”他力本願な不死”と”自由気ままな指揮者”も来るそうですよ? 作:バリアリーフ
「昼食後に全員で”アンダーウッド”に向かうぞ。
今度は”ノーネーム”
慎みある行動を忘れぬように、そしてついてすぐに先行している年長組とも連携をとれるように!」
「「「「「はい!!」」」」」
”ノーネーム”本拠にて、一時的に戻って清掃や雑務の処理を行っていたメンバーが、
再び”アンダーウッド”へ向かうための準備を進めている。
「やっと私も収穫祭へ参加できるのだな」
新たに”ノーネーム”のメイドに加わった白雪姫。
彼女もまた収穫祭を楽しみにしていた。
「”六本傷”との同盟締結も二人に任せちゃったし、
案外することもないものね」
「それは違うぞペスト。我々は主たちのために常に考え行動する必要がある」
メイド長のレティシアと同じくメイドのペスト。
この二人も本拠に戻っている。
因みにペストの言う二人とはラッテンとヴェーザーのこと。
「レティシア様。昼食は簡単に済ませられるものの方がよろしいですか?」
主力たちと交流が深く物おじせず明るい性格から年長組の代表をよく任されるリリ。
「そうだな、向こうの境界門から少し歩く必要もあるから程よくしかし重すぎない方がいいだろう」
「なら和え物をおかずとした和膳で「何言ってるのよ!?手間のかからないパンが焼きあがっているでしょう!」
白雪姫とペストは食文化が違いすぎることもあって対立が多く、
いつものごとく言い争いが始まる。
「お前たちいい加減にしないか」
「レティシア!貴女も洋食の方がいいでしょう!」
「おいこらまな板娘!それはいささか卑怯というモノだろう!」
「あら新人のくせして意見する気なの?乳蛇!」
正式に隷属したのはペストの方が後なのだが、
水道施設建設の関係で白雪姫がメイドとして働きだしたのは後になるのでそのあたりは非常に難しい。
「大体なんだ!既に決まった水田開発にもケチをつけおって!」
「お米お米お米!それしか言えないの!?
小麦の作付が少ないことを指摘するのがいけない事なのかしら!」
「少ない!?きちんと等分の面積であろう!」
「はあ!パンを作るのに必要な小麦の量も知らない訳!
あまりにもびっくりして笑っちゃうわ!!」
ローテーションで本拠に戻る晩であった頼華が起きてきた。
「ゎふぁ~あ。おはよ~」
「ああライカ、おはよう!
大きな予定がなくとも寝坊はよくないぞ」
「ごめんごめ~ん。また?」
「ああ」
「なんで二人そんなケンカすんの?
和食も洋食もどっちもおいしいじゃん」
「お箸が使えないから!」
というのはペストの言い分。
「ぱさぱさして牛乳がないと飲み込めないから!」
これは白雪姫の言い分。
「二人とも。それは米とパンの食べにくさが理由ということか?」
「じゃ~カレーライスならスプーンで行けるでしょ」
「そ、それは」
「小麦もうどんとかにしちゃえば~?
