PSO2引退小説 「束の間の休息”Who nailed him?”」   作:sutegeri

7 / 8
7 戦場友愛者は喪を利用する

「…オイ、しっかりしろ。」

 

スカーフィがいつの間にか前線から戻ってきている。

既に周囲の湧きは潰され、安全は確保されていた。

 

(…少女ハ?)

「別ルートでマッピングと湧き潰しをしてもらっている。」

スカーフィは、別行動の理由を伏せた。

(…ソウカ。)

 

スカーフィは、危惧していた不安要素を軽視し過ぎたなと、後悔していた。

その結果が、目の前の項垂れる竜族だからだ。

(クライアントに、『邪魔だから帰れ』と言うのは簡単だ。…だが。)

それでは竜族はきっと後悔する。

 

「戦友だったのか?」

(ソウダ。)

スカーフィの無機質な質問が、竜族の思考を止めたまま、受け答えを促す。

例え何が起こっても、竜族の戦士として誇りを持って闘い抜くべきだ。

後悔を減らす為に。

 

それでも彼は、別の事で自分を責めるだろうなと思いつつ、それは考えずにスカーフィは説得を始める。

「この武器は友人のドロップだ。お前が拾え。」

(…イイノカ?)

明らかに前衛向け武器になりそうな刀剣を譲るスカーフィに竜族は聞く。

 

(…そういえばさっきも『いいの?!』と言われたな。)

スカーフィは内心苦笑した。

 

 

   ×××

 

 

少し前の話である。

 

少女が気絶した竜族を前に、微妙な顔していた。

スカーフィは助け船を出す。

「オレがこいつを少し冷静にさせるまで、別行動していてくれても構わんぞ。」少女は驚いた。

 

「えー!?それでいいの?!戦力分散した上に、そっちはお荷物まで抱えて…」

少し滅茶な作戦に、スカーフィはとぼける。

「…まぁ竜族の闘い振りも見れるしな。」

「アンタそれ建前じゃないの?なーに?

 かつての仲間に背後から攻撃された者同士、古傷舐め合うのぉ~?きっもー!(笑)」

『鬼子』が挑発するも、スカーフィは首をひねる。

 

「…俺は邪気のある裏切りで死に、アイツは洗脳された友からお前に助けられた。大分違うと思うが?」

マイペースなスカーフィ。

少女は、慌てて逃げるように捨て台詞を残して去った。

「んな事分かってるわよ!あーもうなんか腹立つ!じゃあな!」

 

スカーフィは首をすくめる。

(…相変わらず気を使われ慣れてない奴だな。)

 

 

×××

 

 

「いいぞ。」

遠慮する竜族に、スカーフィはハッキリと言った。

 

「戦友との決着がこんな事になったのは、お前の落ち度ではない。

 お前の戦いぶりに隙は無かったし、オレ達のフォローを受けるのも最低限で済んでいた。

 そしてお前の戦友もきっとこんな事を望んでいなかった。勿論彼の落ち度も無い。

 敵が強く、そして狡猾だった。それだけだ。」

(…ソウダナ)

 

『敵』という単語に少しだけ反応する竜族。

友人に取り憑いた侵食核は復讐すべき敵。

明確に思い浮かべた竜族にスカーフィは刀剣をそっと置いた。

 

「お前はリベンジすべきだ。お前の戦友の為にも。

 それと共に、敵を上回るのが、彼に対する一番の喪だ。」

(…………。)

刀剣に戦友を思いだし、喪の悲しみと、復讐の怒りが無い混ぜになる竜族。

 

だんまりした様子から、充分思考回路が回る程に立ち直ったと判断したスカーフィ。

それがマイナス思考にならない内に、戦場に連れ出す。

「行こう、残りの同胞が少しでも助かる内に。」

竜族が立ち上がるのを待たずに、スカーフィは背を向け歩き出す。

 

(…ナァ。)

呼び掛けに、振り返らずに足だけ止めて聞くスカーフィ。

(アノ友ハ、友ダッタノダロウカ?

 友ハ友二殺サレタノカ?

 ……私ハ友二殺サレカケタノダロウカ?)

 

「…。」

禅問答の様な問い掛け。

無意味だと怒鳴らんばかりに無視の返答を叩きつけ、足音を残して歩き出すスカーフィ。

 

一瞬の躊躇いと戸惑いの後に、竜族が刀剣を手に取り後を付いて来たのを、スカーフィは熱で“目にする”。

今すべき事を理解するだけの冷静さはあるらしい、とスカーフィは少し安心した。

 

(…哀しみを復讐という原動力に、戦闘を手段に。

 あくまで救出が目的、といった所で心理安定してくれれば良いが。

 迷いはあるが、冷静な戦力としてプラスにはなりえるハズだ。)

 

スカーフィはディアボリックガントを抜き放ちながら思考を続ける。

 

(扱い慣れてない武器、明らかに重量オーバーな装備数。

 加え、先のショックが体にも頭にも来てる事だろう。

 そんな状況で如何に竜族が戦うのかは非常に楽しみだが、それよりも…)

 

各種スタンスを張り直し、シフデバを一応唱え、

竜族にもエフェクトが掛かるのを可視光で確認する。

(回復してくれる『鬼子』不在、竜族の不調という不利な状況だ。)

 

スカーフィは不敵に笑い、気合いを入れる。

『…シュラス第2リミッター解放、火事場状態(カタログスペックレッドライン)に移行します。御武運を。』

(倒す敵が倍、こちらに降り掛かる攻撃も倍、倍以上難易度といった所か。

 そんな中、何人救い出せる?)

 

坑道に不穏なフォトンが渦巻き出した。

計測器の値は、いつバーストが起こってもおかしくない程に乱れている。

(…久しぶりに本当の死闘になりそうだな。)

竜族の視野範囲60度以外の敵、

300度の敵ヘイトを確保、処理する事に決めたスカーフィ。

 

彼はステップによる移動を開始した。

 




「復讐に決着を。しかし、殺しも、後悔もしてはいけない。」
スカーフィ・レッドニクル
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。