”他力本願な不死”と”自由気ままな指揮者”も来るそうですよ? 作:バリアリーフ
やりたかったこと全部ぶち込めて一応満足してます。
(・・・・・・・・・・?)
身体の揺れに耀は気づく。
自分は誰かに運ばれているということが分かった。
少しずつ意識が戻ってゆき、
見慣れた背中、金髪。しかし左肩は怪我をして出血を縛って押さえているようだ。
「ん?起きたか春日部」
「いざよい・・・・・、十六夜!!?」
十六夜に背負われていたと理解した耀の頭は完全にテンパった。
それは自分の身体を預けていた訳で。
密着していた訳で。
「おいコラ暴れるな!
お前の方が酷いがこっちも怪我人だぞ」
「うぇ?あ、ごめん」
十六夜の肩の怪我を思い出し大人しくなる耀。
「でも良かったです!耀様がお目覚めになられて」
キリノの声を聞いてそこでやっと周りの状況を確認する余裕を得た。
すぐ隣にキリノがついて、前をジャックが警戒しながら案内してくれている。
「アーシャとガロロさんは?」
「今頼華と最後の欠片を取りに向かってもらってる」
「そう」
耀にとって不幸中の幸いだったのは
(ダメ落ち着け春日部耀くーるだうん心臓うるさいちょっととまれ十六夜に聞かれたらどうする気なの不謹慎に喜ぶな私怪我してても私を背負ってくれる十六夜カッコいいけどどうせなら伝説のアノ伝説のお姫様だっこというものの事を考えてる場合じゃ無い今は揺れが少なくなるように気遣って歩いてくれてる十六夜の優しさが身に染みて嬉し過ぎるせいで逆にツライとか言ったら贅沢なのは分かってるしひょこひょこゆれる髪の毛もなんだかちょっとカワイイし何も着けてないとこんな風に立っちゃうんだなんて知らなかっっっていうかヘッドホン!!)
顔を真っ赤にして自分のセカイを爆走していたかと思ったら真っ青に、
こんな顔を見られるようなことがあったら耀は今後自室に籠城して出てこなかっただろう。
話を戻して
自分の首にぶら下げていたヘッドホン(ネコミミ)が無くなっていることに気付いた耀だが、
戦闘中に落としたのであろうが、その時に一緒に巻き込まれてまた壊れてしまっていたら。
そう考えるとどんどんと胸が苦しくなってゆく。
「大丈夫か春日部?
体温が上がったり下がったり、それに震えだして。
妙な毒でもくらったりしてないだろうな?」
「平気。心配してくれてありがとう」
(まったく無茶しやがって。
ホントにこのぐらいで済んで善かったが、
ガロロのおっさんたちから聞いた限り死んでもおかしくなかったんじゃねえか)
耀の考えてる以上に十六夜は心配していた。
(それでも強敵を一人で倒しちまうとはな。
説教はするがその前に謝らなきゃいけねえか。
春日部も成長してる、それに気づかず勝手な評価を下してたとか最低か俺は!)
耀が聞けば嬉しさでショートしかねない位に十六夜の中で株が上昇していた。
(何よりも春日部が着痩せするタイプだったとは驚いた。
意外とあったんだな。いや今成長途中なのか?)
十六夜はやはり十六夜だった。
後ろから駆けてくる足音が聞こえた。
十六夜たちが立ち止まって振り返ると全力疾走の頼華の後ろに遅れてアーシャとガロロの姿があった。
「見つけたよ!!”へびつかい座”!!」
「ご苦労さん」
「ちょっと待て、ってオイ!
怪我治してもらってもオッサンに全力走は毒なんだって!」
「ガロロ殿もありがとうございます。頼華殿も。
何事もなかったようですねアーシャ」
「聞いてくれよジャックさん!
あれだけ苦労して探してたのが馬鹿になるくらいあっさり見つけやがって!