無理して箸で食わなくてもいいし」
「頼華様、素晴らしい提案です!」
「リリちゃんありがと~。
あとはオムライスとか?あ~卵そんなにないか~。
収穫祭で鳥狙うかな~」
顔を洗うために頼華は洗面室へと歩いてゆく。
「ということだ。
今後揉めることは許さんぞ!」
「分かったからそのドヤ顔止めなさいレティシア。
ちょっとカワイイからすんなりムカつくこともできないし!」
「レティシア殿の旦那が優秀だということは重々承知しているから」
「旦那などと白雪殿は気が早いなあ!」
上機嫌となったレティシアがスキップで廊下をゆく。
「まあ一理あるし、」
「そうだな、仕事に戻るか」
「リリ、頼華に朝食もって行ってあげなさい」
「はい!分かりました!」
”ノーネーム”は現在平和です。
*
収穫祭会場。若葉の間。
此処で祭とジャックは会談をしていた。
内容は祭が依頼したギフトの受領と雑談程度だが。
「助かりましたよジャック。
お陰でまた少し戦いに幅が広がる」
「ヤホホホ。
祭殿はもう完全なお得意様ですからね。
単一コミュニティよりも多く御代を個人から戴くなどそうありませんし」
「まあ稼ぐだけなら魔王のゲームよりも思いつきやすいからね」
「羨ましい限りです」
「ところで彼女は、フェイス・レスも今こちらに?」
「ええ、今頃狩猟祭の方で腕を振るってくれているかと。
彼女にも頭が上がりませんよ。
客分でありながら”ウィル・オ・ウィスプ”の名を上げるために動いてくれてます」
「そう、狩猟祭にですか。
ガロロさんとの制約もあるし二人は優勝を逃すかも」
「飛鳥嬢たちも?」
「はい。
ああそれと十六夜が喜んでましたよ。偏光メガネ?だったかな」
「それは良かったです。
ここだけの話ですが他にも欲しいという方が
多くいらっしゃって増産することになったんです」
「となると量産するんですか?
ジャックは一点ものを多く作っていたと思うのですが?」
「実はアーシャが模倣の才能があったようで、
創作はまだまだですが私やウィラが作っているところを見せて勉強させていたら意外に。
特にガラス系の物であれば私と遜色ないくらいのものを作れるくらいになったんです!」
「そう言えば古城で見せてもらったガラスの鍋も彼女の作品でしたね」
「私も時々驚かされるような芸術的なモノ作りますよ」
「女の子特有の発想は流石に真似できませんし思いつくこともできませんから」
「まったくです」
「そろそろ狩猟祭の終わるころですね」
「ええ、すみませんが別の商談もありますので私はこれで」
「分かりました。今後ともよろしくお願いしますジャック」
「こちらこそ祭殿」
握手を交わして二人、若葉の間を出た。
そのままジャックは上の階へと昇って行った。
「さてこれからどうしましょうか」
「おや?あなたは」
声が聞こえ振り返れば仮面の騎士フェイス・レスがいた。
「直接お会いするのは初めてですね。
”ノーネーム”の仲邑祭です」
「”女王騎士”、フェイス・レスです。お見知りおきを」
「先の戦いではありがとうございました。
飛鳥さんや黒ウサギも助けていただいたようで」
「いえ、私にも私の都合がありましたので。
ところでジャックと会談なさっていたのでは?」
「すれ違いですね。ちょうど先ほど別の商談に向かったところですよ」
「そうですか」
少し声色が落ちた感じになり、顔をそむけるフェイス。
何かの用があったのだろうが手持無沙汰になったようだ。
「よければ食事でもどうですか?ご馳走しますよ」
「突然どうされたのですか?」
「少しお話してみたいと思ったもので、
それに黒ウサギからでは要領を得なかったので、
あなたが戦った少女についても聞きたいですから」
「なるほど、そうですね」
「同志達の評価も可能であれば聞かせていただけませんか?」
「それ以外であればお答えしましょう」
「ありがとうございます。
好みなどはありますか?」
「いえ、ですがせっかくですのでここ特有の肉料理でも久々に」
「では行きましょうか」
*
”六本傷”主催の立食会場。
そこに設けられたテーブル席に座った二人。
どことなく相性がいいらしく会話は弾んでいた。
「なるほど。空間、距離系統の恩恵ですか」
