”他力本願な不死”と”自由気ままな指揮者”も来るそうですよ?   作:バリアリーフ

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遂にチート!!
やっとだ!!


”反撃”

***

 

 

 空白の広間。端も空も地面もないただただ白い空間。

 祭の疲労は限界を超えていた。

 強制召集されてから休息なしに戦い続けてボロボロだった。

 それでも戦うしかなかった。

 試練(ゲーム)攻略の糸口が分からないからだ。

 過労死すらできず、傷つき致死量の出血をしても倒れられず、どれだけの攻撃を浴びせても相手も倒れない。

 倒れないのではない。

 そもそもダメージが通っていないのだ。

 

 最悪の相手、それは無表情(マスク)を張り付けた()だった。

 

 

***

 

 

「まさかお嬢様に助けられる日がこんなに早く来るとはなあ!」

 

「随分な言いようね十六夜くん?」

 

「そう怒るなお嬢様。”六条祓いの霊弓”で”水霊馬(ケルビー)”を一撃とは俺も思いつかなかった。これでも素直に賞賛してるんだぜ」

 

 アラサノ樹海を進む二人の前に”水霊馬”の群れが襲い掛かった時のこと。

 霊群である”水霊馬”に十六夜の投石では効果がなく、これはマズイかと十六夜が焦る中飛鳥は、ギフトカードから出した”六条祓いの霊弓”を一つ弾くだけで周囲の”水霊馬”を霧散させたのだった。

 怨霊としての側面を持つ”水霊馬”には効果覿面。さしたる障害にもならずにこれを駆け抜けトップに躍り出て折り返し地点に到達することが出来たのだった。

 

 折り返し地点。そこにあるは海岸線。大海原。河川のコースを遡上し昇りついた山頂に待っていた。

 

「悪いなお嬢様」

 

「どうしたのよ急に!? らしくもない」

 

「ゲームでもなけりゃこの景色は祭と一緒に視たかったろうなと思ってよ」

 

「その気持ちは確かにあるわ。でも今はゲームに勝たないと、でしょ!!」

 

「ああ、そうだな」

 

 十六夜が海岸に立つ海樹によじ登って実の収穫を行う。

 

(本当にどうしたのかしら? らしくないなんてものじゃない、どこかおかしいわね)

 

 飛鳥は十六夜の変調に疑問を抱きながらも答えに至ることはない。

 

 果実を十六夜がもぎ取るよりも早く、二番手のプレイヤーが折り返し地点に到着する。

 

「やはりあなた達でしたか、ポルトス(邪魔者)さえいなければより早くたどり着けたものを」

 

「オジサン無感動でも鋼の心臓って訳でもないんだけど……」

 

 到着から間をおかずフェイス・レスは蛇腹剣を巧みに操って海樹の果実を収穫する。

 騎馬一対、サポーターも一人ずつ。ピリつく緊張感、互いが一手で騎手を落馬させられるだけの実力者であるため、ジリジリとした間合いの測り合いを演じていた。

 この時飛鳥は喉を越え舌にまで乗った言葉を間一髪吐き出すことなく呑み込むことが出来た。

 

(今の十六夜くんに下手なことを言うのは禁物。危なかったわね)

 

 飛鳥の見立て通り、現在の十六夜はどこか不安定だった。顔色が蒼く瞳も昏い。

 普段の十六夜であれば山頂の大海原を見ただけで子供のように屈託なく景色を楽しみ、追い付かれたことも面白い展開だと(負けられない戦いであろうとも)不敵に笑ってのけるはずだった。

 

「……っっ…………!?」

 

 突如海辺を襲った異変に更なる緊張が走る。

 ”女王騎士”の二人にはこの異変の原因が分かったようで。

 

「結局来やがったかあぁぁ……」

 

「ありえませんこのようなお遊びのゲームに、待ちなさいポルトス結局ですって!? 知っていたならなぜ教えなかったのです!!」

 

「だってスタート地点に蛟の字いなかったし」

 

 苦虫を噛み潰したように口元を歪めるフェイス・レス、そしてポルトスはかぶりを振ってため息を漏らした。

 

 異変は更なる唸りを轟かせ滝下より立ち昇る水柱と、その仕掛け人である騎手とその騎馬を海面にたどり着かせて治まった。

 

「いやあ、参った参った! 寝坊したらこんな時間になってもうて、でも良かったわ。君ら皆、チンタラしてくれてたおかげで勝てそうやしなあ?」

 

 片手で手綱を持ち、開いた左手で濡れた髪をかきあげた蛟劉は、キザったらしく、そしてこれでもかと挑発的な笑みを向けてきた。

 

