レナの肩書と飛娘の肩書が反対になっていたので訂正しました。
レナ・ファムグリット 七皇 特別遊撃隊長
王 飛娘 七皇 特別攻撃部隊隊長
カチン。
レンは愛用のジッポライターで愛飲の煙草に火を付けると、煙を肺の隅々まで満たし始めた。
それでも全くイラつきが収まる様子は無く、フラストレーションは溜まる一方だった。
???「……………。」
その様子を路地裏からこっそりと眺める1人の人物がいた。
レン「………フーー。」
あっという間にフィルターまで飲みつくすと、携帯用灰皿に吸殻を入れる。そのままもう一本の煙草を咥え、ライターに火を着けようとして……。
レン「……オイ、人の遊びに横槍入れて挨拶の一つもねえとはどういう了見だ…?」
イラつきを一切隠さないまま、隠れていた少女に声をかけた。
???「………。」
レン「出て来いゴルァ!!ケイト・ヴァルゼルド。」
???「ヒィッ!??わ、分かったッスよ!出て行くっス!!」
路地裏から姿を現したのは、どこか後ろめたそうな目をした女の子だった。因みに、手元にはライターとスプレー缶を持っていた。
ケイト「お…お久しぶりっス、レン君。あ痛ッッ!??」
レンは出て来た少女の頭に思いッッ切り拳骨を叩きつけた。
ケイト「う…うう……痛いよぉ…うわああああーーん!!」
殴られた痛みで少女はボロボロと涙を流した。しかし、そんなことで怒りが収まらないレンは物凄い剣幕で少女に怒鳴り散らす。
レン「痛いよぉじゃねえだろバカ野郎!!何だそのスプレー缶とライターはよぉ!」
ケイト「だって…!!だってアイツ、レン君のことバカにするんスもんー!!リーダーがバカにされだら悔しいぢゃないっスかあああーーっ!!」
レン「だからってカードショップで火炎放射するバカがどこにいるッッ!!紙ばっかだぞ、燃えるぞ!火事起こるぞ!!バカなのはテメエだ!!」
ケイト「ごめんなざいいいいぃぃーー!うあああぁぁぁーーん!!」
レン「いつも言ってあっただろう!!人間好き勝手やるなら絶対に他人に迷惑かけんな!!テメエでケツ拭けねえことは起こすな!」
そう、先程のデュエルでリアルに不良Bが黒焦げになっていたのは、ブラック・デーモンズ・ドラゴンの効果演出に紛れて窓の外からケイトが火炎放射したのが原因だった。それにいち早く気が付いたレンは、店の外に出て来て、彼女の存在を見つけたのだった。
レン「だいたい、お前何でここに居るんだ!?確か国に帰ったんじゃなかったか?」
ケイト「グスッ…帰ったッスよ…でも、寂しいから戻って来たッス。」
話題が変わると泣いていたのも落ち着いて、パアッっと笑顔を見せるケイト。
レン「犬猫かお前は。」
ケイト「ああ…半年ぶりの再会だってのに全くの血の通わない冷酷なセリフ……ボク帰って来たんスね!」
罵倒されたケイトは、より一層嬉しそうに目を輝かせて、仲間との再会を噛みしめた。
レン「お前も大概ヤバい奴だよな。ハア……もういいや、俺戻るわ」
ケイト「あ、ボクも行くっス!少し目を放した内にずいぶんハーレム形成してくれちゃってたみたいっスね~ここは先達として、指導してあげるッスよ。ニュッフフ~~」
レン「No Thank you」
ケイト「まあまあ、そう遠慮なさらずに~癒しのコーディネーター・ケイトさんのマル秘テク、披露しちゃうッスよ~」
レン「………そうなるとお前用済みな」
ケイト「ボクのマル秘テクは門外不出だったッス!誰にもおしえないッス!!ケイトさんの口はダイヤモンドより硬いっス!!アマテラスのように引きこもるッス!」
レン「ドロップ食うか?」
ケイト「え!?食べさせてくれるんスか。わーい。あーん」
簡単に開いた口に、レンはドロップを投げ入れた。
レン「……全然硬くねえじゃねえか」
ケイト「ふにゃっ!?騙したッスか!!」
レン「騙されんなよ……」
ケイト「もぐもぐ…うう…しかもこれハッカじゃないッスか……」
泣いたり怒ったり笑ったり、騒がしいながらも旧友との再会に少し懐かしさを感じながらレンが店に入ろうとする。
ケイト「待つッス、レン君。店の様子がおかしいっスよ」
レン「そりゃテメエがニンゲン一人を黒焦げにしたからだと思う…」
ケイト「じゃなくて!何かもめてるんスよ。どっか他校の学生ッぽいっスね」
レン「……そういや、さっきのアイツら、平中工業とか言ってたっけか。学校の看板の陰に隠れてるくらいだし、何か番長的なのが出て来たんじゃねえか?ま、店にインネン付けたってマッポが召喚されるのは目に見えてるんだ。ほっときゃ良いか。」
ケイト「でもアレ、レン君の仲間の人たちと揉めてるッスよ?」
