”他力本願な不死”と”自由気ままな指揮者”も来るそうですよ? 作:バリアリーフ
地上。
”アンダーウッド”で攻略のため有翼種たちが次々飛び立って行く。
『ギフトは問題ないか?十六夜』
「ばっちりだ。頼んだぜグリー!」
『友たちと”アンダーウッド”の為だ。死力を尽くす』
「お嬢様、悪いが」
「言わなくても大丈夫。まだ収穫祭を楽しみきってないのだもの。
こっちは任せてちょうだい!」
「今は地上に戦力を集中させる布陣になっています。
危険だと判断すれば」
「御チビ、危険ぐらいで俺や頼華が止まるか?」
「そうですね。ゲーム攻略お願いします!!」
「急がねえともう頼華行っちまったぞ」
「マジかあのバカ!行くぞグリー!」
『なに。直ぐに追いついてみせる!』
グリーの背に跨り、十六夜が発つ。
「さあ悠長にしてられないわ!
ジン君指示を!」
「え?」
「え、じゃないでしょう!
貴方は私たちのリーダーで私たちを動かすのが仕事でしょう!」
「失礼しました。
敵対勢力が次に”アンダーウッド”を襲うなら今。
飛行戦力がいない今を置いてありません」
「ならすぐにでも防衛の布陣を敷いた方がいいわね」
「いいえ迎撃します!」
ジンが自信たっぷりに不敵に笑った。
ここまで強気なジンも珍しい。
(またこの表情。前ほど不快じゃないけどっ)
「僕たちには” ハーメルン”。ペストたちが居ます。
それに飛鳥さんが受け取ったギフトが”六条祓いの霊弓”なら十二分の勝ち目があります」
「ジン君は使い方が分かるの!?」
飛鳥は驚きの声をあげた。
「分かりませんよ。
でも祭さんがどんな風に企むかは知ってます」
そのほほえみは、どことなく祭に似ていた。
(すっかり祭君の弟子ね)
「最前衛をペスト、ヴェーザー、そしてディーンで巨人を蹴散らします。
その少し後ろにラッテンと飛鳥さんを配置し、遠距離から巨人の支配権を強奪します」
「「方法は」」
ラッテン、飛鳥、二人とも”できない”という考えはもうない。
「一手目に飛鳥さん、”六条祓いの霊弓”を用いて敵の支配を弱めてください。
可能であれば解放を。
魔を祓う力を強化すれば、洗脳の類にも効果があるはずです」
「分かったわ!」
「二手目はラッテン、解放か弱体化かを見極めて、弱体化であれば支配の上書きを。
人の幻獣である”巨人”には効果が高いはずです」
「解放されていたら?」
「扇動して寝返らせて下さい」
「そこはいい加減なのね」
「効力までは直接検証しないと・・・」
少し気が抜けたのかいつものジンに戻った。
「ちょ、なんで蹴るのペスト!?」
「相づち?」
「横暴すぎる!?」
微笑ましいやり取りを見守る姉兄。
「最後に黒ウサギ。”アンダーウッド”で待機し、
”バロールの死眼”の破壊に備えて」
「分かりました!!」
*
「ヤハハハ!すげえな!なるほど『空を踏みしめて走る』ってのはこれか!
春日部一人こんないい思いしてやがったのかチクショウ♪」
「楽しそうだな!だが私の全力は五倍は速いぞ!」
「よし行くか!」
「行くな!!」
サラの制止で加速はしなかったものの不満そうな視線が二つ。
「私は悪くないだろう」
なおも進軍は続き彼らの視界に人影が見えた。
「やっと追いついたか」
「頼華よ、どうしたのだ?」
空に立つ頼華に一同が進軍を停止する。
「オレは幻獣たちやグリーの言葉分かんないから一方的に言うね。
オレの足元は通れないから」
「見えない足場を作ってそこを走ったり立ったりしてると思ってくれ」
頼華のギフトを知らないグリーの為に十六夜が補足する。
頼華が立ち止まっている。
その異常事態を、危険度を察した十六夜も臨戦態勢に入った。
緊張感が伝播し、そして異変が襲い掛かった。
死のイメージ。
共通して首を刈り取られたと錯覚する。
「下がれ!、まとめて足手まといだ!!」
気づけたのはサラと十六夜、反応までできたのは頼華のみ。
いや勘だけで防いだのだ。
頼華がギフトで防がなければ屍が空を舞っただろう。
代償に二人が怪我を負った。
時を同じく地上にも敵が現れた。
『ウウオオオオオォォォォ!!!』
「巨人族!」
「サラは下に行け、後邪魔なの全部連れてけ」
「十六夜も下でいいよ」
「馬鹿言え!お前ひとりでどうこうできるかっての」
「やる」
「お前たち二人まとめてバカか!
