俺の転生日記~なんでいったい俺なんだ~ 作:やわらかチキンカツ
落ち着こう,そして順番を変えよう。
何故かって? 胡散臭い『俺の日記』が更新されているからさ。
ったく,これから現状をわかりやすく整理するところだってのにさ。
せっかく母親にもらったクレヨンとカレンダーが無駄になっちまう。
さぁてはてさて内容は……うれしくない内容だな。
……うん,やっぱり覚えていない。
俺の灰色の脳細胞の中にはアリスを見た記憶はないぞ。
『死の魔人アリス』。
とあるゲームシリーズで根強い人気を誇るロリコン誅殺用金髪幼女だ。
赤いおじさんと黒いおじさんに復活させられた死体というのが最初の設定だったはず。
名台詞『死んでくれる?』にハートと奪われゲームオーバーを叩きつけられたプレーヤーも多かったんじゃないか。
そんなアリスに会ったとな。
何のために? 切り札を持つために。
切り札……切り札ねぇ。
不安を取り除くための切り札だと,『俺の日記』にはそう書き残されている。
う~む、わかんねぇな。
とはいえここに書いてあることは俺が実践してみようかと頭に浮かんだことなのは間違いないわけで。
……ヤルか。
実のところアリスを好きに呼び出せられるようになっておくのはメリットがあるわけだし。
逆にデメリットは――いや、色々な確認もできるわけであるし。
男は度胸! いっちょやってみるもんさ!
もちろんもちろん、まだ『俺の日記』を信用しきってるわけじゃないが準備も欠かさずやっておこう。
何事もそうだが事前準備が結果を作る。
俺の頭で考えて実践出来る範囲はやっておこうか。
カレンダーの裏にメッセージでも書いておくか。
名台詞をいきなり言われても困る。
なんて書くか……アリスちゃんあそびましょ、とかでいいのか?
キャッチーなフレーズを考えねば。
しかし……どうするんだろうな。
二次創作とかだったらどいつもこいつも簡単そうに魔力やら気やら特殊能力やら使ってるが,どーやってたんだろうな。
あーっ! こんなことだったら修行描写とか読み込んでおくべきだったぜ!
腹か? 腹に力を込めるのか?
……ってあれ?
俺は屋内にいる,うん,間違いなく俺の部屋だ。
なのに風が吹いてる。びゅーびゅー,そりゃびゅーっと吹いてる。
ちっちゃい台風が部屋の中にある感じで、持ってきたカレンダーが暴れまわってる。
うおっ、書いたやつだけは飛ばされないようにしねぇと。
そしてどんっと胸を打つ感覚。
早鐘みたいに打ちまくる心臓――許容回数越えてるんじゃないのかと疑いたくなるくらいだね。
思わず目を覆って,徐々に開けた視界に移ったのは金色の髪に青色の服。
整った顔立ちがゆっくり俺の方を向く。
肌は病的なほど白くて,その眼は馬鹿みたいに深く暗い。
やべっ,眼が合った。
カレンダーだ! 事前準備を生かす時が来たぞ!
「ねぇねぇ,どこか知っているにおいのお兄ちゃん,あのねー,お兄ちゃん……」
背筋が凍る。
唇が渇いて喉の奥もからっから。
つまり声が出ない。
でも見て! 俺の努力の証をさ!
「えーなに? 私と遊んでくれるの?」
そうそう! よーく気づいた!
まぁ今の年齢だったらちょっとアリスのほうがお姉さんだが、そんなことはどっちでもいい!
「じゃあねー、えっとねー」
時間を作るのは大事だな。
だんだん声が出るような気がしてきた。
覚悟を決めろよ俺、幼稚園児な身体はガタガタ震えているが中に入った精神はアリスよりお兄ちゃんなんだ!
いけるぜ俺、がんばれ俺! 早く話しかけるんだ俺!
「死んでくれる?」
◆◇◆◇◆
~俺の日記~
タイトル:かわいいあの子とファーストコンタクト(二回目)
時期:現状を整理した幼稚園児
きょうはじぶんのげんじょうをせいりしました。
ふあんがほんとうにならないように,いっしょうけんめいかんがえました。
でも,いまのじぶんのちしきではふあんがかいしょうされないことがわかりました。
だから,もしまきこまれたらいやなので,きりふだをもつことにしました。
かのじょはよそうしていたよりもずっとちいさくてかわいかったです。
おてがみをだしたらいっしょにあそんでくれるといわれました。
かのじょのめいぜりふをきけてよかったです。
○先生のコメント
恋文というものは古今東西素晴らしく恋愛の発展に寄与してきたツールです。青春時代の甘酸っぱさを丸々詰め込み表現することは、きっと君はもちろん女性にもどきどき感を与えられることでしょう。先生も何度もお世話になりました、本当ですよ?
