飛娘「…話って何アルか、レンさん。」
レストランでの食事と酒を満喫した一行は、それぞれ学校、家、店など帰路に着いていた。レン・ファムグリットは、連れ出した責任としてしっかり送り届けると言って、王 飛娘と一緒に歩いていた。しかし、目的は他にもある。あの時、みんなの前では聞けなかったことだ。
レン「ああ。いくつか教えて欲しいんだ。たとえば、
飛娘「呆れた人アルね。レンさんは。『大神災』は、六年前に起こった世界的な大災害のことアルよ。干ばつ、落雷、地割れ。それぞれ三柱の神が引き起こした災害は、半年も続いて、地球最後を予感させるほど凄まじいものだったネ。もちろん覚えているハズアル。」
レン「いいや、全然。」
飛娘「それは絶対おかしいアル!大神災の名前を知らないだけならともかく、あの大災害を覚えていないなんて、経験していない人間くらいのものアル。
経験して無いっていうなら、もう異世界にでも居たとしか言いようが無いアル。そのくらい世界規模のものだったアルよ?」
レン「ふーん。つまり要約すると『大神災』とは『三幻神』によって引き起こされた、世界規模の超異常気象ってことか。」
飛娘「……そういうことアル。しかし、本当に何で知らないアルか?」
レン「俺にとって”過去”ってのは、目標乗り越えた後に落ちてる残骸みたいなもんだからな。乗り越えちまったらその次の
飛娘「………変な人。」
レン「よく言われる。さて、大神災は便宜上簡単に聞いたが、こっからは本番だ。アンタと、そしてレナが属している『七皇』についてだ。」
飛娘「それは…」
レン「おい、中国。まず最初に一つ言っておく。」
飛娘「何アルか?あと中国って呼ぶの止めてほしい――」
レン「何か一つでも
飛娘「ひいっ!??や、やっぱりヤンキーだったアルか!!」
レン「さあ、言え。人生で二度目の怖い思いをしたくなけりゃな。今なら洩れなくアメをやる。ほら」
飛娘「う…うう。絶対誰にも秘密アルよ??約束してくれるアルか?」
レン「ああ。考えておく。ほら、指きりだ」
飛娘「………。」
差し出された小指を見て、怯えた表情が和らぎ少しだけ笑顔になった飛娘は、指切りをして、レンを信じてみることにした。
飛娘「……分かったある。でも、ワタシの権限では言えないこともアルある。だから、そこだけは、『言えない』って言うアル。それだけは、許してほしいネ。レン」
レン「……分かった。」
飛娘「あと、もうひとつだけ」
レン「条件が多いな。オイ…」
飛娘「――ワタシのこと、ちゃんと名前で呼んでくださイ。レン」
レン「気が向いたら呼んでやるよ中国」
飛娘「……やっぱりアナタ、嫌いアル。」
その頃、飛娘のバイト先では……。
店長「………どこまでお昼行ったんだろう飛娘ちゃん。……休憩時間、過ぎてるんだけどなあ……。」
飛娘「分かったアル。じゃあこうしましょう。」
歩みを止めないままカードショップへ向かう途中、飛娘は一つ提案をした。飛娘「『七皇』のこと、知りたかったら、ワタシとデュエルするヨロシ」
笑顔でそう言うと、デュエルディスクを構える飛娘。レンも利き手を上げて…。
レン「え、ヤダ。何でそんな回りくどいこと」
そのまま耳を掻き始めた。
飛娘「えぇ…アナタそれでもデュエリストか?剣士は言いたいことは剣で語り、デュエリストはカードで語るアルよ!」
レン「…拳で語るってのは聞いたことあるが、カードで語る……あ、中二病か。大丈夫だぞ。俺にも精霊は視える。最近枕元で恨み事を呟いてくる女がいてな」
飛娘「それ精霊じゃないアル!悪霊ネ!!って言うかアナタそのヒトに何したアル!!」
