誓いのハイスクール Dragon×Durandal 作:七海香波
……なんだったんだ、今のは?
聞いただけで分かった、理解させられた。あれが自分より遥かに上位の存在で在るモノの声だということを。おそらく歴史上の偉大な人物が持つような、明らかにケタが違うものの声。
しかもその声は俺の頭の中に直接響いていた。
全く、わけがわからない。
「おいおいどうしたんだ、突然不思議そうな顔になるなんて。なんだ、天国からのお迎えでも見えたのか?――っつう!」
そんな、いきなり何かに悩み出した俺をその大きな目で不思議そうに見つめながら、目の前の彼女は肩に刺さった鉄パイプをズボッと引き抜く。
ズルリと抜け落ちた鉄パイプは、俺の手の届かない遠くへと投げ捨てられてしまった。
「グッ……痛いなぁ。まあ、中々に楽しかったし、これぐらいは安いもんだな。こんな美味い血も有るんだし、どうせ直ぐに治る」
彼女は先ほどの攻撃で手に垂れている俺の血を、舌で一気にすくい取って――良く味わった後、ゴクリと飲み干した。
同時に彼女の肩の穴が煙を上げて、塞がっていく。
その姿はまるで――
「――どこの
「……頭もそれなりに回るみたいだな。ふん、所謂この国のブンブリョウドウって奴か?ああ、そうだよ。正確に言えば少し違うけれども、一応その推測で正解だな」
「あっそ、そりゃどうも。……っていうか、マジで吸血鬼かよ……?ここは日本だぞ、なんで西洋の伝説上の生物に襲われてるんだよ俺……?そんな普段の行い悪かった覚えは無いぜ――?」
「甘いな。神なぞ、そんな善行やら悪行やらを一々全部見ているモノなど既にいるわけがないだろう!はははっ!!こんな死に間際にそんな事に頭が行くなんて、お前面白いな!」
「余計なお世話だ。それに、なんかもう死ぬと思った挙げ句に今のセリフのせいで逆に一周回って冷静になったっての」
こんな状況でも落ち着けるって人間って凄いな。
もう自虐的な意味で笑うと、正面の彼女がまた近づいて来る。
あー、もうトドメ刺されるのか。
「……」
彼女は俺の目の前まで来ると、――なぜか先ほどの攻撃で肉が抉られた左腕を乱暴に持ち上げた。
そのまましばらく俺の目と腕を交互に見つめると、彼女は何故か信じられない一言を呟いた。
「あー。なんか気が削がれた。もういいよお前。ちょっと静かにしていろ。その傷、直してやる。ほら」
血がドクドクと失血死覚悟で流れていく腕に女が優しく片方の手を当てると、そこが緑色に淡く光る。その光がゆっくりと広がっていき、やがて俺の腕全体を包むと、血が止まり肉が塞がっていく。
……一体何が起こっているんだ。
「ふふっ。そんな不思議そうな顔をするな、私は僧侶の駒で転生したから治癒なんてお手の物なんだよ。それに、神器も回復系統の物だからこういうのはお手の物なんだ……って、言ってもわからないか」
彼女の言うとおりその言葉の内容は一切理解出来なかったが、俺の体はジュウジュウと音を立てながら傷を塞いでいくあたり魔法かなにかかもしれない。何しろ吸血鬼がいるらしいんだ、魔法があったって不思議じゃないだろう。
いやしかし……。
正直、こんな速さで回復していく自分の体が気持ち悪い。
「――よし、終わったぞ」
信じられない速度で傷は塞がっていき、三十秒ほどで完全に治った。
腕を試しに軽く回したりするも全く問題がない。
「おお。凄いな、アンタ」
「そりゃありがとう。さて、もう少年の血も何だかんだ言って吸っちゃったしなぁ……。そろそろここから去らないとな」
「どういう事だよ?」
「最初のあたりに“はぐれ”、といっただろう。その名の通り私は追われる身なんだ」
