聖杯戦争──
かつて遠坂、間桐そしてアインツベルンこの三家がキリストが最後の晩餐で使用した聖杯を冬木の地に召喚することに成功した。
聖杯が願いを叶えるのは1人のみ、聖杯は7人の魔術師を選び最後の1人になるまで戦わせた。
しかし、冬木の聖杯には大きな欠点があった。聖杯は破壊、殺戮によってしか、その者の願望を叶えることができない。冬木の聖杯はキリストの聖杯には程遠い贋物に過ぎなかった。
その事実に気付いた第五次聖杯戦争のマスター、衛宮 士郎、遠坂 凛、そして魔術協会のロード=エルメロイ二世によって冬木の聖杯は解体された・・・
はずだった。
今、再び聖杯は7人の魔術師にマスターの証である令呪を授ける。
いや、彼を表す言葉は魔術師ではなく魔術使いという方が正しいだろう。
彼は魔術師が目標とする根源への到達に興味はなかった。彼が魔術を使い知りたかったの己自身だからだ。
無銘は本当の親の名を知らない。彼は赤子の頃に一人の魔術師が気紛れに拾われ育てられたのが彼だった。その過程で魔術師は無銘に魔術を教えていく。
その過程のなかで無銘は己の歪さに気付いていった。
彼は天才…否、天災と呼ぶ才を持っていた。
災害と言える程の力は原石の時点で魔術師たちの注目を浴びた。そして魔術師の中でも凄腕であった彼を育てた師の流派との相性が抜群に良く、無銘はさらに鋭く牙を磨ぐことになった。
そして、師に拾われ17年が経ったある日、老いた師はこの世を去った。
『私の持てる全てはお前に託した。あとは人として生きるも魔術師として生きるも好きにしろ』
最期にこう遺して…
そのあと、無銘は師の属していた魔術協会を去った。
幸いに普通に生きていくだけの一般教育を師は彼に受けさせていた。
大学に行くことが出来るだけの遺産も…
(師匠には頭が上がらないな)
師が死んでから3年、彼は大学に通っていた。
しかし魔術から離れたわけでは無かった。無銘は師と暮らしていたアジトを自分の家として使い続け、独学で魔術の高みを目指した。ただ、己の全てを知るために…
ただ、魔術から完全に離れたわけではないためそれ関係の客人はあとをたたない。
魔術協会からの勧誘が主だが技術提供の依頼や弟子入り…中には縁談もあった。
週に一度はこのような客人が無銘を訪ねてきた。
中には、力ずくで人質を使うと考えた輩も大勢いた。しかし、天涯孤独な彼に人質になる存在は無く、力には更なる力で対応し続けた。
無銘からして見ればこちらのほうが正攻法でくる連中よりたちがいいと思っていた。
礼節を持った者には礼節を持って返す…これは師の教えであり、無銘が重要視し続けたため、正攻法で交渉に来る者にはある程度は話を聞く努力をしていた。
そして、無銘は今夜にそんな正攻法の魔術の関係者と会う約束をしていた。
ただし、それまでは無銘は普通の大学生である。
故に、勉学に励みサークル活動にも勤しんだ。
そして、無銘は今、自分が所属する大学新聞サークルの部室にいた。
本来なら無銘は自宅でサークルの仕事を終わらせてくるのだが今日は例外だ。
出来ることなら帰りたくない…。
しかし、約束ごとを破るのは気が引けるし、礼節があるとはいえ魔術師だ。約束を反古したら大学に何かしてこないとは限らない。