誓いのハイスクール Dragon×Durandal   作:七海香波

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06.青髪の幼なじみと

 

 そして翌日。

 結局俺は昨日と同じように、朝っぱらから正座したティアに説教を加えていた。

 別に嫌というわけでもないのだが、一般常識としてどうにかして欲しい。唯でさえ美人との同居だというのに、同じベッドにまで入ってこられたら心臓が止まるっての。

 散々ティアに説教を喰らわせた後、トドメに早速気と魔力を込めた拳骨を一発。

 成功したのか頭を抱えて踞るティア。……どうやら適当に拳に纏わせただけだったが、存外に上手くいったらしい。

 そんな彼女を見ながら俺は適当に準備をして、一人で朝食をさっさと片付けて家を出たのだった。

 同じように駒王学園の制服に身を包んだ男女達が賑やかに通学する中、俺は一人音楽を聴きながら登校する。と、そんな悲しいボッチの俺の背中を誰かが叩く。同時に俺の耳からイヤホンが引っこ抜かれた。

 

「おはよ、織城」

「ん……ああ、桐生か。おはよう」

「どうしたの、何か元気ないみたいだけど。もしかしたて朝っぱらから一発シテきちゃったのかしら?」

 

 ニヤニヤと笑いながら桐生は俺の脇腹を肘でつついてくる。

 

「毎度毎度の事ながら下ネタを会話に挟んでくるなよ……そんな予測はあの変態三人組にしろ。俺はあんな性春を送ってねぇから」

「それもいいんだけどね……アイツラはもう手遅れなのよ。下ネタも通じる相手と通じない相手がいるの。幼女趣味って公言して胸を張る相手にロリコンって言っても大したダメージが望めないようなモンよ」

「例えが極端すぎて俺はそれにどう反応すればいいんだ……」

 

 朝からコイツと話していたら頭がどうにかなりそうだ。

 ティアと良い桐生と良い、俺の周囲の女子にはまともな奴がいないなのか。

 俺が自らの残念な実情に溜息をつくと、それに反応して桐生がまたちょっかいを掛けてくる。それがそこまで引くものでもないため、ついつい俺は一言二言彼女と言葉を交わしてしまう。

 そんな時間が続いて、俺達は気付けば校門の前にまで来ていた。

 

「で、結局自覚しちゃったらもう二度とは戻れないのよ!」

「はいはい、そうですか。全く、少しは更正して欲しいモンだよ。特にウチのクラスのメンバーは――なあ桐生。あのコスプレって何だと思う?」

「何よ?」

 

 俺はふと目に入った二人の不審人物を指で指し示す。

 今日は何故か校門の前に二人の不審な人物が立っており、彼らは清々しい春の朝だというのに白いフードを目深に被っている。……なんなんだ?この町には痛々しいヤツの集まる特性でも有るのか?

 悪魔ときたら次は天使、堕天使でもくるのだろうか。

 校門の前に唯立ち尽くすだけで何も行動を起こさない彼らを不思議に思ったのか、たまに二人に話しかける生徒もいる。しかし、それすらも完全に無視している――まるで、他に観察する対象がいるかのようだ。

 

 ……まあ、俺は無視して登校するが。こちらとら、最近不審な人物のオンパレードなんだ。これ以上関わってたまるものか。気にせずそのまま登校する。非日常に関わり始めたせいか、下手に関わったが最後、碌な目に会わないなんて予想が簡単についてしまう。

 桐生と話しながらできるだけ自然にやり過ごそうと、俺達は彼女達のいるところから出来るだけ離れるようにして校門を潜った。……ちらりとフードの下から見えたんだが、一人は青い髪、もう一人は栗色の髪をしていた。

 偶然なのか、そのうちの青髪の方に……誰か、懐かしい人の面影が重なった。

 

 ――俺の記憶が正しかったなら、それは昨日ティアと話していた彼女だったような、そんな気がする。

 

 

 

 

 そして時は進んで放課後。

 俺はまたも木場によって、オカルト研究部に連れて来られていた。

 座席は昨日と同じだが、雰囲気は全く違う。彼女達の顔は何処か、こちらを問い詰めるかのような風貌になっている。……もしかして昨日の言葉が全部嘘だってバレたのか?

