PSO2引退小説 「束の間の休息”Who nailed him?”」   作:sutegeri

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1 【残酷蘇生剣】 + 2 懐疑主義者は電子キーを探し求めない。

アークス研究員開発の対ダーカー試験地雷が、地下坑道に不発弾として残ってしまった。

 

 アークス研究員はそれを依頼(クライアントオーダー)として、スピットに発注。スピット社上層部はそれを受理、現地社員二名をアークスとして潜入させ、クエストという体で出発。

トランマイザー討伐という簑を被った仕事。だが、単純に機甲種が標的ではない。アークス員に発覚されては困るような不祥事、今回の場合は爆弾を始末する。

そんな尻拭いが彼等二人の日常だ。

 

 誰に魅せる訳でもない。

そしてどんな障害があろうと抗議は出来ない。効率が明らかに悪い戦場を生き抜く。

それが二人に要求されるクオリティだ。

 

××××

 

「ふーん、これがその…『爆弾』ねぇ?(笑)」

少女がニタニタと笑う視線の先、そこにはギルナスの頭部がある。

が、その頭がつかんでいるのは涙目のリリーパではない。怒りに真っ赤に染まった竜族だ。

当然、そこにあるのは、愛らしさの欠片も無い、牙を剥いて威嚇する竜頭しかない。

 

 金属の体を持った男がそれを捕捉すると、アークスが居るであろう上空を見て冷笑した。

「フッ、効率良く爆発してくれそうな形ではある。」

「どーゆーことかな?私の小顔に乗った(のーみそ)でも分かるように説明して、レッドニクルさん?」

黒のポニーテールをふわりと回す少女。邪気の無い笑顔で、しかし挑発的なジョークを飛ばす。

「………。」

レッドニクルと呼ばれた金属の男、スピット社No.1のシャドーハンター、スカーフィ・レッドニクル。彼は、少女の馬鹿っぽいジョークに、軽くうんざりした。

 

 明らかに自分を助ける気の無いふざけた口調の少女に、竜族はギロリと眼を飛ばす。

手がつけられない程険悪になった空気に、両方に銃撃するジョークでも噛ます。

そんな考えに、一瞬悩んだスカーフィ。 

青と黒のボディに冷たい印象の赤色の単眼が、殺気の乗った発想に現実味を持たせる。

 

 だが、直ぐにそれを引っ込めると、機械的対応をダミ声の発声機器で行った。

「…ギルナスの頭部には放電能力があるのは既知だろう?複数回行える自爆攻撃だ。それは

エネルギー量から考えると、スパルザイルより優秀だ。」

「ふーん…」

「だが、そのままだと威力とスピードが劣る。更に、ダーカーが集まりにくい欠点がある。」

 

それまで興味がない様子だった少女が、そこで質問を入れた。

「んー?ダーカーとそれ以外なら、どの種でも戦闘するよね?」

「そうだ。だが、ダーカーに発見される為の移動力が、頭部には無さすぎる。そこで奴等は

おそらく、発想を変えた。」

 

 いつの間にか手に持ったタバコを吸いながら、少女は納得する。

「Eトラによって発生する湧き…」

「リリーパEトラの様にさせておけば、捕縛者の悲鳴によってダーカーも気付きやすくなる。

 機甲種もろとも集まった所を…」

「ドッカーン☆」

少女は吸い終わったタバコを小さく手元で爆破して消した。ラフォイエによるものだ。

 

「…何故竜族なのかは実験結果によるものだろう。科学的根拠の仮説として上げられるのは、

死亡時の発火、感応能力(テレパシー)による煽動(せんどう)などが怪しいな。」

学術的興味をくすぐられたスカーフィ。

「まぁまぁ、その実証はどっかの研究者に任せておきましょ。私達は…」

言葉を途中で切った少女は楽しげに、杖に雷を纏わせ、それを竜族の前に掲げる。

竜族は嫌悪と憎悪を顕に、少女に唸る。

 

「こいつらを破壊するのが仕事よね?善良で従順な一般アークスがこれを見たら、リリーパ

Eトラをクリアするか悩んじゃうわぁ~♪」

 

