仕事が忙しいため不定期になっとります
「予想通りだね。あとはあの本を暴走させてプログラムをいただくだけだ。」
紫の髪に白衣を着た男、トライル・スカリエッティが呟く。そこは結界外の公園。両手を広げ、スキップしながらベンチの前に移動する。そのベンチの上に乗り得意げに空を見上げる。
「あとは、彼女の死だけか。彼女が死ねば私も死ぬだろうなぁ。ま、それは良いんだけどね。この目で完成が見れないのは残念だなぁ。この世界が混沌に包まれる。それを起こしたのがスカリエッティ博士。うん、やっぱり最高だなぁ!」
そして結界のほうを見る。
「まぁ、私としては王がここでくたばってくれると嬉しいけどなぁ。」
薄気味悪い笑みとともにスカリエッティは転移した。
雷で伝達速度を上げたているとしても限界はいずれやってくる。魔力で身体を守りながら魔力で身体を壊すという矛盾を起こしているのだ。
「オラァ!」
叫びとともに殴る。アデルの腕に炎を纏わせているとしてもアリシアはそれを分かっているためまともに防御せず受け流す。エルドラムの記憶の中には受け流しの技法はなかった。そうか、じゃあ受け流すってのを覚える必要があるな。と今はどうでもいいことを頭の片隅においておき、殴り続ける。互いの血が互いの頬につく。血が飛び交っているためどの血がアデルのものでどれがアリシアのものかはわからない。ただそれでも2人は殴り続ける。片や身体で受け止めてカウンターを叩き込む男。片や速さにものを言わせ連打する女。
「ふふっ、あはははは!」
アリシアが笑う。顔もからだも血まみれで笑う。きっと格闘家の本能だとアデルは感じ、笑う。そう自分と同じような実力の敵は戦うだけで自分を強くしてくれるような気がする。アリシアも同じなのだろう。
拳を身体で受け止めその腕を掴み地面に叩きつける。叩きつけた衝撃で地面が凹みアリシアが血を吐く。だがアリシアはまだ楽しそうに笑いながらその体制のまま蹴りかかってくる。腕を離しバックステップをとり、距離をとる。
「楽しいね。」
本当に楽しそうにアリシアが言う。冗談なんて言っていないのが分かる。ただ
「じゃあなんで泣きそうな眼してんだよ。」
目を潤わせながらこっちを見ているアリシアは綺麗だった。
何見とれてる。とディオーネからの叱責に謝り、あらためてアリシアをみる。アリシアの身体から力が抜けていた。空を見上げ頬に一筋の光が流れる。そして静かに言う。
「私は格闘家としても魔力資質でさえもただのコピー、でも私という個人の意思はある。その意思はずっと貴方と一緒にいたいと思ってる。一緒にこの拳を高め合いたいと思ってる。」
「えっ……。」
一緒にいたい。ともに高め合いたい。告白された。思考が停止する。どうやらそれはディオーネも同じようで何も言ってこない。敵に告白されるのってさすがに初めてじゃないだろうか。うん、初めてだ。
「あのー、そのー、告白は嬉しいっすけど、やっぱ…、ねぇ。」
しどろもどろに答えるがアリシアはそれに笑って言う。
「分かってる。さっき同じ景色は見れないって言ったよね。つまりそういうことなんだよ。いくら父親同然でもスカリエッティがやっていることは最悪だよ。吐き気がする。それに加担した自分自身にも。」
顔を下に向け表情は見えない。それでもアデルには分かったことがあった。ただ彼女はアデルのコピーでも、フェイトのコピーでもない。ただアリシアの身体をした別人なのだ。
「なら、一緒の景色を見れるんじゃないか?お前はアリシアでもフェイトでも俺でもない。ならお前はお前なんだ。自分のことは自分で決めろ。手伝って欲しいなら手伝ってやる。」
そう言い手を伸ばす。だがアリシアは優しい笑みを浮かべ首を振った。
「出来ないよ。私は勝っても負けてもここで死ぬから。」
顔をしかめる。勝っても負けてもここで死ぬ?どういうことだ?と思考していると声がする。
「そんなに敵に情報を与えてはいけないよ、アリシア。」
その声はアリシアの後ろから出ていた。アリシアの後ろから出てきたのは一生見たくない顔だった。紫色のボサボサの髪に白衣を着た男。マッドサイエンティストの異名を持つ男。トライル・スカリエッティ。薄気味悪い笑みとともにアリシアを撫でながら前に出るとアリシアが一歩下がる。
