遊戯王 ~Fake Origin~   作:SOD

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実はここまでの話、三話ぐらいに分けて書かれていたのですが……遊戯王SSでそれは無いよね?
と言うことで、超融合しました。読みづらかったらごめんくさい


遊戯王 ~Fake Origin~2

――ピーン。

金属音が静かに響き、室内の空気を震わせる。親指から放たれたコインが宙を舞い、坂上みくの足元に落ちた。上を向いているのはみくが選んだ十字架の描かれた面。

先ほどまでお祭りの雰囲気で包まれていた体育館では今現在、張り詰めた空気が漂っている。

ここで行われるのは見世物的なデュエルのハズだった。誰もがデュエルと、その空気を楽しむつもりでいた。

しかし、開始直前のレンの言葉で一変してしまった。

坂上みくもまた、それまでの騒がしさが嘘のようで、借りてきた猫という言葉を彷彿とさせる。

「あ…あたしのターン」

相手のドローと同時に、レンの目の鋭さが増す。その目はみくの一挙手一投足を決して見逃さないように、刺すような視線を放つ。

「………っっ!!」

(何なのよあいつ…人生を捨てるとか家族と会えないとか、バカじゃないの!?

何本気でキレてんのよ。わけわかんない……っ。絶対倒して土下座させてやる!!)

「アタシのターン!!

手札から、雷帝家臣ミスラを特殊召喚!!」

ミスラの効果により、レンの場には『家臣トークン』が特殊召喚される。

「……雷帝……??ザボルグでも出てくるのか…?」

「あんな時代遅れのカードなんか使うわけないでしょ!

ミスラをリリース。手札から、炎帝テスタロスをアドバンス召喚!」

 

炎帝テスタロス ☆6 2400/1000 炎属性 炎族

このカードがアドバンス召喚に成功した時、相手の手札をランダムに1枚捨てる。捨てたカードがモンスターカードだった場合、そのモンスターのレベル×100ポイントダメージを相手ライフに与える。

 

「さあ、手札を捨てなさい。一番右のカードよ」

「あいよ」

レンが捨てたのは魔法カード『死者蘇生』

「最後にカードを一枚伏せてターンエンド」

「ほむん。どうやら、あの断崖絶壁(ナイムネ)な高飛車部長は、帝デッキのようだのう」

「つか、今はむしろ蛇に睨まれたカエルじゃん?めっちゃビビってるし。

レンくんてば温室育ちのお穣さんにガン付けたらマズいって」

「にーは勝負事になると目の色変わるから。

普段は本当にいい人なんだよ?人の意見と法律は無視するけど…( ボソッ」

「「ダメだろそれ。」」

義妹の必死のフォロー空しく、レン・ファムグリットは擁護出来ない。

「俺のターン。ドロー」

カードを引いたレンの眼光は、一層鋭さが増していく。おそらく子供が見れば泣き出すだろうし、親御さんがいれば通報待ったなしのヤバい人の目だ。

「手札から『古のルール』を発動する。」

「古のルール?ってことは、バニラデッキなのかな?レナさん、ちょっとワクワク」

「む?ファム妹。お主、家でレンにデュエルを教えたのではないのか?」

「そうなんだけど、デッキは当日まで隠しておきたいって言われちゃったから、レナさんも全然デッキ内容知らないんだよ」

「手札から『真紅眼の黒竜』を特殊召喚!!」

「「「え!?」」」

デュエルディスクにカードがセットされる。

光とともに現れたのは黒い翼を持つ竜。遊戯王の歴史の中でも最初期に登場したドラゴンだった。

「レッドアイズ…ですって?

アンタ、それがどういうカードか分かって使ってるわけ?」

「どういう意味だ?」

「はあー…いいわ、教えてあげる。

そのカードはね、星7 攻撃力2400守備力2000のモンスター。

星6バニラでもデーモンの召喚ってカードが有る。同じレベル、属性でもそのカードより攻撃力の高いカードは幾らでもあるわ。要するに弱いカードなのよ!」

「ほむん。まさか今そのカードを実戦投入するとは…挑戦的であると言わざるを得ないのう」

「レナさんは好きだよ。あのカード可愛いもん。頑張れーレッドアイズー!」

レナの応援に雄たけびで答えるレッドアイズ。やる気は十分である。

「そんなカードで戦うなんて、アンタあたしのこと舐めてるんじゃないの!?」

「………真紅の眼を持つ黒竜。怒りの黒き炎はその眼に映る者全てを焼き尽くす」

「?」

「黒い炎は、カラダよりも精神を蝕む…気がする。魔法カード『黒炎弾』!」

 

