生徒A「なあ、昨日の地震って何だったんだ?震源地が分かって無いらしいじゃん」
生徒B「アレもう明らか大震災並みの揺れだったのに、何故か家で話したらさ、地震なんて無かったってお母さん言うんだよねー」
生徒C「でゅえる部の部長さー、まるで知ってたみたいなタイミングで俺ら体育館から避難させたよなー」
生徒たち「「「謎だよなー」」」
昨日あれだけ大々的に行われたでゅえる部部長、坂上みくと、新入生レン・ファムグリットのデュエルなどどこ吹く風で、神の召喚時に起こった災害レベルの召喚余波の影響により被害を受けた学園校舎を揺らした超局所的大震災の話題で持ちきりだった。それと言うのも――
先生「ほらみんなー話してないで片づけしろー」
教室には割れたガラスの破片が辺りかまわず散らばり、壁や黒板にはひびが入り、どうこうしても本日中に授業が行えない状態になっていたせいだろう。とばっちりを受けて後片付けをさせられている生徒からしたら、愚痴の一つも言わずにはいられまい。
生徒D「せんせー。やっぱり生徒が震災の片づけさせられるのはおかしいと思いまーす。」
生徒E「ってか業者呼ぼうぜー。ここ進学校だろー?こんなことさせといて良いわけー??」
先生「仕方無いんだ。だってどういうわけか世間的には地震なんて起こって無かったことになっているんだもの。そんな状態で業者なんざ呼んだらクーデター疑われるレベルだぞこれ。生徒が暴徒と化したとか新聞の一面飾るぞ?下手したらお前らの進学に響くぞ?良いのか?良いのか?本当にいいのかー??」
生徒A「キタナイ。大人ってキタナイ…」
生徒F「ちょっと月海くん、寝てないでどいてよー掃除できないじゃない」
生徒G「アレ?そういえば月海の隣の席のやつい無くね?」
そのころ、現場にいた目撃者の1人は。
飛娘「………。」
レン「………。」
店長「おーい、飛娘ちゃーん。そろそろ休憩行っていいよー。新しく出来た彼氏とお昼行ってきなよ」
飛娘「〜〜ッッ!!!店長!何度も言ってるアル。違うですヨ!!この人が何でここにいるのかワタシもさっぱり分からないヨ!!助けてほしいアル!!」
カードショップATMのアルバイトスタッフこと、王 飛娘(ワン フェイニャン)は、幼いころに強面の男達に拉致されて日本に来た中国人である。その経緯から目つきの悪い男に対して恐怖心を持つようになってしまった。だと言うのに、一昨日初めて店に来てからと言うもの、午後4時過ぎ位になると、この赤髪の少年‐レン・ファムグリットは店に来る。因みに今は正午。思いっきり学校の時間なのだが…。普段なら自分の苦手なこの男が来る時間ではないため、すっかり気を抜いていた飛娘は突然の『よぉ、中国』と挨拶して来たレンの顔を見た瞬間、思わず泣きそうになってしまったほどである。
飛娘「だ、だいたいアナタ!何でいつもいつも店に来るアル!?昨日なんて無理やり自転車乗せられて、またどこかの国に拉致されるかと本気で思ったアルよ!?」
レン「まあ、色々あったんだ。聞きたいか?」
飛娘「もうこの際だから聞かせてもらうアル!!いつまでもワタシやられてばかりじゃ無いネ!!追い詰められたら窮鼠でも猫を噛むアル!!ウガー!!」
レン「よし、じゃあ腹も減ったしまずは飯行くか。ラーメンと肉まんどっちがいい?中国」
飛娘「じゃあまずはその中国呼びから改めるアル!ワタシ、王 飛娘ネ!!」
レン「そうだな、俺は今日ハンバーガーの気分だなー。毛須バーガーにでも行くかー中国」
飛娘「無視アルか!!ワタシの言ってること聞いてないアルか!!しかもラーメンと肉まんって言ってたのに全然違う物出てきたゾ!どんだけ気分屋アルか!言葉のキャッチボールをするヨロシ!!」
レン「んじゃレッツゴー」
飛娘「ま、待つネ、ワタシエプロン着たままアルよ!」
レン「いいじゃねえの。料理するならエプロンだって着けるし。あ、アンタに昼飯作ってもらうのもアリか」
飛娘「言ってることが変わり過ぎるアル!!おまえ実は情緒不安定な人だろ!!」
店長「いってらっしゃーい」
飛娘「………アレ??」
レン「何だ?」
道中、レンが気ままに発言し、飛娘がツッコむ漫才のような会話をしている内に、レンが『よし、ここにしよう』と適当入った店が本日の昼食の場所に決まった。それ自体は別に文句はなかった。飛娘は好き嫌いも無く何でも食べる良い子だ。エレベーターで展望室まで上り、高級感溢れる入口を潜り、ウェイターに椅子を引いてもらい、ワイングラスのようなコップに水を注いでもらい、食器の横と縦にフォークとナイフとスプーンが整列しているテーブル。
高級感溢れる内装ながら他に一切の客はおらず、テーブルには【本日貸し切り】と書いた物が置いてある。更には
飛娘「………何アルか…??このメニューに書いてある金額…」
0が四つほど付いた一品で万単位の値段が書かれたメニューを見て、ようやく飛娘は、ここが超高額のレストランであることに気が付いた。少なくとも昼食のために高校生同士で来るような場所では無い。
飛娘「ちょ、ちょっとアナタ、ここ何処アル?!」
ウェイターに聞こえないように小声でレンにたずねる。
レン「は?飯屋だろ」
しかしレンはそんなことお構いなしでメニューを見ている。値段を見ていないのか?そんなはずが無い。どういうことなのだろうか?飛娘は訳が分からなかった。レンの目にはこの場所が、街の寂びれた定食屋にでも映っているんだろうか?