「うんうん。よく分かってるねアリシア。君に選択肢はないんだ。だから私のために最後までがんばってくれたまえ。」
アデルは無意識のうちに地面を蹴っていた。一瞬でスカリエッティの前に踏み込むと拳を叩き込む。その拳をアリシアが横から迎撃する。驚きで眼を見開きながらもバックステップをとる。
「アリシア!なんで邪魔すんだ。」
黙り込み目を伏せるアリシアの代わりにスカリエッティが口を開いた。
「彼女の心臓のちょっと左部分に爆弾があるんだ。人間の上半身は軽く吹き飛ぶほどのね。」
汗が背中に流れるのを感じた。このマッドサイエンティストは人の体に爆弾を埋め込んだと言った。つまりは逃げれば爆発させるということだろう。怒りに顔が歪む。きっとディオーネも同じことを考えているのだろう。
「良い表情だ。その顔が見たかったんだ。」
スカリエッティの楽しそうに話を続ける。
「君は何故戦う?友達のためかい?もしそうなら君と私は同類さ。自己満足に浸りたいという欲望を叶えようとしている同類さ。」
その言葉は何故かアデルの心に響いた。過去の自分、エルドラムを超えることを目標に、エルドラムの成し得なかった夢を継ぐために生きていた。
人を助け、その人たちを導く王になること、それがエルドラムの夢だった。この時代では王にはなれない。だから聖王教会に入り、管理局の魔導師にもなった。だがこの夢はただの自己満足なのかもしれない。もしかしたら彼女たちは魔導師になりたいと思っていないのではないか。自分の夢を他人に押し付けているだけではないのか?そう思い構えを解いた。
「それで良いんだ。君は私と同じなんだ。だったら戦う意味はないじゃないか。」
スカリエッティの言葉を黙って聞く。あの男の言葉は正しいのかも知れない。自分の夢のためになのはを、アリサを、すずかを、フェイトを、そしてジークとディオーネを利用していただけなのかも知れない。そんな男は彼女たちを守る、と言える立場なのだろうか。徐々に力が抜けていく。
突然、ディオーネがユニゾンを解除し目の前に立った。そして頬に痛みを感じた。ディオーネが目に涙を溜め、俯きながら叫んだ。
「それが本当にお前なのか!お前は彼女たちを、私を利用していたのか?」
初めて聞いたディオーネの叫び声だった。そこに立ち尽くすことしかできないアデルにディオーネが言葉を続ける。
「私はお前が家族だと言ってくれたのが嬉しかった。デバイスとして生まれたはずだったのにデバイスとしてではなく一人の人として、一人の女として見てくれたことが嬉しかった。」
目に溜めていた涙が頬を流れ一筋の光となっていた。その姿にアデルは立ち尽くすしかなかった。
「そうやで、アデル兄!」
ふと横を見るとホロウィンドが出現していて、ジークリンデ・エレミヤが笑顔で此方を見ていた。
「ウチは生まれてからずっと一人やった。親の顔なんて知らへん。でもあの日アデル兄が見つけてくれて、家族になってくれて嬉しかったんやで。だからもしアデル兄が道に迷ったんならウチが手を繋ぐ。きっとディオーネさんも同じや。」
ジークは終始笑顔だった。ディオーネは真っ直ぐに此方を見つめてくれていた。迷いが晴れた気がした。そしてジークとディオーネに微笑む。
「素晴らしい!家族の絆か。だがそれが何なんだね。家族と言っても結局は赤の他人。利用されてるとは考えないのかな?」
スカリエッティを睨むディオーネの肩を叩き前へと出る。間違ってもいい。きっと家族が、ディオーネとジークが助けてくれる。彼女たちは一緒にいてくれる。そう思うと心が軽くなった気がした。救われた気がした。いや、きっと救われたんだろう。それに仲間もいる。
「アデル!大丈夫?」
アリサが心配してくれる。
「アデル君、頑張って。」
すずかが応援してくれる。
「アデル!」
フェイトが声をかけてくれる。ユーノが、アルフが、親友で悪友で今ここにはいないクロノがそして
「負けたらぶっ殺すの。」
最近セメントになってしまったなのはには少し睨みを利かしておいて。それでも夢を押し付けていたと思っていた友が見てくれている。管理局最強、今世紀に再来した王、そして彼女たちの師として負けるわけにはいかない。
「こっからが第二ラウンドだ!準備はいいか?マッドサイエンスティスト!アリシア!」
なんかへんになっている気がするなぁ
これからも書くつもりではいるのでよろしくお願いします