通常魔法:黒炎弾

自分フィールド上の「真紅眼の黒竜」1体を選択して発動する。選択した「真紅眼の黒竜」の元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。このカードを発動するターン「真紅眼の黒竜」は攻撃できない。

 

坂上みく LP5400

 

「くそっ、先制された!」

「――更に、二枚目の『黒炎弾』を発動!!」

 

「むっきぃーー!!」

 

坂上みく LP3000

 

「おお~!!一度はやってみたかった黒炎弾二連発だー!!」

「三枚目の『黒炎弾』を発動!!焼きはらえ!!」

「「「「おおおーー!!」」」」

まさかの『黒炎弾』三連発に、それまでお通夜モードだった会場の雰囲気を払拭するほどのインパクトを会場に与えた。

坂上みく LP600

「く…っ!」

「弱いカードだか何だか知らねえが、要は使いこなせてないだけだ。負け犬の遠吠え――いや、雑魚が知ったかぶってるのか。」

「……ふん。そういうセリフは勝ってから言いなさいよね!!ライフなんて投げ捨てるものよ!」

「んじゃ、そのまま命も人生も投げ捨てろ。俺は『家臣トークン』を守備表示にして、ターンエンドだ」

 

これでターンは一巡。

ここまでの状況は

 

坂上みく LP600

手札3枚 場 テスタロス 伏せ1 

 

レン・ファムグリット LP8000

手札0枚 場 真紅眼の黒竜 家臣トークン

 

「ほむん…互いに大きくアドバンテージを失っているな…。

しかし大丈夫なのかレンは。あやつ、現代の遊戯王において如何に手札が重要でライフが軽視されているのか知らんようだが……」

このターンで全ての手札を使い切ってしまったレン。

対してガンマンで落ちるLPのみく。

「ま、手札的には仕方ないんじゃね?今までのカード全部見たから言えるけど、アレもう他に手無いじゃん?『古のルール』『真紅眼の黒竜』『黒炎弾』×3とか、オレ普通にココロ折れるわー」

「他にバーンカードがあるにしても、次のターンに決着出来るカードなどあったかの?」

「無いねー少なくとも自分のカード一枚だけで600削るようなカードは『昼夜の大火事』みたいな実戦で使われないカードばっかじゃん?レッドアイズにシナジーあるとも思えないし」

「フフフ…!手札を使いきった状況じゃ、もうアンタに打てる手なんてない!!

あたしのターン。ドロー。

行くわよ!!永続魔法――帝王の開岩!」

 

帝王の開岩 永続魔法

このカードがフィールド上に存在する限り、自分はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない。また、自分がアドバンス召喚に成功した時、以下の効果から1つを選択して発動できる。「帝王の開岩」のこの効果は1ターンに1度しか発動できない。

●アドバンス召喚したそのモンスターとカード名が異なる攻撃力2400/守備力1000のモンスター1体をデッキから手札に加える。

●アドバンス召喚したそのモンスターとカード名が異なる攻撃力2800/守備力1000のモンスター1体をデッキから手札に加える。

 

「更に、手札から『風帝家臣ガルーム』を召喚。

更にリバースカードオープン。『連撃の帝王』。

これで私は、1ターンに1度、アドバンス召喚出来る!

ガルームをリリースして、『邪帝ガイウス』をアドバンス召喚!!」

 

邪帝ガイウス 星6 闇 悪魔族 2400/1000

①:このカードがアドバンス召喚に成功した場合、フィールドのカード1枚を対象として発動する。そのカードを除外し、除外したカードが闇属性モンスターカードだった場合、相手に1000ダメージを与える。

 

「私は、帝王の開岩の効果を発動。更に邪帝ガイウスの効果を発動。更にガルームの効果を発動。」

「へえ、ガルームの効果。どんな?」

「ガルームは、アドバンス召喚のためにリリースされた場合に、デッキから「風帝家臣ガルーム」以外の攻撃力800/守備力1000のモンスター1体を手札に加えられるのよ。

私は『地帝家臣ランドローブ』を加えるわ。そして――」

「………いいね。」

レンは口の端を吊り上げながら狂気染みた笑みを浮かべ始めた。

「は?」

「……俺のいない間に、デュエルは進化した。ゲームと呼べるほどの戦略を携えて。」

「何よ突然?」

 

ククク…と心底愉快そうに笑うレンの姿は一層畏れを増していく。

 