「追われる?ていうかそもそも、最近学校の生徒が消えるのはお前のせいなのか?」
「ああ。悪いがそいつらには私の姿なんかを離されたら困るからな。このビルの底に押し込めて寝させてあるよ。少なくとも、この町を離れるまではそのままの予定だったんだが……でも、もういいよ。出て行くんだから、あとで街のどこかに転移しておくよ」
「そうか、優しいなお前」
そう呟いた俺に、彼女は心底驚いた様な、信じられないような表情でこちらを見た。
「どっからそんな発想が出てくるんだお前。お人好しか何かか?」
「いや、吸血鬼って言ったら血が飯みたいなもんだろ?だったら血を吸うのは仕方無いし、いなくなった奴らが後で戻ってくるならそれで良いんじゃないのか」
「ふーん、そうなのか?」
「……多分」
少し被害者の家族の立場から考えたら急に自信がなくなったため、言葉から力が抜ける。
それでも俺自身としては、結局傷も治ったから良し、だと思う。
「――ん?そう言えば、俺にはそんな事聞かなかったよな?」
そう言った俺に、彼女はんー、と瞳を中に彷徨わせる。
どうやら俺との出会いを思い返しているようだが――直ぐに思い出したらしく、「あ、思い出した」との一言と共に顔を一瞬青く染める。
しかし、直ぐに元に戻ったかと思うと、
「あはは、しばらく
と無理矢理その件を流してしまった。
「オイ」
「仕方無いだろ、ホントに。しばらく断食してれば多少理性を失うのも当たり前だと思うんだ」
「それで通用するとでも思ってんのか。対価寄越せ、対価を」
「むー、まあ良いけど。直ぐに叶えられるような内容にしてくれよ?」
「単純な興味なんだが……なんではぐれとやらになったんだ?」
単刀直入に核心を突いた俺の言葉に、彼女は軽く呆れたように笑う。
「女性のヒミツは普通、聞かないってのが筋だぞ?」
「あれだけ戦った挙げ句腕をぐちゃぐちゃにしたんだ、それぐらいならアンタの過去話だけじゃ足りないハズだけどなぁー?」
何となく興味を持ったので聞いてみた。戦闘狂なのはアレだが、意外とちゃんとしているのに、なんで追われる身になったのか――実に不思議だ。
今度はこちらから彼女の目を見ると、彼女はゆっくりと話し出した。
自分が本当は悪魔と呼ばれる存在であること、
血を介して魔力を吸わないと生きられないこと、
それを理解しながら主がそれを行わせない嗜虐趣味のクズであったこと、
その主に逆らって、仲間と共に逃亡したこと等々。
……、明らかに、悪いのその主だろ。高校生の俺でも分かるぞ。
法的機関かなんかに訴えれば?と聞くと、彼女は悲しそうに首を振った。
「無理だ。あいつは、ソロモン72柱の内の1柱の長男だからな。しかも純血。そんな貴重な血族よりは、私のような転生悪魔を罰する。そんな所は人間界でも良くある話だろう?」
「ああ、名前を言ってはいけないのっぺらぼうみたいなもんか……それで?転生悪魔って?」
「ああ、それを説明するか。実は悪魔は、はるか昔天使と堕天使と大きな戦争をしていたのさ。そのとき、大きく悪魔の人口は減ってしまったんだ。しかし、悪魔は他の生命体に比べて繁殖能力が低い。だから、多種族からの転生、と言う手段をとることにしたんだよ」
「それが転生悪魔か」
「ああ、そうだよ。転生にはこんな駒を使う」
そう言って、ケースを開け中からいくつかの駒を取り出した。チェスの駒、か?見たところキングからポーンまで全てが片方だけ揃っていて、透明で光っている。
「……ただのチェスの駒じゃないのか?」
「いや違う。これを使えば――
「俺でも?」