レン「…決まったのか?」
飛娘「何言ってるアルか!?こんな高いところでご飯食べるお金なんて持ってないヨ!!」
レン「……ん、そうか。そういやアンタいつもバイトしてるもんな。苦学生か。ま、心配するな。金ってのは常に、金持ちの所にあるものだ。」
飛娘「へ…??」
ぽかーんとする飛娘をよそに、腹が減ってとりあえずさっさと食事がしたいレンは、ウェイターを呼んで
『一番良いヤツを頼む。5人分』
と言ってコースを決めた。
注文を決めたレンはくわぁ~と欠伸をして背伸びする。どう見てもテーブルマナーにうるさそうな店なのだが、誰も彼もスルーだった。
レン「あ、そーいやー、俺は今日学校休みなんだが、アンタは何であんな時間にバイトしてたんだ?」
飛娘「え…?ああ、ワタシ夜間の学校行ってるカラ…」
レン「ふーん。学校楽しいか?友達はいるのか?」
飛娘「………なんかお父さんと話してるみたいネ。あんまり楽しくは無いアル。友達も出来ないし。でも、ワタシ人より勉強しないと就職も出来ないネ。訳ありの外人ダカラ…」
レン「そーか。苦労してるんだな」
その心のこもって無い適当な言葉に、少しだけムっとし飛娘は、ちょっとだけ嫌味を言ってみた。
飛娘「そうアルよ。ワタシ苦労してるアル。昼間からこんな高いレストランでご飯食べられるボンボンとは違うネ。」
その言葉に、レンは特に気分も害さずに言う。
レン「ファムグリット家は一般の中流階級の一家だよ。俺の金は、ガキの頃命がけで勝ち取った泡銭だ。レナの親父さんから小遣い貰ってないしな。レナも大概貯金をやりくりしてるみたいだが」
飛娘「レナ『の』親父さん…??」
レン「ああ。レナの親父。エックス・ファムグリット。趣味は愛娘とデートすること。座右の銘は娘大好き。」
飛娘「アナタ達、兄妹じゃ無かったアルか?」
レン「ああ。義兄妹だよ。もっとも俺は拾われた側だがな」
飛娘「……複雑な家庭の事情アルか」
レンのお察し下さい的な発言は、あまり踏み込んで聞いていいものでは無いように思えた。
だがレンはさらっと話し出す。
レン「全然。ざっくり言えば『父親がギャンブルで破産して売られちまった俺は、ギャンブルで成り上がり、仲間を作りながら冒険して、売られた母さんを助けるために旅をしていた。長い長い冒険の果て、ようやく母を見つけたはいいけど、実は親父は俺が邪魔だったから、一芝居打って俺を売っぱらって金貰ってて、母ちゃんもグルだったから、これを機に独り立ちしようとした結果失敗して拾われた』ってだけだから。」
飛娘「………あの、ゴメンナサイ、長くて良く分らなかったアル…」
レン「母を訪ねて三千里したら実は母親に捨てられていた。」
飛娘「………っ」
さらっととんでもない身の上話を聞かされてしまった飛娘は、背筋が凍るのを感じた。彼女自身も、拉致されて母校に帰国出来ず家族にも会えず、割りと常識外れに不幸な方だが、レンのそれは、更に常軌を逸している。そして、何よりも恐ろしいのは、そんな当の本人が、それを他人事のように平然と語っているだ。少なくとも飛娘から観ていたレンは、その過去に何か感情を抱いているようには全く見えなかった。本に書いてあったことを音読でもしているかのように、淡々としている。
飛娘「あの…っ」
何を言ったら良いか分からないまま口を開いた。その時、
みく「あら、レン。先に来てるなんて、いい心がけじゃない。誰よりも早く来ているなんて、部下の鏡だわ。」
昨日レンと戦った少女が、その場に現れた。
レン「やっと来たのか。人を呼びつけておいて遅刻してしかもその態度は何事だ。俺がアンタをペットとして仕付けるべきか?」
みく「何よ、細かいこと気にするとモテないわよ?」
全く悪びれないみくに対して無言になるレン。
レン「………。」
みく「………あー…ま、まあ?あたしが悪い所は、ゴメンだけど?べ、別にモテなくてもアンタの居場所はあたしの部につくってあげるわ。大丈夫よアンタ見た目は良い方だからさ」
レン「………。」
みく「………っっ分かったわよ!!ごめんなさい!呼びつけておいて遅刻したあたしが悪かったですっ。」
レン「………。」
みく「……だ、だからそうやって不機嫌そうに睨むのもう止めてよぉ……ほ、本気で怖いんだから…」