「ええ、対抗手段もそうそう無いようなかなり貴重なモノでしょう」
「ただひたすらに”届かない”か。
純粋な無力化よりもやっかいですね」
「さすがですね。
伝聞でそうは考えられないものです」
「黒ウサギに聞いてさわりほどは知っていますから」
「そうでしたね。ジャックから貴方であれば対策の一つも出してくれると伺っていたのですが」
「ジャックも随分なことを言ってくれますね。
申し訳ないですがハッキリ言って情報不足です。
もう少し、恩恵の元になる伝承などが分からなければ。
せめて名前ぐらいは知りたいですね」
「妥当なところですね」
二人が食事をしながら会話していると会場から歓声が上がる。
狩猟祭で狩られた肉が振る舞われているらしく、
多くの人たちが焼けた肉にかじりついている。
その様子を見た二人は予期せず同じ言葉を漏らした。
「「一体どれだけ食べてるんですか」」
祭は耀が食べ進めていく姿を見て。
対してフェイスは耀の隣で、彼女に負けない量の皿を積み上げる大柄の男を見て。
男の方もフェイスの視線に気づいたらしく肉を食べ続けながらも手を振ってくる。
(嫌な予感の正体はこれですか)
「ッチ」
祭は驚きフェイス・レスを見た。
”女王騎士”であるフェイス・レスが、
会ってそう時間がたっていないがまさか彼女が舌打ちをするなどとは想像もつかなかった。
その理由であろう男を見ればまず目に付くのは華美な装飾をした羽根飾りのついたハット。
そして豪華な意匠の彫込まれた軽鎧と腰に提げられたサーベル。
「お知り合いですか?」
「誰がですか私は可及的速やかに処理しなければならない緊急の急用を
全身から、私は大変不機嫌ですオーラに満ちたフェイス。
おおよそを察した祭は彼女を見送ることにした。
「分かりました。またお会いしましょう」
足早に立ち去るフェイス・レス。
男は食べながらモゴムゴと何か言っているようだ。
口の中に肉を入れることを止めればいいのにと会場の誰もが思っている。
会計を済ませ、席を立った祭。
(やることもなくなったし、勝負みたいになってるようだから耀さんの応援でも)
「・・・・・・・フン。何だこの馬鹿騒ぎは”名無し”の屑が、
意地汚く食事してるだけではないか」
前列に進もうと思った祭の前に数人の男たち、
その先頭にいる男の言葉に足を止めた。
そして取り巻きであろう男たちの言葉が続くことになる。
「連中はアレですよ。巨龍を倒して持て囃されている猿の一人です」
「例の小僧のコミュニティか。
なるほど。普段から残飯を漁っていそうな、貧相な身形だ。
碌な食事も与えられていないのだろう」
「”名無し”である以上、一時の栄光ですからな。
収穫祭が終わるころには皆、奴らの事など忘れております」
「違いない。数日後にはまたゴミにまみれた残飯生活に逆戻りです」
(馬鹿な人たちだなあ。成果主義ともいえる箱庭でそんなのあり得ないだろうに)
祭は珍しく人を見下している。
苛立ちよりも収穫祭にこんな空気の読めない連中がいることが悲しく、
どう黙らせるかをただ事務的に考えていた。
「所詮、屑は屑。如何なる功績を積み上げても、
”名無し”の旗に降り注ぐ栄光など、ありはしないのだから「―――――そんなことありませんッ!!!」
よく聞く少女の声が、初めて聞く叫びが聞こえた。
「私は”ノーネーム”の同志です!
貴方の侮蔑の言葉、確かにこの耳で聞きました!
直ちに訂正と謝罪を申し入れます!」
自分の倍ほどの背丈を持とうかという男に向かって果敢に立ち向かうリリ。
(ああクソ。何で苛立ちよりもうれしさが)
温かくなる胸。
なおも一触即発しそうな場に進んでゆく。
「なるほど、じゃあ君はこの御方をどなたと心得ての発言かな。
”二翼”の長にしてヒッポグリフのグリフィス様ですよ」
「ならば改めて”二翼”の長に訂正と謝罪を申し入れます」
「祭様!」
「ありがとうリリちゃん。”ノーネーム”の為に戦ってくれて」
「部外者は黙っていろ!」
「この流れで部外者な訳ないでしょう。
僕も”ノーネーム”の同志です。
さあ訂正と謝罪を」
「馬鹿を言え!グリフィス様は次期階層支配者であらせられるお方!
