誓いのハイスクール Dragon×Durandal   作:七海香波

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04.悪魔だらけの旧校舎は

「つーわけで、今日はここまでだ。起立、礼!」

 

 教師の合図と同時にチャイムが鳴り、四限目の現国の授業が終わる。

 定例の挨拶を終えた後の教室は一気に昼休みのムードへと突入していった。購買や食堂へ行く奴もいれば、友人同士で机を固めて弁当を広げ始める奴らもいる。

 そんな中、俺は机の上の教科書やプリントやらを鞄に片付け、机の横にかけてあった弁当箱の包みを取り出した。

 ゆっくりと結び目を外し、挟んであった割り箸を抜いてから、蓋を開ける。

 その中には真ん中に梅干しが載せられた白米が半分と、残りに卵焼きが詰められていた。

 一応境目にはアルミホイルが敷いてあり、女子らしく綺麗に見た目が整っている。

 

「んじゃ、いただきます、っと」

 

 箸を割って早速白米に手をつけ、そこから卵や梅干しと順に食べ進めていく。

 悲しいことに,誰一人として一緒に食べようと誘ってくる輩はいない。

 たまに誘ってくれる桐生も今日は、つい最近転入してきたアーシア・アルジェントと一緒に昼食を取っているようで、教室の端に他数人に女子生徒といる。流石にその中に自分から声を掛ける勇気もないので、俺は一人寂しく食べ続けるしかなかった。

 始めてから十分後ぐらいにようやく食べ終わり、割り箸を教室のゴミ箱に捨てた俺は、ポケットに入れたMP3プレーヤーから音楽を聴きつつ、残りの三十分を過ごすために持ってきた本を読み始めた。

 本当は昨日買ったのを読む予定だったのだが、あれは結局置いてきてしまったので仕方無くもう読み終えたモノをまた読むしかない。

 一度見た内容を、パラパラとページを捲る。

 既に知っているということもあってかそこまで集中することもなく、自然と周囲の話し声が耳に入ってくる。なので、本を読み進めて五分くらい経ってから、突然女子の声が大きくなったのも気がついてしまった。

 

「――ごめん、この教室に織城和真君はいるかな?」

 

 その女子ならば一発でオチる、物腰の柔らかな声にも。

 

「え、織城ですか?それならあそこよ、木場君っ。それより今日、一緒にカラオケに行かない?」

「ちょっ、ズルいよ!木場君、私と一緒に行こ?」

「あはは、ゴメンね。今日は部活なんだ」

 

 この駒王学園における二大美少女に続く人気を誇る金髪の男子、木場祐人。彼女らと同じくオカルト研究部所属であり、最近は兵藤といることもよくよく見かける有名人だ。ただ最近は兵藤×木場等という残念な女子の声も聞こえるので、残念なイケメンというのが良く似合う男子でもある。――そんな奴が、一体俺に何の用事があるのやら。

 少なくともここに入って以来、話したことすらなかったと思う。

 そんな彼は周囲に複数の女子を引き連れつつ、俺の机の前までやってきた。

 

「やあ、織城君だよね?」

「……違う。人違いだ」

「え?」

 

 そういうと木場は困ったような表情を見せる。

 と同時に、その後ろで複数のクラスの女子が俺に殺意を込めた目を向けてくる……怖っ。

 

「……冗談だ」

 

 とりあえず耳に付けていたイヤホンを外し、本にしおりを挟んでから彼の顔を改めて見る。

 決して女子の殺意に負けたわけではない。

 

「何か用か、見ての通り俺は暇じゃないんだが」

「――何よ、暇じゃないって。さっきまで本読んでただけじゃない」

「――木場君に逆らうなんて、織城のくせに。生意気よ」

 

 ……生意気なのはお前らだよこの木場信者共め。何でも顔で判断するな。後人柄とか実績とかその他諸々とか。……後は何で判断すればいいんだろうな。

 とりあえず後ろから聞こえる声を無視して、木場は話を続ける。

 

「悪いけど、用が有るのは僕じゃあないんだ。実は部長、リアス・グレモリー先輩が君に興味を持っていてね。今日の放課後、旧校舎にあるオカルト研究部に来て欲しいんだ」

 

