PSO2引退小説 「束の間の休息”Who nailed him?”」 作:sutegeri
「作戦はこうだ。」
まだ笑いを引きずった様子の部下の頭を、グリグリと八つ当たりしながら、説明を始めたスカーフィ。
「スピットの兵器技術を使ってギルナスの頭部を解体、解析した事がある。
その時、腕の関節の節目は、爆発させずに切断可能だと分かった。」
そこまで言うと、手近にあったギルナスの残骸でそれを実演する。
「もっとも、この様に節目は頭部よりも堅い。
更に、とても短いので、狙って百発百中させるのは通常不可能だ。」
彼の言った通り、動かない死骸に正確に刺し込まれた刃は、少しだけめり込み、止まってしまった。
竜族はそれを聞いて苦い顔になる。
(…所詮運任セナノカ?)
「いや、俺達にはコレがある。」
と、スカーフィが見せたのは腕の端末だ。
「こいつはスピット社のホログラムカウンターだ。
アークスではクラスカウンターに座る事務員が、クラス変更を促すフォトン干渉機を持っている。
それに近いブツだ。」
スカーフィはカバーを外し、中身の改造っぷりを見せる。
「スピットは、それを人工知能に任せて、いつでもクラス変更可能にした。
社員が暴走しない様に、非戦闘員に任せるのはアークスらしいやり方だが、うちの上司はそこまで臆病ではない。戦闘時に一瞬でクラス変更が出来る様にこのフォトン干渉機がオレ達に支給されている。さらにスピット社はこの機に様々なフォトン技術、計測能力、予測演算をつめこみ、あらゆるカウンター員がこなす仕事、クエスト受注から武器強化まで、ありとあらゆる事をこなす、つまり…」
(…???)
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
流石に話が長くなってきたので少女が止めに入る。
「あんたはいつも話が長いのよ。つまりね、この人工知能の子…」
そう言いながら端末を起動すると、デバイスから女性のホログラムが空中に投影された。
その女性はペコリと挨拶をする。
『はじめまして。』
「この子がタイミング良く、スキル弱体化や武器チェンジによる攻撃キャンセル挟んでくれる。
だから、当たり所が悪くても、爆発は起こらない!」
『このデバイス嬢にかかればそれくらい朝飯前ですよ!』
そういうとデバイス嬢と名乗る人工知能がガッツポーズをとる。
(…“スキル”?…“武器チェンジによる攻撃キャンセル”?トイウノガ分カラナイ。
ガ、我ノ仲間ガ無事ニナル様ナラソレデヨイ。)
その疑問に過剰反応するスカーフィ。
「…スキルとは、クラスが各々が持つフォトン能力だ。
干渉機適合者はクラスやスキルを、自由に変更出来る。
クラスのスキルは、特化させれば無視出来ない倍率で火力を底上げする。ので、攻撃系統に相応しくないスキルに変更する事は、武器変更によるPAのダメージ判定消失、モーションキャンセルと同等並に攻撃中断に使用され…」
「ストップストーップ!もういいでしょ、分かったって言ってるんだし?!」
少女が再び割って入ると、心外だと言わんばかりに不満な顔をするスカーフィ。
「この武装のロマンについて語りたいだけだ、止めるな。」
「あーもうそれは後にしなさい!ほらさっさと行くわよ!」
『そーですよ、スカーフィさんの説明は堅苦しいんですよ。』
強引に策敵を開始する少女と、黙りこむスカーフィ。
竜族はそれを、少し微笑ましく思いながら後を追う。
やがて彼等の歩みが止まる。
「…角を曲がった所に数個あるみたい。」
(苦痛ト怒リ二満チタ感情…早ク行クゾ!)
逸る二人を手で遮り、小さくデバイスに話しかける。
「エマージェンシーコール要求。」
『はいー、事前許可申請通り、エリア全体にコールをかけます。』
スカーフィのうでの端末が応えるとエリア全体に例の声が響き渡った。
“エマージェンシーコール!ノーエントリー!”
(…今ノハ?)
竜族が独特の音声に警戒気味に質問する。
「一定のフォトン反応を持つ対象がここに入ると失敗する、つまり俺達が気付くシステムだ。
対象はフォトンが大きな者、つまりアークス達か…」
「あるいは大型のダーカーやモンスター!どっちにしろトラブルね!」
『鬼子』の少女が途中から台詞を嬉しそうに被せる。
(ソノ割リニハ楽シソウダガ…)
竜族があからさまに引いていると、スカーフィが彼の肩を叩いて言う。
「そういう奴だ、気にするな。行くぞ?」
(アイ分カッタ。) 「O~K~♪」
二人の好調な台詞を聞き終わる事なく、スカーフィは唐突に走り出した。
『シュラス第1リミッター解放、システム、戦闘モード。』
「I KILL YOU.」