夢…夢を視ている。満天の星空のしたで、三人の子どもの影。肌を撫でる風が地面の草が…自分が今この惑星で生きていることを実感させてくれる。
子どもたちの背には、三本の宝剣が見守るように、あるいは己が主に付き従う従者の如く、剣の刻印の『三角星』と『奴隷影』と『裁定光』を意味する紋章が煌めく。
………私は、思った。
「ずっと、みんなと居られたらいいのに……。」
『三角星』の剣の者が笑う。
「いられるよ。ずっと一緒。ぜったい、だいじょうぶだよ。」
『奴隷影』の剣の反逆者が微笑む。
「ああ。きっと、大丈夫だ。大丈夫な世の中にしてみせる」
そんな二人がいる限り、きっとだいじょうぶ。ぜったいに一緒だ。
私は決意を胸に、『光』の裁定者として振り返る。
「私たちの戦いを…『エターニアソード』最期の戦争にしてみせる。」
振り返った先には、炭になった民家と、黒焦げになった遺体、乾いた血。壊れた剣や城壁。それら全てを燃やす炎。
紛れもない、そこは血と炎。地上に浮かび上がった戦場という地獄だった………。
「そんなことも、あるよね…。」
レナ「『光』と『星』と『影』。このソラの光は星から来て、満たされないものは影になる。
でも、そのどれか一つでも欠けるのなら、世界には総てが消滅する。」
空を見上げながら、レナ・ファムグリットはソラを視る。
レナ「その先に自分の望む物が無いと知りながら、想いを馳せることを止められない。」
ケイト「……何の話ッスか?」
意味の分からない詩のような言葉をつぶやいたレナに、ケイト・ヴァルゼルドは首をかしげる。
レナ「『昔』にお友達と話した、私達の世界の真理のお話だよ。【戦士族】から『このデッキ』に替えるの、何年ぶりかなあ、って思ってたら思い出しちゃった。」
そう言いながら微笑むレナの表情は、どこか寂しげなものだった。
レナ「……そんなことも、あるよね。」
遊戯王~Fake Origin~ 17
第一回戦、大宮司と飛娘のデュエルは大宮司の勝利で終わり、これで一敗。
特に戦う理由も無いレナと、それ以前に巻き込まれただけでおまけ感覚のケイト。そしてたった数十分で二度気を失ったひよの。
相手の実力は分かったし、特に戦いたいような相手でも無かったレナは、これでお開きかな~と呑気に今晩の夕飯のメニューを考えていた。
巻き込まれただけのケイトとしては、もうこれで終わりにしても良いんじゃないかと思った。
そう。いまから生贄になる平賀才人。彼が余計な煽りを入れなければ……。
止せば良いのに。
レナ・才人「デュエル!」
レナ・ファムグリットLP 8000
平賀才人LP 8000
才人「僕のターンだ。スタンバイ、メインフェイズ。カードを二枚場に伏せる。そして‐‐」
才人が更に手札に手を掛けた瞬間、レナは口を開いた。
レナ「あ、そうそう。言い忘れてたことがあったわ。」
才人「なんだい?もしかして手加減してほしいのかな?いいよ。ただし、今晩その大きな胸や可愛い口を使って僕を気持ちよくしてくれるんならね?」
生理的に気持ちが悪い笑顔を浮かべ、あくまで自身の優勢を謡う才人。
しかし、その笑みはレナの一言で凍りついた。
レナ「私のLP1000未満になるまで、私はバトルフェイズ行わないから。安心して動いていいよ、坊や」
才人「な、何だって!?」
ヤブイヌ「バトルフェイズを行わない!?」
王城「バカな、そのようなデュエルがあるものか!」
レナの発言は対戦相手に留まらず、ギャラリーの殆どが驚きを隠せないもので、なんのメリットも無いものだった。
ケイト「……なるほど」
蛇柄の男「ほぉ…」
残りの二人は、何かを納得したような表情で成り行きを見守ることにする。