 へえ、グレモリー先輩が、ねぇ……。

 明らかに昨日のことだよな。どうすれば良いのだろう。

 少し考える時間を稼ごうと顎に手を当てて首を傾げ、逡巡した素振りを見せると、頭の中に八岐大蛇が直接話しかけてきた。突然聞こえて来た重い声に少し驚いたが、それを顔に出すのを何とか押しとどめて返事する

 

《和真、とりあえず話に乗っておいた方が良いだろう。下手に断るとなると、目を付けられる恐れがある。なに、奴らもまさか手を出してくると言うことは無いだろう。普通に行って、話を聞いてくるだけで良い。ただもし万が一実力行使をやってきたならば迷わず俺を出せ。少なくとも逃げることぐらいは出来るハズだ》

 

 ふーん……特にアイデアもないし、それにしようか。いざという時には、まあ、八岐大蛇が言った通りなんとかなるだろう。流石に匿ってるのを黙ってても、バレたところでいきなり殺されるなんてことにはならないだろう。

 いくら悪魔でもさすがにいきなり斬りかかってきたりはしないよな?

 まあ、オカルト研究部の連中にはそう言うことをするような噂はないしな。

 大蛇の意見を少しだけ考えてみた後、木場に呟く。

 

「放課後、だな。行っても良いが、俺は生憎そのオカルト研究部が何処にあるのか知らないぞ?」

「そうかい。なら、放課後にまた教室に呼びに来るよ。一緒に行こう?」

 

 ……クソ。

 そこで素直に諦めてくれれば良かったのに。

 それでも一度言った手前、やっぱりダメだと言うことは出来ない。言ったら後で何をされるか分からないからな、木場の信者達から。

 

「そうか。分かったら早く行け。読書の邪魔をするな」

「あはは……。それじゃあね」

 

 木場は苦笑して去っていく。その後に後ろの女達が行列を作って歩いて行くところがモーゼの行進のようで、地味に面白かった。

 

 あと桐生。お前はお前で変な噂を立てようとしてんじゃない。聞こえてるぞ、変な会話が全部。そんな適当に関係をでっち上げていくんじゃない。変な意味での黄色い声が教室後ろから聞こえてくる俺の身にもなってみろ。

 

 

 

 

 ――放課後。

 

「やあ織城君。今度こそ、来てくれるかい?」

「ちっ。……分かったよ」

 

 くそ、木場め。授業が終わってさっさと逃げようとした瞬間、俺を捕まえやがった。

 どれだけ早く来たら俺を捕まえられるんだよ?俺が逃げようとチャイムと同時に教室を出たのに、そこには既に木場の姿があった。……まあ、捕まってしまったんだからしょうがない。

 観念し、ヤツに着いていくことにする。

 だが、並んで歩く俺と木場の他にもう二人が教室から着いてくる。

 

「……なぜ兵藤とアルジェントが着いてくるんだ?」

「俺も同じ部活なんだよ」

「私もです」

「アルジェントはともかく、変態と一緒に歩く気はないんだが」

「なんだと!」

「事実だろうが」

 

 遠慮なしに言葉で刺すと、兵藤は何も言い返せないのか顔を顰める。

 

「くっ!否定できない……」

「イッセー君も、エロさえ除けば後は問題無いんだけどね」

「どうかね」

 

 木場の言葉を聞いて、兵藤は頭を抱え悩み出す。

 

「うぉぉ……彼女は欲しい、でもエロは止められない……彼女……エロ……」

「真剣に考えるほどのことか」

「当たり前だろ!彼女は欲しい、でもエロは俺の生き甲斐なんだ!」

「アホ」

 

 普通はそこでエロを止めるだろう。まさかここまで真剣に悩むほどの変態だとは思わなかった。まあ、安直に答えを出さないよりはマシだが……。とでも言うと思ったか。

 こいつは真性の救いようのない馬鹿だ。

 そんな奴と一緒にあるくのは面倒だったが、どうせ話を聞かないと思ったので仕方無くそのまま四人で旧校舎の方へ向かう。

 