「……アンタはいつからデュエルをしてるよ?」

「三ヶ月くらい前からかしら?それが何」

「俺は、両親に捨てられてしばらくしてからだった。6歳の時かな」

「捨てられた…?」

「あの時はさ、今みたいな平和なデュエルは無かった。強いカードも弱いカードも、完全に決まってた。

デッキに入れるカードも大体固定されてて、ただひたすらに相手をつぶし合ってきた。

だから今、少し楽しいと思うよ。こんなにも幅広い戦術とカード。

選択の余地が広がり、戦略を考え、実現できるだけの環境。

ああ…ここはまるで、虹のかかった露天風呂のようだ」

「意味の分かんないことばっかり言ってんじゃないわよ!!

何が露天風呂よ!!だったら熱湯で火傷させてやるわ!

ガイウスの効果は場のカードを除外する。真紅眼の黒竜を除外する!」

「………ガゥ…」

これで出番終わりかと言わんばかりに、悲しそうな泣き声を上げたレッドアイズ。

サラサラと砂のように消えていった。

「へえ、雷帝の除外番か。強力だ」

「まだよ!更に除外したカードが闇モンスターの場合、相手に1000ポイントのダメージを与える。」

レン・ファムグリット LP 7000

「おめでとさん。ファーストダメージだ。」

このデュエル、初めてのダメージがレンに入った。しかしレンは愉快そうに口元だけで笑う。

「最後に、開岩の効果でデッキから『風帝ライザー』を手札に加える。」

「ああ…本当に、良い時代だ。」

「バトル!!」

家臣トークンがガイウスによって破壊される。

「アンタが黒い炎なら、こっちは怒りの真っ赤な炎で灰にしてやる!!」

炎帝テスタロスの炎撃がレンを包む。

炎帝テスタロス ATK2400

レン・ファムグリット LP 4600

「フフフ…楽しいなァ、オイ……!!」

「ひっ…!?」

過去の記憶とのあまりの違いにテンションが上がって来たレンは、段々と狂気染みた笑みを浮かべ始めた。

「どうした…?まだ何かあるのか……?」

その瞳は目の前のみくを獲物として認識し始めている。

その口元は今にもみくに喰らいついて来そう。

1秒先にも犯されるのではないかという錯覚に陥りそうで、恐ろしい。

「た…ターン、エンド」

「ああ、んじゃあ俺のターンだな……フフフ…!」

(……何よあいつ!!なんなのよ!!本気で意味がわからない!!!

勝負に遅刻してきたと思ったら、暴走族みたいな恰好で現れるし!

何か怒ってるし!!しかもめっちゃくちゃ怖い!!もう逃げたい!!)

いっそこの場から逃げ出してしまおうかと思った。その時――。

「え…!?」

ヒュン――!!

バキッ!!!

「――超痛ぇ!??」

コロンコロンと中身の無い音が床で鳴る。

そこに落ちているのは、なんと木刀だった。

「にー!!少し落ち着きなさい!!」

レンに怯えるみくを見かねたレナがわざわざ教室まで行って取って来たのだった。

「ゑ……俺??」

しかし、デュエルに夢中(?)になっていたレンは、今までみくが怯えていたことにすら気が付いておらず、何の事を言われているのかさっぱり理解できていない。

それをすぐに理解すると、レナはステージまで上がって来た。

外野もその光景にざわつき始める。

「何だ今の?」

「あれって木刀!?」

「あの子可愛くね?」

「あれって、レナ・ファムグリットじゃね?テレビで観た!」

ステージに上がりきったレナはみくのもとへ駆け寄った。

「部長さん。タイムね!」

「へ…?うん」

それまでの恐怖のせいで急な横やりに頭が付いて行かず、腰が抜けてしまったみくは、言われたとおりにするしかなかった。するとさっさとレンの元へ踵を返した。

「……何の用だ、レナ。ジャマだ」

一方、当初デュエルのこと自体すっかり忘れていたはずのレンは、早く続きがやりたくて仕方ないらしく、このタイム自体が不本意で堪らなかった。

「にー。ちょっとその服脱いで」

「ああ??何でだ」

「何ででも。はい、これ着替え」

レナは何故持っているのか不明な、レンの着替えを手渡し、そのまま上着を脱がせた。ついでに服も着せようとした。

「はい、ばんざーい」

「そしたらお前上まで手届かねえだろうが…」

物理的に難しかったので諦めた。

「ねえ、レン君」

「……何だ。レナ」

「キミは、自分の身長が何センチか把握してる?」

「……183㎝」

「レナは?」

「……………160前後。多分」

「163㎝。正解」

「何が言いたい?」

「あのね。レン君は、自分が思っている以上に怖い顔してるの」

「え…???」

レナにしか分からないが、明らかにショックを受けたような表情で落ち込んだ。

「レナは知ってる。にーが本当は優しいこと。でもね、あの人は何も知らないんだよ?

