例えばそれは蟻と巨象。蟻は群れを成したなら、大きなゾウにも討ち勝てる。確実では無いかもしれないが、この世に確実という存在が『一つ』であるがゆえに、議論に価値は無く、無知なるものは、その過ちに気付かない。
だが…しかし、どうだろう?
蟻と言う個体は群れを成せばこそ勝ちうるのであり、単体で象には勝ち得ない。
蟻はその事実に気付いたとして、歯噛みしたとして、己を律し鍛錬を重ねたとして、それでもやはり討ち勝てない。
だからと言って、蟻は、その敗北感を、否。そもそも敗北と感じるのだろうか?蟻が敗北感を抱くものだろうか?
恐らくそれは無い。何故ならば、軍隊で討ち勝てるものに『個体で挑み打ち勝ちたい』というのは、人間の身が抱く欲であり、人の身が持ちうる負の感情だ。
つまり、何が言いたいのかと言うと‐‐
飛娘「うがああああああああぁぁぁぁぁーーー!!!!何故ダ!??何故ヒトは勝者と敗者に分かれるアルか!!」
バイト先のカードショップで不覚を取り、いざ雪辱戦と挑んだデュエルに敗北した王 飛娘は、悔しさと惨めさに耐えきれず、天に咆えていた。
飛娘「こんな世界滅びてしまえば良いアル……っ。こんな…こんな……っっ!!」
心が冷たく冷えていくのと連動して、飛娘の体温も徐々に低くなっていく。緩やかにしかし確実に流れる川の水が、二人の少女の肢体を濡らしているせいだ。
少女の1人は王 飛娘。そしてもう一人は……。
飛娘「何故ワタシの方が年上なのにここまであからさまな胸囲の格差が生まれるアルかああああああぁぁぁぁーー!!!!」
レナ「そんなことレナに言われても…。」
ついひと月前まで中学生だった少女。B89(E)W59H87というスリーサイズを持つレナ・ファムグリットだった。
現在そのやわらかな乳房を鷲掴みにされながら貧乳(フェイニャン)の怨嗟を一身に受けている真っ最中だ。
レナ「ねえ、飛娘ちゃん。もうちょーっと優しく触ってくれないかな?さすがにちょっと痛いんだけど……」
飛娘「黙れ!!!鷲掴み出来るという事実が如何に幸福か骨身に染みるまで痛みを味わうアル!!」
レナ「って言うかそろそろ水から上がろうよ。もうパンツまで濡れ濡れだよ?ちょっと気持ち悪いかも」
そう言うと、未だ手を放そうとしない飛娘を諭すように言葉を続けた。
レナ「それより飛娘ちゃん。後ろ……鬼がいるよ?」
飛娘「は?」
レナの言葉で初めて背中に気配を感じた。
それは、怒気。混じりけ無しの怒気。純然たる怒りのオーラ。
レン「……………。」
飛娘「………………あ」
後ろに居たのは、炎が沈下してから倒れていたレン・ファムグリットだった。
倒れてからそう時間も経っていない筈なのにすでに回復しているようで、左手には何かがベコベコと音を立てて握りしめられている。
すると、やはりいつ回復したのか。レンの旧友と言うこと以外は謎だらけな少女、ケイト・ヴァルゼルドが、苦笑いを浮かべながら告げる。
ケイト「あー……えっと、飛娘さん…でしたっけ?