「誰でも、だ。……そう目を輝かせるな。悪魔になると、寿命が延びたりするが光に弱くなるぞ。それに、教会なんかに行くと下手すれば一発で浄化、というより消滅させられる」
「それでも十分凄いだろ。で、続きの説明は?」
「そうあせるな。で、キングの駒だけは特別なんだ。こいつを使った者だけが、他の駒で相手を悪魔にすることが出来る。上級悪魔だけがもらえるものなんだ」
「へー、アンタは上級悪魔なのか?」
「なったその日に主から逃げた。もう一人の駒と一緒にな」
彼女が急に目に見えて落ち込んだ。それに慌てて、俺は話題を変える。
「戦車とか僧侶とか違いは有るのか?」
「戦車なら力と防御。僧侶なら魔力。騎士なら早さが強化される。女王なら、その全てが付加される。兵士は、プロモーションでルール通りに昇格できる。何度でもな」
「キングは?」
「何も無い」
「へ?」
「キングになっても、なにも無い」
「……意味ないじゃん」
「知るかそんなこと。私も開発者に聞きたいよ」
と、多くのことを喋った。その駒の名称は
しかし、そんな物が存在するのか。
「さて、私ももう行くか。喋っていたら、どうやら追っ手が来たようだ」
彼女と共に窓の外を見ると、紅の髪をした女性や、金髪・黒髪の、コウモリのような翼をした奴らがこちらへ向かってきた。
ゑ……あれって。
「なあ。あれって、多分俺の先輩なんだが。確か、リアス・グレモリーとか言う――」
「な!?よりにもよってあのグレモリー家の娘か……。下手に戦うと面倒になるな」
彼女は軽く舌打ちをしてから、俺の指した方向へと目を向けた。
「強いのか?」
「強いっていうか、結構面倒なんだよ、アイツラのような相手は。あそこには赤龍帝がいるし、主は消滅っていうチート魔力を持ってるし、兄が魔王だし。本当に煩わしい」
「魔王って……」
普通に考えたら悪魔の王だろ。なんという家系なんだあの先輩は。
しかしせっかく助けて貰ったのに(殺されかけたけど)――それでも、このまま何も無かったことにして別れるのはどうなのか。今の話を聞いて、俺にもなにか出来る事は無いのだろうか。何か俺にも、手伝えることが……。
俺は頭を抱えて必死に考える。すると、さっき聞こえた声がまた聞こえてきた。
《まったく、久々に目覚めたと思えばまた面倒な事に首を突っ込もうとしているな。まあいい、この俺が何とかしてやろう。とりあえず、さっさと家に戻れ》
――そうなのか?
そう問いかけると、声の代わりに肯定を示すようなくぐもったうなり声が響いて来た。
俺は根拠もないが藁にも縋る思いで声を信じて、彼女の方を向く。
「なあ、一旦元の場所に戻ってくれないか?」
「……ああ、そう言えばお前を戻してやらないとな。分かった、今戻してやるよ」
彼女が手元で何かを動かしたような素振りを見せると、俺の足下に丁度一人分のサイズの魔法陣が開く。
「アンタもだよ!さっさと来てくれ!!」
「はぁ?一体、何をするつもりだ――」
咄嗟に俺は彼女の腕を掴んだ。「ちょっ、一人分なのに無理矢理二人を転送するとか座標がズレて危険だって――」とかいう声は聞こえなかった。
俺達は再び白い光に包まれて、この場所から消え失せた。
光が消えた瞬間、丁度目の前に俺の家であるボロアパートが移る。
どうやら地面に散っていた花びらを掃除していたらしき管理人のおばあさんの、驚いた様な目が俺達を見る。
「あらまあ和真ちゃん、彼女かい?」
「はいそうですだからちょっと退いて下さい!ほら、早く来て!」
俺は彼女の腕を掴んだまま一気に階段を駆け上がり、鍵を開けっ放しにしておいた玄関の扉を勢いよく開けて中へと彼女を押し入れる。
「あ、靴はそこで脱いでくれよ!」