 

「昨日ぶりね、織城君。二日続けて放課後によんで本当にごめんなさい」

「いえ、それは別にいいんですけど。で、何の用ですか?昨日の女性ならまだ見てはいませんが」

「今日はそれじゃないの。今日は別件よ――織城君。貴方、私の眷属にならない?」

 

 ――ああ。要するに、俺に悪魔に転生するかどうか聞いているってことか。……俺は一般人として通っているだけだから、もしかしてこれってカマを掛けられてるのか?

 確か記憶通りなら、俺はまだ悪魔や天使に関する説明を受けていないハズだし。

 なら、ここは一般人として反応すればいいか。

 一般人としての反応、ねぇ……。

 

「ふーん、ここってそう言う部活だったんですか。驚きですね……」

 

 眷属とその主、それは肉体関係的なSMの関係における隠語とも取れる。

 もちろん実体は違うと思うが、とりあえず俺はそう思ったふりということで軽く口元を抑え信じられない者を見たかのような目を向ける。

 ……まさか、本当にそんな関係じゃないよな?

 

『違う!!』

 

 さすがにそれはなかったらしく、全員にソッコーで否定されました。……ええ、分かってますとも。なんかそれらしい雰囲気を漂わせ始めていた姫島先輩はともかくとして。

 ただ、アルジェント一人だけは何を言っているのか分からなかったようで首をかしげていたが。……この部活で純粋なのはどうやら君だけみたいだね。

 それはともかく、グレモリー先輩は額に手をやりながら困ったような顔をした。

 

「織城君、ごめんなさい。前提を話すのを忘れていたわ」

「いいえ、大丈夫です。人の情事をとやかくいう性格ではないので。先輩方も気にせずにどうぞご自由になさって下さい、ええ。安心して下さい、俺は口が堅い方ですから。決して他の人たちには話しませんから。精々駒王学園のサイトに書き込むだけです」

「より酷い事になるじゃない!だから、違うってば……」

 

 疲れたような声に、俺は心の中で一応謝っておくことにした。流石に場を切り抜ける方法としては相手に悪かったか。すみません先輩。本当に、それしか方法が思いつかなかったんです。

 先ほどとは一転して緩んだこの場の空気の中、今度は俺の方から話を繋げる。

 

「で、その眷属とは一体何なんですか?」

「まったく……。まあいいわ。そうね、単刀直入に言おうかしら。私達は――悪魔なの」

 

 ええ、知ってます。そう言う訳にもいかず、俺はとりあえず驚いたような顔をまた作る。

 すると、目の前で先日見たコウモリのような翼を俺以外の全員が広げていた。どうやら腰の辺りから映えているようだが、もしかして制服に穴でも空けていたのだろうか。それに、あんな翼でどうやって飛ぶのだろうか。物理的に考えてまず無理だと思うのだが。

 

「冗談と思うかも知れないけれど、本当よ」

「……そうですか。正直すぐには飲み込めませんけど、とりあえずそれが本当として話を進めてください」

「あら、ずいぶん物わかりがいいのね。まあ、単純に言ったら私達の仲間、悪魔にならないかってことなんだけど」

「はぁ……それで、なんで俺に声を掛けたんですか?俺はただのか弱い人間ですし、あなた方がわざわざ仲間に誘うほどのモンじゃありませんが」

「それを言ったらイッセーも似たようなモノだわ」

「部長!?」

 

 兵藤がそれを聞いて泣きそうな顔をする。それをアルジェントが慰めようとしていた。……人間と同じぐらい弱い悪魔なのか、あいつ。確かティアによれば、転生したときに数倍の力が手に入ると言っていたが。

 何事にも例外はあるということなのだろうか。

 

《そこから先は俺が話そう》

 

 兵藤の手に突然赤い籠手が装着される。……恐らくあれも俺と同じセイクリッド・ギアなのかもしれない。出現の仕方が俺の神器とほぼ同じだからなぁ。

 何より、昨日の特訓の成果で感じられている魔力が兵藤達悪魔のそれとはまた異なり、どちらかと言えば俺の神器に近い感覚だ。同じように中に竜が封じられているのだろうか。

 赤い籠手はその甲にはめ込まれた緑色の宝玉を点滅させると、その中から機械のように濁った声で話し始める。

 