その上”透過”とか反則だって瓦礫ん中潜ってさあ!!」
「それでジャック玉座は?」
「目の前の階段を上りきった先です」
見上げれば二百段はある大階段。
頼華は一人駆けだしたい衝動を抑えて言った。
「みんな一段目の前に集まって。
あとちょっと動かないでね」
全員が集まったのを確認すると頼華は、
足元から『進入禁止』の空間を迫り上げ、
大階段の最上段の高さに合わせ、そして繋ぐように足場の分も伸ばす。
「さあ急ぐよ!」
走り出した頼華の後に続く。
「グリーの時とまた感覚が違うな。
本当に地面を歩いてるような感じがする」
コメントした十六夜の隣でキリノが少し怯えている。
焦っていたようで透明なまま見えない足場であるため慣れていなければ怖くて仕方ないだろう。
「大丈夫だよキリノ、落ちることは絶対にないから」
「は、はい」
そして全員が玉座の間に到着した。
「ごめんレティシア遅くなって」
そのまま玉座に繋がれたレティシアの元に駆け寄る頼華。
「こうして再び魔王となって。
また頼華に会えるとは思わなんだ」
「大丈夫、すぐに勝利条件をクリアするから!
十六夜どこにはめればいいの!?」
支柱の一つに耀をもたれさせ、十六夜が玉座を見渡す。
他の十二の欠片を確認して十六夜はレティシアに視線を向ける。
「先にいいかレティシア。あの巨龍お前自身だろ」
「そんなの後でいいだろ十六夜!」
「必要なことだ!」
十六夜と頼華。
二人の視線がぶつかる。
「十六夜の言うとおりあれは私の体を媒介に召喚されたもの。
今話している私はいわば精神体で、侵入者用のトラップなのだが。
防衛用の影を倒したのは二人だったか、おかげで意識が戻ってこうして話すことができる。
ありがとう」
「祭の奴も焦ってなきゃ解けただろうが、
『革命』『revolution』『公転』の言葉遊びの謎を解けば、
第四の勝利条件は『鎖に繋がれた
お前が言った『十三番目の太陽を撃て』は十三番目の太陽主権に相当するあの巨龍を討つことだった」
「そんな考察は後でいいじゃねえか!
巨龍がまた魔獣を生み出してるんだから急いだ方がいい!」
「ガロロの言うとおりだ十六夜。
それに安心して欲しい。
クリア条件を満たせば私は無力化され巨龍も間も無く姿を消す」
レティシアの真っ直ぐな視線を受け、
十六夜は”へびつかい座”の欠片をはめる窪みを示した。
「これでゲームは終わり、待たせてゴメン!」
最後の欠片を頼華がはめ、”契約書類”全てに勝利宣言が記される。
『ギフトゲーム名 “SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING”
勝者 参加者側コミュニティ “ノーネーム”
敗者 主催者側コミュニティ “ ”
*上記の結果をもちまして、今ゲームは終了とします。
尚、第三勝利条件達成に伴って十二分後、大天幕の開放を行います。
それまではロスタイムとさせていただきますので、何卒ご了承ください。
夜行種の死の恐れがありますので七七五九一七五外門より退避してください。
参加者の皆様はお疲れ様でした』
目を疑った。
「レティシア、オレ達の勝ちでいいんだよね?」
「ああ」
「夜行種ってレティシアの事だよね。
なんで大天幕を開ける必要があるの?」
「そこから降り注ぐ太陽の光。
それによって巨龍を太陽の軌道に還すためだ」
「しの、おそれって」
”契約書類”を握り潰し尋ねる声は震えている。
「済まない、嘘を吐いた。
この玉座の天井は水晶体で太陽の「ふざけんな!!」
怒声によってレティシアは紡ぐ言葉を失った。
(最期に会うことができた。もうそれだけでも ・ ・ ・ )
「なんだよ死ぬって!」
「これが魔王のゲームだ」
「なんでそんなの受け入れてんだよ!」
「魔王と
「みんな!十六夜も!耀も!ボロボロになって!グリーもここに来るために翼を失って!」
「絶対の死を条件としたペナルティ」
「地上では飛鳥が!祭が!サラたちが!ペストたちが!必死になって戦ってくれてんだぞ!」
「かつて!復讐以外頭になかった馬鹿者が始めたゲームがこれだ!」
「オレ達はレティシアを助けるために!」
「よく覚えておけ!魔王は必滅が宿命!」
「オレの我が儘で迷惑もかけて!」
「ペストなどの例外がそうあると思うな!」
「ほんとに!ふざけんなレティシア!!」
「魔王とは!本来倒し
皆苦しかった。
怒声を喚き散らし言い合う二人。
そのどちらもが涙を流し、悲しみに顔を歪めているのだ。
十六夜が耀に近づき自身のギフトカードから”浦島の玉手箱”を出す。
「十六夜?」
十六夜が”浦島の玉手箱”の蓋をほんのわずか開くと、
耀の体に在った傷が火傷が消えてゆく。
「祭の奴がホントにとんでもないことを思いつきやがってよ。
『ダメージを負った分の”
今の春日部はほぼ万全の状態だ。
俺をあの蜥蜴の所まで送ってくれ」
「「「!!」」」
「第一、第二、第四の勝利条件は全て同じ。
そしてロスタイムは残り約十分」
「やめろ十六夜!耀!
