PSO2引退小説 「束の間の休息”Who nailed him?”」 作:sutegeri
竜族の戦果が不調に転じたのは、それから暫く後の事だった。
最初は銃撃を主力、
剣撃は撃ち漏らし、近接敵の牽制に使用していた。
が、今は剣撃で切り込む、
銃撃を追撃、ガード中の反撃、フォローに使用するスタイルに切り替えている。
二刀流としては片方ずつ使用するより、両方同時使用を狙う方が火力は出る。
更に、防衛対象が居る中、誤射の少ない剣撃重視は賢明だ。
現に、不馴れな彼でも、ヘイト奪取や討伐の面でもより良い結果が出た。
だがそれは、スカーフィの援護があってのみ成立する、危うい結果だ。
スカーフィの負担が増えている。
例えば。近接不馴れ故の負傷、メイト不使用のまま突撃している竜族。
それにレスタ掛けするスカーフィ。
例えば、ヘイト稼ぎ過ぎで竜族の近くに群がり過ぎる。
それをスカーフィが、横から倒す。
PT単位で見た効率は、下手すると落ちていた可能性が高い。
それでもスカーフィが竜族のやり方を修正させなかったのは、
そこに挑戦と成長が存在しているからだ。
(挑戦の無い人生など、死んだも同然だ。
まぁ一度、死ぬ様な経験をしておくのも悪くないが。)
何度目か分からない、クラッカーバレットのヒットストップ援護射撃を行う。
卵を撒こうとしていたプリアーダがそれに怯み、増援はなくなった。
攻撃の精度を上げさせる為に敢えて、援護はダメージを稼がないプレイングをしている。
もちろん、自分が担当したヘイトは容赦しない。
目の前のディガーダをクレイジースマッシュで殴り、カルターゴのコアまで吹き飛ばし、爆散させた。
「…しかし、そろそろ限界か。」
竜族には聞こえない様、小声で一人ごこちる。
竜族の挑戦自体はいい方向に向かっていた。
負傷は減り、ヘイトを無闇に取らなくなり、
範囲攻撃で同時討伐するコツも掴み出していた。
だが、彼に疲労の影が色濃く出ているのをスカーフィは感じていた。
敵も居ない方向にフラフラと歩き出していたり、
時々放つ攻撃が単調になる、追尾による移動が増えた、等々…。
思考の限界だと、スカーフィは推測する。
友人を失ったショックに、慣れない戦闘スタイルと負傷。
慣れ始めの気の弛みに、終わりの見えない戦場の絶望が入り込み、
彼の精神力が既に折れてしまっている。
中身の疲れまで、レスタは届かない。
(もう少しだけ暴れさせておくか。)
スカーフィはそう決断した。
敵を討ちきったと彼が感じれるまで、その怒りを信頼する事にした。
(疲労が復讐を凌駕するのが早いか、戦果が怒りを鎮めるのが早いか…)
その結果は思ったよりもすぐに表れた。
スカーフィの考えが
(…!?)
縦切りの構えをしてない時点で変だなとは感じていた。
開幕ジャンプ切り以外の動きは今まで無かったからだ。
剣先が力無く、ダラリと垂れ下がっている。
それに気付いた時にはもう遅かった。
竜族の意識が朦朧としている事を祈りつつ、彼は規制されたリミッターに手を掛ける。
「【そろそろ本気でいかせてもらう。】」
『暗号認証。シュラスメモリーデータ改暫、不正アクセス開始、第3リミッター、解除します!』
彼は自らの判断ミスを断罪するべく、大群待ち受ける前線に飛び込んだ。