”他力本願な不死”と”自由気ままな指揮者”も来るそうですよ?   作:バリアリーフ

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激闘~勝利~

 

黒ウサギは目の前の現実を受け入れられなかった。

これまでの経験、”      ”の時を含めた今まで目にしたすべてのギフト、

そのどれにも当てはまらない不可思議が理解を拒絶した。

 

(あり得ないのです!

疑似神格を解放した”軍神槍・金剛杵(バジュラ)”のですら無傷なんて!)

 

「前評判だと残念なウサギさんって聞いてたのに、

やっぱり帝釈天の眷属は伊達じゃないです。

クレバーでワンダホーです!」

 

「どのようなギフトか知りませんが、

貴女はここで討ちます!!」

 

「嫌だなあ!

私はそんなに必死になるような敵じゃないですよ?」

 

この異様すぎる空気の中、緊張の糸が張り詰めたまま、

黒ウサギは攻撃の手を考える。

 

なにせ自分の攻撃が掠った気配さえない。

最も近い状況として、白夜叉のような絶対強者たちがダメージを即座に回復した時など、

しかしそれでも本体以外、衣服などに相応の痕跡が残るもの。

 

全てを防がれた以上、圧倒的な防御力を有していると黒ウサギはみる。

最高クラスの火力を誇る”軍神槍・金剛杵”を防がれた以上残る手は一つ。

 

(しかしそれでは”バロールの死眼”は)

 

「隙アリ♪」

 

思考の僅かな隙、そのコンマ以下を的確についてきた少女。

放たれた多数のナイフが黒ウサギに迫り、

その全てが蛇蝎の剣閃に弾き落とされた。

 

「助太刀します”箱庭の貴族”」

 

「助太刀感謝します!」

 

仮面の騎士フェイス・レスの参戦により動きが生まれた。

 

「少女は任せて”バロールの死眼”を」

 

「お願いします」

 

フェイスの提案に従い黒ウサギは正に脱兎となりて、

戦場に駆ける。

 

「クイーン・ハロウィンの寵愛者が相手だと辛いなあ」

 

「そうでもないでしょう。

どうせ結果は千日手、痛み分けで終わらせたいのですが?」

 

「もしかしてバレテますか?」

 

「見当だけは」

 

「そっか、遊び過ぎて手の内見せすぎたかな?反省ハンセイ

クイーンに出張られると困るので大人しく引きますね」

 

「先に白夜が猛威を振るうと思いますよ」

 

「え!?」

 

「先ほど白夜叉が神格を返上しました」

 

「ウソ!それは本当にマズイです!!

それじゃあ騎士様、私は戦いたくないけどまた!」

 

バイバイと手を振って、少女は姿を消した。

 

「距離の概念を司るギフトですか。

多くの者にとってこれほどやっかいなギフトはありませんね」

 

(それにしても戦いとは無関係に嫌な予感がするのは何故でしょう?)

 

フェイス・レスはただ戦場を眺め、

これ以上の干渉をしないようだった。

 

 

 

 

「はあああああぁぁぁぁあああ!!!」

 

一気呵成に千、万の打撃を打ち据える頼華。

その一撃一撃が棒状態の”禁鞭”の遥か上を行く威力を持ち、射程、手数、速度。

霊格を解放した”禁鞭”は全てにおいて超一級のギフトであった。

 

それでもなお影の性能も凄まじく、

城までわずかと迫った所までは押せたものの、

それ以上進むことができない。

 

「こうなったら一か八か・・・」

 

「何をするつもりだ十六夜!」

 

自分の背に立った十六夜にグリーは声を荒げて抗議する。

狙いが何かも察したうえでグリーは叱責した。

 

「今同志が死力を尽くして道を造っているさなか、

それを信じずに何だというのだ!!」

 

「これ以上時間をかけていられねえんだ!」

 

「十六夜、グリー!オレを盾に回り込んで!!