 

 

 

「ではお主に任せてみるのである」

 

「これほどの恩恵をいただいたんです。やって見せますよ!」

 

 空白の広間で、ジンとそう背の変わらない少年と握手をする祭の姿がある。

 

「お主の同志達はゲームの最中みたいであるからして、ついでにそこに飛ばして(・・・・)やるのである」

 

「まさかと思いますが――――――

 

 祭の網膜に色彩が戻った時、同時に急速に落下していた。

 

「獅子は子を谷に付き落とすというが、神様は人間を空から落とすものなのか?」

 

 自由落下の終着点は箱庭にやってきたときと同じように水面、よくよく見ればその水面、そして岸に人影がある。

 減速用の干渉膜の感覚がないことに気付いた祭はギフトカードから出した一対の腕輪とゴテゴテとした排気管のついた金属靴を装着した。

 

「いやあ、参った参った! 寝坊したらこんな時間になってもうて、でも良かったわ。君ら皆、チンタラしてくれてたおかげで勝てそうやしなあ?」

 

 滝を遡って生まれた水柱に危うく打ち落とされそうになった。腕輪から風を出してひらりと躱し海面に立つ。

 

(蛟劉さんか、相性悪いなあ)

 

「二人とも!! 僕は参加できるか!?」

 

 蛟劉を挟んで対角線にいる飛鳥と十六夜に叫ぶ。

 

「水に落ちては駄目よ!! 失格になるわ!!」

 

「強敵三人か!」

 

「フェイス!!」

 

 状況変化に最初に仕掛けたのはポルトスだ。彼は大戦斧を海面に叩きつけ衝撃で海面を壁に変えフェイス・レスの離脱を援護する。

 

「助かります」

 

 スタート前からの不機嫌さが嘘のように礼を述べてフェイスは騎馬を走らせる。

 ポルトスの瞳に今までになかった真剣みが宿っており、たった一言の名を叫んだそれだけで通じたもの。強者が戦場を共にし得る呼吸(・・)とでも呼ぶべきもの。

 

「いくらなんでも、これでやられてやる訳にはいかんで?」

 

 蛟劉は自分の騎馬にたどり着く前に、大波となったそれを凪ぐ。

 

「ふっ!!」

 

 飛鳥の騎馬に迫る波を祭が回り込み、腕輪に空けられた二十の穴から噴き出す暴風で吹き飛ばす。

 

「お嬢様は仮面の騎士を追え!!」

 

「ポルトスを!!」

 

「おお!!」

 

「勝ってね!!」

 

 祭が蛟劉に、十六夜がポルトスに突撃し、その間を飛鳥が通り抜ける一拍をもぎ取る。

 

「真正面からは下策やろ」

 

「少年が相手か、面倒だな」

 

 祭の特攻に受けて立つ構えの蛟劉に対して、ポルトスは大戦斧の面で十六夜の拳をいなして、そのまま十六夜の身体を掬いあげ大海原へ放り投げる。

 

「悪く思うなよー」

 

 嫌味のように手をぶんぶん振って先を行くフェイスと飛鳥の後を追いかけるポルトス。

 

「マズ――――――っ」

 

「そら他所見したらな」

 

 ポルトスに気を取られ視線を外した瞬間に(・・・・・・・・・)蛟劉の拳に吹き飛ばされた祭。

 

「っぐ!!」

 

 腕輪と金属靴からの排気で姿勢を安定させ海面を滑るように堪え、飛ばされた十六夜のもとに巨木を撃ち出す。

 

「しっかりしろ腑抜け!!」

 

「ッチ」

 

 体をひねって巨木に着地した十六夜は、巨木を真っ二つに踏み抜いて跳躍してポルトスを追いかける。

 

「行かせると思ってるん? ちょっと舐めすぎや」

 

 跳躍した十六夜のがら空きの背を蛟劉が狙う。

 

「君を無視してる訳でもないけどな」

 

 追撃を許さないように後ろから迫る祭の拳を受け止めるべく右手を構えた蛟劉。

 その時、疑問が蛟劉の頭をよぎった。

 

(直接来る子やったか?)

 

 疑問の答えとして、蛟劉は祭の拳に吹き飛ばされた。

 

「行け十六夜!!」

 

 素早く立ちふさがるように進路をふさぐ。

 

「困ったなあ、君の拳で飛ばされるほど衰えたつもりもないし、それだけの威力が出せるとも思えん。いったいどんな”恩恵”使えばそんなイカサマ(マネ)できるん?」

 

「当ててみては?」

 

(頭のまわるタイプ。戦闘面でも相性が悪い!!)