レン「レナッッ!!」
ケイトが言い切る前に、レンは店の中に入って行った。
時間はレンが店を出てすぐの頃に遡る。
店の突然押し入って来た制服姿の学生達が、黒焦げにされた仲間と顎を砕かれた仲間を見てこう言った。
学生A「テメエら何オレらの仲間に手ぇ出しちゃってんの?」
学生B「あーあ、どうやら店の中で暴行があったみたいだなぁ。」
学生C「こりゃひでえや。治療も相当かかるだろうなァ。」
学生D「店の人も何でこうなる前に何とかしてくれなかったのォ?こりゃ店側にも慰謝料請求しないとなァ?」
学生F「もちろん、そこのお穣ちゃん達にもね。慰謝料と、あと献身的な介護もお願いしないとねえ?こりゃあ当分まともに動けないだろうな~メイド服でも来てご奉仕してもらおうかな~~」
学生G「ふおおおおぉぉぉぉぉぉーーー!!!美少女メイド達のご褒美キタこれえええええええええええええええええーーーー!!!!」
ひよの「………気持ち悪いです」
飛娘「頭に蛆が湧いテルようなセリフアル。キモ」
レナ「メイド服っていうところに発想の限界を感じるよね。アハハ…」
飛娘「……それジャア」
レナ「久しぶりに、やっちゃおっか♪」
二人の意見が一瞬で合致したところで、飛娘とレナはそれぞれヌンチャクと木刀を(どこからか)取りだすと、ニコッと思わず見とれそうな笑顔を浮かべると……
レナ・飛娘「『七皇』突撃班!」
レナ「遊撃隊長ーレナ・ファムグリット!」
飛娘「特攻隊長ー王・飛娘!」
レナ・飛娘「お仕置きターイム!!」
ひよの「………ふぇ?」
レン「また…守れなかった。」
レンが店に入った頃には、見るも無残な光景が広がっていた。
具体的には人肉で出来たサクラ●ファミリアのようなアーティスティックな物や、赤いナニかが飛び散ったことで、偶然にも描かれたム●クの叫びの絵が、床や壁に有ったりした。
ひよの「…………」
レン「大丈夫か、ひよの?」
レンはこの世のものとは思えない光景を間近で視界に入れてしまったであろうひよのに対して、それまでの人生で数えるほどしかしたことの無い『本気の気遣い』を見せていた。
ひよの「……レン…しゃ……」
おそらくは『レンさん』と言おうとしたのであろうが、涙目になりながら呂律が回っていないひよのを不憫に思い、レンは思わずギュッと抱き締めた。
レン「……少し昼寝でもすると良い、起きたころには、きっと夢だったと思える。起きたらドロップをやろう。」
ひよの「…………うぅ…」
頭を撫でながら優しい声でひよのを寝かしつけてやると、しばらくして落ち着きを取り戻し、眠りに着いた。
ひよの「…すぅ……すぅ……」
寝かしつけた後、思い出したように辺りを見渡すと、店にいた客は、あまりの地獄絵図に全員逃げ出してしまったらしく、その場にいたのはもう実行犯二人とレンの腕の中で安らかに寝息を立てるひよの、そしてスタッフゆえに逃げるわけにもいかなかったであろう店長だった。因みに、レンの後で入って来たケイトは……。
ケイト「敵が一瞬で全殺しになってる…しかも芸術的に。ウチの突撃隊長とはえらい違いっスね、レン君!」
それほど当てられた様子も無く平静である。
レン「………俺は、こんな状況を見て少しでも楽しそうにしているお前こそ、ひよのとエライ違いだと言いたい。俺の周囲には、普通の女子がいないのか……」
ケイト「何言ってるッスか。普通って言うのは多数派のことを刺すッス。この場で具合悪くなってるのはそこのちっこい子だけじゃないッスか。そこの美人二人も全然平気そうっス。よってこの場は、ボク達の方が普通の女の子ッス!!」
ドヤ顔でピースしながら、ケイトはそう言い切った。
レン「空は今日もこんなにも青いのに……どうして人の世はこんなにも理不尽と腹黒さで充満しているんだッッ!!!」
ケイト「出たっスね~レン君の現実逃避モード。悲しくなると詩人見たいになるんスよね~。」
レン「あと、人肉で出来たアートを見て、眉ひとつ顰めないお前らを『普通の女の子』とは断じて言わねえからッッ!!何考えてんだそこの実行犯二人!!」
レナ「女の子にハレンチなことする子にはレナさんの愛刀”黒丸”が唸るよ。えっへん」
飛娘「悪い不良はオシオキするものアルっ!」
反省の色・絶無
レン「…………」
ひよの「すぅ…すぅ……」
レン「……ひよの。今だけは、お前だけが俺の癒しだ……。」
頭痛が痛いなぁとか思っていたレンが口にできたのは、それだけだった。
店長「………この状況じゃ、今日はもう店仕舞いかな」
