”他力本願な不死”と”自由気ままな指揮者”も来るそうですよ? 作:バリアリーフ
古城の探索を進め、十二星座の内の七つまで集まり、
残すは獅子座、乙女座、天秤座、水瓶座、牡羊座となった。
空から探索と警戒を行うジャックは祭の言葉を思い出していた。
*
「ときどき空中の塵を燃やしながら探索して欲しい」
「塵をですか?」
「まあ塵だけなら問題ないんだが、冬獣夏草の菌糸でも飛散していたらマズイから」
「そうですね、
子供達には危険でしょうからね」
ジャックは白手袋の腕を組んでウンと頷く。
「耀さんが感知していないから、大丈夫とは思うが念のために」
「ヤホホ!承りました」
*
「本当に祭殿はとても頭が回りますね。
痒くなりそうなところにも手が届く、とでも評しましょうか。
参謀としてもっと精進せねばなりませんね」
ヤホホホと笑い声を上げ、ジャックは炎を燃やして飛ぶ。
今のところは菌糸を燃やしたような燃え方ではない為気にはしていないが、
それでも警戒を怠ることはしない。
空を飛ぶジャックの下、古城の都市部を進む耀たち。
先頭のアーシャが子供たちをメインで監督している。
「いいかぁ!?勝手にはなれんなよ!
それから瓦礫は三人以上で退けるように!
コラコラコラそっちは段差が高いんだから危ないだろって!
おいなんで泣いてんだ?石ぶつけられたぁ?
オイ石ぶつけたやつ出て来い!正直に言わねえと逆さ吊りだコラァ!!」
面倒見のいいお姉さんとしてあっちへっこっちへ走って、
子供たちを気にかけている。
口は悪いがそれ以上に子供たちの事を見ているため、
対応を間違えることもないみたいだ。
”ウィル・オ・ウィスプ”が子供たちを多く引き取っているため、
子供の喧嘩にも慣れているのだろう。
「アーシャさーん!」
キリノと二人の木霊の少年が一つの欠片を持ってやってきた。
「今度な何座の欠片だ?」
「それが・・・」
キリノが差し出した欠片に刻まれているのは十二星座の記号ではない。
描かれる星座をそのまま彫った形だ。
「これは・・・確か”わし座”だったか?」
十二星座以外のものが見つかるとは思わなかったのか、
アーシャの表情が少し曇った。
「ジャックさんは、少し離れちまってるか。
耀ー!ガロロさーん!ちょっと来てくれー!!
他の子たちもいったん集合だー!」
アーシャの号令に子供たちが集まり、
グループの最後尾にいた耀もやってきた。
「ガロロさんは?」
「ちょっとギフトを見せてほしいって言われて、
すぐに来ると思うけど」
「そうか、実はな十二星座以外の欠片が見つかったんだよ」
キリノ達が見つけた”わし座”の欠片を耀に見せた。
「どう思う?ミスリードだと思うか?」
「まだ分からないけど、無視するのはちょっと危険かも」
「だよなあ。
今まで他のが見つからなかったから順調だったけど、
もう一度調べなおした方がいいのかもしれないな」
「おう、またせたな。
それでどうしたよ?」
ガロロは耀に”生命の目録”のペンダントを返し、
問題の欠片を見た。
「可能性は一応考えてたが遂に出やがったか」
「気づいてたの?」
「一応だ一応。
謎解き系にはだいたいダミーが混じってると考えて間違いない」
「そう言えば”グリムグリモワール・ハーメルン”の時もそうだったよな」
「まずは探せるだけ探すぞ。
流石に十二星座が本命だが、十二星座が全て揃わないこともあり得るからな」
「わかった」
「よし、聞いてたか皆!
星座の描かれた欠片はどんなものでも集めるぞ!
捜索再開だ!!」
再び広がって欠片の捜索を行う。
「ガロロさん”生命の目録”のこと何か分かった?」
「いや、確証がねえことを迂闊に言って混乱させたくねえ。
今はゲームの方に集中しようぜ嬢ちゃん」
「そうする」
(悪いな、見当はついてるんだ。
だがよ、軽々に話しちゃならねえことなんだよ。
コウメイよぉ、お前さんは自分の娘をどうしたいんだ!?)
