”他力本願な不死”と”自由気ままな指揮者”も来るそうですよ? 作:バリアリーフ
この章はフラグばら撒いたり回収したり魔改造進めたり。
リリの大冒険(前)
魔王の襲撃を乗り越えた”アンダーウッド”。
そこでは再び収穫祭を執り行うための準備が進められていた。
多くの外門、コミュニティから再興の祝いと魔王撃退の祝いが贈られ、
物資の面ではなかなかの潤いを見せている。
「祭様!ありがとうございます!!」
「いいよ気にしなくて。
気分転換に散策してただけだから」
リリとキリノは収穫祭の準備の為に働いていたところ祭と出会い、
暇だからと荷物運びを申し出たところだった。
「祭様には空のお城でも助けていただいて、
なんだか申し訳なさでいっぱいです」
「それこそ気にしなくていいって。
キリノちゃん達がいなければゲームクリアも厳しかった」
祭の言葉は謙遜でもなんでもなく本当に子供たちの協力がなければ
星座の欠片を集めることに時間がかかってクリアできなかった、という本心だった。
「でも、何かって言うなら今度飛鳥さんにプレゼントを贈ろうと思うんだけど、
よさそうなお店を教えてくれるかな?」
「はい!私たちがよく使う花飾りのお店にご案内します!」
「ありがとう」
「なんだ祭、両手に華って感じか」
三人で歩いていると十六夜が声をかけてきた。
「荷物運びのバイト、の手伝い」
「ヤハハ、適任だなそりゃ」
「十六夜様はどうして食材置き場へ?」
「ちょっと手持無沙汰になってな、
それで久しぶりに何か作ろうかと思って」
「面白そうだな!
じゃあこれを一戦目にでもするか?」
「ほう?悪いが料理に戦略は絡まねえぜ?」
不穏な空気ではないがバチバチとぶつかり火花でも幻視できそうな睨み合いに、
リリとキリノは口を挟めなくなってしまった。
「それって乱入あり~?」
「おい頼華、お前料理できたのか?」
「あ、りとぅ!」
「おいおい」
「大丈夫大丈夫!
レティシアとタッグで挑むからね~」
「待て」「待った」
「え~?文句あるわけ~?」
「大有りだ!!」
「メインで厨房を預かってるリリちゃんやレティシアが相手になると、
勝負の方向性がかわってくるだろう」
がやがやと言い争っているとその騒ぎの集団を見つけた女性陣がやってきた。
「何を騒いでるのよ」
「レティシア似合ってるよ~!」
「ありがとうライカ!」
飛鳥の質問を完全無視でカップルがイチャつく。
今レティシアは大人サイズでカジュアルセーターにパンツルック。
髪を編んで前に流し、伊達メガネといういでたちだ。
「それで?」
「僕と十六夜で料理勝負でもしようか、となっていたら頼華が」
「レティシアと組んで自分も参戦させろって言いやがるからな」
「オレ一人で勝てるかー!」
「なら十六夜たちもサポートを付けてはどうだ?」
レティシアの提案に驚く二人。
そして飛鳥が乗った。
「それはいいわね!
じゃあ私と祭君、十六夜くんには春日部さんが付いてあげて!」
「えっ!?」
「春日部は料理はどのくらいできる?」
「一人暮らしみたいなものだったから、それなり?」
「そうか、よしこの勝負受けて立つぜ!!」
「ならリリちゃん達はサラさんやガロロさんに伝えてきてくれるかな?