才人「ふん!別にいいさ。僕が勝つのは同じことだ!更にモンスターを裏守備表示でセット。ターン終了だ。」
才人LP 8000
手札2枚
場 伏せモンスター
伏せカード×2
レナ「それじゃあ、醜く足掻いてね?因みに、私のデッキ『神の宣告』も『神の警告』も『神の通告』も入って無いから、頑張ってライフ削ってね?でないと坊やのデッキ負けで終るよ。」
才人「ヘンだ!自分でデッキの内容バラしてちゃ世話ないね。やっぱり七皇は名前だけの凡人だ」
レナ「私のターン。ドローフェイズ。ドロー。スタンバイフェイズ。フェイズ移行、メインフェイズ。」
レナは引いたカードを
気のせいかそのカードは、微かにオレンジ色の光を反射していたようだった。
レナ「まずは切れ味の確認かな。ずいぶん使ってないから錆ついてるかもしれないし。
手札から『星因士 ベガ』を通常召喚。」
才人「‐‐テ、テラナイトだって!?」
レナのデュエルディスクにセットしたカードから放たれた星達が、こと座の星座を描き、宇宙からまばゆい輝きと共に星の戦士が地上に降臨する。
ベガ「セヤァ‐‐!」
星因士 ベガ ATK1200
才人「こ、この女…平然とガチデッキ使うかよ!?」
レナ「更に、星因士べガの召喚時、効果発動。『新星の輝き』矢座α星より至れ、神エロスが射るキューピットの矢よ。手札から星因士シャムを特殊召喚。」
ベガと同じく自身の星座を描いた星の光に包まれ、眠たげなアーチャーが地上にノロノロと降りて来た。
途中で光が持たなくて落ちた。頭から。
シャム「……。」
特に気にすることもなく起き上がると、レナのモンスターゾーンの配列に加わると
シャム「よっ。」
と、レナに向かって右手を上げた。
レナ「よっ。さっそくだけどお仕事よろしくね?」
シャム「……(コクリ)」
顔は眠たげなまま変化が無い。
空から落ちて土に汚れた自身のモンスターを気に掛けるわけでもなく、レナも気さくに笑顔であいさつを返す。
レナ「シャムの特殊召喚時、効果発動。
相手に1000ポイントのバーンダメージを与える。『星の降る夜』」
シャム「……五体満足じゃ帰さねー。てやー」
シャムは天に弓を掲げ、弦が存在の限界を迎えた瞬間に一矢を射る。。
すると‐‐その矢は光のように臨界が曖昧になりやがて分裂し、雨のように敵プレイヤーに降り注がれる。
その雨は、無防備な愚者に慈悲無く降り注ぎ、肉を削ぎ、骨を削った。
才人「うっぎゃああああああぁぁぁーー!??い、痛いいいいぃぃー!!何でだよ、ソリットビジョンなのに!?」
才人 LP7000
大宮司「いきなり1000もライフを削ってくるとは…バトルフェイズを行わないとはこういうことだったのか。」
ケイト「なんかしら勝利方法はあると思ったッスけど、効果ダメージとは。レン君も黒炎弾と言い、義理の兄妹のワリに大分似通った性格してるッスね~この二人。」
レナ「【星因士 ベガ】と【星因士 シャム】で、オーバーレイネットワークを構築する。」
ヤブイヌ「ほうほう、七皇NO.2 レナ・ファムグリットはエクシーズの使い手でしたか。これは手ごわそうだ。」
興味深そうにPCを広げると、カメラを起動するヤブイヌ。
ヤブイヌ「先程の中国人のデュエルは拙くて見どころ無かったですが、これは興味深いですね。あ、カメラはデュエリストは写らないようにしてますので、プライバシー保護等はお気になさらず。」
特に気にした様子も無く、レナは自身のディスクから一枚のエクシーズモンスターを引き抜く。
レナ「人の夢は儚きもの。最期の希望は嘲笑う。さあ我らと共に
ガガガガンマン DFF2400
ランク4 地属性 戦士族
1500/2400
エクシーズ/効果
レベル4モンスター×2
