PSO2引退小説 「束の間の休息”Who nailed him?”」 作:sutegeri
「武器チェンなんて慣れよ?」
(壱ツ二魂ヲ込メテ放ツ我々ノ修業ハ、何ダッタノダロウナ?)
後ろから追い縋るダーカーを砲撃で牽制するしつつ、スカーフィを追う二人。
彼等は息も合ってくるにつれ、素直な感情を話し始める。
だが、スカーフィはそれが気掛かりだった。
(仲良くなりかけには致命的な危険が存在する。一つは相手に情報的弱点を握られ、利用されてしまう可能性。
もう一つは…『善意の裏切り』。)
だが、その危惧は遅すぎた。
「そんなにグチってると手元がブレちゃうわよ、あー!ほらこんな風に!」
竜族がその言葉に振り返った時。
「よっと。」
ズブリと音がして、鈍い衝撃と灼熱感、それに見合わない血が彼に降りかかった。
(!?)
彼にぶつかったのは知った顔の竜族だ。
しかしその頭には見慣れないモノがあった。
侵食核である満開の花が、ウゾウゾとうごめいていたのだ。
冷たくなる友の体に対し、花は活発さを増し、事態を飲み込みきれていない竜族に花が飛び掛かる。
移動用ツインダガーで防御と攻撃を同時に行っていた少女は防御を放棄、シュートポルカを放ちその軌道を上に跳ね上げる。
3撃目の切り上げのヒットと同時に武器チェンジ、杖に変更する。
ラザンが花弁を散らし、ナフォイエで焼き払う。
「ほら、この花みたいに、自分が力不足だー、なんて嘆いていてもろくな事になんないよ?…あれ?大丈夫?レスタしたのに?
おーい…?」
少女は無垢な様子で竜族を心配している。
彼は目の前の少女も、その少女がかけるレスタも、自分を襲った侵食核の最期すらも目に入らなかった。
彼の目は、友の亡骸に縛り付けられていた。
…正確にはその亡骸が出した血を。
彼は振り返った時、その大量の血が飛び散る中、愉しげに笑う『鬼』の面、目から光を失う友を見た。
その血が隠した鬼の笑顔の主が、目線を上げればそこに居るであろう少女の物。
そうだとは信じられなかった。
「んー?まさか痛みのショックがきつ過ぎた?
どーも他種族への支援や回復って分からないわねぇ…」
そう言われてやっと自分が致命傷一歩手前の傷を受けた事を理解する。
そうだ、致命傷だった攻撃を防いでくれた少女が、その傷を癒した少女が、あの『鬼』であるハズがない。
「大丈夫?」
そう自分を安心させた時、声をかけられ、反射的に顔を上げ、竜族はこう思う。
裏切られた、と。
自分に気を使ってくれる少女。
彼女の手にあるツインダガーの刃は、友の血糊を垂れ流している。
竜族はそれを、呆然と見ていた。
友情を深める段階に入った時の危険分子その2、『善意の裏切り』。
それは、素直な感情や思考、邪気の無い素直な性格が、相手の倫理や文化と決定的に異なる事。
その事を、突然目にして、生理的嫌悪してしまう可能性を指す。
少女は裏切ったつもりなど欠片もないだろう。
それでも、竜族は裏切られたと思わずに居られなかった。
なにも、あんなに、我々の同胞を殺すのを楽しまなくても。
血で笑わなくても。
そこで竜族の意識はプツリとなくなった。