 

 ”恩恵(タネ)”が割れれば格段にやり辛くなる。”恩恵”そのものは防ぐことができないがその発動条件を押さえられてしまうかもしれない。

 バレる前に望む形の遠距離戦に持ち込みたいが、見ただけで分かる近接戦闘型。

 試運転には適するが全てを晒したくはなかった。彼との約束があろうとやっと手に入れたウルトラCだ。少なくとも知られて嵌める為の策がないうちには。

 

「ッガァ!?」

 

 警戒もしていた。にもかかわらず殴りつけられた。

 

「沈まんか。それが前から持っとった方やな」

 

 警戒した上での保険に、”情報収納”で触れた瞬間に水を取り込み続けるように意識しておいた。そのおかげで失格をせずに踏みとどまった。

 頭蓋に響く痛みに視界が明滅する。

 

「さっきのがマグレな訳ないにしても、もうちょっと手ごたえ欲しいな」

 

「なら貴方が全力じゃないんでしょう。貴方の拳に(おも)みが足りてないんじゃ?」

 

「言うたなガキ!!」

 

 蛟劉はあえて挑発に乗る。そして拳打、肘打、手刀、拳打、膝撃、掌底の連撃を打ち込む。踏ん張りがきかず祭の身体が跳び、水面を跳ねて再度腕輪で姿勢制御をおこなう。

 

(召集されたのがジャックからギフトを受け取った後でよかった)

 

 祭の装備した腕輪と金属靴は、ジャックに依頼し用意してもらったものだ。

 金属靴は、足裏から水分と炎を出すことで推進力を生み出すように設計され、場合によっては空気そのものを出して金属靴の内部機構で圧縮、排出時の出力で簡易的な飛行も可能にする。

 また腕輪は、八角ボルトのヘッドのような形をしており前面、後面に二十ずつ、側面一つに十の微細な穴が空けられている。その微細な穴の適切な場所から空気を吹き出すことで姿勢制御をはじめとした補助を目的として作られた。

 宇宙空間を漂っていた時に空気排出による姿勢制御の経験がある祭だからこその装備だ。

 

 蛟劉にとって意外だったのは、祭が自分を拳一つで吹き飛ばしたことでも、研鑚を積んだ連撃に耐え闘志燃える目を向けて来ることでもなかった。それは最強種のゲームに単独で召集されわずか数日で還ってきたことだった。

 相手によっては何年何十年もかけなければならない物や人間ぐらい一ひねりというバケモノと戦うことだってある。

 もし仮にダメージの無い知恵を問うゲームでもこれほどの速さで攻略した人間には覚えがない。

 

 純粋に面白いと感じた。

 動きも拙い。それを補うように入れるフェイントも経験で読み、それを裏切るように手品(飛び道具)を至近でためらいなく織り交ぜてくる。

 

 蛟劉は楽しみ始めていた。

 圧倒的なまでにボコボコにしているが倒れず起き上がって来る、この目の前の少年に、次はどんなことをするのだろう、どうやって自分に拳を蹴りを入れてくるのだろうと興味を引かれた。

 

「先日よりも楽しそうですね……」

 

 肩で息をする祭の言葉に、蛟劉は驚く。

 ”枯れ木の流木”と揶揄され落日の傷を今も引き摺っていたはずなのにと。

 

(ずいぶん安い男になったもんや)

 

 一拍の自嘲。その長い瞬き一つの間に接敵した祭の掌底がモロに入る。

 

「さっきの十六夜も大概だったけど、あなたも大概ですよ」

 

「ああ、スマンかった。確かに今までの自分は腑抜けとった。でも今の掌底、|元は僕のやな」

 

(ほぼバレたな)

 

(そら効く訳がない。腑抜けた拳で何が伝わる。何が得られる)

 

 武人としての蛟劉が腰を落とした正拳の構えを取った。

 

「不死だろうと意識を刈り取ればこのゲームでは終いや。次は全力で防ぐ方がええよ」

 

「済みませんね、最低条件が相討ちなんで貴方に残られてはならないんですよ」

 

 対する祭はニュートラルに構えて、防御の意志を感じさせない。

 

「いや、ここで君を倒したらそこで終わらせる。流石にこのままの自分ではいかんからな」

 

 どれほどに自分が腑抜けていたかを祭によって自覚させられた蛟劉は、今の自分が斉天大聖に会いに行く資格はないと断じた。そしてそれに気づくきっかけをくれた感謝の意として籠められる全力の一撃で応えることにした。

 

「ほな行くで!!」

 

「いや全力なんて受けられるわけないでしょう!!」

 

「なら諦めえ!!」

 