《お前には、セイクリッド・ギアと呼ばれる強い力がある。それくらいは自分でももう気付いているはずだ》

「セイクリッド・ギア?何だよそのヤケに中二臭いネーミングセンスは。つーか兵藤。お前、腹話術が出来たんだな。ただの変態だと思っていたが驚きだ。実に素晴らしい宴会芸だな」

《……俺はそこの変態と同じではない。俺の名は、赤龍帝ドライグ。この籠手の中にいるドラゴンだ》

「なるほど設定も深いな。しっかりと作ってあるみたいじゃないか。うわー、マジ凄いなードラゴンとか格好いいー、あースゴイスゴイ……で?そんなのしてて恥ずかしくないのかお前?」

《冗談はよせ。貴様の中にも、似たような力があるのは先日知った。さっさとそいつを出せ》

「そんなことを言われても……」

《言われんでも出るに決まっているだろう》

 

 俺の前に光が集まり、神器が鞘に入った状態で勝手に出現する。

 それを見たグレモリー眷属は誰もがその刀の放つ異様なオーラに目を向いた。……実際、神器に宿る大蛇は苛立っている様子なのだから仕方もないか。

 

「(おい、なんで出てくるんだよ?)」

《(あの赤蜥蜴に挑発されたからに決まっているだろう。上から目線で話しかけてきたアイツには、礼儀ってものを教えてやる必要性がありそうだからな)――で、何の様だ赤蜥蜴》

「おいドライグ、なんかこの剣からヤケに異様な雰囲気が漂ってきているんだが……」

 

 何かを感じ取ったのか、兵藤がこっそりと籠手の宝玉に問いかけた。

 しかしそれを無視して赤龍帝ドライグは話を続けていく。

 

《……なるほど。宿っているのは此奴だったか。それなら、聖なる波動と龍殺しのオーラも納得出来る》

「ドライグ。結局この神器はなんなの?」

《喋ったら殺すぞ赤蜥蜴》

《分かってるよ。そう言うのは予測済みだ。というわけで、話す事は出来ん》

 

 そう言った兵藤、改め赤龍帝にグレモリー先輩は問いかける。

 

「なんでなの?神滅具の一角なのに押されるなんて……」

 

 神滅具。……文字通りに受け取るなら、つまり神さえ殺す神器だって事か?

 にしても神さえ殺すと書いてロンギヌスと読むなんて間違ってるだろ。歴史上のロンギヌスって確か、キリストを貫いた槍の所持者の名前だろう?それが転じてその槍の名前にもなったはずだが。キリストは神の子だが神様じゃないぞ。

 ちなみにキリストは大工と結婚したマリアが処女なのに受胎したと言うことなので、ぶっちゃけ不貞の子である。神様との間だから仕方無いのかもしれないが、現代日本じゃそれも犯罪である。

 

《さっき言っただろう、グレモリー家の娘。コイツは龍殺しのオーラを放っていると。こいつが本気で龍殺しと聖の波動を放てば、俺だけならば何とも無い。が、それだけで弱い俺のは宿主は一発でお陀仏だろうな。俺はこんな面白い宿主をそうそう手放したくはないが故に、口を開くのは止めておく。知りたければ自分たちで調べることだな》

《分かったらさっさと消えろ赤蜥蜴。目障りだ》

《ああ》

 

 八岐大蛇の言うとおりに籠手の宝玉から点滅していた光が消えると、それっきり赤龍帝の声は聞こえなくなった。

 

「……まあいいわ。強力な神器だとは分かったし」

「で、神器って一体何なんですか?俺は説明を全く受けてないので」

「そうなの?なら、軽く説明しておくわね。神器は、聖書の神が作ったと言われる、人にのみ宿る強い力のことよ。祐斗がその良い例なの」

「見てて、織城君」

 

 隣の木場が手を掲げると、その手に装飾の凝った一本の剣が出現した。

 

「祐人のセイクリッド・ギアは、『魔剣創造(ソード・バース)』。任意の魔剣を自在に作り出せる力よ」

 

 へー、強いな。

 木場のようなまともな人格の持ち主が持ってるならともかく、こんな力が中二病のヤツに宿ってたら、簡単に世界が終わるんじゃないか?エヌマエリシュとか発動させた暁には……気付く間もなく消し飛ぶな。あれって確か剣に分類されたはずだし。

 

