前回のあらすじ。
ビークロイド・コネクション・ゾーン。チェーン・マテリアル。コネクション3倍プッシュ。
才人 LP7000
手札0
場 スーパービークロイド-ステルス・ユニオン ATK3600 ×3 効果破壊不可
伏せモンスター×1
レナ LP8000
手札3
ガガガガンマン DFF2400 ORU×2
伏せ×1
突如カードショップを襲撃して来た平中工業のデュエリスト達とデュエルをすることになった一行の二回戦目。レナ・ファムグリットVS平賀才人。
終始自身の優勢を疑わない両者だったが、LP1000未満になるまでバトルフェイズへは移行しないと宣言したレナに効果ダメージで先制された平賀は、効果破壊不可のATK3600モンスター三体を召喚して見せた。
これにはさすがにギャラリーも動揺する。
効果破壊されないだけならば、戦闘で倒せば良い。
攻撃力が高いだけなら、破壊すれば良い。
数が多いだけなら全体除去を使用すれば良い。
しかし、この三つが同時に満たされてしまった場合は厄介だ。
ヤブイヌ「……ことデュエルモンスターズというカードゲームに置いては、攻撃力が3000を超えるのは稀です。装備魔法を使えば簡単という素人もいますが、そもそも攻撃力上昇効果などオマケに近い。狙って投入するのは何かしら理由があるか、好みによるところが多い。デュエリストとしての力が付けば付くほど、その採用率は激減する。」
ケイト「全体除去の多くは、『ブラック・ホール』のような破壊が絡むか、発動条件が存在する。そのために、テーマ専用の物でもなければ採用出来る、又はされる可能性は低くなる一方ッス。勝率を上げることを考えていれば尚更使用は控えるべき…。」
ヤブイヌ「つまり」
ケイト「このデュエル」
ケイト・ヤブイヌ「「彼女のデッキに『星因子 トライヴェール』が採用されているかどうかが分岐点‐‐!」」
レナ「採用《はい》ってるよ~」
ケイト・ヤブイヌ「「あれ~??」」
採《は》 用《い》 っ て た 。
遊戯王~Fake Origin~ 18
レン・ファムグリットは歩いていた。
レン「……飛娘(あいつ)足速すぎだろ。やってられっか。」
ものの5分で追うのを止めると、自販機に硬貨を入れてジュースを購入して商店街の様子を見ながら河原へ戻っていく。レンがとっくに諦めてジュース飲んでるなど露知らずに、飛娘は力尽きるまで走るのだろう。
汗をかきながら、必死で、水分も補えず、止まった時にはミイラのようになるのかもしれない。そんな想像をしながらのんびり喉を潤おしてレンは歩く。
走れば5分だが、歩いて戻れば30分はかかるだろう。そんなことを考えながら歩いていると、気になる光景を目にした。
フードを被った子どもが、道行く人に片っ端から声を掛けているのだ。
???「250円で買いませんか?このカード、250円で買いませんか?250円で」
レン「やたら250円を強調してるな…。」
断られるたびに人を替えて同じことを繰り返している。
とりあえず、声を掛けてみよう。そんな気持ちで少年の元へ歩み寄るレン。
レン「……おい、ボウズ。」
すると少年は、同じ言葉を同じイントネーションで口にする。
???「250円で買いませんか?このカード。」
レン「………金に困ってんのか?」
???「いいえ。ただ探しているんです。このカードの主を。」
レン「お前、学校はどうした?」
お前が言うか。
レンが現在学校をさぼって河原辺りでデュエルをしていた高校一年生だと知る者は、そう言うだろう。いないが。
???「250円で買いませんか?このシンクロモンスターを。」
レン「……シンクロモンスターだと?」
久しぶりに現代のデュエルを観たあの時、大会優勝者も使用していた白のカード。レンは思い出す。あの時の映像を。
レン(何故か。俺はシンクロモンスターに気を引かれる。あの後、エクシーズやペンデュラムの存在も知った。
使用こそ未だしていないが、エクシーズモンスターも数枚程度なら持っている。
それでもシンクロモンスターに惹かれるこの思いは、未だ枯れない。)
レンはショップのシンクロモンスターを見て、購入することも出来た。しかし、1枚たりとも所持していない。これでは無い。レンの心が強く叫ぶ。