審判になる人が必要だからね」
「でも」
「荷物運んでおくよ」
「じゃあ夕飯に持ち寄るってことで~」
「ジャンルは?」
「そうだな。洋食で縛っておくか」
「OK」
「ホラ行くぞ春日部!まずは食材の厳選だ!」
「う、うん!」
耀の手を引っ張って十六夜は走り出していった。
「十六夜も罪作りだな」
「だね~。アレが許されるのは物語の主人公だけだって~」
「二人とも気づいてたの?」
「丸わかり」
「耀も意外と可愛らしいところがあるんだな」
「というか飛鳥さん狙ってましたね?」
「何も企んでなんかないわよ?ええ」
「リリちゃん達もこのことは秘密ね~」
「わかりました!」
「じゃあサラ様たちの所に行ってきますね」
リリとキリノが手を繋いで仲良く走って行く。
「じゃあレティシア行こっか!」
「ああ!」
「少し出遅れますが許してくださいね」
「別にかまわないわ」
それぞれが手を繋いで別の方向へと歩んでいった。
*
耀は少し落ち込んでいた。
いきなり手を握られて走り出したときは胸の高鳴りでいっぱいだったが、
十六夜が目当ての食材を見つけたのか手を離されてしまったからだ。
それでも気を取り直して耀は声をかけた。
「メニューは決まってる?」
「ああ、キッシュを作ろうと思ってる。
春日部は作ったことあるか?」
「ううん、でも作り方は知ってるよ」
「ソイツは重畳。
あとは具材のメインだが、」
「カボチャはどうかな?
ジャックが個人的に作ってるのを卸したって言ってたから、
きっと美味しいはずだよ」
「本当か!かなり期待できるな!」
「うん!」
はたから見れば完全にデートと言って過言無い様子だった。
*
「こいつは困った!
”
「確かに他の二組の料理も美味しかったが、
このパンプキンキッシュは圧倒的だ!!」
「やったな春日部!」
「びくとりー!」
並んで座る二人が微笑み合ってハイタッチをキめる。
「悔しいが確かに一番はキッシュだな」
「せっかく二人で作ったのにね~」
頼華とレティシアは手間のかかるパエリアをわざわざ作ってきた。
イカと海老をふんだんにトッピングした一品で、
皆でとりわけ食べるには一番ふさわしい品かもしれない。
「お嬢様たちのカポナータもなかなかだったぜ」
「せっかくだから野菜を中心にしたかったのだけど、
春日部さんの目利きには敵わないわ」
「そうだな、嬢ちゃんの嗅覚なんかで一級品が揃えられなきゃ、
引き分けだったろうぜ」
「今回の勝ちは春日部のおかげだ!
助かったぜ!」
「ううん。私も十六夜と料理するの楽しかったし!」
とてもうれしそうに話す耀の表情を見て、
サラとガロロも察する。
(なるほど、嬢ちゃんも苦労しそうだ)
「リリちゃん苦手なモノでもあった?」
食事が進んでいないリリの様子がふと目に留まり、祭が声をかけた。
「いや、リリをはじめ”ノーネーム”の子たちは好き嫌いなく食事をするように指導している。
どうしても苦手なモノは調理時に工夫して食べられるようにも気を使っているぞ」
「何かあったの?」
少し戸惑ったような表情をリリは見せるが、
全員が話しだすのを待ってくれていると分かるとつぶやくように、ゆっくりと話し始めた。
「実は、黒ウサギのお姉ちゃんによく似合いそうなブローチを老いてるお店があったんですけど、
でもその、・・・・・・買うことができなくて」
「値段の張るものだったのか?」
「いえ、あの高級なお店だったのはそうなんですけど、
違う意味で買い物ができなくて」
「違う意味?」
「ギフトゲームが関わってるとかか」
「十六夜様のおっしゃる通りで、
クリアしたものにしか購入を認めないという”契約書類”がありました」
「そういったものはよくあるんですか?」
「商業コミュニティなら考えられなくはねえ。
”六本傷”の本店も一見お断りの意味でゲームを用意してる」
「ブランドを高く意識するコミュニティであれば、
だが収穫祭という場でそれは珍しいか」
ガロロとサラ、それぞれが顔をしかめる。
「たぶんもっと特殊だと思います。
今まで見たことないような”契約書類”でしたし、
店主さんも不在でしたから」
「見たことないような”契約書類”か」
「気になるな」
それからより詳しくリリから話を聞き、
六人に案内役のリリと収穫祭責任者のサラを加えた八人でもう一度その店に行く事となった。
「ああ、その前にデザートはどうだい?」
皆が立ち上がろうとしたときに祭が声をかける。
「デザート?」
返答を待たずに”情報収納”で冷やした状態のカスタード菓子を出した。
「なるほど、確かに一組一品と限定はしてなかったな」
「これってブリュレ?」
「まだ完成じゃないんだ」
祭は続けてザラメ糖を出してまぶし、
焼けた鉄ゴテでカラメリゼする。
ザラメが融け、パチパチと音をだし、香ばしいにおいが漂う。
「これでカタラーナの出来上がり!