 リリーパを助ける為にこなした仕事が、結果的に竜族を苦しめている。口で言っている内容とは裏腹に、少女はキャッキャとはしゃいでいる。

人間のドス黒い欲望が、間抜けな善性を踏み台にしている。そんな現場を目に出来て、幸福になっているのだろう。

 

 彼女はいつもそうやってハイになるので、スカーフィはいちいち構わない。

「確かにEトラを真面目に消化せず、リリーパを吹き飛ばすのが大好きな効率厨が、実は

善良な行為をしているとも見られるのは皮肉だな。が…それはともかく『鬼子』。」

[鬼子]と呼ばれた少女は、これから始まるであろう小言を想定し、露骨に顔をしかめて

振り返る。

「なによ、ポンコツ上司?」

つまらない悪口は無視し、スカーフィは制止に入る。

 

「スピットが原住民に、『侵略者』認定されるのは困る。あくまでオレ達は『売り手』だ。

雇われ兵士だろうとな。彼等が今後、スピットの技術や兵器、資材を求める可能性が

ある以上、友好な関係にしたい。」

「えー!私達の目標はこいつらの破壊でしょ?証拠も残らないよう消しておかなきゃ!」

[鬼子]はぷぅっと頬を膨らませる。

「単にお前は血が見たいだけだとオレには分かっているぞ。お前好みの戦場は用意してや

るから、とりあえず今はそれを引け。」

と、スカーフィは、乱暴に杖を握る。

仮にも上司を無闇に傷付けるのはよしておくのか、間一髪で杖の雷がパッと四散した。

ふてくされた少女はフンッとだけ言い残し、その場を離れた。

 

             ××××

 

 スカーフィは相手に分かるように、武器をその場に置いて座った。戦うつもりは無いという

意思表示だ。

「お前と話がしたい。」

(我、危機的状況。話シデモ出来ル様ニ見エルノカ、ニンゲン!)

自分の理不尽な状況から怒りを顕にする竜族に対し、

「意思疎通クリア、凶暴化してないようだな。今すぐそれを外そう。」

あくまで冷淡に対処するスカーフィは、竜族の手をとった。

 

 突然の救出に戸惑い、思わず抵抗する竜族。スカーフィは特に気にせずに、力ずくでギルナスの腕に隙間を作ると、竜族をゆっくり外に誘導する。

自由になった竜族は、すぐさまスカーフィに対し噛み付いた。研究員と勘違いしているのだろうか。だがスカーフィはそれを無視する。

 

武器変更を使用し、虚空からダブルセイバー、ラムダフェイルノートを取り出すと、片手で

デットリーアーチャーを放つ。

ギルナスの装甲をあっという間に削り、内部へ刃が侵入。引き返す刃を受け止めた時には、

残骸が爆発で飛び散っていた。

 

 

「オレ達はスピット社のエージェントだ。目的はあの爆発物を処理する事。お前達の相手を

する事ではない。故に取引がしたい。」

竜族は食らい付いた状態のまま、抗議する。

(貴様ラモ、[アークス]ナノダロウ?[アークス]ト取引ナド!) 

バキリと、竜族の口内から異音がした。

「オレ達はスピットだと言っている。アークスではない。お前が誰と勘違いしようと勝手だ 

が、その場合こちらに殺しの労力が追加されるだけだ。」

(…………貴様……)

 先程から全力で攻撃しているにも関わらず、会話しかしてこない。竜族は自分が噛みきった

ボディパーツをポロリと口から落とした。舌に絡み付いた鉄の味は、スカーフィの血だ。

血が通っていたとは予想外だったのか、竜族は驚愕する。

噛み付こうが、肉を削がれようが片手を掴んだまま反撃してこない不気味さに、竜族は少し

冷静になった。

 

 攻撃性が減った事を確認したスカーフィは、血を垂れ流したまま会話を続ける。

「オレ達はお前らを見逃し、逃走ルートを提供する。

 お互いの攻撃は無しだ。これで不満ならもう少しオマケしてやろうか?」

(…ソノ道トイウノハ、アレカ?)