今右側に寄せる!!」

 

頼華が左に動きつつ、影の右側に攻撃を集中させ、

突撃の位置取りをする。

 

一歩。

 

二歩。

 

三歩。

 

四歩。

 

それとクツ一つ分。

 

ここが影が位置を変えずに戦うボーダーライン。

研ぎ澄まされた感覚で頼華はその境界を見極めた。

 

「・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ギリギリのバランスを保って続く打ち合い。

十六夜たちは攻撃を任せ、タイミングを計る。

 

「・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・。

・・「今!」」

 

頼華と十六夜の声が重なった刹那。

その言葉を聞き終えるより早くグリーは、

自身の最高速をこの一瞬に賭け、空を蹴る。

 

反応した影の放つ無数の影槍を躱し、打ち、弾き、進む。

 

影の横を越え、城まで一歩の所で集束された影槍が十六夜目がけ伸びる。

 

「ッ!!」

 

振り向きざまに十六夜が槍を叩きつけると、

そこを支点に枝分かれ(・・・・)して追撃してきた。

 

確実に貫かれたと十六夜は理解した。

しかし十六夜の体は宙を舞い、古城の地面を転がった。

 

「グゥワアアャァァァァ!!」

 

グリーのうめき声で十六夜は何があったかを知った。

 

十六夜の体が貫かれる間際に、

グリーが十六夜を咥え首の力だけで放り投げたのだ。

そして身代りにグリーが翼を貫かれた。

 

「「グリー!!」」

 

慣性のままグリーの体は古城の地面まで飛んできて墜落した。

 

「頼華ァ!押さえてろ!!」

 

追撃を目論む影を頼華に任せて、

十六夜はグリーを一番近くの廃屋にまで運んだ。

 

「散々人に講釈たれといて、

自分は勝手に身を投げ出しやがって!!」

 

「私の爪と・・お前の拳では希望の度合いが違う・・・・!」

 

回避が叶って致命傷ではないものの、

グリーの翼が破りさられて傷口からの出血が止まらない。

十六夜は自分の学ランを脱いで包帯代わりにしばりあげる。

 

「ここで待ってろ。翼の仇、仕留めてきてやる」

 

「何を、先ほどまで!!」

 

グリーの言葉を聞かず十六夜はゆく。

 

「上手くすり抜けろよ」

 

十六夜の言葉は聞こえるか聞こえないかの、

僅かな声量で、しかしそれ以上に孕む怒気が頼華の危機察知の本能を刺激した。

 

そこからは一方的、怒涛の蹂躙。

これ程までに執拗な惨撃をグリーは見たことがなかった。

十六夜が蹴りつけた石も地面も全てが爆撃の弾頭のごとく、

十六夜が叩き込む拳の全てが降り注ぐ流星のごとく影にのみ襲い掛かる。

 

十六夜自身にも数多の傷が生まれてゆくが、

それ以上の破壊力に影はなすすべなく霧散した。

 

「せめてちゃんと聞こえるよう言ってよ」

 

「お前には拳とか無意味だろ」

 

「もしや私は、余計なことをしたか?」

 

「いやグリーと。

・・・二人がいなけりゃ上陸はできなかっただろうからな。

素直に助かった」

 

「そうか」

 

「グリー、悪いけどここに置いていくよ。

『治癒促進』。この廃屋の中から動かないでね。

傷の治りが遅くなるから」

 

「だとよ。

あとは俺等に任せて休んでな」

 

「頼もしいな!」

 

グリーを背に、二人は古城の都市を進む。

 

 

 

 

古城の玉座。

そこに座らせれていたレティシアの意識が覚醒する。

 

「ぅ!・・ぅあ!!」

 

「嬢ちゃん!レティシアが気づいたぞ」

 

「レティシア!!」

 

「・・ぁ、耀?ガロロまで、

そうか。私は再び魔王に・・・・」

 

「まあそうだが、それももうすぐ終わるぜ」

 

「あと残ってるのは、処女宮と獅子宮だな」

 

「お前さんの同志が、謎を解いたんだ。

もうすぐゲームは終わる。

それにしても、金糸雀の姉さんはゲームの中断させただけだったんだな」

 

「懐かしいな、

それから耀、ありがとう。

クリアしてくれればやっと私は魔王の宿業から解放される」

 

「?