①:1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。このカードの表示形式によって以下の効果を適用する。
●攻撃表示:このターン、このカードが相手モンスターを攻撃するダメージステップの間、このカードの攻撃力は1000アップし、その相手モンスターの攻撃力は500ダウンする。
●守備表示:相手に800ダメージを与える。
ケイト「うわーお。」
才人「また効果ダメージモンスターかよ!!」
バトルフェイズを行わないと宣言しながらこのバーンモンスターの連打。狩り取る気満々である。その場に居る誰もがそう思った。
しかし……。
レナ「リバースカードを一枚伏せて、エンドフェイズ‐‐ターン終了。」
才人「…え?」
結局そのターンは、シャムの効果ダメージを与えただけでレナはターン終了を宣言してしまった。
レナ「どうしたの坊や。ダメージが無くてよかったじゃない。喜んで自分のターンを進めたら?」
才人「ふん、何だ脅かしやがって!幽鬼うさぎでも警戒したかよ。やーい、臆病者ー。」
レナは才人の言葉を無視して目を閉じて、『ふぅ』と少し息を吐く。
レナ「………。」
才人「ふん、可愛く無いヤツ!このデュエルの後で僕がしっかり教育し直してやる。僕好みにね。ドローフェイズ。ドロー」
才人はドローしたカードを確認すると、にやりと笑った。
それと同時にレナはすっと目を開ける。
レナ(‐‐何か来る。この感じ、大型モンスターか。)
何をどうしたらそんな予想が出来るのか、レナは敵の取る戦術を予測したうえで、視線は敵に向けたままリバースに意識を向ける。
レナ(発動するかどうか……いや、ここは様子をみよっかな。)
才人「キヒヒヒヒ。行くぞレナ!
手札から『ビークロイド・コネクション・ゾーン』を発動!!」
ビークロイド・コネクション・ゾーン
通常魔法
手札・自分フィールド上から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、「ビークロイド」と名のついたその融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。この効果によって特殊召喚したモンスターはカードの効果では破壊されず、効果を無効化されない。
ケイト「【ビークロイド】ッスか。敵さん融合使いが多いんスかね?しかもどれもこれも『パワーボンド』対応の機械族融合……あれ?」
ここで才人の手札枚数を確認する。二枚。場には正体不明のリバースモンスター。
この場合、条件を満たすモンスターは
スーパービークロイド‐ジャンボドリル
攻撃力3000貫通持ち。ただそれだけなのに同じ貫通効果を持ちながら攻撃力4000のサイバー・エンド・ドラゴン
と同じ素材三体指定。重い、弱い、下位互換。と三拍子そろった残念モンスターだ。
ケイト「こりゃこの勝負貰ったッスね!」
これを召喚すれば手札0枚、伏せ二枚の短期決闘。これを崩せば勝ちは目の前。
ひよの「‐‐と、思うじゃん?」
ケイト「おや?起きたっスかロリ巨乳ちゃん。」
これまで気を失っていたひよのが再び覚醒した。日に三度目の覚醒。
ひよの「融合と聞いて目が覚めました。ところであなたはどちら様ですか?なんて言うか、アニメの設定資料で描いたらぶっ○されそうな露出狂ファッションですが。」
ケイト「あ~そういやさっき目が覚めた時はアイサツもして無かったッスね。
ボクはケイト・ヴァルゼルド。レン君の肉○隷。んで、『胸は揉めば大きくなる』って言う言葉が迷信だと証明した生き証人ッス」
ひよの「……因みにスリーサイズは?」
ケイト「え~っと。たしか上からB76(B)W55H78だったかなぁ…?