*
「攻略を目的とした部隊が集まっていますね。
予想よりも幾分早い」
古城の玉座の間、アウラは使い魔から贈られてくる情報を告げた。
「私もあと二日はモタつくと思ってたんですけどねー?」
アウラとリンの言葉を受け殿下が決断する。
「そうか、二人は攻撃の準備を始めてくれ。
明日にでも”アンダーウッド”を落としてもらうことになりそうだ」
「畏まりました」
「でも本当に早すぎると思います。
ペナルティまでのリミットまでまだ時間があるのに」
「確かに気にはなるか」
「攻略を強行するものがいるのでは?」
「そんなバカならわざわざ攻め落とすまでもなく瓦解するよ?アウラさん」
『ではリンは見当がつくのか?』
「そうですね、考えられるのは二つです」
二本指を立てたリンに視線が集まる。
「まずは、参加者側が謎解きを全く進められていないという状況。
手詰まりとなって情報を求めて強行軍を編成している」
「今在りえないと言ったばかりだな」
「殿下ちゃかさないで!
二つ目は、こっちは最悪の可能性。
もう謎解きがほぼ終わって城に攻め込むのみ。
更にコミュニティの重鎮なんかが誤って古城に連れてこられて救出も兼ねている」
「「『!!」」』
リンの言葉を受け、周囲に殺気を放つ。
「近くには居ないか」
「待ってください。八雲の姿も見えませんが」
「ギフトの訓練に冬獣夏草シバいてくるっ「グライア!」
殿下の意を察しグライアが自身の感覚器官を最大限に広げ、
八雲の気配を探る。
『居ました!巨蟹宮の最奥、古城のヘリ部です!』
「まったく何故そんな遠くまで」
『殿下!隣の獅子宮に何者かがいます!
その者も冬獣夏草と戦っているようです!』
「リン、アウラは今すぐ地上に降りろ!
そのまま”アンダーウッド”を強襲!
グライアは防衛の為このまま!
俺は八雲を回収して即時離脱する!」
指示だけ出し終えた殿下は即座に玉座を駆け抜け、
続けてアウラとリンが後にする。
『八雲はともすると
*
探索グループは十二星座の欠片を探し終えた。
同時に続々と発見された別の星座の欠片の処遇を決めかねていた。
「やっぱり怪しいぜ?
確かに黄道十二星座はそろったけどよ」
「見つかったのは十四。
下手をすれば星座全ての欠片が存在するかもしれねえ」
「それを言い出しては仕方ないでしょう。
不安に駆られて全て揃うまで探していてはそれこそ時間切れを迎えかねません」
「ジャックの言うとおりだと思う。
今はこの欠片だけで考えてみようよ」
耀の提案に乗って十二星座の欠片をそれぞれ手に取る。
「つっても捧げる玉座に行ってみない事には分からないんじゃねえか?」
「ですがアーシャ、準備として考察を纏めておけばより迅速に行動することもできます。
回答不能でどうしようもなくなれば向かえばいいでしょう」
「確かにな、あの兄チャンもまだ合流できてないことだし」
(十二星座だけ扱いが違う。
それに欠片の一部が球面になってる。
ならもしかして・・・)
球面どうし、そして十二星座の順に合うように天秤宮と天蝎宮の欠片を合わせる。
すると欠片がピタリとかみ合い、
「とけた」
「「え?」」
「とけた・・・・解けた!!」
「なんだと嬢ちゃん!本当か!?」
「砕き掲げる!うん!間違いない!
これでレティシアも”アンダーウッド”も」
その時、大きな揺れが古城を襲った。
地震を思わせる揺れに子供たちが悲鳴を上げる。
「落ち着けお前ら!大丈夫だ!!」
アーシャの言葉通り、揺れはすぐに治まった。
「今のは?」
「マズイぞコリャ!」
「そうですねすぐに祭殿と合流を」
ジャックがランタンから花火を上げようとし、
それをガロロが制する!
「やめろカボチャ頭!!
場所がばれる!!」
「いえですから、!!
ありがとうございますガロロ大老」
ジャックとガロロは二人神妙な表情で当たりを警戒し始めた。
「ジャックさんどういうこと?」
「今の揺れは恐らく戦闘によるもの。
そしてここにいない祭殿が関係しているでしょう」
「なら誰が戦ってんのかって話だ!」
「「!」」
「分かったら玉座へ向かうぞ!