 一足で距離を詰める踏込み。蛟劉の正拳が祭の心臓を打つ軌道。必中だった(・・・)

 

目には目を(そこまでや)

 

 蛟劉が背後から聞こえる祭の声を認識した時には、二人そろって海中にダイブしていた。それも以前祭を取り押さえたときの押さえ方で蛟劉の関節が極められた形で。

 

 

 

 

 二人揃って失格となり海に浮かんでいる。

 

「一発打ってそれでリタイア宣言して終わるつもりやったのに」

 

「保証はないですし何より」

 

「やられた分は返さないといけませんから」

 

「ハムラビ法典かいな」

 

「そこまで普通たどり着きますか?」

 

 ずばり蛟劉に言い当てられて、祭は記憶を遡らせた。

 

 

***

 

 

『ギフトゲーム ― 正裁 ― 

 

 

参加資格

 

 ・対象が断罪に起因する復讐者であること。

 

 

勝利条件

 

 その一:復讐者の打倒。

 その二:正当なる執行人となること。

 

 

敗北条件

 

 その一:復讐の完了。

 その二:罪人に堕ち、参加資格を失った場合。

 

 

宣誓

 

参加資格を満たしたものに執行する限り、この試練が正当であることを保証します。

 

”シャマシュ”印』

 

 

「はぁ、はぁ……はぁぁ…………」

 

 ()は膝をつく。

 祭もまた膝をついた。

 

「……はぁ、やっとか」

 

 膝をついた()はそのまま前のめりに倒れ、光の粒子となって四散し始める。

 

「見事である! よくぞ吾輩の試練を乗り越えた。褒めてつかわすのである」

 

 上からの声がするが、首を向けることすら今は億劫だ。脱力して仰向けに寝転がる。

 

「すみませんがシャマシュ神、ボロボロで疲れ果ててるんでこんな格好で失礼します」

 

「構わないのである。それくらいで腹を立てるほど吾輩は小物ではないからして」

 

 一時的な眩さに慣れ、光を背負ったシャマシュ神の姿を捉えた。

 年端のいかぬ少年がそこに居る。球儀に腰かけて浮遊し、自らの身長よりも長い絹のような銀髪を垂らし、天衣無縫とはかくや、と言うべき一つながりのダボついたローブも垂らしてぶらぶらさせている。

 泰然とした表情が幼き顔ながらも伺え、力強い視線が祭を捉えている。

 球儀に座るシャマシュ神の膝にはキーボード大の石板が乗せられており、彼の指先が絶えず滑り続けており何らかの端末なのだろう。

 

「復讐心に呑まれずに戦えるものが今再び現れたこと。誠喜ばしい限りである」

 

「呑まれなかったわけじゃありませんよ。ただ自分の姿をした存在に負けたくなかっただけです」

 

「この何千年負けるものしかいなかったから褒めているのである」

 

「普通負ける。というか狂う」

 

 先ほどまでの超耐久戦闘を振り返り、絶妙に微妙な顔をした祭。

 

 根本的にゲームシステムによって生み出される、自分と同スペックの敵が自分の思考方法と自分の身体能力を以て絶え間なく攻撃を仕掛けてくるというだけでもやっかいだ。

 

「半日以上、手掛かりなしの不毛な戦いでしたよ」

 

「ふむ、せっかくである。其方の解答までの道筋、着眼点を聞かせてもらうとするのである」

 

「シャマシュ、貴方の名前とゲーム名の”正裁”が大半です。”正しき裁き”そしてシャマシュ神がハムラビ王に与えたとされている”ハムラビ法典”との関連で最もメジャーなものから推理しただけです」

 

 人類最古の法とされる”ハムラビ法典”。

 そして誰もが聞いたことのある言葉”目には目を”、”歯には歯を”とはこの”ハムラビ法典”に含まれる条文が元である。

 そして現在多くの者がこれを”報復”の言葉と勘違いをしているのだ。

 

「本来この条文は、上限を設定することで”報復合戦”に歯止めをかける正義の法」

 

「うむ。”詩人”達に貶められて今ではすっかり悪法のイメージが付けられ吾輩も哀しいのである」

 

 本当に少年が叱られているときのような表情で鼻をすするシャマシュ。かなり人間味があり祭がやり辛さを感じるのも仕方ない。白夜叉と言い、シャマシュと言い何で幼子の姿を取っているんだろうと全く関係のない方向に思考が流れそうになったり。

 

「うぬ? そこまで知っていたのにも関わらず、随分と時間がかかっていたみたいであるが?」

 

(この神様まるで分かってない……)

 