”俺のシンクロモンスターはこれでは無い”
だが……。
レン「………。」
???「250円で買いませんか?」
レン「見せてみろ。そのシンクロモンスターを。」
???「どうぞ。」
シンクロモンスターを手に取る。
レン「……………。」
???「………。」
レン「………。」
???「………。」
永い沈黙が続いた後……。
レン「フン…。」
レンは、フードを被った子どもに250円を手渡し、踵を返す。
???「これはオマケだ。」
レン「‐‐!?」
レンの背後に向かって投げ放たれた二枚のカードに多少虚を突かれながら受け取ると、少年は姿を消していた。
これが、過去の●●●が手にした‐‐未来の過去の現在‐‐か。
誰からともなく、そんな言葉を聴いたような気がした。
???「ようやく最初の一枚…永い永い遠回りだった。フフフフフ」
レナ「それじゃレナのターン。ドロー。スタンバイフェイズ、メインフェイズへ移行。
ガガガガンマンの効果発動。ORUを使い、守備表示の時相手に800バーン。ORUは星因子 シャムを使用。」
才人「ふん。痛くもかゆくもないね。」
才人 LP7000→6200
レナ「………カードを一枚伏せて、エンドフェイズへ移行。ターン終了」
才人「さあ、お待ちかね。僕のターンだァ!ドロー。おやおやぁ?良いカードを引いちゃったあ。これはもうすぐに勝負が決まっちゃうなぁ~どうしよっかなぁ~」
才人 LP6200
手札1
場 スーパービークロイド-ステルス・ユニオン ATK3600 ×3 効果破壊不可
伏せモンスター×1
レナ LP8000
手札3
ガガガガンマン ORU×1
伏せ×2
才人「ねえ巨乳ちゃん。もし君が今サレンダーするなら、今までの態度は水に流してボクの彼女にしてあげてもいいよ?」
レナ「………。」
才人「ちっ、あくまでダンマリか。でもいいや。キミがなんて言おうと、僕には君を絶対に従わせることが出来るだんから。バトル。さあ、一体目のステルスユニオンでガガガガンマンを攻撃だぁ!!」
スーパービークロイド-ステルス・ユニオン ATK3600 VS ガガガガンマンDFF2400
レナ「攻撃宣言時に発動するカードはあるかな?」
才人「いんや。ないよん」
レナ「じゃあ遠慮なく。罠カード『仁王立ち』をガガガガンマンを対象に発動。DFFを倍加するよ。」
ガガガガンマン DFF2400→4800
ひよの「やりました!これでユニオンの攻撃は通らず、バックダメージです!!」
ケイト(こう言うとフラグぶち抜いてるように聞こえるッスけど、攻撃宣言時…ねえ?)
レナのプレイングに単純に喜ぶひよのと、若干エロい顔をしながら微笑むケイト。
才人「アッハハハハ!!!無駄無駄無駄だぁ!!ダメージステップ時、手札から速攻魔法リミッター解除を発動!!自分の機械族モンスター全ての攻撃力を倍加する!!」
スーパービークロイド-ステルス・ユニオン ×3 ATK3600→7200
才人「僕に逆らうからこうなるのさ!!」
レナ「効果処理後、リバースカードオープン。『D2シールド』!」
才人「なんだと!?」
レナ「防御力は更に倍」
才人「くそっ、バカにしやがって…!!」
ガガガガンマン DFF4800→9600
スーパービークロイド-ステルス・ユニオン ATK7200 VS ガガガガンマン DFF9600
才人 LP6200→3800
才人「だが、僕のステルス・ユニオンは、効果では破壊されない。リミッター解除の効果で倍加した攻撃力が元に戻ってターン終了だ。」
スーパービークロイド-ステルス・ユニオン ×3 ATK7200→3600
レナ「ドローフェイズ。ドロー。スタンバイフェイズ。メインフェイズ。ガガガガンマンの最後のORUを取り除き、相手に800バーン。」
才人 LP3800→3000
才人「くそっ、くそっ、くそっ!!」
癇癪を起したように地団駄を踏む才人をしっかりと見据えながら、レナは手札の一枚を手に取る。
レナ「ねえ、キミさぁ…もしかしてそれで全力なの?」
才人「なんだと!!この状況で僕の方が有利なのは目に見えているじゃないか!