「部長、連れてきました」

「あら祐人?入って良いわよ」

 

 掃除してあるらしく周囲に比べて埃のない木製のドアに木場が声をかけると、中からグレモリー先輩らしき声が返ってくる。

 ドアを開けた木場に薦められ、部屋の中に入る。

 その中は薄暗く、非常に不気味な雰囲気を醸し出していた。天井や床には大きな魔法陣が書かれており、なにやら分からない文字が多く書かれている。正直痛々しいと思うのだが、悪魔の存在を知った俺は、なんか意味のある文字だと思ってしまう。いや、意味が有るのだろう。

 今の住まいに簡易結界をティアが張ったときに書いていた文字もちらほら見える。

 中央の四角いテーブルを囲うように大きなソファーが四つ置かれており、グレモリー先輩と姫島先輩が座っている。所謂学園二大お姉様だ。

 その対面に、俺を挟む形で木場、兵藤が座る。

 そして、アルジェントと塔城が横のソファーに座る。

 

「知っていると思うけど、リアス・グレモリーよ。オカルト研究部部長をやっているわ。よろしくね、織城君」

「あ、はい。織城和真です、よろしく……」

 

 する気はないのだが。

 そこで言葉を切ったのを緊張のせいだと思ったのか、先輩は少しばかり俺に向けて微笑んだ。隣の兵藤は、俺に向けられたはずのその笑顔に何故かにやけた顔をする。馬鹿かお前は。

 冷ややかな目を向けられているのに気付かない兵藤を敢えてスルーしながら、先輩は話を切り出してくる。

 

「単刀直入に聞くわ。織城君、貴方昨日、何か変な人に出会わなかった?」

「変な物、ですか……?そうですね、校庭で叩かれている変態は見ましたが。しかし既に日常茶飯事となっている以上、学園内では変な物にはカテゴライズされませんしね。あの痴態以外は見てはないかと」

「んだとコラ!」

 

 即座に切り返すと、先輩が顔をしかめる。まあ、悪魔だなんて言いづらいだろうしな。どういえば良いのか考えているのだろう。ついでに後輩の状況も告げられたら話なんて続けられるわけもない。

 ちなみにキレた兵藤は木場がなだめている。

 

「確か、最後の目撃によると、ラフな格好の女性ですが」

 

 その部長の様子を悟ったのか、横の姫島先輩がそしてテーブルに一枚の写真を出す。……ティアだ。昨日見た時と姿が違い、漆黒のドレスで身を艶やかに着飾っている。

 おお、凄い綺麗だ。昨日と今日はどこか荒々しさが混じった破天荒な美少女という感じだったが、写真の中では深窓の令嬢というか、静かに澄み切った美しさを纏っている。

 

「わー、凄い美人ですね。それで、この方がどうかしたんですか?」

「私たちは今その方を探しているんですの。ここ一週間ほど、見たことはありませんか?」

「んなこと言われても。一昨日見た通行人なんて覚えてるわけもないし、見たとしても多分思い出せないですよ」

「あらあら、そうですか……」

 

 表に笑顔を浮かべながら、彼女は残念そうに写真を懐にしまった。

 まあ、確かに一週間前にどこそこで見た人なんて覚えてるわけからからな。ホントはつい昨日どころか今朝も見たけど、そこら辺はどうとでもごまかせる。

 そう表面にあくまで不思議そうな表情を浮かべながら、俺は彼女達の疑惑の眼をやり過ごす。

 

「それだけならもう帰りますよ?俺一人暮らしなんで、やることが多いんですよ」

「そうだったの?……仕方無いわね。もう帰っても構わないわよ」

「さいですか。んじゃ帰ります、さようなら」

 

 そう言って俺は再度鞄を持って立ち上がり、この部室の出入り口へと向かう。

 その背中に、最後に彼女から声が掛かった。

 

「ああ、そうね。出来れば織城君、もし彼女を見かけたら私達に連絡して欲しいのだけれど。構わないかしら?」

「それぐらいなら良いですけど」

 