 ”(ルール)”に従うだけでいいのだから簡単な”試練”だろう、と首を傾げるシャマシュ。この”最強種”様は自分基準で物事を考えているようで、ともすればこの”試練”も軽い気持ちで設定されたのかもしれない。

 

「鏡像と便宜上呼びますが、その鏡像は全力で殺しに来ていました。自分と同性能の者が全力で来た場合こちらも同規模の反撃では相討ちなんです。そしてこれは反撃時(・・・)に過剰であってはならない”(ルール)”である以上、前提条件で鏡像の攻撃を食らうことが必須なんですよ」

 

 そこが最も厄介な点だ。相手以上の攻撃が無効化された状況で勝たなければならない。これが数千年の間、攻略者が現れなかった原因だろう。

 自己の鏡像との戦いを課す”試練”の中でも最高ランクと言える代物であることをシャマシュはずっと気づいていなかった。

 

「というわけで、ちまちまとダメージを蓄積させるのに時間がかかったんですよ」

 

 このように祭は言っているが、この”試練”の難易度を引き上げた原因は祭自身にも存在する。

 多くの死因を経験し打たれ強くなり、知らず知らずのうちに祭の耐久力が常人を超えているが故に鏡像のソレもまた尋常ではないものとなったこと。

 そこも理解しているが故に精神的に終わりが分からない耐久戦に精神を摩耗させたのだ。

 

「そうであったか。なるほど、であるなら其方に授ける恩恵は特別なものとするのである!」

 

「それはありがたいですね。できるなら白夜叉に一泡吹かせられるくらい――――――」

 

「白夜おのれえええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「はい!?」

 

「其方の言う白夜叉とは白夜王の事であるな! 奴には太陽主権の事で借りがあるのである!!」

 

 シャマシュも太陽神の一人であり、以前太陽主権を所持していた時期もあったのだ。

 

(ああぁ、これは下手につつくのは拙いか)

 

「白夜め、次会ったならば覚悟するのである!! ついでに”退廃の風”も駆逐するのである!! あの雑食ボケめが!! 吾輩の”法典”を齧るなど許せんのである!!」

 

「ちょっと待ってください!! もしかして”法典”の欠落している条文というのは!?」

 

「”退廃の風”、そして以前とある魔王との戦闘で失ったものである」

 

「なら被害者同士、仲良く致しましょう」

 

 袖をまくりあげて腕に巻きつけ荒れれた包帯をほどくと、そこには不自然に抉れた跡が存在した。

 

「そうか、其方もであるか」

 

「それでシャマシュ、僕から提案があるのですが」

 

 

***

 

 

(使い勝手はともかく、僕に最適な”恩恵”にしてもらったというのにこう簡単に見破られては)

 

(最後のは恐らく、立食会場でのを使われた。”自分がされたことをそのままやり返す権利”。そいで他の攻撃は

”自分が受けたダメージを等倍で返す権利”ってとこやろな。随分えげつない性能に化けよったもんや……)

 

 二人変わらず浮かんだまま思案の海を漂う。

 

 蛟劉の想定通り、祭がシャマシュから受け取った恩恵は反則じみた性能に変わっていた。

 

 まず一つ目の”目には目を(同行返し)”、これは自らの受けた行為を完全な再現度で返せる”必中”の恩恵として。

 次に二つ目の”歯には歯を(同痛返し)、これは更に非道く例えば蛟劉や十六夜が使ったとしてもさほど効果がない。鍛え上げられた肉体や生来の頑丈さによってダメージが抑えられるからだ。しかしこれを”死なないだけの一般人(仲邑祭という人間)”が使ったならば。ただの人間にとってオーバーキルレベルのダメージを格上だろうと”恩恵”によって強制的に与えることができる。

 更に言えば蛟劉が喰らった一撃目。祭の拳のダメージ、そして吹き飛ばされるという付随効果すらも強要してみせた。

 

 神霊であるシャマシュにとっては数ある”恩恵(条文)”の少しを貸し与えただけだった。

 

 それを最も有効な形で利用することを考え付き交渉したであろう隣に浮かぶ少年に蛟劉は深い興味を抱いたのだった。

 

「なあ自分性格悪いやろ」

 

「否定しませんが、答えに行き付く時点で蛟劉さんも同類でしょう」

 

「……」

 

「……」

 

「「嫌な奴!!」」

 

 片や胡散臭い笑顔で。

 片や張り付けた笑顔で。

 

 長い付き合いになるであろうことを予感して罵り合った。




長かったです。

この反撃チートにするまでホントに頑張ってきました。

なんかこれで終わりそうなコメントですがもちろん続きます!!
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