最近レン君と会ってなかったから測る人も居なかったんスよねえ」
ひよの「おおおぉぉー。次々出てくるレンさんの個人情報!浮き彫りになる爛れた女性関係。メモメモ」
ケイト「んじゃそろそろギャグフェイズは終えて、解説に入るッスよ。ロリ巨乳ちゃん。」
ひよの「文月 ひよのですっ!」
才人「チェーン2:罠カード発動。『チェーン・マテリアル』」
チェーン・マテリアル
通常罠
このカードの発動ターンに自分が融合召喚をする場合、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを自分の手札・デッキ・フィールド上・墓地から選んでゲームから除外し、これらを融合素材にできる。このカードを発動するターン、自分は攻撃する事ができず、この効果で融合召喚したモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。
ひよの「それでは、ひよのちゃんの良く分る融合コンボ解説講座です。」
ケイト「ぱちぱちぱち~」
①このコンボは、どこにあっても融合素材に出来るチェンマテと、エンドフェイズに破壊されるデメリットを無視する事が出来るコネクションを使用して大型ビークロイドを特殊召喚するコンボです。
②このコンボは、手札に二枚カードがあれば成立する強力なコンボですが、デッキに名称固定で四種類のロイドモンスターと、チェンマテ、コネクションを投入するので、実質のデッキ投入必須カードが6枚で、思うほど割りの良いコンボではありません。
③手札に二枚揃えば成立する割に
・罠カードを使用する。
・成立したターンには攻撃できない。
・決まったところで決定打にならない。と言ったビートダウンコンボとしては割と致命的ですが、決まると嬉しい魅せコンボです。
ひよの「とまあ、お手軽ですが見返りは少ないコンボです。今時効果破壊耐性だけじゃ壁にもなりません。」
ケイト「ウキウキで覚醒して来た割には酷評ッスね…。」
才人「これでこのターン、僕はデッキからでも融合出来るぞ。トラックロイド・エクスプレスロイド・ドリルロイド・ステルスロイドをデッキから除外して『スーパービークロイド-ステルス・ユニオン』」
スーパービークロイド-ステルス・ユニオン
星9 地属性 機械族
3600/3000
融合/効果
「トラックロイド」+「エクスプレスロイド」+「ドリルロイド」+「ステルスロイド」
1ターンに1度、自分のメインフェイズ時にフィールド上に存在する機械族以外のモンスター1体を選択し、装備カード扱いとしてこのカードに装備する事ができる。この効果によってモンスターを装備している場合、相手フィールド上の全てのモンスターに1回ずつ攻撃をする事ができる。このカードが攻撃をする場合、このカードの元々の攻撃力は半分になる。このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
ひよの「とまあ、これがやりたいだけのコンボなのですよ。ケイトさん」
ケイト「ん~なるほど。確かにこれで攻撃できなきゃ只の的ッスね。」
などと外野が着々と死亡フラグを建設していると。
才人「フフフフフ…これだからバカな奴は困るよ。僕がこの程度で終わるわけが無いっていうのにさあ!」
ひよの「へ?」
ケイト「おや?これは…まさか。」
才人「更に手札から『ビークロイド・コネクション・ゾーン』を発動する!!」
ひよの「なんですって!?」
才人「そしてぇ~三枚目のビークロイド・コネクション・ゾーンを発動!!」
ケイト・ひよの「‐‐!??」
そう。たしかにひよの言うことは正しい。昨今効果破壊耐性がある程度では、いかに攻撃力3600のモンスターと言えど、真のデュエリストにとっては大きな脅威には成りえない。
それが、一体のモンスターであったならば。だが
スーパービークロイド-ステルス・ユニオン ATK3600 ×3
攻撃力3600 効果破壊不可
これが場に三体並んでいる状態は、如何に効果破壊耐性程度と言えど刺さってくる。
往年の三強ですら、これが並んでしまうと本気でぶっ潰すソリティアをしなければ辛くなってきます。
才人「クックック……。次のターンが楽しみだよ、レナちゃん?」