レン「……アンタは人の上に立つ前に、人に対するある程度の礼節と敬意を知るべきだ。」
みく「………。」
レン「返事は?」
みく「…………はい。」
今のみくの姿を見て、実は彼女の方が先輩だと分かる人はいるまい。年下にこれでもかと言うほど更正させられている…しかも説教までされて小さくなっている彼女を……。
パシャッ。
突然シャッター音が鳴った。
ひよの「おお~高飛車で有名なあの坂上みくさんが男性に手玉に取られてます!これは人目に付きそうな記事が書けそうです~!タイトルはーそうですね~~。『でゅえる部の部長、年下ご主人様にタジタジ。メイド部への改名は秒読み!?~~イケないみくを、もっと叱って下さい。ご主人様っ!!~~』で行きましょう」
みく「ちょっと何撮ってんのよ!!消しなさいよソレ!!」
ひよの「もちろんお断りします~。記者の報道の自由と権利は、永遠に不滅!正義は我に在り!!ですっ」
ひよのは啖呵を切ると脱兎の如く逃げ出す。
みくは追いかけるが追いつかない。すさまじく速い。しかも小さいから小回りも利いてよけいに辛い。
レン「……どうでもいいが、凄まじいAV臭がするタイトルだな。本当に学校新聞か。実は裏ビデオのタイトルなんじゃね?」
そのAVのタイトルに主役級の扱いで記事にされそうになっていると言うのに、レンは完全に他人ごとである。
みく「変なこと言ってないで手伝いなさいよ!もしこれが出たらアンタも変な目で見られるのよ。いいの!?」
レン「おー……人の目とか興味ないな。それでアンタが危ない趣味に目覚めたってことにすれば、丸く収まるだろ。」
レン(……と言うか、今の写真でそこまで想像出来るやつがいたら、そいつこそ変態の猛者だろ。ただ俯いてるだけの写真だぞ)
レン本人の目つきが悪いことが坂上みくが手玉に取られている感が出ていることは全く気が付いていないレンなのだった。
ひよの「よっし!!レンさんからもお許しが出ました。これで天下御免で記事が書けますよー!!」
みく「あたしの許しは出てないでしょ!!」
ひよの「有名人に肖像権はないのです!」
みく「ふざけんなぁー!!んもうーー!!レン!!お願いだから手伝ってよ!!もう本当にムカつくーー!!レンー!」
レン「………さっきから何でアンタは俺にばかり助けを求めてくるんだ。ハァ…面倒くせえ。」
レンはため息を吐くと、心底めんどくさそうに腰を上げた。
ひよの「むむっ!レンさんが敵に回りますか。しかし私は挫けませんよ!報道の自由のために、私は最後まで戦います!」
レン「レナ、木刀でカメラごとフィルムを叩き壊せ。」
ひよの「………ゑ?」
名前を呼ばれると、室内にはみく、ひよのの入室と同タイミングで入室したレナがレンの方を見た。
レナ「お~レナさんすっかりハブられてるかと思ったのに必殺仕事人役だったんだ。……では、いざ参る!」
どこから出したのか分からない小太刀サイズの木刀を腰の位置に構え、突進するように腰を低くした。
ひよの「ちょ!??待ってくださいレナさん。降参です!!って言うか良いんですか!?レナさんって確か剣道の有段者ですよね!?一般市民に剣向けていいんですか!!」
レナ「う~ん……ダメかな?」
レン「何言ってんだレナ。犯罪ってのは捕まるまではセーフなんだよ。最悪『時効』ってのがあるだろ。」
レナ「おお!そうか、にー頭良い!それじゃあ、改めて…」
ひよの「……こういう考えの人がいるから、わたしは『時効』って廃止した方がいいと思いました、まる。」
レナ「必殺奥義!スターライト・セイバー!!」
ひよの「きぃやあああああああああーー!??」
レナが振りぬいた木刀は、どういう原理かカメラの中のフィルムだけを一刀両断したのであったとさ。
飛娘「なにアル?この状況……??」
食事の席でしたとさ。
さらっとレンの過去を書いておきましたが、ギャンブル系の主人公にはありがちな話しなので、特に深く語る予定はありません。
両親に捨てられたからギャンブルで生きてきた子。とざっくり思っていればいいと思うお。
つまり6歳から自立しているわけですね。キャッ☆レン君大人~
これだけ書いてると、情緒不安定と言うよりは単にコミュ障な気もいたします。
ご意見・感想お待ちどうさまでした