あれから一週間が過ぎていた。なのはやアリサ達ももうすっかり良くなっていた。ただ問題はデバイス達だった。なのはのレイジングハート、フェイトのバルディシュ、アリサのフレイムアイズ。この3機はボロボロだったためにパーツを総入れ替えしていた。
この1週間で変わったことは沢山ある。まずアデルの地球での生活スペース、つまり家がアースラスタッフに占拠された。アースラが現在改修中らしいのでこうなった。この町、海鳴町の近くに騎士がいる可能性が高いからだ。そして敵の主は闇の書と呼ばれる魔導書の主であることがグレアム提督の話で明らかになった。
そしてフェイトがなのは達の学校へ入学した。管理局としては喜ばしいことだ。5年間の身元預かりだけで罪は許されることになっている。
「でも、動けるのが俺とディオーネとすずかとユーノとクロノのだけか。騎士達だけなら俺1人で充分だがどんな奴が出てくるか分からんからな。」
そうだな、と呟くクロノが顔をしかめる。あとから聞いた話だがクロノの父は数年前に闇の書の事件に関わり命を落としているらしい。そのために日々努力している。
「とりあえずはなのは達のデバイスだ。アデル、エイミィが君を呼んでいたから行ってくれないか?」
はぁ、と溜息をつきながら重い腰を上げた。
「うちも連れてってーな。」
管理局本部に着いてすぐにジークを見つけた。何故ジークがと思っているとエイミィが声をかけてくる。
「ミッドチルダの空港で待ち伏せされてたみたいで。」
そうか、と肩を落とす。ジークリンデ・エレミヤという少女はきっと自分だけ置いていかれているのだと思っているのだろう。みんなが戦い自分は遠くで待っているだけなのが嫌なのだろう。それでも彼女はまだ5歳になったところだ。いかに格闘技の才能があってもまだ実戦は早い。
「ジーク、遊びじゃないんだ。家で待っててくれないか?」
「嫌や!うちはアデル兄と一緒に戦うんや!」
ジークのワガママなところはいつものことだ。ただ仕事に関してはいつも最後には折れてくれていた。今回は折れてくれそうにないが…。
エイミィが諦めろと言わんばりの顔で肩に手を置いてくる。……、仕方ないか。
「分かった。ジークも連れてってやる。」
「やった!」
ただし、とアデルは真面目な顔をする。
「連れては行くがたたかっていいのは、人手が足りないとき、ジーク自身が襲われた時だけ戦うことを良しとする。それでいいな。」
はーい!と手を挙げて返事をし、抱きついてくる。こうやって無邪気に笑って、スポーツとして格闘技をやって欲しいと思っている。連れて行くとは言ったが何があっても戦いに身を置かせるつもりはない。誓いとともにジークを肩に担ぎ上げる。
とある部屋のなかにレイジングハート、バルディシュ、フレイムアイズが待機状態でおいてあった。
「今日アデル君を呼んだのは相談したいことがあったからなんだ。」
エイミィが口を動かしながらホロウィンドウを操作しある画面を此方に向ける。それをジークを肩に乗せたまま覗き込む。
「それはレイジングハート、バルディシュ、フレイムアイズから送られてきた要求なの。そのシステム、カートリッジシステムは管理局じゃあまだ危険だからと使う人がほとんどいないシステムだから相談したくて。それにベルカの騎士には使う人もいるって聞いたし。」
エイミィの言わんとしていることは分かる。カートリッジの採用は大丈夫なのかというのが1番の疑問だろう。確かにカートリッジシステムはベルカの騎士はよく使っている。俺は使ってないが。基本的にカートリッジシステムというのは体に大きな負担をかけ、その上で魔力を一時的に爆発的にあげるものだ。安全性についてはグランツのとこで作ってもらえば大丈夫だ。
「安全性に関しては俺の知り合いに作ってもらえば大丈夫だ。だがこれは俺にではなく、なのは達が決めることだ。」
そうだよね、と言いながら、う〜んと唸っている。エイミィを横目に見ながら、その部屋を後にした。
「おい、アデル。どういうことだ?」
「? 何が?」
極論から言えばクロノ・ハラオウンは怒っている。アデルのおかげでデバイスの方は解決すると思う、というのがエイミィの話。それについては良かったと思う。ただ、問題は帰ってきたアデルだ。少し前に聞いていた。最近任務中に助けた女の子が居候していて、近々娘として養子にするというのは聞いていたし、反対はしていない。ただ、
「なんでその子を連れてきたんだ!」
アデルの娘になる少女、ジークリンデ・エレミヤを指差し叫ぶ。ジークが少しビクッと肩を揺らし、涙目になっている。
「あーあ、泣かしちまった。」
「えっ!嘘!……、いや、君を責めたわけじゃなくて、あの、その…。」
としどろもどろな答えになってしまう。それを見たアデルが吹き出し腹を抑えながらソファの上に倒れながら爆笑する。
「アッハッハ!ハァ…、ぷっ!アッハッハッハッハッハッハ!あー、笑い死ぬぅ。」
ポカーンと口を開けることしかできない此方に向かいアデルが爆笑している。イマイチ状況を掴めないままアデルがジークに話しかける。
「もうやめていいぞー。」
するとジークという少女の目から涙は消え、代わりに舌を出しテヘッ、と言い出す少女がいた。無表情のまま考える。ジークは子どもだから許そう。とりあえずアデルは殺す。そう誓ったクロノはS2Uを起動する。
地球ではないどこかの世界でピンク色の髪をポニーテールにしている騎士と赤毛の三つ編みの騎士が巨大な蛇のような生き物と戦っていた。赤毛の三つ編みの騎士、ヴィータが殴りかかる。2発3発と通したところでピンク色の髪をポニーテールにしている騎士、シグナムが斬りかかる。
「レヴァンティン!」
カートリッジシステムを使い、魔力を上昇させ、炎を生み出す。生み出した炎とともに巨大な蛇のような生き物を斬りつける。直撃し、巨大な蛇の体を燃やす。生き絶え倒れたのを確認すると剣をしまう。今回の戦いではカートリッジを4つ消費してしまった。そう考えているシグナムにヴィータが話しかける。
「あたしはカートリッジを5つ使っちまったけどシグナムは?」
「私は4つだ。…、問題は数ではなくこういう生き物を狩っても対した魔力は得られないということだろう。」
リンカーコアを持つ生き物は魔力を使わずとも強い生き物が多い。が、魔力はそこまで多くない。だが管理局本部に攻め込める戦力もない。かといってあのエルドラムの子孫であろう男と真正面に戦っても結果は見え透いている。時間がない。
焦るシグナムの前に2つ気配を感じた。1つはシグナム1人でも充分だ。だが2つ目ははるかに格上の実力者だろう。その気配は隠れているわけでもなく、それでいて気取っているのでもない。自信があるのだろう。正面から戦えば勝てるという……。
「やぁ、君たち赤髪の男、アデル・ツーリッドに困ってはいないかい?彼を止める手伝いはいらないかい?」
弱そうな気配の方は男だった。紫色の髪に白衣を着たその男は隣に立つ金髪の少女の頭を撫でながら言った。
「僕の娘ならアデル君を止められるよ。」
薄気味悪い笑みには確かな確信が込められている。隣の金髪の少女も不敵な笑みを浮かべていた。
再び登場、キチガイ博士。
隣の子はどんだけ強くなっただろうねぇ