レン君、倒れてはいたけど意識はしっかりあったんで、デュエルの始終は全部確認してるッス。
つまり…」
飛娘「………(ガクブル)」
レン「よぉ、中国…」
飛娘「ひっ…!??」
レン・ファムグリットはデュエルの最初に告げていた。
『負けたら裸にひん剥いてマネキンにするぞコラァ』
ケイト「負けたから裸にひん剥いてマネキンにされる危険があるから今すぐ逃げた方が良いッスよ?」
飛娘「ひゃああああああああああああああああああああーーーーー!!!!」
レン「‐‐逃がすか。風と呼ばれた男直伝の歩法、無空・縮地。逃れられる獲物はいねえ!!」
飛娘「いやあああああああああああああーーー!!!ごめ”ん”な”ざいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃいいいいーーーー!!!!」
こうして、王 飛娘の長い長い鬼ごっこが始まるのであった。
ヤブイヌ「……………デュエルは!?」
遊戯王~Fake Origin~ 16
才人「ねえ、体よく逃げられてんじゃん。バカじゃないの?だからあいつらの言うことなんて聞く必要ないって僕が行ったじゃないか!!」
ヤブイヌ「え、ええ。まさかこんなギャグみたいな調子でずっといられるとは思わなかったものですから。」
大宮司「ふん。逃げる者は追うな。問題なのは未だ残るデュエリストだ。」
勝者・大宮司王城は、この場に残る少女の内健在な二人を見据える。
ケイト「………。」
レナ「………。」
大宮司「どうした?ワシに臆したか。それでもかの七皇の1人か?」
ケイト「……ボクは七皇じゃないッスけどね。(ってか、七皇って何?)」
ケイトが何言ってんだコイツみたいな目で王城を見る。
大宮司「ならば良い。『赤髪のレン』は噂程でも無い腰抜けで、『七皇』の1人王 飛娘はあの噂程でも無い小娘であったが、次はどちらがワシの相手をする?」
ヤブイヌ「いえいえ、これは一人一回ずつのデュエルですから、大宮司君の出番はこれでおしまいですよ?」
大宮司「ゑ?」
ヤブイヌ「ですから、戻ってきてください?今すぐに」
大宮司「………。」
がっくりと肩を落とし、トボトボと陣に戻っていく大宮司であった。
ケイト「あのデカイ身体を小さくして歩く姿…ウチの特攻隊長を思い出すッスねー。まぁ絶対ウチの隊長(バケモノ)の方が強いだろうけど。」
レナ「バケモノ?にーの昔のお友達のひとりかな?すっごい気になるよ~主に昔のにーが。これが終わったら家に遊びに来ない?最近のアルバムとかあるよ?料理してる写真とか」
ケイト「ほぉ…ボクもすこぶる興味あるッスよ。主に最近のレン君が。ショタ時代のレン君のアルバム、興味あるッスか?ライオンのコスプレしてる写真とかあるッスよ?」
その時、両者の間に確信が生まれる。
レナ「………。」
ケイト「………。」
少し見つめった後…。
レナ「みんなは怖いって言うけれど。」
ケイト「‐‐素は滅茶苦茶ピュア可愛いッス」
レナの言葉に共鳴したかのように、ケイトが続いて言の葉を紡いだ。
ガシッ‐‐!!
心響き合った盟友のように握手を交わす。この瞬間、レナとケイトは仲間になった。
才人「……なんだこれ?」
ヤブイヌ「………。」
大宮司「………。」
若干引き気味に白い目を向ける敵勢は、それでも戦意を失わずに前に出た。
才人「そろそろ茶番は終わりにして、次のデュエルをしようよ?
それとも尻尾まいて逃げるわけ?あのヘタレた中国人と赤髪みたいにさぁ!」
挑発するように嘲笑うのは、平中工業二番手、異常な背の低さと、梅干しを食べた時の口をリアルに描いたような表情が特徴の男だ。
ケイト「………さて、どうするっスかねえ?正直あんなカード(NO.)見せられた後じゃ、あのちっさいのもなんかヤバ気なカード持ってるって思った方が良いッスよね?」
レナ「そう言うのは慣れてるよ。三幻神とか。だから申し訳ないんだけど、先に行って良いかな?」
レナはおそらく次の対戦相手であろう小さな男を見据える。ケイトは軽くうなずいた。
ケイト「良いッスよ。そんな目で言われてちゃ断れない。」
レナ「…??目って何のこと?」
きょとんとするレナを尻目に、ケイトは邪魔にならないように未だ気絶したままのひよのそばに立ち退こうと後ろを向く。
しかし、足を進めるまえに振り向きレナに語る。
ケイト「いやぁ…意外と純情派なフリして滅茶苦茶ヘビーな女騎士タイプなんじゃないッスかレナさん。
奴らの口から七皇の仲間とレン君の中傷が出た瞬間‐‐心中穏やかじゃないのが目にしっかり写ってるッスよ?
仲間がバカにされるのが逆鱗ッスかねぇ?」
蠱惑的に微笑むケイト。その瞳に映っているレナ・ファムグリットは、同性の目から見ても思わず魅力的な美少女だ。しかし……。
レナ「……へぇ、すごいねケイトちゃん。間違いなく隠し切れてる自信があったんだけどなぁ?」
ほんのわずかな変化。声が少し低くなった。目が少し鋭くなった。それだけで、まるで別人と話している気分にさせられる。
ケイト「フフッ…!良い
レナ「ありがとう。こう見えてけっこう好戦的なの、私」
ケイト「そうッスか。ならこのデュエルはお任せしていいッスか?」
少し溜めて、妖艶な笑みで言う。
レナ「クスッ…任せて♪」
ケイトは手を振りながら、レナは小粋にウィンクしながら、両者戦場と傍観席へと移って行った。
才人「やっと決まったかー。でもよかったよ。僕もキミと戦ってみたかったんだ。」
下卑た笑みを浮かべながら、チビの男はレナの身体を舐めまわすように見ている。
才人「その顔といい、カラダと言い、僕の好みだよ……フフゥ」
それは女性ならば、いやもしかすると同性でも生理的嫌悪を禁じ得ない笑い顔だった。
そんな相手に対してレナは、語るに値しない相手として冷たい目を向ける。
レナ「そう。そのルックスでずいぶん贅沢な好みなのね。
あなたの学校って鏡が無いのかしら?それとも…背が低すぎて見えてないとか?」
才人「な、なんだとー!?ぼ、僕をバカにするのか!!