神格が宿っていることも分からんのか!!」
「「そんなのはどうでもいい!!」」
二人の気魄にサラが押される。
だがすぐに気を引き締めるサラ。
流石と言うほかない。
「いいのだな?」
「当たり前でしょ」
「サラ、武器が欲しい。長柄で丈夫なヤツだ」
「わかった」
サラがギフトカードから槍を出して渡した。
既に力量差を理解して撤退した有翼種もいたが、
腕に覚えのあるものほど素直に引けず残っていた。
その者たちを率いてサラが地上の戦場に向かう。
「さて付きあわせて悪いな」
「元より敵地に向かうのは命がけだ!気にするな」
「流石は鷲獅子さまだ」
「十六夜、知恵貸して!『進入禁止』じゃ防げなかった」
頼華も己の力不足を痛感して唇を食いきって血を流している。
頼華のギフト”空間信号”でこの敵の攻撃を防げず、
頼華は右足を、十六夜は左肩を貫かれていた。
「あれは”龍の遺影”だろう。
かつて父、”ドラコ=グライフ”が似たものを使っていた記憶がある」
グリーの言葉をそのまま十六夜が通訳する。
「恐らく影だからか『進入』って概念じゃねえんだろう」
十六夜の言葉を聞いて頼華は新たなギフトを構える。
この鞭だけが攻撃を弾くことができた。
「イケるのか?」
「それっぽい形してるだけだから」
レティシアの形を模した陰に対峙する。
「足は全面的に任せるぞ!」
「承知した、振り落されても知らんぞ!」
「抜かせ!!」
「我が儘言ったら許さないぞ、
力を貸せ!!”
*
地上は善戦、いや圧倒的だった。
ジンの立てた作戦がこれでもかというほどに嵌った。
ペストの絶対的相性。
ヴェーザーの地形援護。
ディーンの攻撃力。
蹂躙と言って過言無い突破力の前衛。
後衛の支援によって戦力が増すことも非常に大きい。
それを加速させたのはラッテンの言葉だった。
「ねえ飛鳥、ソレ射ってみて」
「え?」
「矢じゃないわ、飛鳥の言葉よ。
言霊、この場合は言弾かしら」
「ふふ」
「どうしたの?」
「納得がいったのよ。
ありがとうラッテン、祭君は間違いなくそれを企んでたわ!!」
飛鳥は”六条祓いの霊弓”を引き絞り叫んだ。
「『巨人の戦士よ!
飛鳥が手を放すと一筋の光が一体の巨人を貫いた。
僅かに呆けたかと思ったが、すぐに状況を理解したらしく、
隣にいた巨人を押さえこんだ。
「私がとやかく必要は無さそうね。
皆、私は竪琴の対抗に専念するわ!!」
視線だけで仲間たちが頷く。
確認したラッテンが魔笛を口に当て、演奏を開始する。
それによって近くの巨人から順に動きが鈍くなってゆく。
はじめ黒ウサギは飛鳥の”威光”によって強化できるギフトを探した。
だが、霊格が上位の協力過ぎるギフトが反発した。
その結果、飛鳥はギフトを手にできず今日まで戦ってきた。
祭はそのことから、逆に飛鳥の”威光”を強化できるギフトを探した。
そして条件付きではあるが”六条祓いの霊弓”を探し当てたのだ。
一度の使用で飛鳥は特性を理解した。
通常の弦うちであれば、自分を中心とした範囲効果。
言弾を射れば、直線となるが強化された一撃となる。
「なら、・・・・ヴェーザー!
私の足場を移動させて!!」
「!!ハっ!