巨龍に挑むなどばかげた真似は止めてくれ!!
私はもう同志を殺したくないのだ!!」
「行け!
そっちは任せる!!」
「ジャック!!ガロロ!!」
「無茶言うなレティシア」
「本気で止めるなら彼らを殺す以外在りませんよ?」
「じゃあ行ってくるね。
それからレティシア、挑むんじゃなくて倒しに行くの」
「近道するぞ春日部」
言うやいなや十六夜は玉座の壁をぶっ壊して外までの大穴をあけた。
「あー頼華だけどな、
一度たりともいつもの気の抜けた話方しなかったぞ。
どれだけ本気だったかもう分かるな」
「まずはこの城の端まで飛ぶから摑まって!」
「頼むぜ!」
十六夜の手をしっかり握った耀はグリフォンの力で空を駆ける。
あっという間に城の先端までやってきて一度降りる。
「さて春日部、今のも速かったが恐らくチャンスは一度。
巨龍の心臓に一撃を叩き込むには巨龍が消える間際の一瞬を狙うしかない」
「うん。どの位置からでも心臓に到達できる速度が必要。だよね」
「そういうことだ。それから土産だ。
元々、こっちにきてすぐに渡すつもりだったんだがな」
十六夜がギフトカードから羽根をかたどった髪飾りを出した。
「”嵐天の髪飾り”天使の羽根を使ってるらしいが、
伝承が細分化されて高位精霊クラスの羽根だろう。
黒ウサギによるとこれを着ければ気流操作、大気を理解できる。らしいんだが・・・」
説明しながら耀の髪に”嵐天の髪飾り”を着ける十六夜。
「どうだ?意味は分かるんだが感覚としては俺は理解できなかった」
(十六夜が着けてくれた!!
それにこれを十六夜が着けてたってこと!?)
いろいろと耀には刺激が強かった。
「大丈夫か?」
「!!うん!気流操作は今までの上級応用。
大気も気圧の境目や今まで感じれなかった乱気流なんかも
すぐさまギフトの確認を行い、答えて誤魔化した。
「ぶっつけ本番でも大丈夫。それに!」
(さっきの感覚を思い出して、今度は丁寧に。
飛行能力、速度、それも今までの友達たちの因子の中で最高の幻獣)
”生命の目録”を握りしめ意識を集中させる。
そして光を放ち変幻した”生命の目録”がロングブーツの周りで留まり、
白銀の輝きと光の結晶を放出する脚甲となった。
「私にも新しい力が、?」
しゃがみこんで脚甲を凝視する十六夜。
そして子供のように純粋な瞳で、
「最高じゃねえか!なんてカッコいいバージョンアップだよ!!」
「イカしてる?」
「超イカしてる!!すげえな春日部!!」
同時にサムズアップ。
(どうしよ!マズイマズイマズイ!嬉しくて仕方ない!!
ごめん頼華、レティシア。ちょっと、ほんのちょっとだけ幸せに浸らせて)
エッヘンと胸を反らして天を仰ぐことで、
今にもニヤけて崩れそうな顔を隠す。
「よし!俺も最高に乗ってきたぜ!