せっかく可愛い子だから僕の彼女にしてあげようと思ってたのに!!そんなこと言うならしてやらないぞ!!」
レナ「その驕りは、一体どこから来ているんだか……。」
ふと、思い出す。ケイトの先程の言葉を。
(正直あんなカード(NO.)見せられた後じゃ、あのちっさいのもなんか
制服のポケットの中にあるデュエルディスクを取り出し、デッキを装着しようとするレナ。しかし…
レナ「…………そう言うこと…かな?」
少しだけその動きが止まり、その後デッキケースに手を伸ばし、別のデッキを取り出し装着した。
才人「準備はいいかぁい?
僕は平中工業3年 平賀 才人(ひらが さいと)だよ。もう彼女にするのはヤメだ。僕の奴隷にしてあげようね、お穣ちゃん?」
レナ「………。」
才人「どうしたんだい?名乗らないのかい?それとも名乗れないほど貧相な名前なのかなぁ?七皇って言うのは」
その言葉に、それまで抑えていた怒りが頂点に達したレナは突如……笑いだした。
レナ「フッ……アハハッ!アッハハハハハハハハハーー!!!」
才人「!?」
レナ「あ~もう、限界だ。いったいどれだけ私の大切な仲間を悪く言えば気が済むのかしら坊や?」
才人「な!?坊やだと!?おまえ、誰にモノ言って‐‐」
レナ「ああ、もう
もういいわ。あの人の真似なんてしたら怒られるかもしれないけど、でもやっちゃいましょう。
『存在否定』を。さあ、さっそく‐‐」
プヴヴヴヴヴヴヴゥゥゥゥゥゥーー!!
だが、そこにタイミングの悪いサイレンが鳴り響いた。
決闘中の河原に現れたのは、数台のパトカーだった。
ヤブイヌ「あ、あれh‐‐」
ケイト「ゲッ!??サツだ!!やっべえー逃げなきゃ…」
ヤブイヌ「……何故そちらの方が不味そうな顔してるんですかね?」
ケイト「あー…実は自分達、このマチだとイケない方向で有名人なんスよね。ポリ限定で。
やべぇー逃げてぇ……」
ヤブイヌ「そ、そうですね…逃げたいのは同感です。」
警官A「お前たちか!?通報にあった河原で放火して遊んでいる高校生は!!」
1人の警官の登場を皮切りに、次々とパトカーから降りてくる。
警官B「ちっ、折角押収した違法改造したスマホで幼女のポルノ動画観てたってのに、邪魔してんじゃねえよ、クズ共がっ」
今何か警察官としても人としても看過できないことを聞いたような気がしないでもない。
ケイト「く、クズが何か言ってるッス……。」
どうやら自分が少しマチから離れている内に、ここも大分腐ったようだ。とケイトは思う
警官B「んだとコラァ!!」
その瞬間‐‐レナの殺気が解放された。
レナ「黙れッッ!!」
警官B「‐‐!???ブクブクブク…」
殺気に直に中てられたその場の警官が泡を吹いて倒れ伏す。そして、その近くに居た警官、さらにその奥と、次々と倒れていく。
ヤブイヌ「?!?!?!?」
王城「な、なんだこれは!?おい、どうしたのだ!?」
警官B「…………。」
王城「へ、返事が無い……」
ケイト「ちょ!?なに警官気絶させてるッスかレナさん!?その覇気はむしろレン君がやった方がいいんじゃないッスか?‐‐じゃなくて!!折角丸く収まりそうだったのにー!」
レナ「ムシャクシャしてやった。落とし前は付けるが反省はしていない。」
ケイト「だ、ダメだこの人……レン君がいなくなった瞬間はっちゃけまくってるッス。レン君のストッパーかと思ってたけど、むしろレン君が彼女のストッパーになっていたんじゃ……?」
才人「何だ?急に警官が倒れた…?まあ、いいか。邪魔者も黙ったし。じゃあ、デュエルを始めようよ?」
レナ「そのつもりよ。視界に入れるのも嫌だけど、少しだけ
……ついでに、埃が出るか叩いてみようか?」
才人「あらためて、僕は平中工業3年 平賀 才人(ひらが さいと)だ。」
レナ「『七皇』NO.2。『剣姫』 レナ・ファムグリット。『お前の全てを否定する』」
レナ・才人「「デュエル!!」」