”他力本願な不死”と”自由気ままな指揮者”も来るそうですよ?   作:バリアリーフ

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水着回だと思った?

残念! そんな描写自分に期待しないでくれ(泣


ゲームに向けて

「「「はあぁ~~」」」

 

「どうしたと言うんだ三人とも?」

 

 ギフトゲーム”ヒッポカンプの騎手”の参加条件、その中に海馬の貸し出しにはコミュニティの女性は水着を着用しなければならない、というものが追加されたのだ。

 そのために”ノーネーム”の女性陣は水着を調達にやってきたのだが、レティシアを除く三人のテンションが明らかに低い。というか底辺をスレスレだ。

 

「レティシアはいいよね、体の大きさを変えられるんだから……」

 

「頼華さんに視られても褒めてもらえるだけですし、というか私なんて選択権すら与えられてませんし……」

 

「なんでこんなにも肌をさらすデザインばかりなのよ……」

 

(これはやっかいだ、私一人の手に負えるのか)

 

 それぞれが思うところあるらしく、手を動かしていろいろな水着を自分に合わせてはラックに戻してという作業を繰り返していた。もっとも黒ウサギは白夜叉が選択した水着を着ることが決められているためただの付添であるが、それでも同志達と収穫祭を楽しむ一環としてプライベート用の水着を選んでいる。

 

(白夜叉様の選ぶ水着など考えただけでも危険極まりないのです。今でさえギリギリの物ですのに、態々肉食動物に食べられに行くようなものではありませんか! こんな時に祭さんの知恵があれば可能性があったものを。タイミングの悪い方なのですよ)

 

(なんでレティシアも大人バージョンなのかな? 嫌がらせかな? 黒ウサギとレティシアに挟まれて飛鳥に前を固められてもう泣きそうだよ十六夜。今考えたら私って十六夜の好みも何も知らないんだ。可愛い水着を選びたいしできれば十六夜に褒めてほしいけど十六夜は黒ウサギ達みたいな胸とかおっきい娘の方がいいのかな?こんなことなら祭や頼華に聞きだしてもらっておけばよかった)

 

(こんなの下着と変わらないじゃない! そういった文化だということは納得できるし理解もするけど祭君以外の男性にこれほど見られてしまうようなものを着て出るなんてイヤよ! 第一祭君にすら見せてもいないのに……それにおヘソが全く隠れていないじゃないの!!」

 

「飛鳥さん」

 

「飛鳥おへソ見られるの嫌だったんだ」

 

「っぅへ!?」

 

「かなり早い段階から声に出ていたぞ」

 

「//////」

 

 羞恥に顔を真っ赤に染めた飛鳥は手にしていた水着をそのままに、試着室に飛び込んでカーテンをシャっと閉める。自分の考えていたことを口走ったこと。口走った内容。そして自分のおヘソという弱点(ウィークポイント)

 茹であがった頭に思考力なんてものがあるわけもなく、持ち込んでしまった水着をロクに確かめもせずに着替えはじめた。

 

「飛鳥のおかげで暗い気持ちがどこか行っちゃった」

 

「このように可愛らしい飛鳥さんも久しぶりでございます!」

 

「このところ耀ばかりが慌ててばかりだったからな」

 

「ちょっとレティシア!?」

 

「そうですね。最近の耀さんもそれは可愛らしくございましたよ!」

 

「黒ウサギまでっ!!」

 

「普段大変な思いをさせられてますからねぇ皆さんには。

こんな時くらい私がつついても罰は当たらないと思いますよ?」

 

 にこにこと笑う黒ウサギに、耀はなぜだか反撃できなかった。してはいけないような気がしたのだった。ここでウサ耳を引っ張ってしまえばそれで済むことではあったが、それをしてしまうとなんだか負けた気がして黙り込むことにした。

 

「そう言えば黒ウサギには浮いた話が一つもなかったな」

 

「今まで話す機会がございませんでしたから」

 

「あったのかっ!?」

 

 黒ウサギとの付き合いの長いレティシアでさえ聞いたことがなかった話が浮上した。

 

「黒ウサギが”月影の都”にいた頃の話でございますし、金糸雀様にも話したことがありませんでしたから」

 

「ずっと秘密にしてたことなのに話していいの?」

 

「本当に話す機会に恵まれたかっただけで秘密というわけでもございませんから」

 

(そうは言っても、それを話すことは辛い記憶も同時に引きずり出してしまう。耀たち皆が来てくれたことで黒ウサギの心のトゲが抜けた結果なのだろうな)