飛娘ちゃんだって、そう。たとえばにーが仲良くなりたくて街中をバイクで連れまわしたりしたら、仲良くなるどころか怖がらせて余計に仲良くなれなくなるの。」

「…………。」

「にーは楽しいんだよね。部長さんとのデュエル。

名前を知っているカードと、初めてみるカードが同じデッキの中で力を発揮している姿を見て、凄くうれしかったんだよね?最初はムッとしたけど、今はとっても楽しいだけなんだよね。」

「………。」

「だったら、にーも相手を楽しませるデュエルを、見せてあげようよ。ね?」

「…………。」

レンはすっかり黙って意気消沈してしまった。

「部長さん。怖がらせてごめんなさい。」

「え…?」

そんなレンの代わりに、レナは謝罪した。

「でも、怖がらなくても大丈夫だよ。にーは……。

レン君は、怖い人じゃないから。だから…」

「あなた……。」

レナは優しく手を差し伸べる。

「ぜったい、だいじょうぶだよ。」

「………。」

みくは、レナの手を受け入れて立ち上がった。

これで大丈夫だ。そう確信したレナは――

「二人とも、あと、観てるみんな!!中断してごめんねー!!」

バイバイと手を振りながらレナは去って行った。

「あと、にーもごめんねー。お詫びに今夜はご馳走!勝ったらにーの大好物スペシャルってことで!!」

 

「…………。」

「…………。」

 

レナの乱入で中断したデュエルが仕切りなおされる。

レナが観覧席に戻ると、友人二人が迎えた。

「ファム妹よ。お主何がしたかったのだ?」

状況がつかめない英心は、レナに説明を求めた。

「ん~?もちろん、レナさんの大事な大事なにーが、楽しくデュエル出来るようにしてきたんだよ。

主に肩の力を抜いてもらうためにお着替えしてもらった」

「何ゆえに?」

「それは恋ゆえに?」

「なぬっ!??お主よもや実の兄に恋心を!???」

「冗談は置いといてさ、レナちゃん。とりあえずもう楽しいデュエルってのは無理じゃん?」

「どーして?」

「だって、レンくん手札0じゃん。」

「そうだね。しかも、部長さんの手札には疑似ドローロックの『ライザー』!場には『連撃の帝王』!

罠なら負け、場に出さなきゃ効力を発揮しないモンスターなら負け。絶望的だねっ!」

「ほむん。おまけに墓地は空っぽで貪欲も期待できぬ。確かに、これを何とか出来れば奇跡じゃのお…」

「ま、負けちゃっても死んじゃう訳じゃないし。

その時は慰めてあげようよ。膝枕でもして頭でも撫でながらさ」

にっこりと笑うと、レナはデュエルの観戦に戻った。

みくはそれまでの恐怖を振り払い、デュエルに集中することにした。

(そうよ。どんなカードが来たって、1枚しかないのなら、全部ライザーで凌げる。

次のターンに直接攻撃すればあたしの勝ち!)

「…………。」

「どうしたの?アンタのターンよ。打ちどころでも悪かった?」

レンはドローフェイズにドローすることなく、観客席を眺めていた。

「…………。」

「ちょっと?ねえ、アンタ!?」

「…………レン。」

「え??」

「レン・ファムグリット。今の俺の名前だ。」

「レン…?」

「ああ。よく考えてみたら、俺達はまだ、自己紹介すらしてねーからな。

お互い勝手に自分の感情を押しつけるだけで、相手を理解しようとしてなかった。」

「…でもあたしは名乗ったじゃない。部活紹介の時に」

「そうだったかな……悪いけど俺、その時全く話を聞いていなかったんだ」

「なあっ…!?あたしのありがたい部活紹介を聞いてなかったですって!?」

「後で聞かせてもらうさ。1年全員に向けた言葉ではなく、俺に向けた部活紹介を、な」

「あ…」

笑った。さっきまでの狂気染みた笑みではなく、もっと温かみのある、そういう笑顔で。

「さて、そんじゃデュエルを続けようぜ。

俺のターンだったよな」

「ふん!そうよ、かかって来なさい!!言っておくけど、半端なカードを使ったって無駄よ!

