝をバンと打って立ち上がるガロロ。

古城に捕らわれた五十五名は捜索隊となってゲームクリアを目指す。

 




新キャラ”八雲”!!
コイツは完全に殿下サイドのキャラです。

そしてそして耀がチート化の片りんを!!
対黒ウサギ用最強チート化もしました!!
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