これはとっておきを見せなきゃなあ!!!」
「それはとても楽しみ!!」
*
地上では再び巨龍から生み出された魔獣の掃討戦となっていた。
勝利宣言がなされたことで、最後の気力を枯れさせずに燃やし続ける参加者たち。
その中で祭は鬼気迫る勢いで魔獣を屠ってゆく。
防御を捨て、片っ端から蹴散らし潰し息の根を絶める。
「いいの飛鳥?随分暴走してるわよ」
「分かってるわよ!」
飛鳥も祭の様子がおかしいのは気づいている。
しかし魔獣の群れが次々来るため手が回らない。
「仕方ないわね」
ラッテンが召喚の調べを奏で、二体のクォーターサイズのシュトロムが呼び出された。
「魔書が無ければこんな程度ね。
でも数分のガードにはなるわ」
「ありがとう、今度パフェでもご馳走するわ!」
「さっさと行ってらっしゃい」
ディーンの肩を降りミニシュトロムが生み出した風の壁を利用し駆け抜ける。
祭は怒りでいっぱいだった。
安易にに全員で等と提案しなければ、
レティシアが攫われ魔王となることも、
”アンダーウッド”に必要以上の被害が出ることも、
皆が傷つき疲弊することもなかった。
自分がゲームの謎を正確に解いていれば、
不必要なリスクを負わせなくて済んだ、
無理だと決めつけずに足掻いてゲームを中断させるために動いていれば、
レティシアに”死”を押し付けずに済んでいた可能性だってある。
トロトロと捕まったフリなどせずに仕掛けていれば、
”バロールの死眼”を失うことも、
敵魔法使いを捕縛し”ノーネーム”の仇の情報を得ることも、
ペストにダメージを負わせ戦線から離脱させることもなかった。
その上この魔獣たちを”アンダーウッド”に行かせようものなら、
城で子供たちに『収穫祭をやり直せばいい』などと唆して絶望に叩きつけることになる。
何もかも自分の失態だ。
立て続けにヘマを繰り返した自分に憤る。
「祭君!」
飛鳥の声がして振り向いた祭。
しかし乾いた音と共に体が半回転。
「何時までそうしているつもりかしら」
飛鳥の平手打ちを受けたのは二度目。
前の時も自分を見失っていた時だ。
(本当に飛鳥さんのビンタはよくキク)
「今さっきまで、です。
ありがとうございます飛鳥さん。
おかげで頭が冷えました」
「ロスタイムが終わるまでそれほどないわ!
このあと『GEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAEEEEEEEEEEEEEEEE!!!』
巨龍が突如、雄たけびを上げて降下し始めた。
「おいおいまさか突っ込む気か!?」
「迎撃準備!!
何がなんでも食い止める!!」
「無茶でしょ!!?」
「”やる”以外の選択肢はない!!」
「ディーン!!」
祭の覚悟にいち早く飛鳥が協力の意を示し、
駆け寄ってきたディーンの肩に登った。
「・・・!」「・・・!」
互いの覚悟を視線だけで感じ取り、
「ヴェーザー、砲を造ってくれ。
巨龍の体内から仕掛ける。
シュトロムの風を利用して跳ぶ!!」
「照準は私とディーンで担当するわ」
この二人は既にヴィジョンが見えている。
しかしそれは希望的観測の元生まれた夢想でしかない。
「やるしかねえな」
諦めと覚悟が入り混じった声でヴェーザーが大地を削り取って50尺を超す長筒を生み出し、
その片端をシュトロムの腕につなぎ合わせた。
「痛み止めくらいにしかならないでしょうけれど」
ラッテンの演奏によって祭の体の痛みが取り払われる。
二人に礼を込めた視線を送り長筒の中に入り込んだ。
「お願いねディーン!」
ディーンが長筒を背負い角度を巨龍の口に合わせる。
そして飛鳥が霊弓を引き絞り、シュトロムに向かって命じた。
「『放て』!!」
シュトロムの中で超圧縮された空気が長筒の中を満たし、
その内部に彫られた螺旋の溝に合わせ駆け抜ける。
そして中で詰りとなって押し出された祭の肉体は、
並の砲弾を圧倒的に上回る速度で飛び出し、一直線に巨龍の口内そして体内へ。
「後は任せて、祭君」
*
「何故だ!!何故二人を行かせた!?
巨龍の力がどれほどか分からんわけあるまい!!
無望な突撃で命を散らせるなど馬鹿のすることだ!!」
「二人は馬鹿じゃない!
馬鹿はレティシアの方だ!!
勝手に諦めて!勝手に死のうとして!!」
「勝手だと!それ以外にないからだ!!
もう巨龍も抑えていられない!
”アンダーウッド”を襲いはじめる!
どうしようもないんだ!!」
「一人でなんとかなる訳ないだろ!!!」
頼華は力いっぱいレティシアを抱きしめた。
精神体で触れることのできないはずの身体を。
「なんなんだよ、それ以外にないって、どうしようもないって!