レン「ああ。一昨日の夜にな。何か物音が聞こえて、すぅ…っと目を覚ますんだよ。傍目には目が開いてるって分からないくらいの大きさで。すると、頭の上の方に……。『よくも晩御飯を残したなあ…自信作だったのにぃ~~。ハンバーグ好きだって言ったじゃないいいぃぃ』って、金髪の女が恨めしそうに座ってるから見なかったことにして二度寝したんだ。」
飛娘「それレナのことアルよね!?間違いなくレナのことアル!!」
レン「そんなはずは無い。その女は髪短めだったし、第一俺はあいつの作ったハンバーグを残した記憶など……あ」
ふと何かを思い出したかのように表情を変えたレンは、段々と表情が青ざめていった。
飛娘「な…何アルか?今の意味ありげな『あ』は!?」
レン「………まさか…いや、しかし…そんな…でも……りぃ……」
飛娘「りぃ?りぃ――何アルね!??」
レン「お、バイト場着いたな。じゃあ俺はこれで。」
飛娘「待つヨロシ!!ここで何も聞かずに帰られたらワタシの方が怖くて寝れないアル!!幽霊は話題にした人間の所に来るって言うアルよ!?」
レン「それで俺の所から消えるなら良いことじゃないか。」
飛娘「全然よく無いアル!!レンさんだけ助かろうなんて、神さまが許してもワタシが許さないアルよ!?今夜おねしょしたらそのパンツ明日顔に叩きつけるあるよ!?」
レン「――私は一向に構わんッッ。」
飛娘「……ゑ」
その変態発言に、飛娘は完全に硬直した。
レン「さて、ジョークが通じてない今のうちに俺は帰るとしよう。
……パンツってのは、きちんと朝シャンした女子が洗濯された状態のものを履いて、スカート或いはズボンから健全にパンチラしているのを鑑賞するからこそ、脳内にメモリーする意味が有るのであって、断じて黄ばんだシミが付いてるのが良いとか、オリモノがついてる臭いのが良いとかって趣味は俺には無いからな。俺はパンツは純白とか縞パンや水玉とかが好きなんだ。デザインが可愛ければ紐パンもアリだがな。パンツをプレゼントするなら、きっちり魅せ方を研究してからにしてくれ。ただ見せるだけのパンツでは布以上の価値は無く、また観賞する意味も無いのだ。例えば中国なら中国なのだからチャイナドレスのスリットから見えそうで見えない微妙なラインで焦らすとか、前の方が短くなってるやつを恥ずかしげにたくし上げてパンモロとか装飾品一つで様々なシチュが……」
飛娘「――一体何言ってるアルかアナタはあああああぁぁぁーー!??」
レン「……ちっ、しまった。無駄口話してる間に覚醒しやがったか。ん?」
パリーン!!
レン「おっと!」
突如カードショップから何かが飛んできて、レンの鼻を掠めた。
飛娘「わっ!!」
更に今度はガラスの破片と共にもっと大きな物が飛娘に向かって飛んで
飛娘「ハイヤー!!」
中国拳法によってあっさり地面に叩き落とされた。
レン「何だ、喧嘩でもしてるのか?カードで語るのが嫌になって拳で語りだしたのか」
飛娘「あわわわ!!大変アル!早く止めないと。」
飛娘は急いで店の中に入って行った。
レン「………。」
レンは飛娘に叩き落とされた何かを確認する。どうやら店の机のようだ。足が折れているわテーブルの面は割れているわで、おそらくもうこの机だったものが元の机の役目を再び果たせる日は来ないだろう。熱心な工作家でも来ない限りは。レンは机を地面に叩き伏せた張本人が向かった方向を見て一言呟く。
レン「
飛娘の言葉に一部疑問を持ちながら、とりあえず中へ入って行った。
不良A「どうなってんだよこの店はヨォ!!?