 最も、連絡する事なんてないでしょうがね、と心の中で付け加えて俺はオカルト研究部を立ち去った。

 

 

☆ ★ ☆

 

 

「なんなの、あの子」

 

 あの子――織城和真君が出て行ってから、私達オカルト研究部の面々は改めて机を囲って顔を合わせた。そのほとんどが新入りのイッセーを除いて、真剣な表情をしている。

 

「まず間違いなく黒ですわね、部長」

 

 隣に座る朱乃がそう告げる。

 念のためにと彼女に張って貰っておいた虚言判断の魔法だけれど……それによれば、あの子の言葉はほぼ全てが嘘だった。ちなみにクインティアによる暗示の可能性も考えたけれど、それがあるなら部屋の結界で入ったときに既に無効化されている。

 つまりあの子は先ほどまでのやり取りを素で、真っ赤な嘘に染めてやり過ごしたというのだ。魔法なんて言った所で証明することにはならないけれど、私達が警戒するには十分だわ。

 

《おい、リアス・グレモリー》

 

 どうやって彼に対処しようか、そう考えていた時、何故か普段は部活の最中は表に出てこないイッセーの神器が現れた。肘まで広がる赤い籠手、その甲にはめ込まれた深緑の宝玉に封印された赤龍帝ドライグが私達にも聞こえるように話し出す。

 

「あら、なにかしらドライグ?」

「おいドライグ。なんで今出てくるんだよ」

《少し気になることがあってな。リアス・グレモリー、先ほどの小僧には気をつけておいた方が良い》

 

 イッセーがドライグに注意する。

 しかしそれを無視するかのように、ドライグは話を続けた。

 

《ヤツは危険だ。特にこの馬鹿に対しては、な。》

 

 ……イッセーに対して、危険ですって?

 それって一体どういう事なのかしら?

 

「何かあるんですの?」

 

 同じ事を疑問に思ったらしき朱乃が問う。

 

《……ヤツはおそらく神器を持っている。それも、こちらの天敵である龍殺しの波動が強く感じられた。ついでとばかりに言っておくが光の力も、な。お前達悪魔にとって光の力とは天敵なのだろう?》

 

 その一言で私達に戦慄が走った。

 

《恐らく唯の神器ではあるまい。龍殺しの力は中々例を見るものではないからな。そこの騎士(ナイト)のような神が一から手がけたものではなく、俺と同じような伝説・神話に名を残す存在が元になっている可能性が高い。推測を立ててみるとすれば、龍殺しの逸話を持った聖遺物などが核なのかもしれないな》

「つまり、イッセー君には天敵にも等しい存在じゃないか!」

 

 祐斗が思わず叫んだ。

 そう。唯でさえ悪魔は聖なるものに弱いのに、まさかの龍殺しなんて……。

 イッセーにとっては、まさしく天敵に等しい存在だわ。

 

《それに、俺が詳細に気付くようなものだという事は、すでに神器に目覚めていると言うことだ。おそらく、裏の世界にもある程度踏み込んでいる。案外あいつがそのはぐれ悪魔を匿ってるのかもな?》

 

 面白いものをみつけたかのように語るドライグだが、私達に取ってはそうではなかった。

 光の力。龍殺し。聖遺物。そんな物騒なものが並べば、私達のような存在にとっては人間にとっての地雷のようなものなのだから。

 それが今の今まで気付かれずにずっとこの町にあったというのだ。……考えるだけでぞっとする。

 

「……部長、どうします?」

 

 朱乃がそう聞いてくる。

 私は本当はもう少し考えたかったけれど、時間をおいておくには危険かもしれない。だから、何か良さそうな解決策が見つかるまでのつなぎとして、一つの決断を下した。

 

「決めたわ。せっかくの力の持ち主なのだから、一回だけ下僕になるか勧誘する。はぐれ悪魔を匿っていたとしても目を瞑る。でも、もしそれを断ったら……みんな。戦う準備だけはしておいて。これはオカルト研究部だけじゃない、シトリー眷属も含んだ問題になるわよ。クインティアと彼が組んだときの事は……余り想像したくないわね」

 

 

 

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