子供たちに準備を急がせろ!一刻を争うぞ!」
ジャックとアーシャが子供たちを誘導し始める。
「耀嬢ちゃん、移動しながらでいい。
回答の考察を聞かせてくれ」
「・・・分かった」
「なあに、奴は不死なんだろ?
だったら最悪でも生きてる」
「そうだね、今はゲームを攻略しないと」
*
祭は冬獣夏草を相手に戦い、逃げていた。
正確には動きを制限する罠に誘い込むために逃げている。
あるときは酸の池を造り、またあるときは廃屋を使って押しつぶし、
またまたあるときは城から弾き飛ばして地上に叩き落して。
「ひと段落と言ったところかな」
サーカスで手に入れた武器、その金属製の物を纏めて配置し、
おびき寄せた冬獣夏草の群れに融かして浴びせた。
結果大ダメージを与え、大気で冷えて個体にもどった金属によって拘束されている。
「獅子宮のはずれかな?
向こうは順調だろうか、はずれが二つ。
もう少ししたら合流した方がいいかも知れない」
祭は”かみのけ座”の刻まれた欠片を取り込んで歩き出す。
(プレイヤーは”獣の帯に巻かれたすべての生命体”。
かつてのレティシアが、仮に魔王として悪意を持ってゲームを開催したと仮定しても、
これはおかしすぎるな。
考察通りに獣の帯が”獣帯”なら対象外が非生命のみ。
そんなことをすれば味方にすら暴威が及ぶ。
なら今回のように誰かに開催
考察を重ねながら、拘束を抜け出しそうなモノの菌核だけを砕いて進む。
(それにガロロさんは、
レティシアが与えられた太陽主権の一つを持って上層に戦争を仕掛けたと。
当時のレティシアが太陽主権一つだけで上層にケンカを売るとも思えない。
その時の主権がどう分配されていたかは分からないが、
流石に白夜叉も持っていただろうし・・・・・・?)
こつん、小石がぶつかったようなわずかな違和感。
何かが祭の中で引っかかった。
「何だろう、この感じ?」
(レティシア、太陽主権、戦争、駄目だ何が今の感覚の・・・)
『番外として中断条件と言ったところですか』
唐突に自分の言葉を思い出した。
(番外? ・ ・ ・ ・ ・ 与えられた ・ ・ ・太陽主権)
理由なくそれがキーワードだと何故だか確信を持った。
(二十四の太陽主権の番外!?二十五番目の太陽主権!!)
「もしそれが”赤道の十二辰”でなく”黄道の十二宮”側の番外なら!?
マズイっ!!はずれ側に当たりが混じってる!!」
あせり踵を返して探索グループへの合流を試みる祭。
駆ける祭の前を一羽の鳥が横ぎった。
「・・・ハト?」
冬獣夏草以外の生命に出会い、わずかな疑問に足を止めてしまった。
次に感じたのは自分が城の石畳を次々に突き破っていく痛み。
そして後頭部をぶち抜かれたかのように走る激痛だった。
最後の床を突き破って空中に放り出されてなお勢いが衰えず、
古城が遠く離れていくのを認識した時には大地に叩きつけられ、
巨大なクレーターの中心で巻き込んで降ってくる瓦礫が目に入った。
「・・・・十六よ・?・・・・・・・・・・・・・」
降り注ぐ瓦礫をあび、祭の意識は途切れた。
*
「姿は見られていないだろうが接触してしまったのはマズイな」
「およ?殿下。
やっぱり今のって殿下の?」
「八雲、少しは緊張感を持った方がいいぞ」
「それは失敬。
ところでどうしたの?」
「参加者がこの城の中にいた。
他にもいる可能性があるからな」
「なるほど、リスク背負う前にトンズラしようって事ね」
「そうだ」
八雲の頭に一羽のハトがとまり、
一本のかんざしに姿を変えた。
「それなりにギフトにも慣れたし、
殿下のフォローもできたからまずは満足ってところだ」
「成果については離脱し終わってから聞かせてもらうぞ」
「了解!」
そしてゲームの舞台から少年と青年が姿をくらました。