殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る。フェイトは赤髪の少年がただただ前へと進んで来ることに恐怖を覚えていた。止まらない。たまに変化を加えてくる。それがさらに恐怖を大きくする。軽い一撃、重い一撃を分けてさらにそれをタイムラグ無しの同じテンポで放ってくる。強い。私よりもきっと。本能がそう伝えてくる。分かっている、なら近距離戦を止め、ロングレンジに持ち込む。そう考え、大きくバックステップする。「(スピードは私の方が早い。なら。)」
また少し距離を取り、詠唱を始める。
「フォトンランサー!ファイア!」雷を伴う12もの魔力弾を放つ。資質変換のため触れるだけで感電する。これなら向こうがいくら強くても、そう思った時だった。
「ハハハハッ!いいねぇ!最高だ!」
赤髪の少年が叫び、フォトンランサーを打撃し全て叩き落とした。それも感電せずに。フェイトの頭の中は完全に真っ白になっていた。今の私には勝てない‥‥。そして赤髪の少年は目の前で拳を此方に向けた。
「(打撃とともにバインド張って捕まえる。)」
アデルの拳がフェイトに触れる直前フェイトの姿が消える。その光は転移魔法だった。見渡すとあの橙色の髪の使い魔だった。
「フェイトはやらせない!」
そう言い、飛びかかってくる。使い魔の女もどうやら格闘型のようで殴りかかる。片手で弾き腹に軽い一撃を入れ、軽く蹴りで使い魔を払い笑う。
「もっと本気で来いよ。これが本気なら一方的な嬲り殺しになるぞ。」
そう言い、構える。言ったことは嘘ではない。あれが本気なら確実に嬲り殺しにすることは出来る。だがそんなことをしても得はない。だからこその嘘だ。向こうが此方を危険だと思えば集中してくる。そういう奴らは強い。そんな奴らとは何百年前から戦ってきた。記憶上なので自分という人格での経験は少ない。だからこそ戦いを求める。奴を、白夜の王エルドラムを超えるには経験と色んな流派を覚えるしかない。目の前で構える使い魔も我流だとしても一つの流派だと言える。そのために本気になってもらう。
「いくぞ!」
アデルが前へと出ると使い魔の女も前へと出てくる。ほぼ同じタイミングでの正拳突きを繰り出す。アデルの方が少し早く力もあった分、押し込んでいたが、使い魔が足を首めがけて蹴り込む。それを回避するためしゃがむ。使い魔の懐へ飛び込み、
「くらいやがれ!虎砲!」
両の掌を腹に押し込む。打撃と同時に魔力を打ち込み、少しの間敵の魔力操作を妨害する技。ベルカの騎士には対処が簡単だがミッドの魔導士には馴染みのない魔法だ。やはり隙が出来る。前へと出て殴る。致命傷は与えないように加減しながら殴り続ける。拳を払おうと動くならその腕を殴る。
「流烈波!」
開いた体に一瞬で五発叩き込む。最後の一撃をまともに受けた彼女は海へと落ちていった。浮いてきた彼女は気を失っていた。それがこの戦いの結末を教えていた。
鞭のしなる音。鞭が身を叩き悲鳴が響く部屋。その悲鳴を聞けば誰もがこの部屋には近づかないだろう。そんな声が部屋の外にまで響いていた。叩かれている金髪のツインテールの少女、フェイト・テスタロッサは目の前で鞭を構える女性、母であるプレシア・テスタロッサを見つめていた。愚痴を言われても何も言わず、ただただ自分の失敗を悔やんでいた。母をがっかりさせた。アルフが捕まってしまった。そんな負の感情が渦巻いていた。
「なぜ、私をがっかりさせるの?フェイト。」
優しいような蔑んでいるような声で話す。フェイトが口を開こうとしてもそれをさせないためのように鞭で叩く。悲鳴が響くがプレシアは眉ひとつ動かさない。それどころかまだ足りないとでも言いたそうな顔をしていた。
「その辺にしないと君の作品が壊れてしまうよプレシア君。」
男の声がする。その男は白衣を着た紫色の髪の男だった。薄気味悪く笑う男は言った。
「この少女の感情を消すのだろう?だとしたら感情が豊かな時に消したほうがきっと楽しい。いや楽しみなのかもしれないなぁ。どっちしろ壊れない間でないと僕はやらないからね。」
そう言うとプレシアの答えも聞かず男は部屋を後にした。出て行った扉をしばらく眺めていたプレシアは僅かに口を綻ばせた。
今更ですが、アデルのイメージはトリニティセブンのアラタを赤髪にした感じで、よくネタに走るって感じです。