お前たちのような”名無し”の屑に頭を下げるモノか!!」
「ちょっと待って、それどういうこと」
一斉にように視線が集まった。
リーダーの男、グリフィスは嫌らしく笑ってこれに答えた。
「聞かされておらんのか。
あの女は愚かにも龍角を折って霊格を縮小させた。
その結果実力を失ったのだ。なれば議長の座を退陣するのが道理だろう」
クックックと笑うグリフィス。
そして哄笑を上げて笑う取り巻き連中。
ツカツカと耀は歩みを進めグリフィスの前に立った。
「訂正して。
サラは愚かな女じゃない!」
「”アンダーウッド”を守るための覚悟を笑うモノじゃありませんよ?」
怒りに燃える春日部耀。
冷たく笑う仲邑祭。
二人のプレッシャーに取り巻きの一人が耐えかねて、
「貴様らいい加減に――――――――」
しろ!という声が聞こえたのは立食会場の上空200m。
耀の足に光翼馬の脚甲が装備され、祭の指からは旋風が渦巻いていた。
もう言葉無く、謝罪なければ実力行使だと二人の目が語っている。
「リリちゃん、下がってなさい」
「私が原因です、でも私たちが下がるいわれはありません!」
リリの勇気、魂の輝きに耀の表情も少しだけほころんだ。
「そう言えばもう一人馬鹿がいたな」
「「・・・・・!?」」
グリフィスの言葉の意味が分からず二人は今一度身構えた。
「有翼種の誇りである翼を”名無し”の猿ごときの為に失った馬鹿な鷲獅子。
あの愚弟も自分の姿を恥じて人前に姿をさらさぬくらいには常識があったようだな」
言葉と共に人化の術を解き幻獣としての姿に変わってゆくグリフィス。
だが耀も祭もそれを待ってやるほど甘くない。
「そこまでや」「むごんぐ」
二人の攻撃は第三者の介入で届くことはなかった。
「自分なんて危ないもん使う気ぃや」
「ぐむうぐぐむぐごぐんんぐるご」
グリフィスも激突は必至と逃げ出していた観衆たちも呆気にとられていた。
眼帯隻眼の武人のような男に祭が取り押さえられてるのはまだ何とか理解できる。
「あなたは?止められるだけの事というのも理解していますが。
というかそっちの人は一度食べるの止めてくれません?
何を言ってるのかもわからないし、ちょっとは空気読め!」
取り押さえられながらも祭は言う。
実際に祭が言うように先ほどまで耀と壮絶な食事合戦をしていたこの大柄の男。
この男によって耀は一撃で気絶させられた。
にもかかわらずこの男は片手に山脈をほうふつとさせる大皿に盛られた肉の山。
そこから絶妙に転がり落ちてくる肉を食べ続けていた。
「ちょお旦那、久々に会った挨拶とかいろいろあるけど、
ホンマいったん食べるの止めてえな」
「もむぐ?」
やっとのことで食べ終わった男がそばのテーブルに肉(山脈盛り)を置いた。
「いやはや!フェイスちゃんだけでなく蛟の字もここにいるとは驚いた!!」
祭を押さえていた男を蛟の字と呼び、肩をばしばしとたたいて喜ぶ男。
「リリ!祭さん!」
状況に置いてきぼりを食らう一同をかき分け黒ウサギとジン、ラッテンとヴェーザーがやってきた。
「蛟劉さん!これはいったいどういうことなのですか?」
「自分は揉め事大きくならんように止めただけや」
押さえこまれたまま祭が立ちあがり、
続けてサラもやってきた。
「関係者には事情を聴く。
本陣まで同行してもらうぞ!」
「肉もっていっていいなら」
会場中から、まだ食う気なのかと心の声が聞こえた気がした。
ハイ!新キャラです!
一応有名?どころから起用しました。
しかしオリジナル寄りのキャラになっていきますよ!