『風帝ライザー』は、場のカードをデッキトップへ戻す。

すでに王手はかかっているのよ!」

「フフフ…いいぜ。だったら呼び込んでやるよ。

半端じゃない、最高のカードを。ドロー!!」

会場に緊張が走る。

一体何を引いてくるのか。

「………俺が引いたのは」

「………。」

長い沈黙が漂った。それはほんの一瞬だったのかもしれないし、何秒もかかったのかもしれない。

沈黙を解き放つ言葉が響く。

「魔法カード『カップ・オブ・エース』!!」

「なんですって!?」

そのカードを知る者は、そのカードの投入を決めたレンに驚き、そのカードを知らないものは、ただただそのカードの効果説明を待った。

するとレンは、最初に使ったコインをみくに向けて弾いた。

「受け取れよ。俺とアンタの運命を決める1枚だ」

「アンタ…本当に何考えてデッキ組んでるのよ??」

 

カップ・オブ・エース 通常魔法

コイントスを1回行う。表が出た場合、自分はデッキからカードを2枚ドローする。裏が出た場合、相手はデッキからカードを2枚ドローする。

 

「……これでも運命に身を任せて生きてきた身でさ、采の目に一喜一憂して、コインの裏表でその日の飯が食えるかどうかって日も少なくなかった。遊びでギャンブルが出来る。良いゲームだ。」

「アンタいったい何者よ??」

「レン・ファムグリット。」

「………もういいわ。コイントス!」

ピーン!!

放たれたコインが宙に舞う。今日の運命は表か裏か。1枚のコインにデュエルの行方は託された。

「裏が来ればあたしの勝ち」

「表が出ればデュエル続行。」

コインが地に落ちる。せわしなく跳ね続けた後、ようやく落ち着いた。それに続き、結果が見えない観客がざわつく。

「おい、どっちだ!?表か!?裏か!?」

「見えねえぞ!!」

「どっちどっち?終了?続投?」

「………。もしもここで終っていたのなら、俺はその程度だった。

いつ死ぬかもわからないものに、常に命を掛け続けてきた。」

「へえ…なんのために?」

「……死なないために。」

「そう……。まさに、今の貴方そのものね。」

「ああ。俺は勝つためではなく、殺されないために命を掛ける。その矛盾の中でいつ破滅するかもわからない綱渡りで、俺は今日も破滅から逃げ続ける。このコインが、俺にとどめを刺すその日まで。」

示し合わせるでもなく、二人のデュエリストは同時にコインを見た。

「ほむん…とりあえずは……」

「だね。うん。」

「さっすがだよ、にー!表!表だよーー!!やったーー!!!」

カップ・オブ・エースのコインの出目は、レン・ファムグリットのドローだった。

「さあ行くぜ。ドロー!!」

「後は、レン君のドロー次第……」

「ほむん。何を引くか?」

引いたカードを確認する。

「………俺は一体、あと何度逃げ続けられるのかな。」

引いたカードは、魔法カードと罠カード。

「行くぜ、坂上みく」

「……来なさいよ。」

「生きとし生きる者を飲み込み、命そのものを還す力。その歪みを召喚する。

魔法カード『ブラック・ホール』!!」

「何ですって!?」

「おおー!!」

レンの引いた魔法カードは『ブラック・ホール』。

場に存在する全ての命を飲み込み、自身すらも破壊する破壊のカード。

この重力の暴力によりモンスターは消滅した。

「ギャンブルに勝って、ピンポイントに必要なカードを引いてきた……。『ブラック・ホール』。現代入れる人の方が少ない大量破壊カード。でも、この場でアレ以上に必要なカードは無いね」

「む?そうなのかファム妹?サイクロンで『連撃の帝王』を割れば同じことであろう?」

 

「残念だけど、それじゃあモンスターが残る。仮にミラファや激流葬だったとしたら1ターン待つ必要がある。それじゃあまた次のターンにならないと反撃出来ない。

 

しかも、あのデッキに『連撃の帝王』は文句なしでキーカード。仮に二枚そろえば1ターンに3回。相手のターンで2回召喚権を得ることになる。あれは名前指定の1ターン制限じゃないから。

ぶち壊しても湧いてくる可能性の高いカードを破壊するくらいなら、いっそその発動条件を封殺してた方がいいんだよ。

今の状況ならチェーンされてもライザーの効果で戻せるカードが無い。彼の場を考えれば、これ以上はないよ。帝がどっちか残ってればゲームエンドになるんだかr……って何?英心君??目を丸くして」