レン「………あそこのゴミと、店中の液体は、こっちで責任持って始末付けるわ。ウチの愚妹が迷惑かけてスマン。」
店長「いいんだよ…半分はウチのスタッフのせいだから。ハハハハ」
レン「ケイト、モップとバケツ」
ケイト「ボクもやるんスかぁ…??」
レン「頼む。手伝ってくれ」
ケイト「了解ッス♪」
目が死んでいる店長を哀れに思いながら、モップとバケツを調達する。
レナ「そう言えばこの人は誰なの?にー。
さっきのデュエルの時から外で観てたみたいだけど」
ケイト「気づいてたっスか!?物音ひとつ立てて無いのに!?」
レナ「レナさん気配に敏感。」
ケイト「た…達人がいるッス!!自分はケイト・ヴァルゼルドっス。是非弟子にしてください!!」
レン「先輩として指導するんじゃなかったんかい。」
ケイト「あ…!!あんまりの恰好良さについ…」
レン「莫迦…本物の莫迦め……っっ」
旧友のあまりの馬鹿さ加減に涙が出そうになったレンは、掃除ついでにケイトの脳みそも洗えないものかと本気で考え始めた。
その時、店の自動ドアが開いた。
店長「ん?ああ、申し訳ございませんお客様、誠に勝手ながら本日は早仕舞いに………」
ドゴッ―
レン「ん?何だ、今の鈍器で人殴った時のような音は?」
レンが振りかえると、そこにはさっきの連中と同じく平中工業の制服を着た男が四人。そして…
???「……あぁ、俺がこいつを殴った音だよ…」
蛇柄の皮ジャンを着た男がいた。
飛娘「また新しい奴が来たアルか。そろそろ飽きてきたアル…ネっっ!!」
男達を見た王・飛娘は、店長を殴った男に向かって攻撃を仕掛けた。
レン「止せ!飛娘!!」
飛娘「アチョー!!」
迷わず男の頭をヌンチャクで狙い、振りぬいた。
しかし…
???「ぬうんっっ!!!」
飛娘「おっと!?」
その攻撃は、三人の制服の男達の中で最も大柄な男によって阻止された。
飛娘「誰アルか。雑魚は退いておくヨロシ。」
???「それは聞けぬ相談だ。大蔵司 王城(だいぐうじ おうじょう)。ワシが退く時は、この身が朽ちた時と知れい」
飛娘「だったら今すぐに朽ちるといいネ、この王・飛娘の拳で!!」
中国拳法の構えを取り、大宮司を睨む飛娘。
???「ヒヒヒッ…熱いねえ、全く暑苦しいよ。そんなに身構えなくたって、どの道君達はもうタダじゃ帰れないんだしさっ。ボクの複製した『パワー・ボンド』と、改造したデュエルディスクを見ちゃったんだもんね。」
そう言って陰湿に笑うのは、ひときわ背の低い男だった。
レナ「へぇ…あのカードを作ったの、キミなんだぁ」
???「ああ、そうだよ。僕は北城 才人(ほうじょう さいと)。キミなかなか可愛いね。スタイルも良いし。キミがボクの彼女になるなら、君だけはボク達の仲間にして助けてあげるよ!!」
レナ「そう?」
ケイト「え!?あっさり裏切るッスか師匠!!可愛い顔して意外と薄情者?」
少し乗り気に見える返答に、初めてレナに出会ったケイトだけが、動揺した様子を見せた。
才人「ああ、大歓迎さ!!」
レナ「クス…でもごめんね。私こう見えて男の好みにちょっとうるさいの。」
しかしすぐに態度を変えると、普段からは想像出来ないほど色気ある仕草と妖艶な目つきで微笑み、北城才人をからかって見せた。
才人「な、なんだとー!?ボクのどこがダメだって言うんだ!!」
レナ「クスクス。昔からあんまりカッコいい男性(ヒト)が周りに居過ぎたから、贅沢になっちゃったのかもねぇ。強いて言えば、犯罪がばれた位で証拠隠滅しようと慌てて来るような人は恋愛対象には入らないわね」
才人「こ、こいつ…!!言わせておけば!!」
レナ「ちなみに好みのタイプは、私より強い人よ。あなたはどうかしら?坊や」
才人「も、もう絶対に許さないぞおーー!!!」
レナ「あ、ケイトちゃん。遅れちゃったけど、レナ・ファムグリット。高校一年生、レンくんの義妹です。
今はまだ、もう少しにーと遊んでいたいから、お兄ちゃんにカノジョが出来て欲しくないお年頃です。」
流れでケイトにも自己紹介したレナは、満面の笑みだった。
ケイト「……あ、あんなに可愛い笑顔なのに…同性でも惚れそうなのに……なんでこんなに足が震えるんスかね?」
???「ふむふむ……」
それまで黙ってパソコンをいじっていた眼鏡と頭が光る中年の男性が口を開いた。
???「ふむふむ。なるほど、分かりましたよ。
確かにそこの中国とポニーテールの女性は、伝説のデュエリスト『七皇』のようですね。」
レナ「………。」
レナ(………七皇のデータなんて一般に転がってはいない。この短期間に国家の機密データにハッキングしたのかな?)