ううん、私一人じゃどうにもならなかった。

ここにいるみんなと祭にも手伝ってもらったから」

 

「そうか」

 

「ですがMVPは間違いなく春日部嬢ですよ。

さあ最後の欠片を」

 

ジャックに処女宮の欠片を手渡され、それを玉座に彫られた窪みにはめ込んだ。

 

「これでゲームクリア!」

 

しかし”契約書類”に変化が生まれない。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?」

 

「はじまった」

 

「なんだと?」

 

「ゲームが再開された。

急げお前たち!!」

 

レティシアの叫びと外から響く巨龍の咆哮が重なる。

 

「私が間違えたから・・・」

 

「違う!正解に近づいたから、クリアに近づけたからだ!

だが何かが足りないんだ!!」

 

一同が青ざめ、凍りつく中でガロロの行動は速かった。

 

「嬢ちゃん、何か見落としたに違いない!

もう一度”契約書類”から探し出すぞ!!」

 

「、うん!」

 

我に返ったジャックたちも集まって”契約書類”を覗き込む。

 

「どうだ?」

 

「どこに鍵が?」

 

「クッソ分かんねえ!」

 

(こんな時に祭がいれば何か、いやダメ!

きっと祭はゲーム攻略に参加できない状況に陥ってるはず。

だから私が、私が何としてでも答えを見つけ出さないと)

 

「急ぐが落ち着けばいい!嬢ちゃんには必ずわかるはずだ。

ゲームを理解する力がある。嬢ちゃんになら解ける!」

 

ガロロの励ましも、ジャックたちの言葉も遠ざかってゆく。

耀は人生の中で経験したことがない重圧に襲われ、

自らを思考の檻に閉じ込めてしまった。

 

(この”契約書類”の中に何かのヒントが他に隠されてる?ううん、気づかなかったヒントを見つけることが必要?

それとも今までのどこかにミスリードがあった?もしも全てが間違っていたら?でもそれならゲームは再開されないから一部、もしくはやはり何かが足りない?でも何?足りないものはいったい)

 

「春日部耀!」

 

ガロロに両肩を掴み揺すられ呼びかけられ意識が浮上した。

 

「お前は春日部孝明(こうめい)の娘だろう!!」

 

「え」

 

今までの思考全てが吹き飛んだ。

 

「今、コウメイと言ったかガロロ?」

 

「ああ、そうだレティシア!

お前さんたちの元リーダー、コウメイ!春日部孝明!

東区画最強!伝説のコミュニティ”      ”のリーダー、コウメイ!

それが春日部耀!お前の父の箱庭での名だ!

数多の”魔王”討ち破ってきたアイツの娘なら!

お前さんならこの謎だって解ける!!」

 

再びガロロは耀の肩を掴んで耀の瞳に訴えかける。

 

自信を持てと。

 

「何も血筋だけで言ってるんじゃねえ!

お前がゲームの考察を語った時、胸が高鳴った!

頼もしかったんだ!

幾多のゲームを経験した俺だから言える、

此れはイケるっつう身もふたもねえ直感があった!

この場の全員がお前さんの背に攻略を見た!

だからもう一度言うぞ!

春日部耀!お前なら解ける!!」

 

これ程までに期待されたことなどなかった。

”ノーネーム”で活躍してゆく友人たちを自分が期待することはあった。

 

(でもそれじゃダメなんだ。

元々私は収穫祭で頑張って皆に、

皆に胸を張って並べるようにたくさん戦果を挙げる気で来たんだ)

 

気持ちを切り替えるために息を吐けるだけ吐きだし。

 

(何よりも、これから十六夜の隣を並んで歩くために。

素敵でカッコいい十六夜に相応しい私になるために。

此処で躓く訳にはいかないよね。

でも今、この気持ちは・・・・・・)

 

朝起きてするように息を吸い込む。

 

そして”契約書類”に視線を落とし、

書かれた言葉、文字、意味、を全て自分に落とし込み、

咀嚼、反芻し思考の俎上に並べる。

 

「   心臓    砕かれた   獣の帯   導        

     鎖      繋がれた     革命主導者  

   星空    正された     玉座  」

 

「どうだ?何が足りない?」

 

「             足りない?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・正された、獣の帯?」

 

脳の中で回路同士が繋がり、一本の回答へのルートが生まれる。

 

「そうだ!正された獣の帯!