 

 レティシアは黒ウサギから時に姉のように慕われて過ごしてきた。その中で黒ウサギの心を癒してやることができなかったことを悔しく思うと同時に、外界から召喚された同志達に深く感謝の念を抱いたのだった。

 

「それは黒ウサギがまだ幼かった頃の事でございます。”其の方”は招かれた客人のご子息だったんじゃないでしょうか。黒ウサギも詳しくは知りません」

 

「名前も?」

 

「YES。”其の方”と言葉を交わしたのもただの挨拶だけ。それでもドキリとしてしまったのですよ」

 

 気恥ずかしそうに語る黒ウサギの頬が仄かに朱く染まっている。髪が緋色に変化していないところを見ると、思い出として区切りをつけているからか、それとも別の理由か。

 

「とても柔らかく笑っておられて好きになっておりました。幼いながらに”其の方”と一緒になる、等と言って都を騒ぎにしてしまったくらいです」

 

(あっ……)

 

(そうだったのか……)

 

 黒ウサギの表情に浮かんだ諦め。それを耀とレティシアは感じ取って理解した。

 黒ウサギの言う”其の方”のコミュニティも滅んだのだと。

 

「気にしないでくださいまし。黒ウサギが話したいと思ったから話したのですよ」

 

 コミュニティを愛し全てを捧げるほどの献身。黒ウサギの秘めたる想いを垣間見たようだった。同志たちが戻ってくる場所を守りたいと言った彼女の言葉には、このことも少なからず影響していただろう。

 

「大丈夫だよ黒ウサギ! 私たちは絶対負けない! どんな敵にも、魔王にも!!」

 

「耀さん……!」

 

「そうだぞ黒ウサギ、主たちは金糸雀でさえできなかった魔王()のゲームを完全攻略したのだ。”ノーネーム”は強くなる!」

 

「っはい! 黒ウサギも、もっともっと頑張るのですよ!!」

 

 3人の少女たちが決意を新たに気合を入れる。

 

「飛鳥さんも頑張りましょう!!」

 

 黒ウサギが試着室の中にいる飛鳥に声をかけたが返事が返ってこない。不思議に思った3人が恐る恐るカーッテンを少し捲って覗いてみると。

 

「倒れてるね」

 

「真っ赤ですね」

 

「それでもおヘソは隠しているのだな」

 

 飛鳥が着ていたのは赤と橙を基調としたモノキニタイプの水着で、前から見ればワンピースタイプのように繋がって見え後ろからはビキニタイプのように別れて見えるというものだ。もちろん胸元から臍下までの露出は忘れない安心設計である。

 

 飛鳥を起こして水着の再選定に思ったよりも時間がかかったのは別の話。

 

 

 

 

 女性陣が姦しくやっているころ、グリーに療養のために与えられた貴賓室ではちょっとした宴会になっていた。

 初めは十六夜が先の戦いの労いもかねて差し入れの肉を持って来ただけだったが、そこからガロロとキャロロがやってきて、更に連盟締結のための会談をしていたジンとポロロ、そしてそれに付き添っていたペストたち”      ハーメルン”のメンバーたち。

 そして新たに”      ハーメルン”に加わることとなった少女。

 

「てな感じでタルトちゃんをよろしKuー!!」

 

 以前”火竜誕生祭”でペストたちとは別に襲ってきた魔王ゲシュタルト。

 結果として全ての勝利条件を攻略され彼女は隷属の運びとなった。そこで問題となったのがどのコミュニティに属するかという点だが、”サラマンドラ”が(主にマンドラが反対したことで)辞退し、戦力バランスを整える意味合いもかねてジンとペストで協議し”      ハーメルン”に所属となったのだ。

 

「御チビが最近こそこそやってたのはこのことだったわけか」

 

『なかなか面白い同志が増えたな』

 

「といってもコイツにそれほどの戦闘能力は無さそうだけど」

 

「ポロロには分かるの?」

 

「ん? 分かるというか師匠に仕込まれたことが大きいな。俺自身戦闘はからっきしだから危険度みたいなものに対する目を鍛えさせられた。ここにいる中じゃダントツで十六夜の兄ちゃんがヤベェ」

 

 ポロロの評価にヤハハと嬉しげに十六夜が笑う。

 

「でも俺からしたら祭さんに会えないのは残念だったな」

 

「あたしも会ってみたかったかNa?」

 

「お前ら二人とも祭と接点あったか?」

 