「お主、詳しすぎんか?まるでプロの解説のようではないか。」

「そう?この程度なら普通だよ」

「普通な事あるか。あろうはずが無い。あってたまるか。あれほど詳しい解説が出来るのは、実際に使用しかつ使いこなすだけの腕が無ければプロ以外になかろう。お主、剣道以外にもデュエルでも一流であったのか?」

「ちょっと昔、専門的に勉強してるんだよ。今でもバイトで使う知識だからね。………にーには内緒ね?コンビニで肉まん買ってもらえなくなるかもしれないし。」

「ほむん。フライドチキンで手を打とう。」

「おっけーおっけー。ついでにポテトも付けちゃおう。ん?……いいの??お寺のお坊さんになるのにお肉って」

「拙僧は破戒僧になる。」

「すごい言い訳だね~ハハッ。っと、デュエルデュエル。」

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド。」

 

 

レン・ファムグリット LP 4600

手札 0 場 伏せ×1

 

坂上みく LP 600

手札 3枚 場 『連撃の帝王』 『帝王の開岩』

 

「あたしのターン。」

(手札にはさっきサーチした家臣がいる。そして、手札にはライザー。

攻めるには十分…問題は、あのリバースカード。あのカードがフリーチェーンなら、『連撃の帝王』の発動時にチェーンすれば、ライザーの強制効果はあたしのデッキに疑似ロックを掛ける。

手札の不要な魔法・罠を場に出せば、どうせ開岩でサーチ出来るから手札交換にはなる…。)

みくは、レンの公開情報を確認する。

(もし、あのカードが激流葬だったら、また振り出しに戻る。ランドロープがいるから家臣には困らないけれど。)

「………。」

「ずいぶん長考しとるのう。」

「………警戒してるんだね。LP600だから下手すれば終わる。だから大胆に動くことができない。サイクロン系か召喚反応系。そのどっちかなら、負けがかなり大きくなる。」

「む?どちらもさっきイラネと言っておらんかったか?」

「あの場ではね。でも今は部長さんのターン。レナさんなら、あの場で怖いのはサイクロン。手札にもよるけどね」

「たとえばどのような?」

「あの手札一枚が、二枚目の『連撃の帝王』か魔法・罠に対処するカード以外なら全部。」

「む?あの絶壁部長の手札は三枚ではないか?一枚とは?」

「公開情報だよ。あの三枚の内、二枚はモンスター。一枚は家臣。一枚は帝。

あの人は軽率すぎたんだよ。もしあの家臣が雷帝家臣なら、召喚反応でも壁モンスターを召喚する機会は得られた。でも、あれは『地帝家臣ランドロープ』。相手の場にモンスターもいない、魔法・罠も無い。

モンスターに耐性も与えられない。

そんな状態でライザーをサーチするのに、家臣が地帝なもんだから特殊召喚も出来ない。

連撃にチェーンされたら、ライザーは自分の場をデッキバウンスする。ね?最悪」

「しかし、あんな事故みたいな手札補充など、視野に入れるのは難しかろう?」

「でも自分のデッキ内で対応可能なレベルの可能性だよ。

あんなの事故じゃない。舐めプのしっぺ返し。自業自得だよ。

相手のデッキ内容も知らないのに、『だろう運転』なんかするから事故に会うんだよ。

舐めプ、かっこわるい。」

「…レ、レナちゃんがキツい。」

「ほむん。ところで拙僧、一つ思ったのだがのうファム妹」

「なぁに?」

「お主の兄は素人であろう?」

「うん。そうだと思うよ。『サイクロンで魔法・罠は無効化できないの知ってる?』って聞いたら最初信じてくれなかったもん。苦労したんだよ。ちゃんと教えたげるの。『何!?破壊=無効ではないのか!?』って」

「何それ懐かしい」

「ほむん。ではあやつ。『風帝ライザー』の効果知らなくね?」

「……………………。」

 

二人のデュエルはまだ続く。




オリ主ってイイよNE☆

原作者NattoMikanは性格が破綻した主人公が好きなので、ヘタレ系とか童顔系の主人公を見ると
『シャキッとせいや!!ち●こもぐぞ!!』
ってなります。

多少引くぐらい我が強い方がマンガとか小説とかギャルゲーとかやってて楽しいな~。
因みに好きなギャルゲーはCLANNADです。


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