さあご賞味を!!」
「この負けず嫌いが」
「料理に戦略は絡まない?馬鹿言え」
座り不敵に笑う祭。
好敵手を見下ろす十六夜。
結局は測りがたい勝負にガロロ達が匙を投げ引き分けとなった。
*
一同が断崖の裂け目の前にやってきた。
ここが件の店の入口らしい。
「よくここに入ろうと思ったね~」
「その、暴れ牛に撥ねられて・・・」
「暴れ牛って」
ここまでの道中、次第に人が減ってゆき現在八人以外誰もいない。
「いくらなんでもそれは」
「そう都合よく撥ねられて隙間になんか」
「ちょ!十六夜それフラg「暴れ馬だあああああぁぁぁ!!」
「ひゃーー!!」
キッチリ最後尾にいたリリ
断崖の隙間に転がり落ちていった。
「・・・」
「・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・あ~あ」
「何をしている!早くあの子を追いかけるぞ」
サラに一喝されてようやく断崖の隙間へ。
*
「リリ大丈夫!?」
「はい、ちょっとびっくりしただけです」
「明日の晩は暴れ馬の馬刺しで決まりだな」
「なら私は暴れ牛でステーキでもご馳走しよう」
「牛の方はマーキングしといたからね~」
「いつの間にそんなことできるようになったの?」
「最近?」
「この件が片付いたらリリちゃんのギフト鑑定もしてみよう」
「ギフト鑑定ですか?」
「本当に偶然とは思えないから、念のためにね。
希少確率を引き寄せる強運系のギフトがあるのかもしれない」
「そのことは後だ。先に進もうぜ」
裂け目から入る月光は少なく辺りは非常に暗い。
用意していたランプに火をともして進んだ先に”契約書類”の張られた扉があった。
「”ゲームをクリアしたものにのみ売買可”ね」
「突撃!隣のお店屋さん!れっつご~♪」
何人か嫌な予感を感じながらも、
扉を開ける頼華に続く。
「「わあぁ~~!!」」
感嘆の声が漏れる。
店内に入ればそこには豪華絢爛な調度品や意匠の凝らされた一点ものであろう品々。
数々の貴金属、いかにも、という骨董品までずらりと並べられている。
そのうち一つをレティシアは手に取る。
「これらはどれも本物のようだな。
付いてる値も相応といったところか」
簡単にならレティシアは目利きができる。
そしてレティシアは並ぶ品が本物であるということに、より不安を感じた。
「ね~ね~みんな!」
頼華に呼ばれ一斉に振り向くと、
「黒ウサギのマネ
『カップ一つに金貨38枚!?お客様舐めすぎでございますヨ!!』」
「8点」祭
「6点」十六夜
「3点」飛鳥
「9点」耀
「味方は耀だけなんだ・・・」
「因みに春日部、何点満点だ?」
「百じゃないの?」
「タイミングが悪かったんだ。
私はよく特徴をとらえていると思ったぞ」
いじけてしまった頼華をレティシアが慰めている。
その様子が微笑ましいのかリリはちょっと赤くなっている。
一人先に進んだサラが、
椅子に座る人形の手から”契約書類”を取って内容を確認する。
『───わたしはせかいいちのはたらきもの───
ひとりめのわたしはせかいいちのはたらきもの!
だれのてをかりなくてもうごいてうごいてうごきつづけたよ!
あまりにうごきつづけたから、はじめのとうさんもおおよろこび!