「貴方は人間のままで発動させられたけれど、そんな力は普通は悪魔にでもならないと発揮できないわ。悪魔にならないかどうかを聞いたのは、人間のままで神器を発動させることが出来るみたいだった貴方が欲しかったから。……まあ、どうやら本当は出来なかったみたいだけど、結果オーライね。ちなみに悪魔になると他にも色々特典が付いてくるのよ?寿命が延びるし、身体能力もあがるわ。ただ、光には弱くなるけれどね。手柄を立てて上級悪魔になれば、ハーレムなんかも作れるわ」

 

 ……へー。かなり魅力があるもんだな。

 光に弱くなるってのはさておいても、寿命が延びるってのは中々に気を引かれるモノだ。まだ人生を十数年しか生きてない俺だって、死にたくないって想いはある。

 

《釣られるな、主。それが奴らの狙いだ》

 

 八岐大蛇が俺だけに聞こえる声で忠告してくれる。

 ――分かってるよ。さすがの俺もそう簡単に物欲で釣られたりはしないっての。

 でもせっかくなんだから、この機会に、これだけは聞いておきたい。

 

 

 ティアの、ことを。

 

 

「先輩。聞きたいことがあるんですが」

「良いわよ」

「純粋な悪魔と、人間から悪魔になったモノとの間に。差別なんかはありますか?」

「残念ながら、少しだけ有るわ。転生悪魔は、純粋な悪魔くらべて下に扱われることの方が多いわね」

 

 即答する。だが、その顔は、俺からしてみれば。

 

「……そう言う割には、少しも残念そうな顔をしてないですね。まるで、他人事の用に」

「まあ、私は下僕は差別しない主義だから。実質私の眷属には余り関係のない話だもの」

「そうですか。では一応聞いておきますが、先輩が昨日見せた写真の女性。実は彼女、今は俺と一緒に住んでいるんです」

『!?』

 

 全員の顔が、俺の言葉に驚愕に包まれる。

 そして空気がグレモリー眷属によって再度張り詰めた。

 

「なんですって?」

「彼女の話によると、彼女は主から虐待をされたために殺害して逃げたと言っていますが。そんな彼女をなぜ捕縛目的で追っているんです?」

「……言えないわ」

「彼女によると、問題を起こしたのが主であっても主が純粋な悪魔なら転生悪魔である彼女の方が罰せられると聞きました。それは本当ですか?」

「……」

 

 そこを聞くと、彼女は黙ってしまった。

 ……ティアの言っていたことは、本当の事のようだ。元々決まっていたようなものだが、今の先輩の反応が俺の返答を確かなものにする。

 

「せっかくの機会ですが……悪魔になるのは止めておきます」

「……念のために聞くけど、一体なんでかしら?」

「俺は正直言うと神器とか無くてもいいし、寿命が延びなくても問題は有りませんので。――それに、アイツ……ティアのことをふざけたような理由で追いかけ回すような輩の仲間になるってのは気分が悪いんでね」

「……貴方は、頭は良い方よね?なら、私がここまで話した理由が分かるはずよ。彼女を追われる身であると知りながら匿っているというのなら、ここは私達の領地だし容赦はしないわ」

 

 部室内の空気が、昨日以上に張り詰める。兵藤・木場・姫島先輩が、いつでも動き出せるように構える。……これは脅しだよな。ここまで秘密を話したんだから、仲間にならなければ死ぬぞ、という。

 

「日本の法律で脅迫は犯罪ですよ?そこんとこ分かってます?あと、治外法権なんて馬鹿げた考えもありませんがね?」

「あら、悪魔にはそんな法はないわ」

「そりゃまた、ずいぶんと野蛮な種族ですね……」

 

 俺も動けるように足に力を込め、昨日の感覚を元に魔力と気の源を開く。

 俺の変化を感じたのか、木場が首筋に剣を当て、兵藤が先ほどの赤い籠手を出す。

 

『Boost!』

 

 続いて赤い籠手が機械的な声を出し始める。多分神器の能力か何かだ。ブーストってことは、何かを強化する能力の可能性が高いな……厄介そうな。

 