飛娘「……お前達、一体何しに来たアル」
???「いえいえ、簡単なお話ですよ。
始め我々は、そこで黒焦げになっている同朋から『赤髪のレン』が居たという連絡を受けて来たのです。」
レン「……俺か?」
???「いかにも。始めまして、Mrレン。私はヤブイヌと呼ばれています。」
レン「……始めまして、レン・ファムグリットです」
飛娘「律儀にアイサツ返すアルかアナタ!?」
レン「………フン。」
レナ「にーって、その辺りきちんとしないと気が済まないんだよね。A型だからかな」
ヤブイヌ「さてさて、始めは貴方のデータが欲しかったのですが、『七皇』と呼ばれる彼女達のデータも欲しい。お付き合い頂ければ幸いですな。」
飛娘「データって、何アルか!!」
ヤブイヌ「もちろん、デュエルのデータです」
レン・レナ・飛娘・ケイト「デュエル!?」
ヤブイヌ「驚くことは無いでしょう?我々平中工業高校にも、デュエルの大会の出場を志す部活動があります。ならば、強いデュエリストやカードのデータを取っておくのは、常套手段ではありませんンか。ホホホホホ」
レン(解せねぇ……デュエルのデータが欲しいなら、何故最初のターゲットは俺なんだ?)
ヤブイヌ「さあ、我々とのデュエル受けていただけますか?丁度人数は四対四です。
もしも我々に勝ち越すようなら、どの道このままでは優勝は難しいので、皆さまへ手を出す意味は無くなりますが?」
才人「ま、あり得ないけどね~!」
レン(さっきのチビガキの言った『タダじゃ帰さねえ』ってセリフと言い、このヤブイヌってやつと言い……そしてな何よりも……)
レンは店長を殴った男に注目した。
レン(アイツの雰囲気……ありゃどう見ても昔散々見て来た、人を殺したこと人間のモンだ。
カードゲームで負けたヤツを殺すための人間か?)
ケイト「どうしたッスか、レン君。黙っちゃって。…おなか痛いっすか?それともおなかすいたッスか?携帯食くらいならあるッスよ…?」
ケイトが心配そうにレンを見つめている。
飛娘「えええい!!しゃらくさいネ!!受けてやるアル!そのデュエル」
レナ「…レナさんもやろっかな。最近全然デュエルしてないし」
レン「…………。」
ケイト「レン君…どうするっスか?レン君がやりたくないなら、ボクがさっきみたいにして道作るッスよ…?」
レン「ちっ」
ケイト「舌打ち!?えっ、えっ!?何スか?どうしたんスかレン君!?」
レン「もう面倒だ。後先考えて保身を選ぶのは、俺のやり方じゃねえ。俺もデュエルを受ける!!」
ケイト「???な、何か良く分んないっすけど、これボクも人数に入ってるんスよね?そこのおじさん」
ヤブイヌ「ええ、もちろんそのつもりですよ。Mrレンの腕の中で眠る少女をカウントするのは、些か可哀そうでしょう。それとおじさんでは無い!!まだ19だっっ!!!」
レン・レナ・飛娘・ケイト(留年してんのかよ……)
ヤブイヌ「まあいいでしょう。これで人数はそろいました。
それではさっそく、デュエルを始めましょう。……闇の、デュエルをね。」