お前もなかなかえげつない事思いつくじゃねえか!!」
犬歯をむき出しにヴェーザーが笑い、
土石流のように飛鳥の乗る大地を動かし、
合わせて飛鳥が弦を弾く。
次々と膝をおる巨人。
「飛鳥!後ろだ!」
振り返る飛鳥の視界に迫る巨剣。
サラの炎翼が肥大化して叩き落とした。
「サラ、あなた城の方は!?」
「すまない、強敵の出現に撤退を余儀なくされた」
「どうせ十六夜君が『お前ら邪魔だから下に行って来い』とかそんな感じの事言ったんでしょ」
「よく分かったな」
「ついでに頼華君はまるで眼中に無しってところかしら」
「ああ、その通りだ」
この会話の間も余裕をもって巨人たちの戦力を削って行く。
「十六夜君はそういうモノだってあきらめて。
頼華君も今はあきらめて」
「あきらめるしかないのか!!」
「”
「あら火竜の人、逃げてきたの?」
「癪に障る言い方どうも」
ほぼ片付いて進軍すると琴線がいっそう響き渡り濃霧が立ち込める。
「ようこそ死地へ”アンダーウッド”の皆様方」
すぐに地面に浮き上がった魔法陣に気付いた。
「それからあなた方が噂の”ノーネーム”ですね」
ローブのフードに隠れて口元しか見えないが、
不快に口角が上がっている。
絶対の自信が伺えて一同が緊張する中、ローブの女が告げた。
「あなた方の仲間は捕らえました。
この者の命が惜しくば、我々に下りなさい」
「祭君!!」
直衛の巨人が十字架を地面に突き刺す。
そこには磔にされた祭がいた。
*
”アンダーウッド”の最頂。
奇しくもレティシアを見送るしかできなかった場所で、
黒ウサギは戦場を俯瞰していた。
(皆さん本当にすばらしい才能をお持ちです。
ほんの半年前には明日も知れなかった”ノーネーム”。
それを今や魔王と戦い打ち破れるほどの組織に、
過ぎた部分もありますが心根の優しさがと「きゃあああああぁぁぁぁ♪」
突然のフライングボディーアタック(後ろから)で大樹を100mほど転がり落ちた。
「何をされるんです白夜叉様!!」
こんな悪ふざけをするのはあの駄神しかいない。
首根っこ引っ掴んで投げ飛ばして気が付いた。
「わっきゃああぁぁぁ♪」
全く見ず知らずの少女だ。
そのまま大地へ落ちていく少女をただ見送るなんて黒ウサギはしない。
金剛杵を出して雷撃をぶつける。
そして追撃の為に跳んだ。
「流石は”月の兎”さん。二手目で攻撃して来るなんてビックリ!」
(無傷!?どんなギフトを?
!!っつ!)
土煙の向こうの少女を警戒していた。
警戒していたのにも関わらずナイフが目前に迫っている。
これらを紙一重で躱し、姿勢によりどうしようもない一本を弾く。
「うわぉ!!不可避の攻撃だったんだけどなあ♪
凄い凄い私感動しちゃいました!!」
(最悪のタイミングです!
何も今”バロールの死眼”を解放しなくても!!)
「しんぱいしないでいいよ!
ウサギさんはバロール退治には絶対行けないから」
*
「さあ武器を捨てて投降なさい!
逆らえばこの者を殺しますよ!」
ローブの女が”バロールの死眼”を出して瞳を祭に向ける。
下手に動こうとすればそのまま容赦なく開眼させるだろう。
「おのれ卑怯な!」
サラは”龍角を持つ鷲獅子”連盟の同志達を制する。
飛鳥と” ハーメルン”の三人は顔を見合わせ、
「「「「どうぞどうぞどうぞ」」」」
攻撃を開始した。
「「な、何を!?」」
隙を突かれた動揺で直衛の巨人が瞬く間に倒される。
「ならば後悔なさい!!」
「残念だけど無駄なのよアウラ」
ペストの忠告は届かなかった。
”バロールの死眼”が開眼し、死の恩恵をもたらす光が照射された。
「どうかしら祭君?」
「駄目ですね、流石に光は取り込めないみたいです」
磔にしていた十字架を取り込んで祭が着地する。
「それにしてもよく気づきましたね」
「それくらい分からないでどうするのよ」
「おっしゃる通りです」
「さあ、一気に片づけるわよ!」
「僕も急いで古城に戻らねばなりませんので!」
この時の祭の表情は深刻だった。
(下手に回答に近づきすぎた。
そのまま進むと危険だということに気付けないほどに)
最初に古城で話し合ったときに、双子座の欠片を出してしまった。
その結果、十二星座を集めるという回答へと無意識にミスリードしてしまったのだ。
「だったらなんで捕まったフリなんかしてやがった?」
「古城と地上を行き来できる手段を持っていそうだったので、
運んで貰えればいいなと」
「随分とバカな同志ね!
そんなに簡単に連れて行くわけないでしょう?」
「僕を殴りつけた首魁の所になんて?」
「!?」
心を読まれたのかとアウラの顔に驚愕の色が差す。
「十六夜並みの馬鹿力を持った首魁となると、
多少手こずりそうですがやるしかありません」
「でも気を付けなさい。
あれでアウラは人類の幻獣、”魔法使い”。
それも妖精を語源とするフェイ、絶滅危惧の希少種だから」
「あとは性格が致命的に合わねえ」
「とどめに若作りの年増よ♪」
「黙りなさい!!この三流悪魔どもっ!!