「ポロロは温めてた企画を祭さんに先取りされてるみたいです」

 

「あたしはあたしのゲームの謎を解いたって聞いたかRa!」

 

「だから言ったじゃねえか! 時機を見るのもいいが先に商権だけは確保しとけって」

 

「そう言うなら親父、いい加減協力してくれよ」

 

「あら、何か面白い事でもあるの?」

 

「ポロロ君、(ボス)の経験を元にした魔王のゲームを問題集のようにして売りたいんですよ」

 

「確かにそりゃあ欲しがる奴は多いだろうな」

 

「でもヴェーザー、下手すりゃ反感を買うんじゃないかしら?」

 

「確かにそっちの姉さんの言うとおり多少のブーイングは受けるだろうけど、それ以上に世の中に求められる。加えてジンたち”ノーネーム”と連盟を組むこのタイミングは何より好機なんだ!!」

 

「春日部やお嬢様が勉強させてもらってるからか」

 

「そう、魔王に対抗する勢力が使っているとなれば潜在価値が上昇する。何より多くのコミュニティが魔王に対する備えをしているということが若干でも魔王に対する抑止力になるのも大きな要因だ」

 

 ポロロの商談(説得)に渋い表情を浮かべながらガロロは盃を呷る。

 

「祭の奴がいりゃあ面白く誑かすんだろうがな」

 

「それは言えてるな。むしろポロロと良いタッグになるんじゃねえか?」

 

「どうだろうな、古城で話した感じだとリスク計算は相当シビアだろ」

 

「確かに祭さんはその傾向が強いです。でもそれ以上にリスクを帳消しにできないかを考えようとされますから」

 

「「「ああ~分かるわ」」」

 

「ならジン、祭さんになったつもりでお前ならどうリスクを削る?」

 

 ポロロに尋ねられジンはしばし考え込んだ。

 そしておもむろに口を開いた。

 

「第一に価格の設定を低くしてコミュニティ規模に関わらず買えるようにすること。これ自体はポロロも考えてたとは思うけどね」

 

「そりゃあ売れた分だけ利益になる以上価格は考えたさ。高すぎると不評をかって”六本傷”のマイナスになる。だが安すぎれば質の低さをイメージさせかねない」

 

「うん、だからそこのセンスはポロロの判断でいいと思う。そして第二に今後各地で攻略された魔王のゲーム、その内容を買い取るようにすること」

 

「なるほど! それなら魔王を倒したコミュニティもより利を得られ、ウチも第二弾第三弾と発売できる! それにジンのコミュニティも潤う、か」

 

「僕たちの所は連盟価格にでもして割安でいいよ。先に助けられてるのは僕たちの方だしね」

 

「それと祭なら利益のいくらかを”階層支配者”に収めるってのも考えるだろうぜ」

 

「魔王に備えるための保険料としてなら各コミュニティも財布のひもを緩めてくれる。どうだ親父! これ以上ないと思うが?」

 

「仕方ねえな、ここまで組み上げられちゃ反論する方がカッコ悪いか。悪いなグリー、お前さんの見舞いだったはずが」

 

『構わんさ! せっかくの収穫祭だというのに私のもとに集まって騒いでくれているのだ。それだけでありがたい』

 

「ヤハハハ! 話も纏まったなら飲み直しだ!」

 

「場を濁しちまった詫びだ、グリーさん。親父の秘蔵の一本を注がせてもらうぜ」

 

「待てこらポロロ! なんでそんなの持ってやがる!?」

 

『是非戴こう!』

 

「グリーてめぇ!!」

 

 そうこうして酒宴は盛り上がり、夜遅くまで騒がしかった。

 

 

 

 

 ”ヒッポカンプの騎手”選手控室のテント。

 審判と司会を任された黒ウサギを除いて十六夜、飛鳥、耀、頼華、白雪姫が選手として待機している。

 

「レティシア殿は参加を辞退されたか」

 

「やっぱり負い目があるんだろうな、仕方ない部分もあるとはいえ”アンダーウッド”や”龍角を持つ鷲獅子”連盟の手前出場するのは」

 

「でも頼華君もそのままなわけじゃないわよね?」

 

「そりゃ~沈んでるより笑っててほしいからね~! オレ結構頑張った!!」

 

「祭が参加しないのは今回は痛いね」

 

「そうだな、気休めとして選手登録はしてあるが。”ウィル・オ・ウィスプ”に”女王騎士”が二人味方してる。手こずって万一にでも”二翼”が勝つなんてことがあっちゃいけない」