これが第三の勝利条件にかかる言葉でもあるなら、

今までの獣の帯には誤りが、足りないものがあったはずなんだ!」

 

すぐに耀は十二星座の欠片を窪みからはずし、

欠片どうしを繋ぎ合わせて確かめてゆく。

 

「やっぱり、蠍座と射手座が繋がらない!

この間にもう一つ欠片がいるんだ!!

急いでみんな!きっとこの二つを見つけた中間地点に、

天蠍と人馬の神殿の間に『其処までだ、小娘ども!』!!?」

 

「アーシャ!子供たちを!!」

 

声の主、玉座に飛び込んできた敵の確認を省き、

ジャックはランタンの業火を全て放つ。

 

『ぬるいわ!!』

 

身動き一つでこれを打ち払った敵影は、

追撃を許さずジャックを玉座へつながる階段へ叩きとばした。

 

「ジャック!」

 

「生きてやがったんだなグライア」

 

『コレは久しいなガロロ殿、

いまはあなたに構う余裕はないのでな。

馴染みの情けであなたを殺すのは最後にしておこう』

 

グライアは耀に向き直り告げる。

 

『これほど喜ばしいことは他にない。

コウメイの娘が、”生命の目録”を引っ提げて現れたのだからな』

 

耀はグライアの放つプレッシャーに耐え、

臨戦態勢を取る。

その頭上に雄々しく生えた龍角を目に。

 

「私が時間を稼ぐから、皆は最後の欠片を!」

 

 

 

 

「こうして並び立つと、流石に見劣りするな」

 

祭の呟きは、両隣の白磁の巨兵と紅の鉄人形が理由だ。

サイズの問題でどうしても見劣りをする。

 

それでも、”バロールの死眼”に対抗するポテンシャルは変わらない。

死の恩恵の影響を無視できるメンツを主軸とした奪還作戦。

 

「それじゃあ任せるわよ」

 

「あくまで僕は囮の囮だからな」

 

”バロールの死眼”の最高適正ともいえるペストの為に道を切り拓く。

その先陣に祭が突貫し、ディーン、シュトロムの巨体を持って追撃とペストの盾となる。

同時進行でサラ、飛鳥、ラッテン、ヴェーザーの援護攻撃を雨のごとく畳み掛ける。

これがジンの作戦に手を加えた奪還作戦だった。

 

「飛鳥、その霊弓を扱うなら遠距離用に使用できるギフトが必要だろう。

元は大きな力は持たないが飛鳥のギフトを併用すれば威力が出るはずだ」

 

サラに紅玉と翠玉の埋め込まれた小手を渡された飛鳥。

 

「いいの?」

 

「私の昔の作品だ。言ったろう、大きな力なき研究用だったんだ。

飛鳥の手で役立ててくれれば私も嬉しい」

 

「なら遠慮なく使わせてもらうわ」

 

「それじゃあ行きますよ!」

 

祭の声と共にディーンが走り、シュトロムが水平前進する。

少し遅れて祭がサーフボードを改造したような板とミサイルを出した。

板の窪みに取り付けられたミサイルの推進剤に火が入り、

それに乗って祭が先行する。

 

「もう何でもアリじゃないのアイツ・・・」

 

ペストの呟きを再契約したジンだけが聞いていた。

 

このボード、ギフトは何も付いていない。

祭の元居た世界で開発された、超長距離ミサイルと強度を上げた特別性のボードというだけ。

それを重心移動と取り込んだ風や火炎で操る。

 

射程にアウラを捉えた祭は再び掌に”死の風”を集め、

一撃離脱の要領で攻撃を試みる。

 

「狙いは”死眼”でしょう?させないわ!」

 

攻撃を躱したアウラの隙を狙って直接”死眼”取り込み奪い去る。

この第一フェイズを読み切ったアウラが一時的にギフトカードの中にしまい、

祭が飛び去ったことを確認するとすかさず”死眼”を出して攻撃を再開する。

 

ここで後衛の遠距離支援が次々と襲い掛かるも、甦らせた巨人たちを盾にされる。

攻撃の手を止めずにディーンの巨碗が伸び、シュトロムの突進と続くが、

これらも紙一重でアウラは躱しきった。

 

「この程度で止められるとでも思っていたの?」

 

「まさか、本命は最後に出てくるものでしょう」

 