前回の際に女性はどんなに幼くても女性といったことに訂正は加えません。しかし彼女は幼いからこそ、きっと大人になっていたとしてもストレートに気持ちは伝えられてこそ分かり合えると先生は思います。
よって今回は君を信じる面を含めて赤点とさせていただきました。この赤点を次なる一歩への踏み台として、さらに先へと進んでくれると厳しく指導したかいがあったと、指導してもらえてよかったと君自身感じることでしょう。
これからの君の人生が幸多く,たくさんの人々から愛され尊敬されることを願います。
◆◇◆◇◆
落ち着こう,そして順番を変えよう。
何故かって? 胡散臭い『俺の日記』が更新されているからさ。
ったく,これから現状をわかりやすく整理するところだってのにさ。
せっかく母親にもらったクレヨンとカレンダーが無駄になっちまう。
さぁてはてさて内容は……うれしくない内容だな。
……うん,やっぱり覚えていない。
俺の灰色の脳細胞の中にはアリスを見た記憶はないぞ。
しかも二回,信用するなら会ってるらしいね。
しっかり名台詞を受けてるとか,考えたくもないわ。
う~む、わかんねぇな。
とはいえここに書いてあることは俺が実践してみようかと頭に浮かんだことなのは間違いないわけで。
……ヤルか。
実のところアリスを好きに呼び出せられるようになっておくのはメリットがあるわけだ。
男は度胸! いっちょやってみるもんさ!
もちろんもちろん、まだ『俺の日記』を信用しきってるわけじゃないが準備も欠かさずやっておこう。
何事もそうだが事前準備が結果を作る。
俺の頭で考えて実践出来る範囲はやっておこうか。
カレンダーの裏にメッセージでも書いておくか。
名台詞をいきなり言われても困る。
なんて書くか……アリスちゃんあそびましょ、とかでいいのか?
キャッチーなフレーズを考えねば。
逆にデメリットは――いや、それも直視しておこう。
問題は後送りにしても何も解決しないわけだ。
『俺の日記』のデメリット――それは俺自身がループしているかもしれないって可能性。
俺には平穏無事に過ごした記憶もアリスに会った記憶もない。
それはこれから俺がやりたいと思っている未来の可能性で、可能性であるだけで過ごした現実ではない。
なのにもしかしたら……俺は何度も何度も時間を繰り返しているかもしれないわけで。
うわー、考えるとすげー気持ち悪い話だな。
覚えがなことはそう考えると良い話なのか?
……止めよ。
考えれば考えるほど鬱になる。
あくまでループしてるのかもなー、程度の軽い感じですし? そこまで本気で無茶苦茶が起きてるとは思ってませんし?
いま大事なのはアリスをどうやって呼ぶかですよ、うん。
一歩一歩と確実なとこからクリアしていくのが人生の秘訣ですよ、はい。
しかし……どうするんだろうな。
二次創作とかだったらどいつもこいつも簡単そうに魔力やら気やら特殊能力やら使ってたが,どーやってたんだろうな。
あーっ! こんなことだったら修行描写とか読み込んでおくべきだったぜ!
腹か? 腹に力を込めるのか?
……ってあれ?
俺は屋内にいる,うん,間違いなく俺の部屋だ。
なのに風が吹いてる。びゅーびゅー,そりゃびゅーっと吹いてる。
ちっちゃい台風が部屋の中にある感じで、持ってきたカレンダーが暴れまわってる。
うおっ、書いたやつだけは飛ばされないようにしねぇと。
そしてどんっと胸を打つ感覚。
早鐘みたいに打ちまくる心臓――許容回数越えてるんじゃないのかと疑いたくなるくらいだね。
思わず目を覆って,徐々に開けた視界に移ったのは金色の髪に青色の服。
整った顔立ちがゆっくり俺の方を向く。
肌は病的なほど白くて,その眼は馬鹿みたいに深く暗い。
やべっ,眼が合った。
カレンダーだ! 事前準備を生かす時が来たぞ!
「ねぇねぇ,どこか知っているにおいのお兄ちゃん,あのねー,お兄ちゃん……お兄ちゃんもしかして……」
背筋が凍る。
唇が渇いて喉の奥もからっから。
つまり声が出ない。
でも見て! 俺の努力の証をさ!
「また私と遊んでくれるの探偵さん!」
そうそう! よーく気づいた!
まぁ今の年齢だったらちょっとアリスのほうがお姉さんだが、そんなことはどっちでもいい――What? 探偵さん? 誰が? 俺が?
「ねぇねぇ探偵さん、探偵さんはどうしてちいさくなってるの?」
「それは何を隠そう幼稚園児だからだ!」
「幼稚園児! 聞いたことないけどすごそうだね探偵さん!」
はっ! 思わずしゃべってしまってる。
良いことなのか? 結果おっけいに違いない!
きらきらした目で見つめてくるアリスはもう幼稚園の幼児と一緒で怖くないぜ!
「幼稚園児ってなにするの?」
「あ~遊んだり、お遊戯したり、お昼寝したり?」
実は幼稚園、意外に楽しかったりする。
いやー何も考えずに遊べるのは素敵な時間!
精神が肉体に引っ張られてるのか、冷静に考えていないときはお遊戯にもつい熱中してしまうものなのさ。
「いいないいな、私もいきたいな。私もお友だちと遊びたい」
いやいやそれはまずくね?
うん、まずい。
アリスのいうお友だちってずっと遊べるゾンビさんのことだよな……
つまりどういうことだってばよ!