 

 彼らは控室に集まる前に”龍角を持つ鷲獅子”連盟が行っている賭け(ゲーム)の事を知らされた。この”ヒッポカンプの騎手”の優勝者が次期”階層支配者”を指名するというもので、候補であるサラは競技に参加せずに”ノーネーム”の優勝に賭けて見守っていると。

 ゲームに負ける気で挑むものがここにいるわけもないが、なお一層気合を入れて勝ちをもぎ取りに行く。そのために十六夜が指示を出す。

 

「よし、それじゃあ今回の作戦を説明するぞ! このゲームは優勝者を決めるもので他の順位は捨てていい。よってウチの本命はお嬢様の乗る騎馬だ。白雪には悪いがサポーターを増やすための措置となる」

 

「そのくらい心得ている」

 

「今回はペストたちも敵だしね~」

 

「戦闘性能の低いラッテンかゲシュタルトが騎乗してくるだろうな。ヴェーザーには二人とも気を付けろ、飛行可能なうえ直接叩き落としに来る可能性が高い」

 

「ペストも衝撃波の方で攻撃してくるでしょうね」

 

「なによりも警戒すべきが”ウィル・オ・ウィスプ”だ」

 

 十六夜の言葉に緊張感が高まる。

 

「フェイスの強さはみんな知ってるな?その上クイーンから賜ったヒッポカンプに乗るらしい。お嬢様が強化した騎馬と性能でタメを張ってくる可能性もある」

 

「私も騎乗の練習はしたしそう簡単に後れを取る気もないわ!」

 

「次にポルトスだ。明確な強さは分からないが春日部、お前はどう感じた?」

 

 収穫祭の大食いで並び立ち、その後耀を一撃で沈めたポルトス。唯一の接触を持つ耀の意見を十六夜は求めた。

 

「私も詳しくは分からないけど、単純な腕力なら下手したら十六夜レベルかも」

 

天賦(アトス)万能(アラミス)一撃(ポルトス)。生半可な強さなら戦いにすらならんぞ」

 

 白雪姫の言葉に飛鳥は冷や汗を流した。

 

「一撃のポルトスか、物語のポルトスも剛力だったが。奴は俺が捌く」

 

「任せた~」

 

「改めて言うが今回は格上に挑むと思って戦ってくれ! 全力でいっても厳しいゲームになるはずだ!!」

 

「ちょっと待ってくれ! ”二翼”の対策は!?」

 

「そんなもんただ潰すだけだろ?」

 

「早めに潰す?」

 

「徹底的に潰す?」

 

「潰してから考えたら~?」

 

「「「それもそうだ」」」

 

 白雪姫の心配もどこ吹く風だ。彼らにはグリフィスは脅威足りえないのである。

 そのまま控室を出て騎乗に向かう飛鳥と白雪姫、そして続いて出る頼華と十六夜。

 

「十六夜、ちょっとだけ時間、いいかな?」

 

「構わねえが……」

 

「先行ってるよ~」

 

 耀に呼び止められて十六夜はテントに残った。

 

「それで春日部、どんな用だ?」

 

「えっとね、ずっと……言わなきゃって思ってたことがあって…………」

 

 言い出しづらそうにモジモジとしている耀。ゲームルールの都合で水着を着た彼女は普段着用している白いノースリーブがない分小柄な身体がさらに小さく見えた。

 

「えっと、ね」

 

「お、おう!」

 

 チラリと伏し目がちだったり上目遣いに十六夜の様子を伺ったりと忙しい耀。

 空気感に中てられた十六夜が動揺を露わにしつつも返事をする。

 

「ごめんなさい!!」

 

「……は?」

 

「その、十六夜のヘッドホンを三毛猫が持ちだしたこと。ずっと謝れなくてごめんなさい。それから壊しちゃったことも……」

 

「……あ、ああ! その事か。なら気にするな無いと困りはしたがそれでも替えが効く」

 

「ううん。十六夜が今まで謝ってないのに変わらずに接してくれたことも、待っていてくれたことも凄く感謝してる。だからねちゃんと謝りたいの! 今回は特に協力しないと勝てないゲームだと思うから」

 

「そうか、なら俺はこれでこの件はすべて水に流す!」

 

「ありがとう十六夜! 行こう! 待たせちゃったら悪いし」

 

「そうだな……」

 

 晴れやかでやる気あふれる瞳の耀とは対照的に十六夜は、どこかモヤつく感情を押し殺してテントを出た。




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