「頼むよ織城君。僕も、むやみに君を傷付けたくないんだ」

「そうですわ、織城君。私も……、いえ、私は貴方の悲鳴を聞いてみたかったりもしますけど」

「ドSがここに居る……」

「なあ、織城。ここは素直に諦めておけって」

「先輩、あきらめてください」

「織城さん、悪魔も良いものですよ。みなさんも優しいですし」

「アルジェントさん、この状況でそれを信じるのは無理なんだが」

「今なら、貴方がはぐれ悪魔を匿っていたことも見逃しておいてあげる。それでも、悪魔になる気はないの?ここは、私の領土なの。神器持ちに、好き勝手させるわけにはいかないのよ」

「結構です。それに、ここは日本国の領土であって先輩個人の領土というわけではないでしょう?」

 

 何勝手に領土分割してるんだ。つーか、西洋の存在である悪魔が日本の領土持つとか日本の神様が許すはずないだろ。

 ここまで来て、木場の剣が俺の首に少し食い込む。

 ……これは、次断ったら、確実に斬られるな。こう、スパッと。

 

「もう一度だけ聞くわ。眷属になる気は?」

 

 ――そんな強制に対する答えなんて、決まっているだろう。

 

「もちろん、無い!!」

「そう、残念ね――朱乃!」

「『霊妙の龍剣(エッジ・オブ・ミラキュロス)』!」

 

 刹那、強い風の奔流が俺のいたソファーを押しつぶした。

 

「危なっ!?」

 

 瞬時に危険を感じて離れ回避したが、ギリギリだった。少しだけ掠った部分の制服が刃物に斬られたかのように見事に避けている。

 目の前に有った神器を右手に握って飛び上がり、出口を蹴破って外へと出て、受け身を取って下がる。

 そして昨日習ったばかりの魔力を引き出し、身体の中に浸透させ終わった頃に、グレモリー眷属も部室の中から姿を現した。

 

「貴方の神器(それ)も、私達にとって危険だから――あくまで彼女を庇おうというのなら、容赦はしない!」

「なんかこうなることは予測できてたんですけどね……仕方無いか」

 

 俺は剣を掴む力を強めて、身体を翻し、一目散に校門へと走る。

 だが、その行く手を雷が遮る。

 振り返ると、姫島先輩がその手に雷を迸らせている。

 あれも、魔力の応用なのか?クソ、これじゃあ逃げ場がない。

 

「うふふふ……」

 

 怖いです、姫島先輩。

 全員が戦闘準備を整えて、こちらへと向かってくる。

 それを睨み付けていると、木場が消える。

 やばい。どこだ、どこから来る?……仕方ない。勘に任せ、俺は頭を守ろうとした。

 だが、それは失敗だった。あいつが狙ったのは、俺の心臓だった。

 うっすらと見えたのは、木場の顔――くそ、こんなとこで死ぬのか、俺は?

 ここまで来たらもう反応できない。もう無理だ。

 木場の切っ先が、俺の心臓に吸い込まれるように皮膚を突き抜け――

 

「なにをしている、グレモリー!!」

 

 ――心臓に刺さるギリギリで、その剣が何者かに払われる。

 一体誰だ?

 僅かに切っ先が掠ったせいで血の出る胸を押さえて前を見ると、俺と木場の間に二人の女性が立ちふさがっている。

 朝に校門で見た、白いフードの二人組だ。

 それを見た途端、グレモリー達の顔が厳しくなる。

 その目線の先は、彼女たちの手。

 布に巻かれた長い何が、彼女らにそれぞれ握られている。

 

「……イッセー君。久々に会ったと思ったら、こんな事をしてるなんて……」

 

 片方が兵藤の知り合いのようなセリフを言い、かぶられていたフードが勢いよく脱ぎ払われる。

 そして、二人の顔が明らかになる。

 顔つきからして、二人とも女性のようだ。

 その内の、青髪の女性が俺の方を向いた。

 ――――――朝は面影が重なる程度だった。

 だが、今なら分かる。確か、彼女は。

 

「久しぶりだな。まさか会った瞬間に殺されかけているとは……、運が悪いのは相変わらずの様だな」

 

 呆れたような、ほっとしたような声を俺にかけてくる。

 以前と変わらない、綺麗な青髪。

 その前髪に、鮮やかな緑のメッシュを入れている。

 彼女は――

 

「――ゼノヴィア?」

「ああ。そうだ和真。久しぶりだな」

 

 出血する胸を押さえ、膝をつく俺に。

 

 美しくなった幼なじみが、昔と変わらない輝かしい笑顔を俺に向けた。

 

 

 

 

 




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