本気で死にたくないならそう言えよ!
傷つけたくないなら助けを求めろよ!
オレは頼りないけどそれでも頑張るから!
オレはもっともっと、レティシアとずっと一緒に生きたいんだよ
だから
そんな悲しいこと言うなよ」
「私も」
レティシアの心のタガは外された。
「わたしももっといきたい、
また”ノーネーム”にかえりたい!
ライカとたくさんおもいでつくりたいよ!!」
レティシア=ドラクレアという人物は今までコミュニティの為に全てを賭けてきた。
かつて吸血鬼たちのコミュニティを率いてきたときも。
” ”時代に戦ったゲームでも。
そして”ノーネーム”となった今も。
姫という身分が、神格保持者という実力が、年長者という立場が、
彼女を縛り続けてきた。
レティシア=ドラクレアという戦い続けた歴史に、
最後の最期に
そしてそれは決して動くはずのなかった少女としてのレティシアの時計の針を動かした。
「やっと本音言った。大丈夫だよレティシア。
『みんな!頼んだ!!』」
少女の耳に力強い返事が届いた。
『当然!』『任せろ!』『勿論よ!』『安心して!』
「最強の仲間たちが頑張ってくれる。
それにオレも、あ~痛かったらごめんね~?」
いつもの軽い口調になり緩み切った表情。
それを見てレティシアは不安も恐怖もなかった。
高々と挙げた両手を頼華は勢いよく振り下ろした。
*
「仕上げよディーン!私たちで止めるわ!!」
『飛鳥さんディーンへの指示は霊弓を用いて、
可能なら内部から響かせる形で」
「馬鹿な!直接受け止める気か!?」
離れた場所で魔獣を相手取り戦っていたサラが慌ててやってきた。
「そのつもりよ」
飛鳥は短くそう答えるとディーンの装甲の隙間に入り込む。
それを追うようにサラも中に入り込んだ。
「確かにこの人形の大きさなら巨龍に一撃をくわえられるやもしれん!
しかし受け止めるなど不可能だ!!」
「可能不可能は関係ないわ!やるだけよ!!」
聞く耳を持たない飛鳥は霊弓を弾き、
反響し飛鳥の”威光”の力が少し増幅される。
「”アンダーウッド”には”ノーネーム”の子たちもいる。
そして私は”アンダーウッド”を守ると約束した。
それに友達に”頼まれ”ちゃったから!」
怯えなく鼓舞された飛鳥の表情からは微塵も勝利を疑っていないことが分かる。
その表情にサラは己を恥じた。
これから”階層支配者”になろうというモノが、
敵の力の前に及び腰になっていたことを。
誰よりも先頭であの巨龍を迎え撃つべきはずであったことを。
「ならば私も全てを賭けよう!」
腰に提げた短刀をぬき、自分の龍角をサラは切り落とした。
「何をやってるのよ!!」
「龍角は純度の高い霊格だ、
この人形、ディーンに捧げて、、、
必ず、役に・・・・・・・・・・・・」
意識の途切れたサラを抱き、龍角を手にする。
「ディーン、サラの覚悟を受け取って!」
サラを背の内側にもたれさせ、
龍角を霊弓につがえる。
「『巨龍を受け止めるのよ』!!」
放たれた龍角がディーンの装甲に触れ、
その全身に行き渡る。
そしてディーンの体内に
燃え上がった炎は主人たちを避けて全身を駆け巡る。
血液のごとく循環する炎はその熱をたぎらせ大きくなる。
「DEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEN!!!!!!!」
漲る力に雄たけびを上げたディーンが巨龍へ向け突貫する。
*
衝突の寸前
「『移動制限・減速』!『進入禁止』!」
巨龍よりもさらに巨大な
その手の隙間を縫うように
*
急激に速度を落とした巨龍をディーンが正面から受け止める。
しかしその質量、速度の双方勝る巨龍の進撃に押されるディーン。
「っっっっっっっ痛!!」
衝突時の衝撃で内側に叩きつけられた飛鳥。
気を失ったサラを抱いていたために受け身を取ることもできない。
「ディィィィィーーーーーン!!!」
力の限り叫び鼓舞する飛鳥。
*
「気休めにもならねえ!!」