何パック買っても狙ってるカードが来ねえじゃねえかァ!!細工してんじゃねえのかァ!!」
不良B「おうおう、店長さんよぉオレら客のこと舐めてんじゃねえのォ?」
店長「め、滅相もございません。ただ、お客様がお求めのカードは、通称ノーマルレアという種類のカードでして!」
不良A「ふざけてんなよてめえ!!ノーマルカードにレアもウェルダンもあるかあ!!もう6000円もパック買ってんだぞ!!ストレージに無いってテメエが言うからよお!!大体公式サイトみてもそんなレア度書いてねえぞこの野郎!!」
不良B「オレらお客様を騙そうって魂胆かぁ!!」
世紀末っぽい恰好の不良二人が、店長に因縁を付けていた。
レン(………なんだろう。良く分らないけれど、言い分だけは不良たちの言っていることの方が若干分がある気がする。)
しかし、レン・ファムグリットは初心者故に遊戯王ノーマルレア(レアリティがノーマルなのに封入確率が箱買いしてもワンチャン有るかどうか)と言う概念があることを知らない。故に暴れているのは悪いとはいえ、彼らの怒りも尤ものような気がしていた。
飛娘「そこまでアルお客様!!店内での暴力行為はこの用心棒 王 飛娘が許さないアル!!」
レン(……用心棒…只のカードショップに用心棒……やっぱこの店細工してんじゃね??)
レンの中の疑惑が広がった瞬間である。
レナ「一応ね、N‐レアって、知っている人は常識レベルで知ってることなんだよ。にー」
レン「へーそうなのかー」
少し疑惑が緩和されていく。
レナ「まあ、販売元は販売当初から20年近く経ってる今でもその存在を認めてないんだけどね」
レン「それって詐欺じゃん」
レナ「あはは。でもそれを楽しんでる人もいるから、ね」
レン「……………お前なんでここにいる?」
レナ「ふへ?レナさん達見つけたから入って来たんじゃないの?」
レン「全然。」
ひよの「私もヤジウマですっ!」
レン「……うわ、本当に気付かなかった。」
ひよの「なんだか悪意のある言い方ですねぇ、もっかいヘッドロック行きますか!?大人の魅力や女子力を味わいますか!?」
レン「女子力って書いて物理って意味にするのはそろそろ止めて欲しいもんだな。で?何でいる」
レナ「飛娘ちゃんがスマホ忘れて行っちゃったから、レナさん宅急便。」
レン「速すぎだろ。何で俺達より後に出たハズのお前らが俺達より先に店着いてんだよ。」
レナ「それはきっと愛だよ。愛!みくちゃん先輩は、ワインの飲み過ぎでとても走れそうにないから置いて来ちゃった。」
レン「その愛、少しでもいいから酔っ払いの介抱に向けてやれよ……。」
坂上みく、現在酔いを覚ますために公園ベンチにて休憩中。
みく「うぅ…きもちわるいよぉ……」
レナ「それは無理。だってレナさん回復よりも攻撃職だもんっ。生粋のアタッカーだよ」
満面の笑みで物騒なことを言うレナに対して諦めのため息をつくと、レンは不良の前に出た。
レン「おい、お前ら」
不良A「あァ!?何だてめえオレらに喧嘩売ろうってかあ?」
不良B「オレら
飛娘「レンさん…?」
レン「うるせえ、能書きよりもデッキを出せ。」
デッキを手にして睨みを利かせる。レンは殴ってやった方が楽だが、デュエリストならカードで語るという飛娘の言葉を思い出したのと、ついでに店に迷惑を掛けないようにとの配慮から、デュエルで穏便に追い出すことにした。
不良A「おお~?何だてめえ」
不良B「ハハハハ!!何言ってんだコイツ!!」
レン(ちっ……やっぱ駄目だったか。デュエリストならデュエルで語るって言ってたじゃねえか。中国のヤロウ…。
まあいいや。俺は拳の方がよっぽど流儀だ――)
不良A&B「俺たちにデュエルで勝て――」
一瞬、レンの姿が消えたと思った瞬間。紅い閃光のような何かが視界に入り、同時に不良Aの視界が上下に揺られて真っ黒になった。
‐‐無言のアッパーカット。
不良A「!!?ぶるぅああああああああああああああああああーーー!???」
