”他力本願な不死”と”自由気ままな指揮者”も来るそうですよ?   作:バリアリーフ

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攻略準備B-地上

久遠飛鳥に武芸の心得はない。

せいぜい護身術を齧ってます、くらいのものである。

弓を射るというのも初めての経験で、狙った場所に当たることは一度もない。

 

「困りましたねえ。祭さんが選んだのであればそれなりのギフトのはずですが?」

 

手持無沙汰の黒ウサギも飛鳥の修練に付き合うためにやってきたが、

大樹の地下、大空洞の川べりにラッテン、飛鳥、黒ウサギと並んで腰かけ一緒に悩んでいる。

 

「大体宝物庫にあったものなのでしょう?

一度私の”威光”が効果なかったものになるじゃない」

 

「源氏の弓なんでしょう、それ。

だったらそれなりに名のある武将の物なんだからギフトの効力を予想できるんじゃないの?」

 

「でも源氏だけじゃ誰のものなのか・・・」

 

「有名なのは那須与一(なすのよいち)源為朝(みなもとのためとも)あたりかしら」

 

「名前を聞いたことがあるくらいでどんな奴かは知らないわ」

 

「那須与一は屋島の合戦で平均的な弓の射程以上の距離で舟の上の的を射ぬいて、

続けざまに同じく船の上の敵武将をも射ぬいた名手よ。

源為朝は保元の乱ので活躍し”保元物語”の主役として描かれてもいる武将で、

敵武将から”無双の弓の達者”と称されたことがあるそうよ」

 

「お詳しいのですね」

 

「日本の歴史ならそれなりに勉強させられたからね」

 

「その”保元物語”は読んでいないの?」

 

「軍記物語だしその時は興味がわかなかったの」

 

「そう、せめてどちらか分かればいいのだけれど」

 

「祭君はどうやって源氏の弓だと突き止めたのかしら」

 

「それなら、『ギフトカードにしまうだけしまってギフトネームを知れば後は簡単』だそうでございますよ」

 

「「黒ウサギ!!」」

 

「はわハイ!?」

 

「どうして貴女はそうなのよ!」

 

「まったくいい加減にしなさいよ、そんな重要なことを!」

 

ラッテンと飛鳥、二人がかりでウサ耳を引っ張って揉みくちゃにされ悲鳴を上げる。

 

「わ、わきゃきゃあぁぁ!ッスみませえええぇにゃあああ!!」

 

大空洞によく響いたそうな。

 

そして散々に弄り倒されて打ち捨てられた黒ウサギ(どざえもん)

それを無視して飛鳥のギフトカードに弓が収納される。

 

「それでギフトネームは?」

 

「”六条祓いの霊弓”となってるわね」

 

「六条って!六条の御息所(ろくじょうのみやすどころ)の事じゃない!!」

 

「そっか源氏の君の事だったのね。ラッテンも源氏物語を知っていたのね」

 

「いや飛鳥、六条の御息所はかつて暴れていた魔王よ!

七大罪の”嫉妬”の霊格を得てそれは甚大な被害を出したらしいわ」

 

「嘘でしょう」

 

「本当よ、まだ私たちが召喚される前だから全てを知っているわけじゃないけど」

 

「「なんで”ノーネーム”の宝物庫に・・・?」」

 

疑問は残るものの一先ずギフトカードから”六条祓いの霊弓”を出す。

 

「なら矢でなくて弦打ちが本来の使い方なのかしら」

 

弦打(つるう)ちとは、魔よけの儀式の一種で、

矢をつがえずに弓の弦だけを弾くことで、その妙なる音で魔を祓うというもの。

 

「それだけとは思えないけれど、試して」

 

みましょう。とは続けられなかった。

いくらか離れた場所で頼華とヴェーザーが試験運用をしていたのだが、

そこから轟音を響かせた崩落があったからだ。

 

「うな!?な、何事でございますか!!?」

 

轟音と付随する衝撃で目を覚ました黒ウサギが狼狽え、勢い余って川に落ちた。

驚きつつも飛鳥は”ディーン”を召喚し崩れる岩盤の一部を支える。

 

「ちょっとヴェーザー!何で崩落させたりなんかしたのよ!?

試すだけなんだから最低限は手加減しなさいよ!!」

 

「俺じゃねえ頼華だ頼華!あのギフトが並じゃなかった!

あれで神格備わってないとかふざけてやがる!」

 

ヴェーザーはディーンが支えた岩盤を繋ぎ終えると、

頼華に向かって怒鳴りつけた。

 

「てめえ見境なしに攻撃してんじゃねえよ!

