PSO2引退小説 「束の間の休息”Who nailed him?”」 作:sutegeri
「…オイ、しっかりしろ。」
スカーフィがいつの間にか前線から戻ってきている。
既に周囲の湧きは潰され、安全は確保されていた。
(…少女ハ?)
「別ルートでマッピングと湧き潰しをしてもらっている。」
スカーフィは、別行動の理由を伏せた。
(…ソウカ。)
スカーフィは、危惧していた不安要素を軽視し過ぎたなと、後悔していた。
その結果が、目の前の項垂れる竜族だからだ。
(クライアントに、『邪魔だから帰れ』と言うのは簡単だ。…だが。)
それでは竜族はきっと後悔する。
「戦友だったのか?」
(ソウダ。)
スカーフィの無機質な質問が、竜族の思考を止めたまま、受け答えを促す。
例え何が起こっても、竜族の戦士として誇りを持って闘い抜くべきだ。
後悔を減らす為に。
それでも彼は、別の事で自分を責めるだろうなと思いつつ、それは考えずにスカーフィは説得を始める。
「この武器は友人のドロップだ。お前が拾え。」
(…イイノカ?)
明らかに前衛向け武器になりそうな刀剣を譲るスカーフィに竜族は聞く。
(…そういえばさっきも『いいの?!』と言われたな。)
スカーフィは内心苦笑した。
×××
少し前の話である。
少女が気絶した竜族を前に、微妙な顔していた。
スカーフィは助け船を出す。
「オレがこいつを少し冷静にさせるまで、別行動していてくれても構わんぞ。」少女は驚いた。
「えー!?それでいいの?!戦力分散した上に、そっちはお荷物まで抱えて…」
少し滅茶な作戦に、スカーフィはとぼける。
「…まぁ竜族の闘い振りも見れるしな。」
「アンタそれ建前じゃないの?なーに?
かつての仲間に背後から攻撃された者同士、古傷舐め合うのぉ~?きっもー!(笑)」
『鬼子』が挑発するも、スカーフィは首をひねる。
「…俺は邪気のある裏切りで死に、アイツは洗脳された友からお前に助けられた。大分違うと思うが?」
マイペースなスカーフィ。
少女は、慌てて逃げるように捨て台詞を残して去った。
「んな事分かってるわよ!あーもうなんか腹立つ!じゃあな!」
スカーフィは首をすくめる。
(…相変わらず気を使われ慣れてない奴だな。)
×××
「いいぞ。」
遠慮する竜族に、スカーフィはハッキリと言った。
「戦友との決着がこんな事になったのは、お前の落ち度ではない。
お前の戦いぶりに隙は無かったし、オレ達のフォローを受けるのも最低限で済んでいた。
そしてお前の戦友もきっとこんな事を望んでいなかった。勿論彼の落ち度も無い。
敵が強く、そして狡猾だった。それだけだ。」
(…ソウダナ)
『敵』という単語に少しだけ反応する竜族。
友人に取り憑いた侵食核は復讐すべき敵。
明確に思い浮かべた竜族にスカーフィは刀剣をそっと置いた。
「お前はリベンジすべきだ。お前の戦友の為にも。
それと共に、敵を上回るのが、彼に対する一番の喪だ。」
(…………。)
刀剣に戦友を思いだし、喪の悲しみと、復讐の怒りが無い混ぜになる竜族。
だんまりした様子から、充分思考回路が回る程に立ち直ったと判断したスカーフィ。
それがマイナス思考にならない内に、戦場に連れ出す。
「行こう、残りの同胞が少しでも助かる内に。」
竜族が立ち上がるのを待たずに、スカーフィは背を向け歩き出す。
(…ナァ。)
呼び掛けに、振り返らずに足だけ止めて聞くスカーフィ。
(アノ友ハ、友ダッタノダロウカ?
友ハ友二殺サレタノカ?
……私ハ友二殺サレカケタノダロウカ?)
「…。」
禅問答の様な問い掛け。
無意味だと怒鳴らんばかりに無視の返答を叩きつけ、足音を残して歩き出すスカーフィ。
一瞬の躊躇いと戸惑いの後に、竜族が刀剣を手に取り後を付いて来たのを、スカーフィは熱で“目にする”。
今すべき事を理解するだけの冷静さはあるらしい、とスカーフィは少し安心した。
(…哀しみを復讐という原動力に、戦闘を手段に。
あくまで救出が目的、といった所で心理安定してくれれば良いが。
迷いはあるが、冷静な戦力としてプラスにはなりえるハズだ。)
スカーフィはディアボリックガントを抜き放ちながら思考を続ける。
(扱い慣れてない武器、明らかに重量オーバーな装備数。
加え、先のショックが体にも頭にも来てる事だろう。
そんな状況で如何に竜族が戦うのかは非常に楽しみだが、それよりも…)
各種スタンスを張り直し、シフデバを一応唱え、
竜族にもエフェクトが掛かるのを可視光で確認する。
(回復してくれる『鬼子』不在、竜族の不調という不利な状況だ。)
スカーフィは不敵に笑い、気合いを入れる。
『…シュラス第2リミッター解放、
(倒す敵が倍、こちらに降り掛かる攻撃も倍、倍以上難易度といった所か。
そんな中、何人救い出せる?)
坑道に不穏なフォトンが渦巻き出した。
計測器の値は、いつバーストが起こってもおかしくない程に乱れている。
(…久しぶりに本当の死闘になりそうだな。)
竜族の視野範囲60度以外の敵、
300度の敵ヘイトを確保、処理する事に決めたスカーフィ。
彼はステップによる移動を開始した。
「復讐に決着を。しかし、殺しも、後悔もしてはいけない。」
スカーフィ・レッドニクル