相手の発声とほぼ同時。一瞬にして不良Aの懐に飛び込んだレンが、高速の右アッパーを顎の先端目掛けて思いっきり叩きこんだのだった。
レン「あん――?」
メキャっ。顎の砕けた音がした。不良Aは数秒間宙に滞空し、重力に従って床に叩きつけられる。
レン「………何だよ。デュエルで良かったのか。よし、殺るか」
不良B「AIBOおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーー!!!!??」
飛娘「ひ…卑怯者がいるアル!!デュエルを挑んで置いてリアルファイトなんて」
ひよの「おお~さすがは『赤髪のレン』さんですね。クリスマスに自身の髪と純白のサンタ服を真っ赤に染めなおした伝説の流血アッパーは健在なんですね!!」
レン「待て。髪はちゃんとカラーリングだ」
飛娘「サンタ服は血に染めたアルか!!?」
レナ「相変わらずキレの良いパンチ。レン君かっこいい~!」
どう見ても人としてあんまりの行動を見て、レナ・ファムグリットは目を輝かせていた。
飛娘「相変わらずお前の
レナ「レナさん好みの男性のタイプは『自分より強くて可愛い男性(ヒト)』だからね!好きな人は別にいるけど~」
満面の笑みで好きなタイプを語るレナ。ジョーク等一片たりとも含まれていないマジな目をしている。
飛娘「アレの何処が可愛いアルかァ!!只の手の速いヤンキーアルっ!!しかも手のつけられない暴走ヤンキーアル!!」
レナ「そこが可愛いんだよっ!!強くて短気で危なっかしくて我が儘で、一人ぼっちじゃ寂しいくせに気を抜くと殺されちゃいそうで。でもでもっ、耳かきとしてあげたりしちゃって無防備に寝ちゃったりして、耳にふ~ってするとビクっ、ってして起きちゃうの。でもやっぱり眠いから寝ちゃうんだよ!!レンくん可愛いよ、レンくん!!」
1人思いっきり盛り上がるレナ・ファムグリットだった。
飛娘「………最後の方は、滅茶苦茶具体的だったアル。あと、お前の愛は、我が子に対する母親のものに近い気がするネ。真っ当な恋するアル。レナ・ファムグリット。」
レナ「レナさんは、好きな時に好きなだけ依存してきて、普段は気にも留めないくせにこっちから離れていこうとすると寄ってくる猫のような人が大好きだよっ。」
ひよの「ぶっちゃけダメンズ好きですね!ルックス良しでスタイル良し。料理が得意で包容力大。世の中のダメな男が群がりそうな女性です~。メモメモ」
レナ「うん。後はレナさんに勝てるかどうかだね~。天国か地獄か。いざ勝負!だよっ」
ひよの「……天才剣士が何か言ってる。やっぱりそう美味い話は転がって無いんですね。」
レナ「アハハっ。どっちみち、レナさん好きな人いるから同じことだけどね~」
ひよの「では!その辺のお話も聞かせていただきましょう!!」
レン(………女子が三人集まると、本気でやかましいな。)
レン「さてと、準備は良いか。そこの……なんか世紀末ッぽい恰好のやつ。」
不良B「く…っ。」
不良B(『赤髪のレン』…聞いたことがあるぜ。たしか、クリスマス・イヴに街に蔓延るデート中のリア獣を根こそぎ刈りつくし、その髪と、純白のサンタ服、そして拳を血で真っ赤に染めた伝説のバーサーカー!!)
レン「………。」
レン(なんだろう、ドンドン俺のイメージがオカシイことになっていってる気がするんだが……俺の被害妄想か?)
お互いに睨み合いが続き、心中では戦いのイメージが展開されていく。
不良B(だが、赤髪のレンがデュエルに精通してるって話は聞かねえ……よし)
レン(そういえば、昨日のデュエルじゃデッキのモンスターを全く使えなかったんだったな。よし)
不良B(喧嘩じゃ勝てないがデュエルなら勝てる!!)
レン(モンスターを展開しまくって物理で殴り続ける。)
思考がまとまった二人のデュエリストは、互いにデュエルディスクを構えた。
レン・不良B「――デュエル!!!」
良い子のみんなはゲームの前と後にリアルファイトしちゃダメだよー。お兄さんとの約束だ。
途中なら良いんですね?とか言った奴出てこい