まるで関係ねえ天井まで打ち据えやがって!」

 

「いや、この子が我が儘なんだって、

プライド高いって言うかなんていうか」

 

「ちょっと頼華君、言ってる意味が分からないのだけど?」

 

「えっとお?意志があるんだよねこのギフト。

喋ったりできるわけじゃないけど・・・」

 

疲れ気味の頼華がギフトの棒を振ると水面が打ち据えられた。

鞭の先端のみが現れて、一撃と共に消え去った。

 

「俺は向こうの岩を狙ったんだよ?」

 

「なかなかやっかいなギフトね」

 

「でも祭の奴が選んだ理由は分かった。

ホントに性格悪いなアイツ」

 

「オレが使いこなす前提だったんだろうけどねえ」

 

「えぇ!?もうどんなギフトか分かったの?」

 

「やっかいだが、ギフト自体はシンプルみたいだからな」

 

ヴェーザーの返答を聞いて出遅れたと不満を顔に出していると、

ジンが駆け寄ってきた。

 

「皆さん黒ウサギは!?」

 

「随分慌ててるわね黒ウサギなら流されていったわよ?」

 

「流された!?」

 

「流されてませんから!ちゃんと戻っ「黒ウサギっ!!」はい?」

 

「何で十六夜さんに伝えてないのっ!?」

 

「と言いますと?」

 

「ヘッドホン!十六夜さん問題なく返ってくるものだと思ってるよ!!

壊れてることつたえてなかったの・・・?」

 

「「「えっ!」」」

 

「あら無くなったヘッドホンこっちにあったの?

というより誰が壊したのよ?」

 

「一応は巨人だよな?」

 

「でも原因は三毛猫だし?」

 

「春日部さんはそんなの関係ないって言うわよ・・・」

 

ダラダラと冷や汗を流す黒ウサギに冷たい視線が次々と刺さり、

脱水症状を起こさんばかりに冷や汗が量産される。

 

そしてジンがボソッとつぶやいた。

 

「・・・・・・今回ばかりはラビットイーターを発注しても」

「申し訳ございませんでしたあああぁぁぁ!!」

 

「あー面白かった!ジンもいい感じに壊れてきたわね♪」

 

「マスターもお帰りなさい」

 

「火竜の人の所に行って攻略部隊の編成を見学させてもらったときにね、

跳べる子の話に。。。。なったんだけ。。。。。ども。。。。。」

 

「マスターとてつもなく面白かったのは分かったから」

 

「ジンが。。。。。。かたまって。。。。。ドモリ出し。。。。。。。。!!」

 

限界に到達したペストがお腹を押さえてうずくまりプルプルピクピク震えている。

 

「なに?ペストって笑い上戸なの?」

 

「いやツボに入っちまうと駄目なんだよ。

実質戦闘不能レベルだ」

 

「ペストも笑い事じゃないんだよ・・・」

 

土下座継続中の黒ウサギ。

大絶賛無音爆笑中のペスト。

ドンヨリ火の玉を召喚したジン。

マスターが可愛くて貧血を起こしたラッテン。

 

軽いカオス空間にトレーニングを続けられる空気ではなくなった。

 

 

 

 

「時に議長様知ってたか?」

 

「ん?何がだろうか」

 

ジンたちと別れて十六夜はサラの編成指揮や物資調整に付き合っていた。

 

「”火竜誕生祭”の事件が”サラマンドラ”自作自演だったって事」

 

十六夜の言葉に驚き手を止めるも、

何かに思い当たったサラは再び資料と格闘する。

 

「それは知らなかったが父上ならそういったことを画策してもおかしくない」

 

「おいおい先代の”階層支配者”だろう?」

 

「確かに優秀な”階層支配者”であったが、

同時に”サラマンドラ”の頭首。

”サラマンドラ”の為であればどんなこともするお人だ」

 

「その辺が”サラマンドラ”を出奔したきっかけか?」

 

「・・・・・・」

 

「悪いな、忘れてくれ」

 

「構わん」

 

「・・・・・サラ以外はちゃんと働いてんのか?」

 

「何を当たり前のことを言っている?」

 

「いや、他の連中に会ってないだけだが、

資料対応だとか一人でやるもんじゃねえだろ」

 

「確かにそうだが、

お前も知っての通りガロロ殿は古城に捕らわれ、

他の例えば”五爪”などは主力の一部を別隊の護衛に回していて

”アンダーウッド”にいるのは六割強でな人手が足りないのだ。

負傷したものも多いからな。

心配してくれるなら”一本角”に来てくれるか?