アリスを幼稚園に連れて行く→みんなとお友達(意味深)になる→警察沙汰→みんなとお友達(意味深)になる→ロッポンギ再現。
……やべーよ、魔法にかかわるかかわらない以前にやべーよ。
テロも真っ青、はだしで逃げ出すパンデミックがっ!
よーし、落ち着け―。
COOLだ、COOLになるんだ俺。
幸いアリスは俺に敵意は持っていないみたいだ。
そりゃそうだ、転生の時には色々なシリーズで仲魔にしていたアリスと一緒に遊びたいって願ったのがひとつの特典なんだからな。
……自分で言うとすごい悲しくなるわ、これ。
いま目の前で首かしげて楽しそうに笑ってるアリスの感情も、もしかしたら俺の夢で願った欲望で植え付けてしまって生まれたと思うと……
「どーしたの? おなか痛いの?」
純粋なこの子が、この子の心配がすごい胃にくるね。
びっくりするくらい胸のあたりがずきずきする。
「わぷっ……探偵さん?」
気づけばアリスに抱き着いていた。
大丈夫だよなこの絵? だって俺幼稚園児だし、アリスは今の俺よりちょっと大きいし。
「俺がいっぱい遊ぶからさ、ちょっとの間だけ一緒に遊ぶの俺だけで我慢してくれるか?」
「いいよー、探偵さんと遊べるのが一番うれしいし」
いい子や! おじさん涙で前が見られませんよ!
大事にしよー、アリスがいるのはもう現実なわけだし、俺の精一杯で大事にしよう。
普通に生きていく以上に、俺のわがままで生み出してしまったアリスを幸せにしてやろう。
ちなみにアリスが普通に幼稚園に行くのはどっちにしても無理だった。
どうにもどたばた暴れていたようで、様子を見に来た母親にアリスは見えなかったからだ。
そういえば何かのシリーズでは屍鬼にカテゴライズされてたんだよな。
幽霊に近い存在なのが今のアリスなのだろう。
アリス本人も俺以外に気づいてもらえないことが分かったみたいで、幼稚園に行きたいってことも二、三日過ぎた後には忘れていたようだ。
ふわふわ俺の周りを浮きながら、たまにどこかに飛んで行って、自由に過ごしている。
まぁ笑顔なので良しとしよう。話しかけていると若干周りから変な目で見られるが……
アリスが初対面の時から俺に懐いてくれていた理由もわかった。
なんでも前世で色々やったシリーズの主人公が、アリスにとっては俺の分身だからなんだと。
ちなみに俺に対する呼び方だが、なんとくだよー、との回答をいただいた。
書生が帝都で活躍するシリーズを一番やりこんでいたことが、何か関係あるのだろうか。
――アリス――
じゃんけんしよー!
「じゃんけんマスターの実力を見せる時が来たようだな!」
鬼ごっこしよー!
「浮かぶのは無しな、走って追いかけること――って聞いてたアリス?」
にらめっこしよー!
「こうか? こうかっ!? ふぉごくぁっ!」
ご本を読もー!
「むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました」
お友だちつくりにいこ―!
「それはまた後で、絶対見つけてやるからまた後でな」
楽しいな、楽しいな。
探偵さんは私が言えばいつでも遊んでくれる。
探偵さんのおうちの裏山にある,壊れたお堂がいつもの遊び場。
どうして探偵さんが小さくなってるのかはわかんない。
でもいいの。探偵さんはずっと一緒に遊んでくれるって約束したから。
お友達をたくさんは作らせてくれないけど、一緒に遊べるお友だちも探してくれるって約束もした。
赤おじさんと黒おじさんはいないけど、私さみしくないよ。
でも、探偵さんがずーっと、ずーっと、私と一緒に遊べるようになったら……また遊びに行くから。
待っててね、お友達たくさん連れて行くからね。
◆◇◆◇◆
~俺の日記~
タイトル:お遊戯はアリスと一緒に
時期:幼稚園の年長さんになった頃
きょうはアリスといっしょにあそびました。
おにごっこをしたりそとであそんで、えほんをよんだりなかであそびました。
アリスはわがままで,いっしょにここにいてしまいます。
だから,アリスがしあわせになれるようにいっしょうけんめいがんばりたいです。
でもアリスのわがままももうちょっとなくなったらいいなとおもいます。
○先生のコメント
異性と遊ぶことは先生、とてもいいことだと思っています。相手の気持ちを思いやることで自分自身も成長し、社会に適合した人間に育っていけるからです。この調子でいけばいずれ先生のような大人の気持ちもきちんと理解して、素晴らしい人生を歩いて行けるようになると期待で今から胸が膨らみます。
今回は文句なしの点数です。優、良、可、不可の評価基準ならば先生すぐに優と書きたいところです。次回もこの度と同じよう、先生を喜ばせてくれるよう、心の赴くままに突き進んでほしいと思います。それと余計なおせっかいかもしれませんが、女の子にはまめに接してあげないといけませんよ(笑)。
これからの君の人生が幸多く,たくさんの人々から愛され尊敬されることを願います。