ヴェーザーが隆起させた大地で踏ん張り用のステップをディーンの足に作り続けるが、
なおも押し込まれ続ける。
ラッテンの演奏によってシュトロムがディーンの背を押すが絶対的に大きさが足りていない。
*
衝突前から巨龍の体内で取り込んでいた兵器や爆雷、轟炎をありったけ放出する祭。
巨龍の消化液に焼かれながらも攻撃の手を休めない。
「だったらこれでどうだあああ!!」
右手からはプロミネンスを、左手からは”死の風”を放つ。
*
体内からの
これを見逃さずディーンは拳を顎に叩き込み、この頭蓋が天を向く。
大天幕が開き立ち込めていた暗雲が晴れ渡り太陽の光が降り注ぐ。
歩の光に迎えられるように巨龍は天へと還り、
そこ体が光となって消えてゆく。
その透けた体から零れ落ちた祭が叫ぶ。
「やれえええぇぇぇ!!十六夜いいいぃぃ!!!」
光となった巨龍の心臓。
そこにひときわ煌めく極光。
白銀の流星となった耀の手から十六夜が跳んだ。
「見つけたぞ!!十三番目の太陽!!」
十六夜の両手から溢れる光の柱。
それを束ねて極光へとぶつける十六夜。
撃ち抜かれた極光より、レティシアの本体が零れた。
流星が綺羅と駆けその身を拾い上げ滞空する。
その周りを薄い膜が展開した。
*
「『限定遮断・太陽光』!
またあとでね、おやすみレティシア」
*
その二日後、レティシアは目を覚ました。
「・・・・・・ここは」
「”アンダーウッド”の主賓室。
体に異常はないよ、ただ寝てただけ」
耀の声にレティシアは体を起こし部屋を見渡した。
「頼華ならすぐ下だよ」
ベッドから体を乗り出し見ると寝袋にくるまって眠っている頼華の姿があった。
「運び出されないように『進入禁止』でガードしてるの」
そう言って耀は花瓶を空間の上に乗せてみせた。
「大変だったんだから、『ずっと起きてる』って言って。
休まずいたら目覚めたレティシアが泣くよって無理やり寝ることまでは認めさせて」
手当の跡が見える顔を覗き込んで笑顔がこぼれる。
「私は皆に伝えてくるね。
まだ休んでなきゃだめだよ」
しっかりと釘を刺して耀は部屋を出た。
「私は幸せ者だな。なあライカ?」
ベッドから布団を降ろして、ライカの隣で再び眠りについた。
*
収穫祭本陣営。
ジンとともに十六夜と祭が同席し、今回の魔王討伐の功績授与の話をしていた。
「レティシアさんの隷属は問題ないでしょう」
「確かに太陽主権はおいそれと与えられねえわな」
「ジン君は代わりに要求したいものは「あります」
祭の問いを待たずにジンが言った。
「御チビがねだるなんて初めてじゃねえか!
面白れえ、言ってみろよ!」
「では。
”ノーネーム”の六桁昇格と、以前保有していた土地の返却を」
ジンの発言に三人、十六夜たちと”
「いくら魔王討伐の功績でも旗を持たないコミュニティに六桁昇格は許可されません」
「旗なら作ります」
「成長してるねジン君!」
「今の”ノーネーム”なら可能か」
「どういうことです?」
「我々”ノーネーム”は連盟旗を作り掲げます。
これなら問題ありませんよね」
「分かりました。
その旨、白夜叉様にお伝えしておきます。
その為連盟結成まで保留となります」
「承りました」
会談がひと段落して、翠は忙しいようですぐに部屋を出て行った。
「まさか御チビに二度も出し抜かれるとはな」
「いやいや僕も驚いた。
でもまあ十六夜も何か企んでることがあるんだろ?」
「お互い様だ。
お前だって昨日からこっちの書庫に入り浸ってるじゃねえか」
二人して底を見せない笑みを浮かべて探り合っていると、
扉が開かれペストが入ってきた。
「お疲れ様、メイド長が目を覚ましたそうよ」
「ありがとうペスト」
余談だが結局ペストは平時は”ノーネーム”でメイドとして働くこととなった。
「じゃあ話の続きは後にして」
「お見舞いに行きましょうか」
揃って席を立ち、助け出した同志の眠る部屋へと向かう。
これからは「降臨、蒼海の覇者」を進めつつコラボもまったりと
ああでも、先に「リリの大冒険」をやりますよ!!