角はなくとも歓迎するぞ」

 

「ヤハハハ!節操ねえな議長様!」

 

「できるなら”ノーネーム”の人材をまるまる迎えたいところさ」

 

「これでお相子か?」

 

「そうしてくれ、むしろ私の方が酷かったかもな!」

 

「そんなこと気にしねえよ」

 

十六夜にとってこの空間は悪いものではなかった。

騒がしくなく作業をこなす傍ら気持ちを整理し考え事ができる。

またサラも同じようで必要以上に互いの干渉することもない。

 

(恐らくは頼華も気づいてる。

俺も受け入れる気はサラサラないが追い詰められてる頼華は少しマズイ。

こういったときにバランスが取れる祭は城の中。

春日部と合流していれば間違いなく謎解きに取り掛かってるだろうから、

レティシアの事はそこまで気が回ってるとは思えない。

せめて春日部にギフトを渡し終えている状態だったら・・・

これは俺の責任か、寄り道は控えるか。

一番問題なさそうなのがお嬢様とは、

一日そこらで使いこなせなくとも戦力と計算できるくらいにはなって欲しいが)

 

山一つ処理を終えた十六夜はサラの前に積まれている書類を少し引き受ける。

 

(このまま待っていたら向こうの方が先に攻略をはじめちまうかもしれない。

俺だけでも先行して乗り込みたいところだが、

昼に話した限りグリーはそこまでの独断に付き合ってくれるかは怪しい。

白夜叉の部下でも”サウザンドアイズ”の一員ならそうぶっ飛んでることもなさそうだし。

コミュニティ内の通信手段は必須だな。

今春日部だけでも呼べれば大局も変わっただろが。

本拠に戻ったら使えそうなものを探すか)

 

攻略に合わせ、先の展望まで考える十六夜。

サラもこの時考え事をしていた。

 

(フフ。”ノーネーム”か。

本当に面白いコミュニティだ。

一騎当千に値すると言って過言無い実力者がよくもそろったものだ。

かつてほどの栄光が得られるまでの時間はかかるだろうが、

いずれ押しも押されぬ大コミュニティになろうな。)

 

二人とも同じタイミングで手を止め互いを見た。

それをきっかけとしてサラが尋ねた。

 

「十六夜はどうして手伝ってくれるのだ?

言っては悪いがこういった仕事は好きではないように思える」

 

「事務仕事は好きでも嫌いでもないな。

必要なら普通にやるだけだろ。

これに時間を取られて出陣が遅れるなんてのは困る。

古城には”ノーネーム(ウチ)”の連中もいるしな」

 

「そうだったな、私も連盟の同志達を救い出さねばならん。

それにレティシア殿には以前手ほどきを受けた礼をせねばならんからな」

 

「ああ、やっぱり以前の”ノーネーム”とも関わりがあったか」

 

「まだ私が”サラマンドラ”にいた頃になるがな」

 

「サラ様サラ様!大浴場の復旧が終わりました!!」

 

飛び込んできたキャロロ、

そこに十六夜がいることを知らずのテンションだったために固まってしまった。

 

「何だサラ?店員が言った大浴場ってのは」

 

「”アンダーウッド”の名物の一つだ。

キャロロも伝えてくれて申し訳ないが今はそんな時では」

 

「いえいえ!サラ様は頑張り過ぎなんですからこのくらいのご褒美がないと!

仕事ならウチのアホ兄たちをこき使いますから、

是非とも一番風呂を堪能してきてください!!」

 

キャロロに腕を引っ張られて出てゆくサラ。

そしてキャロロが扉の向こうから顔だけ出して十六夜に話しかけた。

 

「男湯の方も修繕できましたから常連さんも良かったらどうぞ!」

 

「せっかくだからお言葉に甘えさせてもらうぜ」

 

(ついでにあいつらも誘ってやるか)

 

 

 

 

地下大空洞にやってきた十六夜に誘われ、

”ノーネーム”と”      ハーメルン”一同は大浴場へ向かった。

 

「いやいや、本拠の浴場もいいものだったがここは()が違うな!」

 

「ああ、コイツは俺も気に入った。

お前らが風呂文化をどうこう言う気持ちが分かった気がする」

 

現在ヴェーザーと十六夜が並んで湯につかっている。

水樹の幹をくりぬいて造られた大浴場は、水樹特有の木の香りに満ち、

水蒸気を水樹が吸収するため、森林の中の露天風呂を思わせる。

 

「お邪魔するよー」

 

体を洗い終えた頼華が並んで湯につかる。

 

「ごくらく、ごくらく」

 

「爺くせえなあ」

 

「でも気持ちいのは間違いないし」

 

「そりゃそうだ」

 

「それでどうだ?順調か」

 

「イマイチかな?」

 

「正直に話すんだな」

 

「嘘ついたって十六夜はどうせ見抜くし、

関係なくオレは向かうしね」

 

「ならお前をぶっとばして動けなくするしかねえな」

 

「馬鹿だなあ十六夜は、”透過”がある以上オレには無意味だってのに」

 

「お前はちゃんと使い分けてるだろ、

本当に必要な時以外は攻撃をちゃんと受ける奴だ。

さっきもそうだし、黒ウサギのハリセンも一度だって”透過”で躱したことはない。

頼華、分かってる(・・・・・)お前が何故頑なになる?