だけどあるひ、それがうそだとばれちゃった。
ひとりめのとうさんとわたしは、うそがばれてこわれちゃった。
ふたりめのわたしはせかいいちのはたらきもの!
ともだちがてをかしてくれたから、うごいてうごいてうごきつづけたよ!
あまりのもうごきつづけたから、つぎのとうさんもおおよろこび!
だけどあるひ、それがにせものだとばれちゃった。
でもふたりめのわたしととうさんは、ともだちのおかげではたらきつづけたの。
さんにんめのわたしはほんとうにはたらきもの!
まだうまれてないけど、えいえんにはたらきつづけるの!
はやくうまれろ!はやくうまれろ!みんながそういいつづけたよ!
だけどあるひ、わたしがうまれないとばれちゃった。
だからさんにんめのとうさんは、さんにんめのわたしをあきらめたの。
だけどそんなのゆるさない!たくさんのとうさんがわたしをまっている!
とみも!めいせいも!じんるいのゆめも!わたしがうまれたらてにはいる!
だからお願い・・・・・・私を諦めないで・・・・・・! 例え、真実が答えでも・・・・・・!』
サラが読み終わる頃には全員が覗きこむように読んでいた。
「確かに見たことないね~」
「こういった書式は珍しいのか?」
「私も数度、目にしたくらいだ」
「私はサッパリだ、お前たちに任せるよ」
「それでいいのか?次期”階層支配者”様が」
「お前たちや白夜叉様と違って誰もが万能なわけではないのだ!」
「別に僕たちも万能というわけではありませんよ・・・」
「祭君?」
少し昏い声色になった祭を飛鳥が心配する。
「っ!!皆!」
耀の五感が異変を感じ臨戦態勢を取り、
その様子に全員が警戒レベルを引き上げ、
「レティシア逃げて今すぐ!!!」
”空間信号”を利用して敵の”容姿”を先に知った頼華が叫ぶが少し遅かった。
急いで十六夜がリリを抱えたとき、店の奥の扉が開け放たれ
大小さまざまな幾百もの
マッチョ人形が 現れた!
「「「「「うわお」」」」」
シンクロ率100%
問題児四人とレティシアがコンマの狂いなく同じ言葉を発した。
衝撃的な出会い!
あまりの
リリ号泣3秒前!
造形美としてソレラは非常に完成されており、
見る人が見ればソレラは素晴らしくできのいい作品なのだろう。
彫刻のようにきれいな曲線と程よく浮き上がった血管。
丁寧に焼いたであろう褐色の肌。
そして一張羅のブーメランパンツはおそろいだろう。
いくつかのポージングを見せた後、
輝く白い歯を魅せ、
『ムキッ!!』
「ムキ!?」
「ムキ!!?」
「ムキって鳴いた!!?今ムキって鳴いた!!?」
「落ち着け女性陣。
今のはきっと鳴き声じゃない」
「そこはポージングの名前を言うべきじゃないのかな?」
「hahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahaha」
「(だから言ったのにな~)」
サラにはひびが入り、
飛鳥と耀は軽度のパニック。
リリはもう泣いてしまい、
レティシアは既に少し壊れて笑いだし、
いい加減な対応の十六夜。
一人ずれた祭と、
レティシアにしがみつかれ頼華は呼吸不可。
『マッチョ!!』
「マッチョ!?」
「マッチョ!!?」
「マッチョって鳴いた!!?今絶対マッチョって鳴いた!!!」
「そうだな、鳴いたな、うん、鳴いたでいいか」
「自分でマッチョってあざといのか、製作者が馬鹿なのか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「(そろそろ苦しいよ~?)」
女性陣はそろって恐慌状態といおうか、
収拾がつかなくなっている。
それと頼華の残存酸素がちょっとマズイ。
パン!