シュトロムの体の中に潜んでいたペストが急襲に成功し、

”バロールの死眼”に触れた。

 

「せっかくだから戴いていくわよアウラ」

 

使用者であるアウラは瞬く間に”バロールの死眼”の支配が手から離れていくのを感じ、

懐より槍の穂先に似た何かを出して”死眼”に突きたてた。

 

「どうせ手放すにしても渡しはしないわよ!」

 

「なんてものを持ってるのよ!!」

 

その穂先から煌めく極光、そしてこの”死眼”を貫けるもの。

"神槍・極光の御腕(ブリューナグ)"。

魔王バロールを打ち破った神代の恩恵の一部。

 

伝承にのっとった一撃により”バロールの死眼”が真っ二つとなる。

割れた欠片にペストとアウラが対方向に飛ばされる。

 

「ならばせめて!」

 

初撃の後、方向転換した祭が戻ってき、

今一度アウラより恩恵の奪取を試みる。

 

「こればかりは!!」

 

アウラは身を盾に”神槍・極光の御腕”の穂先を庇った。

 

「っチ!」

 

ボードを乗り捨て、アウラに飛びかかる祭。

しかしその手が穂先に届くよりも先に少女がアウラを連れ去った。

 

「ここまでですアウラさん」

 

「・・・リン、ありがとう」

 

作戦がきまらず、大地を転がった祭。

その手から竪琴が伺える。

 

「まだ神格武具であるだけいいか」

 

かろうじて奪うことができた”黄金の竪琴”をギフトカードにしまって、ため息を漏らす。

 

「逃げなさい!!」

 

ペストの悲鳴ともいえる叫びに目をやると、

”死眼”の欠片より死の恩恵をもたらす光が飛散し、

後方から支援攻撃をしていた四人にひときわ大きなそれが降り注ごうとしている。

とっさの事にヴェーザーの隆起も間に合わない。

 

「今すぐ!!」

 

(ボードが!)

 

移動手段であるボードを乗り捨てたことが仇となった。

ディーンもシュトロムも駆けつけられる距離にない。

ペストは吹き飛ばされたダメージでまだ起き上がっていない。

 

 

駄目だ、間に合わない。

 

 

誰もが思った。

 

 

「『焼き祓いなさい(・・・・・・・)!!』」

 

 

ただ一人飛鳥だけはあきらめずに動いた。

無意識に”六条祓いの霊弓”を空に掲げ、

弦を引き絞って弾いた。

 

 

飛鳥自身、確信があったわけではない。

無我夢中で生きるために必死で。

 

降り注ぐ死光、それに抗うように昇る一筋の閃光。

二つがぶつかった瞬間に死の光が、繋がるすべてが焼き祓われた。

 

その光景はとても幻想的で、揃って目を奪われた。

直前までの緊迫した空気も、迫る死の恐怖も何もかもが焼き祓われた。

 

しばらく誰も声を発することができずにいた。

その静寂を破ったのは巨龍の咆哮だった。

 

 

 

 

耀と同じく”生命の目録”を所持するグライア。

その経験と溜め込まれた情報量が戦局を大きく表していた。

 

『いい加減に無駄だと知れ』

 

耀の持つ五感の感知性能による奇襲も、

五人の問題児達の中で胸を張って誇れる飛行能力も、

地力の攻撃力もグライアの性能を前に敗れ去った。

 

「誰が、諦めるもんか」

 

ギリギリ致命傷を負っていないのは耀自身の潜在的な戦闘センスの賜物。

だがそれも圧倒的な戦闘能力の差を覆すに至らず、

傷だらけのまま古城の廊下で立ち上がる。

 

『解せんな、何故変幻をしない。

例え敵わずとも私に傷くらいは負わせられるだろうに』

 

「変幻?」

 

グライアの言葉に耀は固まった。

 

『父親から何も聞かされておらんのか!