と、テレポーターを指す竜族。

 

 アークス社とは違い、スピット社制のテレポーターは、転送先制限は設けられてない。

つまり、キャンプシップだけでなく、他の惑星に設置済みのテレポーター等にも転送出来る。

スピットはアークスの運営の様に愚かでも疎かでもない。

社員にはそれなりの信用と融通がある。

そして同時に、監視と裏切りに対する確実な報復も。

 

(分カッタ。貴様ノ交渉ニ応ジル。只、アレハ行キ来可能カ?私モ装備ヲ持チ、

同行サセテモラウ。)

予定していた要望を先に言われたスカーフィは、内心少し動揺するが、表には出さない。

「可能だ。戦士として有名な竜族の戦いぶりが見られるとは。同行願いたい。」

スカーフィはテレポーターの接続先を、キャンプシップから、サブアカウントによってマップ形状を固定した火山に変更した。竜族を助けた帰りでバッタリ野良アークスに会えば、事態がややこしくなるからだ。

コンソールに、腕から流れる血が張り付いた。

 

(…痛クハナイカ?)

「痛覚はあるぞ?」

(イヤ、ソウイウ事デハ無クダナ…)

設定を完了したテレポーターをチェックしながら、雑談のような軽い調子で対応する。

「協力の代償と考えれば安いものだ。」

竜族はそれでも納得出来ないようだ。

「スマナカッタ。」

「謝罪とは嬉しいな。その分働いてくれるという意思表示に他ならないからな。」

他人の気遣いに、高圧的にも聞こえる不遜さを崩さないスカーフィ。

 

彼なりの優しさか、あるいは、只の戦力欲しさなのか。

竜族は、それを悟りきれなかった。

 

が、どちらにせよスカーフィの要望に答えようと、コクリと頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<2 懐疑主義者は電子キーを探し求めない。

 

 

 竜族は、囚われの仲間達に叫び、何かを伝えた後、テレポーターに消えた。

 

 

姿がなくなったのと同時に『鬼子』の少女が、

何やら含み笑いで近付いてきた。

 

「役に立っちゃったわね、その潤滑油。」

「血が通っていると思わせるのは、本来はアークスに使うつもりの準備だったのだがな。」

 

破壊された部位の油を全て排出して、

特に必要ではない包帯を、偽装の為に巻く。

 

 

「それと…あなた、約束を裏切るつもりはないわよね?」

「当然だ。」

それを聞いて少女は更に口角を上げる。

 

「ふーん…でもでも、竜族の方はどうでしょうね?」

「さぁな。」

 

 スカーフィは左腕から噛み取られたパーツを確認し、修理は不可能と判断、投げ棄てた。

 

 

「ところで、お前は何を基準に竜族が協力してくれそうだと言っている?」

「は?」

 

 

少女は予想外の質問にキョトンとする。

「それにもしそんなものがあったと仮定して、お前はそれを信用できるのか?」

 

少女は完全に固まる。

 

「…い、いやぁ、そりゃ、私だって?両方から挟み撃ちやら奇襲やら?

されたらどうすんの?って聞くつもりだったし?」

 

「お前好みの展開じゃないか?そういう血が見れるのは。

 迷惑ならオレ一人でどうにかしよう。帰れ。」

 

「………あなた…」

暫く唖然としていたが、唐突にケタケタと笑い出す少女。

 

「あははははは!そうね!私は竜族の血塗れ死体が作れそうならいくらでも協力するわ。良く分かってるじゃない!」

 

 

スカーフィは少女の歓喜っぷりを無視した。

 

「オレとしては死体より戦闘が見たいんだがな。」

 

「なに言ってるの!私の戦闘が見れるじゃない☆」

 

「お前の戦いぶりはもう見飽きた。武装が貧弱な竜族が如何に工夫するかが見たいのだ。」

 

ゲラゲラと下品に笑う少女と、淡々と断言する機械音声。

それらは、嵐の前の静けさを漂わせる坑道に吸い込まれていった。

 




備考:2章はイノセントナイル序盤で起こるゲートロック前での会話リスペクト
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