破壊耐性を持ったATK3600のモンスターが三体。この状況で減らず口を!!」
その発言が決定打になった。目の前の相手は、相手にならない。
レナ(……目的があったから。でも、ちょっと可哀そうかなと思ったから、手心を加える程度のプレイングで
レナ「こんなに弱いなら、いつものように戦士族デッキで良かった。いや、アレでも持て余すかな。……もういーや。飽きちゃったよ」
心底つまらなそうにデュエルディスクに一枚のカードをセットする。
レナ「【星因子 アルタイル】を召喚。効果発動。わし座より舞い降りる再生の羽根、幾千の時を越えた終幕を今一度【カーテンコール】。【星因子 ベガ】を特殊召喚。さらに、もう一度【新星の輝き】。手札から【星因子 デネブ】を特殊召喚。効果発動。【新星の揺り籠】デッキから二枚目のアルタイルをサーチ。」
星因子の展開を行なうレナの上空に、『わし座』『こと座』『はくちょう座』が次々と出現し、それぞれの象徴たる一等星、『アルタイル』『ベガ』『デネブ』が輝く。その輝きは真昼の陽光さえものとせず巨大な光の三角形を形成する。
アルタイル ATK1700
デネブ ATK1500
ベガ ATK1200
才人「な…な、んで。手札消費一枚で、モンスターを場に三体揃えるなんて…」
そんなバカな。そう言いたげな顔をする才人に、レナは冷めた顔で吐き捨てる。
レナ「普通だよ、コレ。別におかしなことも無い。だって星因子だもん。」
才人「ふつ…う?」
才人が驚愕したようにレナを見る。その姿がまた、レナを失望させる。
レナ(星因子が当たり前に出来る展開をしただけでこの表情。やっぱり、この世界のデュエルのレベルは、あまりにも低すぎる。この退屈は、どんな猛毒よりも激痛だ。)
遠い記憶の強敵達の姿がレナの脳裏に鮮明に映る。自身に死を予感させる死神のような。それでいて、乾いた心を水で満たし、その勢いで溺れ死んでしまいそうな幸福感を与えてくれる恋人のような二人の姿が。
レナ「会いたい…早く会いたいよ。クーちゃん。ライアス君。私を思い切り負かしてほしい。癒してほしい。会いたくて、会いたくて、戦《あ》いたくて…気が狂いそうだよ。」
自身のカラダを腕で抱きながら、天を仰ぐ。
レナ「……三体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築。」
才人「ぐぅ…ッッ!!」
これから何が召喚されるのか?そんなことこの状況で迷う筈が無い。才人の手札は0。リバースカードも無い。妨害札が存在し得ない。素材は三体の星因子。
星因子によって形成された巨大な光の大三角は真昼の空にあってなおも輝きを増し、「夏の正三角」から「冬の逆三角」へカタチを変えてゆく。
レナ「白き王が仰ぐ天上の火よ、ハジマリの火を煌めかせたまへ。
エクシーズ召喚。ランク4。盟友の盾【星輝士トライヴェール】」
星輝士 トライヴェール ATK2100
レナの呼びかけに応え、細身の騎士が紫電の盾と剣を構え、地上に舞い降りる。
そしてレナの前に歩み寄り、口を開く。その声は少し恨めし気にも感じられた。
トライヴェール「……お久しぶりですね。現マスター。」
レナ「久しぶり。有給休暇はどうだった?」
トライヴェール「5年の休暇とか拷問に近いんですね。戦争してるよりはマシなんでしょうが、これからはもう少し頻繁に喚んでください。寂しくて死んでしまいます。」
レナ「無理。あなた達をデュエルに使うと私が退屈なんだもん。」
トライヴェール「部下が働きたいって言ってるのに拒否する主人など聞いたことが有りませんよ!?」
レナ「ごめんねー。でもやっぱり退屈だから明日からまた有給で。」
トライヴェール「ちくしょおおおおおーーー!!!」
ケイト「も、モンスターが、しゃべってる…!??」
ソリットヴィジョンで現れているハズのモンスターが口を聞き、あまつさえ主人にもっと使ってくれと文句まで言っているこの状況に、その場に居る者が皆一様に目を奪われていた。
レナ「はいはい。そろそろ行くよ、トライ。準備は出来てる?」
トライヴェール「だから!五年間ずっと準備してたんですよ私はぁ!!毎晩毎晩デッキは持って行っているのに使ってるのは違うデッキばっかりで我々がどれだけ寂しい思いをしていたと」
レナ「‐‐トライヴェールの特殊召喚時に効果発動!」
トライ「無視!?無視ですかマスター!!」
なおも苦言を呈するトライヴェールを横目に効果発動を宣言するレナ。
レナ「我に仇成す傀儡よ、汝の有るべき姿に戻れ‐‐」
星輝士 トライヴェール
ランク4 光属性 戦士族
ATK/2100 DFF/2500
レベル4「テラナイト」モンスター×3
このカードをX召喚するターン、自分は「テラナイト」モンスターしか特殊召喚できない。①:このカードがX召喚に成功した場合に発動する。このカード以外のフィールドのカードを全て持ち主の手札に戻す。②:1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。相手の手札をランダムに1枚選んで墓地へ送る。③:X素材を持ったこのカードが墓地へ送られた場合、自分の墓地の「テラナイト」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。
レナ「【連煌星の帰還《アステリック・リバース》】」
トライヴェールの効果により、煌星の光に包まれたフィールドの全てのカードが、元の主の元へ舞い戻る。
だが、本来手札に有り得ない存在であるEXデッキのモンスター達は、持ち主の手札に加わることを世界の修正力が許容しない。ゲームの法則により手札に加われないEXのモンスター達は、EXデッキへと還元される。
これにより……。
才人LP3000
手札一枚
レナLP8000
手札三枚
場 星因子 トライヴェール ATK2100
レナ「更に効果発動。ORUのデネブを取り除き、相手の手札を一枚捨てさせる。」
トライヴェールの構えた剣から発せられた紫電光が才人の最後の一枚となった手札を貫く。
雷光によって焦げたカードは開いた黒い風穴から灰と化し瞬く間に崩れ消えてゆく。
才人LP3000
手札 0枚
才人「あ……ああ………!???」
事実上、レナの勝利は確定した。
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