コレは滑稽だ!貴様は何も知らずに生体兵器にされたわけか!!」

 

「生体・・・兵・・器・・」

 

『”生命の目録”は異種族の特性を収集し、

合成することで使用者を合成獣(キメラ)と変える兵装ギフト。

その力の一端を土産に逝け!』

 

グライアの体が軋みを上げ体積が大きく膨張する。

龍角から紅炎があふれ、グライアの体を包んでいく。

炎の塊と化したグライア。

その内より羽ばたきと共にあらわした姿は、

漆黒の巨大な西洋龍。

 

黒龍となったグライアの顎に蓄積されてゆく炎熱。

放たれ、城下町を焦土とせんが如く、巻き起こる灼熱の嵐。

耀はなすすべなく巻き込まれ、旋風を纏って防御するもむなしく大ダメージを受け叩きつけられる。

 

「っぁかはっ!!」

 

全身を強く打ちつけ視界が揺らぎ呼吸が焼けつくように辛い。

 

『今の攻撃で生きていたことは賞賛しよう。

だが次は不可能だ』

 

(祭が言ってた、植物の生命力のおかげ?)

 

耀は動かぬ体を持ち上げ、グライアを睨みつけることで抵抗の意を示す。

しかしそれも焼け石に水ということは分かっていた。

悔しさに泣きたくなるが心を折って泣く訳にいかない。

 

「そこまでです!」

 

「悪いなあグライア、嬢ちゃんは殺させるわけにいかねえんだ!」

 

「キリノ!ガロロさん!」

 

耀の前に立つ二人の影、傷ついた耀以上に戦う力のないキリノとガロロの姿があった。

 

「どうして!?」

 

「私も”アンダーウッド”の同志!

耀様に助けられて、その恩を返すこともせずに震えているなんて嫌です!!」

 

「耀嬢ちゃんは希望なんだ。

コウメイの野郎がそう言ってやがったからな!

希望を守るためなら老いぼれだろうと命を張るさ!!」

 

『大人しくしていれば僅かでも長生きできたろうに。

なればもろとも葬ってくれる!!』

 

先ほどのように、先ほど以上の炎熱が集束されてゆく。

 

「二人とも逃げて!!」

「嫌です!!」

「誰が!!」

 

無駄だと分かっていても両手を広げて耀を守ろうと立つ二人。

 

(このままじゃ二人まで!)

 

なんだ諦めちまったのか?

 

聞こえるはずのない声が聞こえた気がした。

声の主は当然いない。

しかしそれをきっかけに数々の声が自分の(ウチ)よりあふれ出る。

 

『大丈夫だって~。

うん、イケルイケル!』

 

『あんな雑魚にやられてもらっちゃ私が困るんだよ!!』

 

『真実が知りたければレティシアさんを助け出して聞けばいい』

 

『じゃあ私が友達一号に立候補していいかしら?』

 

『あの坊主にも謝らなな』

 

『友が得たギフトは、友好の、

そして私に勝利した証として使ってほしい』

 

 

 

『だったらお前がそいつを守れ!』

 

 

 

気がつけば立ち上がって二人の前にいた。

迫る炎熱に耀は”生命の目録”を持ち前へ突き出した。

 

サンプリング。進化。合成。統合。

 

ガロロは耀が希望だと言った。

しかし耀にとって希望は友であり、

父のくれたペンダント”生命の目録”。

 

「私は!まだ一杯やりたいことが!

やらなくちゃいけないことがあるんだぁ!!」

 

だから、だから!だからこそ負けるわけにいかない!!」

その強い意志に呼応して”生命の目録”が強い輝きを放ち変幻する。

 

『何だそれは!!?

私は、そんな”生命の目録”など知らんぞ!!』

 

”生命の目録”の未知なる能力に驚きを露わとしたグライア。

自分の放った炎熱が変幻して生まれた蛇頭をあしらった杖に阻まれ、

それでもなお力で押し切るべく膂力の限り炎熱を集束させる。

 

限界まで集束したと思った炎熱は、

杖の力によって閃熱となりグライアの体を貫き撃ちかえされた。

 

『グウォォアアアアアアァァァ!!』

 

込められたエネルギーに弾き飛ばされグライアの肉体は古城を飛び出し、

戦場をはるか越えた先まで吹き飛んだ。

 

「・・・・・ゃ、・・・・たょ」

 

勝利だけ理解した耀は全身が脱力感に包まれてくずれる。

 

「――――――――――――――――丈夫か!?嬢―――――」

 

ガロロの声が聞こえるがそのまま耀は意識を手放した。

 

 




飛鳥の魔改造も進んできました!
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