「とりあえず片付けましょうか」
空気感の全く外側から、
祭が発砲して一番近くのマッチョが倒れる。
それをきっかけとして均衡が崩れ、
おびただしいマッチョウェーブが押し寄せてきた。
「「「きゃあああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」
飛鳥、耀、リリの悲鳴が響き渡る。
サラは『マッチョ!!』の時点で一目散に逃げ出しており。
レティシアは頼華にしがみついたまま気絶している。
「キ、キモイ!キモイわ!!」
「ない、アレはない」
「もうぃやです」
仕方なく逃走してているとポツリと十六夜が
「・・・・・一体欲しいな」
「「「やめて!」」ください!!」
「あきらめろ十六夜。
ゲームをクリアしないとアレも手に入らない」
「「「そういうことじゃないから(です)!!!」」」
*
断崖の端まで何とか逃げてマッチョウェーブから逃れた一同。
「今日は大部屋を貸してもらいましょうか」
「そうねそれがいいわサラ「私もお願いする「もちろん「その、できれば「リリ一緒に寝よう「お願いします」
「あと誰かレティシアを起こしてやれ。
頼華死ぬぞ」
「「「「あ」」」」
”空間信号”で前が見えずとも逃げてきた頼華だったが、
しがみつかれたレティシアを抱えたまま走ったせいでグロッキー状態。
そして遂に倒れた。
少しずつレティシアの腕がはがされていく。
「あとの問題は」
「あの”契約書類”だな」
十六夜と祭は店の奥にあった人形を思い出していた。
「また明日来ますか」
「「断固拒否!!」」
「なら二人は収穫祭の準備手伝ってりゃいい」
「ありがとぉいざよい」
地面にへたり込んでしまった耀の言葉。
立ち位置の都合でベストな上目使い。
(・・・・・・・・・・・・//)
「ほら」
そっけなく十六夜が手を伸ばした。
「ごめん、たてない」
「安心して気が抜けちゃったかな」
「仕方ねえ、ちょっと動くなよ」
畳んでいた耀の足を延ばさせると、ひざ裏に右腕を入れ左腕で背中を支える。
そしてそのまま抱え上げた。
「ひゃ!」
「じゃあ先行ってるぞ」
「わかった」
夜でありながら真っ赤になっているのが分かるほど耀の顔は紅い。
「ねえ祭君」
「頼華を起こした後でいいですね」
「うん♪」
珍しく飛鳥が甘えたがっている。
その為、祭は強めにひっぱたいて頼華を起こした。
「ん、あれ外?
そっか思い出した」
意識が戻った頼華はあたりを見回しレティシアの姿を見つけて安堵した。
「一度戻ることになったから」
「わかった~。リリちゃんは平気~?」
「あ、はい。先ほどは十六夜様が助けてくださったので」
「よいしょと」
気絶してしまったレティシアを抱え上げ、
「じゃあいこっか~」
先に歩き出す頼華、リリはそのあとに続く。
「サラさんは」
「私も、平気とまではいかんが少し落ち着いた。
部屋を用意して待っているぞ二人とも」
炎翼を出してサラが飛び上がった。
僅かにふらついているが大丈夫であろう。
「お待たせしました」
「こわかったあああぁ!」
「ええ、怖かったですね」
せきをきって抱きついてきた飛鳥の頭を撫でてやる。
そのまま少しの間何も聞こえないふりをしていた。
*
「ねえ、さっきちょっと不機嫌だった?」
「もう飛鳥さんに隠し事できないですね。
ちょっと
「よかったら聞かせてくれないかしら」
「ええ、でも少し冷えますから先に戻りましょうか」
少し前傾になって飛鳥の身体を傾けると、
腿裏に腕をまわしてすくい上げるように抱き上げた。
「慣れていないのでしかっり摑まっていてくださいね」
嬉しそうに飛鳥は腕を首に回した。
「今回はちょっと厳しいゲームです」
「え?」
「後でまとめて説明しますが、黒ウサギに反則取らせるくらいしか今は思いつかないですね」
「それほどやっかいなゲームなの?」
「ゲームが成立していませんから・・・」
(また少し昏くなっちゃったみたい)
それ以降は言葉をお互い発さずに、
飛鳥は祭の肩に頭をもたれさせた形のまま帰って行った。