まともに仕事もできない屑コミュニティのクセに!!」
明らかに三人の纏う空気が変わった。
「年増女中としてこき使ってあげようかとも思ってたけど」
「なるほど魔王のコミュニティとしてなら弓引かれることも気にならなかったが」
「仕方ないんじゃないかしら私たちのこと知らないみたいだし」
「「「我ら” ハーメルン”を侮辱した罪、その身で贖いなさい!!」」償え!」
三人の連携は流石としか言えない。
隆起し巨人をも一撃で穿つ大地のランスの怒涛の連続攻撃。
その隙間に流し込まれる、黒死の風、怨嗟の衝撃波。
意識を飛ばすほどの魔笛の音に耐えアウラが全てを躱しきって逃れた先に、
巨人に比肩する白磁の巨兵が待ち構えていた。
「BRUUUUUUUUM!!」
魔笛の中に白磁の巨兵”シュトロム”の召喚メロディが隠されていた。
その巨碗を叩きつけられ、アウラの体が飛ぶ。
「あなたたちが
コピーの元になったオリジナルだからもちろん強いわよ?」
「やっと揃ったな!」
「さて、命乞いを聞くぐらいはしてあげてもいいわよ」
地面に横たわったアウラを、
” ハーメルン”が
飛鳥と祭が
サラたち”龍角を持つ鷲獅子”連盟が取り囲む。
「あなた達は、なぜ巨人族が黒死病に弱いか、知っているかしら?」
「強大な力を持つ巨人族によって作られた支配体型、
黒死病を、!!
また後手にっ!!」
祭が答えようとして気づき、”死の風”を右手に込めアウラを殺しにかかる。
「正解よ坊や」
祭の攻撃が届くよりも先に大地に浮かぶ魔法陣、
そしてアウラの元に新たに浮かび上がった魔法陣が発光し、
アウラの体が包囲の外に転移した。
アウラが持つ”バロールの死眼”が先ほどと別の輝きを戦場に放つ。
『ウオオオオオオオォォォォォォォ!!!』
倒れていた巨人族が次つぎと立ち上がり咆哮する。
「今ジンに聞いたわ、やられたわね」
「この部隊の指揮は!?」
「サラ!」
「”アンダーウッド”までの巨人は”龍角を持つ鷲獅子”連盟でなんとかしよう!」
「助かる」
「ジンがちょっとしたギャンブルを提案してきたんだけど、
乗る?」
「ジンに伝えてくれ、
そういう時はイカサマと言うんだってな」
「あら、予想できたの?」
「当然!」
*
上空での戦いは完全な膠着状態に陥っていた。
「専守防衛ってのがこれほどまでやっかいだとはな!」
「ええい!嬉しそうに言うな!」
機動性でなんとか防ぎきれている十六夜とグリー。
新たなギフト”禁鞭”の手数によって何とかなっている頼華。
「まったく近づけないね」
「イラつくのは分かるが、集中キレたらお前は戦力外だ」
「分かってるから」
城までの距離によって攻撃の苛烈さが変わる影。
百手を超える”禁鞭”の攻撃も防ぐその制度に打てる手がもう尽きかけている。
「いい加減、いうこと聞け”禁鞭”!」
「まだ使いこなせてないのかよ」
「コイツまだ全力隠してるっぽい」
「地上ももう余裕がない、”バロールの死眼”が使われたとなると」
「やっぱさっきの光は」
「10年前に”アンダーウッド”を襲ったときに見たモノと同じだ」
「その上、”ノーネーム”の仇でもあるときたか、
これは「どういうこと十六夜」ん?」
頼華から気配が完全に途絶えた。
異質さでいえば今は影よりも頼華の方が断然異質だった。
十六夜が決断を下し、グリーに囁いた。
(次が突入のラストチャンスだ、無茶になるが任せる)
(頼華には申し訳ないが、四の五の言ってもいられんか)
(ああ)
「サラがさっき言ってやがったがその影には神格の気配がある。
その神格は元々レティシアが持ってたもんだろ」
ゆらりと影の方を振り返った頼華。
「三年前”ノーネーム”を襲い、レティシアを連れ去った魔王と関わりのある何者か敵だ」
「そっか♪」
(おいおいこれ程かよ!)
頼華からあふれ出る殺気は十六夜をして怯ませるには十分だった。
勇猛な鷲獅子のグリーでさえ震えを隠せていない。
ただそれを感じ取れない、システムである影はただ滞空しているだけだった。
すぐに殺気は頼華の中に取り込まれ、手に握った”禁鞭”に語りかける。
「本当に力を貸して、
大切な人を救いたいんだ、護りたいんだ」
霊格の膨張を二人と一頭は感じ取った。
ただの棒の姿であった”禁鞭”は完全な鞭の姿を取る。
「ごめん、オレのが我が儘だった?
これからよろしくね。それじゃあ」
頼華が”禁鞭”を構え駆け出す姿勢をとった。
「ヤハハハ!土壇場で一皮むけやがった!」
合わせてグリーも四肢に力を込める。
「行こう!”禁鞭”!!」
戦いは佳境を迎える。