レティシアを救いたいのはみんな同じだろ」

 

「・・・・・・」

 

「聞いてどうすんの?」

 

「無謀であれば本当に意識を刈り取って置いていく」

 

「わかった。

でもどうせだしジンもこっち浸かって聞きな」

 

タイミングを計っていたジンも素直に湯につかる。

 

「オレは、・・・・・・・

レティシアを救いたい」

 

「レティシアが連れて行かれた時に何もできなかった自分に腹が立つ」

 

「弱い自分が大嫌いで腹が立つ」

 

「それでもオレは、レティシアを助けたい」

 

「助けなきゃならない」

 

「嬉しいことにレティシアはオレの事を好きでいてくれてる」

 

「だからレティシアを本当に(・・・)助け出すのはオレの役目だから」

 

「レティシアは強いし、今までいろんなゲームで活躍してきたんだと思う」

 

「でも元魔王で、過去に魔王として傷つける側の時代があって」

 

「きっと仲間を殺したことがあるんだと思う」

 

「仲間を傷つけることに怯えてたレティシア」

 

「だからオレはレティシアを何が何でも救い出さなきゃいけない」

 

「今も過去も、魔王に墜ちた原因からも」

 

「レティシアは不器用だから女の子としての楽しみを分かってないみたいだし」

 

「助け出してからもレティシアは今までみたいに戦うって言う」

 

「でもその合間に女の子やれるくらいには自由になって欲しい」

 

「”ペルセウス”から助けたときに気付けなかったオレの責任だから」

 

「オレは・・・」

 

 

 

 

 

「レティシアを幸せにしたいんだ」

 

 

 

 

 

「ガラにもなく語っちゃって逆上(のぼ)せたかな?

先あがってるねー」

 

「おう」

 

頼華が出てのこった三人。

 

「御チビ」

 

「マズイですね、想像以上に」

 

「メイド長助けねえと今度はアイツか」

 

「そうなりそうだ。

それでメイド長ってなんだ?」

 

「使用人頭より言いやすいだけだ。

マスターの不安がやっとわかった」

 

「ペストの不安ですか?」

 

「ああ、休戦期間中にアイツと俺達で少し馬鹿騒ぎしたのは知ってるな。

魔王の組織にすんなり入ってそんなことができるのが恐ろしいってな」

 

「なるほど。

今の頼華はどっちにも染まってねえ。

それが理由だろうな」

 

箱庭で生まれれば幼いころから”魔王”というモノを知り過ごす。

外界でもそれなりの人生経験によって個人ごとに線引きのラインが生まれる。

 

「僕もレティシアさんにはホントいうと頭が上がりません。

出来れば頼華さんの言うとおり自由を満喫して欲しいです」

 

「苦労人は黒ウサギの担当だろうが全く」

 

「頼むぜ十六夜。

アイツとはもうダチも変わんねえからな」

 

「地上は僕たちでなんとかして見せます、ですから」

 

「だあああぁぁぁ!うざってえ!

全部十六夜様にまかせて留守番してろ!!」

 

「はい!」「ああ!」

 

気恥ずかしさで湯から上がった十六夜に二人が続いた。

 

 

 

 

「珍しいわね、男性陣が遅いなんて」

 

「男だって長湯くらいするぞお嬢様」

 

「この前みたく変態発言しないんだねー白夜叉がいないから?」

 

「いや、少しゆっくりするのもいいかと思ってな」

 

「サラ様と一緒だったんだね」

 

「ええ、火竜の人たちってなんかこう、気に入らないわ」

 

「っははは!随分と嫌われてしまったな」

 

「マスター拗ねないで下さいよ」

 

風呂上りにワイワイやっているとキャロロが血相を変えて飛び込んできた。

 

「サラ様大変です!!

空の古城から、何かが射出されました!!」

 

「場所は!?」

 

「ほぼ直下です。確認はまだ取れていません!」

 

「サラ!!」

 

「分かっている。先に有翼種たちに連絡を!

これより古城へ向かう!!」

 

 




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