そして居間の中へと入り、近くの窓のカーテンなどを全部閉める。
「……一体、なんなんだ……?」
彼女を近くにあったベッドの上に座らせる。
そして自分は急いで椅子に座り、目を閉じる。すると、再度先ほどの声が頭の中に聞こえ始めた。
《集中しろ――自らの意識の中心へと潜り込むような感じだ。深く、深く、海の底へ行きを止めて潜っていくように……》
声の通りに限界まで集中して、声の正体を体の中から探り出す。
地獄の底に響くような、邪悪な声。
《――――――良し。ここまで来れたか和真》
今度は、耳に直接声が響く。声の正体が、目の前に居るようだ。
恐る恐る、目を開けて正体を確認する。――俺の目に映ったのは、巨大な龍だった。八つの頭に、八つの尾。白銀の鱗に、血走った赤い目。爛れた腹。口から除く鋭い牙。体の鱗の隙間からは、紫色の粒子が吹き出ている。
こんな形をした生き物といえば、真っ先に一つの名前が思い当たる。
「まさか、八岐大蛇、なのか?」
《そうだ。我は、お前の想像通りの生物だ。『
最後の辺りをゴニョゴニョと小さく呟くと、相手はふっと笑ったようにその身体が放つ威圧感を消した。
《まぁ信じられないだろうがな。今はここに来られただけで十分だ。
「うわっ!?」
視界が突然暗転する。……どうやら、元に戻ったようだ。
その証拠に、彼女の声が耳に届いた。しかしその声は普通のモノではなく、大きな驚きを含めたものだったように感じた。
「おい、それはまさか、
セイクリッド・ギア。確か俺の腕を治した後の言葉の中にそんな単語があった気がしたが……。
ひとまず目を開けて彼女の方を見ようとすると、俺の目の前で淡く光りながら一振りの太刀が宙に浮いていた。その姿を視認した瞬間、頭の中に一気にそれに関する情報が流れ込んでくる。
「『
頭に浮かんできた名前を、そのまま読み上げる。
……天羽々斬って確か、八岐大蛇を切った剣で、って、あれ?
神社に奉られているんじゃなかったか?
前に日本神話関係の本を読んだときにそう書いてあったが。
《現存すると言われている神代の武器は、大概贋作だ。それぐらい察せ》
ふーん、なるほどね……。言われてみれば三種の神器も代替品が多く用意されてるって話も聞いたことがあるんだよな。
頭の中で会話をしていると、目の前の彼女が額に手を当て、眉間に若干の皺を作りながらこちらに話しかけてきた。
「えーと、お前が神器を持っているのは分かった。で、私は一体どうすればいいんだ……?」
《ふん、和真よ。我をあの女へと渡せ》
「ああ。――えーと、これを持ってくれないか?」
何をしたいのかは分からなかったが、とりあえず宙に浮かぶそれの鞘の辺りを掴んで彼女の方へと差し出した。
それを彼女は避けた。
「うわっ!?いきなりなにするんだ!?」
「いいからいいから。とりあえず何処でも良いから掴んでくれ」
「え、でもどう見てもコレって聖剣だろ……。私が触ったら、死ぬんだが……」
「大丈夫だって」
下手に待つのも面倒だったので、彼女の手をこちらから無理矢理掴んで引き寄せ、その手に握らせた。
が、彼女の思いと裏腹に、彼女の身体が消えることはなかった。
「あれ、聖剣なのに……?」
《阿呆。我をなんだと思っている。真の聖剣は本当に邪悪な物しか消さん。えくすかりばーだったか?それも、清らかな心の悪魔なら持てんことはない》
「ふーん、そうだったのか……」
俺の聖剣に対するイメージが一瞬にして覆された。
でも確かに言われてみれば、アーサー王伝説でも触れた悪魔が消え去るとかそんな話は無かったような気がする。所謂後付設定みたいなものだったのだろうか?
《それに、お前の悪魔の気配も消えているだろう?これで奴らは気付かん》
「……あ、確かに私の悪魔の気配が散ってるみたいだ。これなら探知される可能性はないな」
俺には分からないが、どうやらこれで問題は解決するようだ。
……いや、でも少しだけ彼女の纏う空気が変化した気がしないでもない。
《さて、和真。此奴をお前の家に泊めてやれ》
「え!?」
《え?もなにもないだろう。お前は
あるわ。ここは二人で暮らすには狭すぎる。
それにこれでも、思春期の男子。目の前の彼女は改めて見てみれば凄いプロポーションなのだ。変な妄想をしてしまうのはまず間違いない。彼女も提案を聞いて同じようなことを思ったらしく、顔を真っ赤にしている。
「せめて、ここより広いところならともかく……」
《なら、広いところに移れば良いだろう》
「金がないんだよ。そもそも父さん達は外国で仕事中で連絡も付かないし、そう簡単に契約とかはできないぞ」
とりあえず話をする俺達に、彼女は顔を赤くしながら割り込んでくる。
「お、おい……」
「ん?」
「私が、一緒に住んでも良いのか?お前を殺しかけたのに?」
「まあ、な。確かに殺されかけたけど、あの話を聞いて放り出すってのも気分が悪いし。それに、その代わりに美少女が手に入ったと思えば十分役得だろ?結局生きてたし、な」
《調子に乗るな。阿呆が》
「痛っ!」
神器が突然宙に浮き、俺の頭を強く打ち据える。
「つぅ……、ま、俺はどうせもう元の平和な世界に戻れないんだろ?なら、覚悟決めてやってくさ」
「――はぐれ悪魔を匿ってると、悪魔や天使に追われるぞ?」
《雑魚が此奴に勝てるとは思わん。そもそもお前と戦っていたときに無意識的に鉄パイプに普通ならぶっ倒れるほどの魔力を消費して強化を施していたが、何ともないだろう?》
「確かに折れなかったのは今思い返せば不思議だが、そんなのしてたのか。……ま、そういうことらしいぞ?」
「――それに、血を吸うぞ?」
「致死量は吸わない、だろ?なら問題無い。俺は血の気が多いからな、多分」
「――襲っちゃうぞ?」
「俺を襲って意味があるのか?」
「いや、お前はまあまあイケメンなんだが……?」
《お前は自分の顔をもう少し自覚しろ。少なくとも不細工ではない》
「冗談はよせって。……で、これでも何か問題有るのか?」
「――いや、無い」
彼女は一度うつむくと、数秒何かを考え込んだ後、再び顔を上げた。
その顔にはなにやら複雑な表情を浮かべていたが、それら全てを飲み込むかのように彼女は口を開いた。
「それでは、世話になる。今更だが、私の名前はクインティアだ。そうだな――ティア、と呼んでくれたら嬉しい。奇妙な縁だが、これからよろしく頼む」
「ああ。俺の名は織城和真。和真と呼んでくれ。それじゃあこれからよろしくな、ティア」
改めて自己紹介し、挨拶する。
それからしばらくは何を話せばいいのか分からず互いに沈黙を貫いていたが――やがてどちらから始まったかのか、大きな笑い声が二人分、部屋の中に響き渡った。
カーテンの隙間から差し込む夜の月の光が、二人のこれらからの非日常に加護を与えるかのように、静かに彼らを照らしていた。
――これは、偶然にも一般人をやめてしまった俺、織城和真の物語である。
☆ ★ ☆
ーー二人が去ったビルの中。
ティアや和真が先ほどまで戦っていた階層で、細く黒い羽を生やした一つの集団が会話を繰り広げていた。
「部長。はぐれ悪魔は、また元の場所に転移したようですわ」
黒髪をポニーテールにした女性が、紅の髪をした女性に報告する。
「それにこの量の血、恐らく戦闘をしていたようです。これでは、被害者に迎え撃たれたかはぐれ悪魔が勢い余って殺してしまったかは分かりませんが、片方はもしかしたら死んでいるのかもしれません」
続いて金髪の優しげな顔をした少年が、腰に携えた一振りの剣の柄を撫でながら言った。
「……部長。これ」
一際小柄な白髪の少女が、血だまりに浮かぶ一つの破片を指さす。
それを彼女は拾い上げると、自らの主たる赤髪の少女へと手渡した。
「これは……私達と同じ、駒王学園の生徒のモノね。……そう、ならいいわ。私達の学園の人間に手を出すなんて、次こそ仕留めてあげるから。待っていなさい、