「――はっはっは!この学園は俺のものだ!」
ロットンは高笑いしながら夕闇に染まるノース校を歩く。
周囲には多くの生徒をはべらせているため、その様子はまるで大名行列のようだ。
ノース校の生徒は力に従う。
万丈目が居ない今、1ターン5キルと言う実力を見せた彼は間違いなくこの学園の支配者であった。
栞と万丈目のデッキを解体し、カードを生徒達に配ったのも大きかった。
飴と鞭、両方あってこそ人は従う。彼はそのシンプルな理念を信奉していた。
「――チッ、万丈目さんさえ居ればあんなことには」
とはいえその支配に懐疑的なものは多い。
生徒の一人がパブの入り口で小さく舌打ちをする。
直接の対決もないままにトップに居座った彼を卑怯者と考えているのだ。
「――おい、もう一回言ってみろよ」
「……ひっ!?ロットン!?」
ロットンが彼の座っている椅子に蹴りを入れる。
それだけで、相手は蛇に睨まれた蛙のように萎縮する。
口だけは大きく、彼に従わない愚か者。
そういう奴に分からせる作業は面倒だが、同時に愉快でもある。
「トップに立ちたいんだったら俺を倒せばいいんだぜ?」
「……ヒ、ヒィ……!?」
「なあ?」
ロットンが取り出したのは、栞の足に結んでいたロープと同じもの。
逃げようとする生徒を他の取り巻きたちが押さえつける。
「ホラ、チャンスだぜえ?目の前に俺が居るんだから」
ロープを結び終えたロットンが歯を見せて笑う。
これでデュエルが終わるまで逃げることは許されない。
「どうした?もうロットンさんを前に萎縮しちまったのかよ?」
「陰口しか叩けないとは本当に雑魚だなお前は!」
「――く、くそっ……!」
観念したようにディスクを取り出す生徒。
だが、勝敗は既に見えている。
デュエルとは精神の戦い、すでに折れた剣では戦うことすらできない。
彼の敗北は揺らぐことがなく、今日もまた犠牲者が生まれる――そのはずだった。
「……おい、何か聞こえねえか?」
「そういえば――」
最初にその異変に気づいたのは、彼の取り巻きの一人だった。
微かだが、聞きなれた音色。
さび付き、哀愁を帯びた音。
「この音色は、まさか――!」
「いや、でもあの人はデッキを奪われ氷原に叩きだされたはず!」
「こんなに早く40枚のカードを集めなおした!?そんな馬鹿な話があるわけない!」
音色が近づくにつれ、生徒たちが顔を見合わせる。
そして、彼らは夕日を背に歩く彼の姿を発見した。
「来た……来た……!」
「おい、マジかよ……!」
「万丈目さん……!」
ロットンは獲物を放し、そちらを振り向く。
既にデュエルが出来るほどに近づいた彼は、ハーモニカから口を離し、にやりと笑った。
「地獄の底から、帰ってきたぜ――!貴様ら!叫べ俺の名を!――1!」
「「十!」」
「「「100!!」」」
「「「「「壱千!!!」」」」」
「万丈目サンダー!」
「「「「「「サンダー!!」」」」」」
彼が指を高く掲げると、みなが熱狂したように叫ぶ。
人を従えるのは力、そして飴。
だが、もう一つの要素がある。それは、カリスマと呼ばれる天性の力だ。
――
「目覚めないのか――」
気絶したままの栞を門の前――焚き火の当たる場所に寝かせ、万丈目は立ち上がる。
体温が低く、目をひたりと閉じたその姿は屍のようで、微かな呼吸音がなければ彼女が生きていることを彼は信じられなかっただろう。
手に握られているのは38枚になったデッキ。
真に不本意だが《おジャマイエロー》が入り、そしてもう一枚のカードが入れば40枚となる数字だ。
「ふう――あいつの精霊は居ないか」
「何々?秘密の話?」
おジャマイエローのセリフを無視しつつ周囲を見渡す。
彼女の精霊――《エルシャドールミドラーシュ》の姿は影も形もない。
デュエルした後から、どこかに消えてしまったのだ。
とはいえ、今は好都合である。
「本当は、使いたくなかったが……」
万丈目は門の近く、唯一凍り付いていない地面を掘り始める。
数分後、埋められていた小箱が彼の手に握られていた。
蓋を開けると、中から出てきたのは一枚のカード。
「今は、お前の持ち主のために力を振るいたい。だから、手伝ってくれ」
それは、かつて別れる前に手に入れてしまったカード。
ノース校に入る前、彼女に認められるまで自らの力で戦うと誓い、封印した龍。
独力で遊崎栞を打倒するそのときまで、使うつもりはなかった。
「――《光と闇の竜》」
カードに呼びかけると、その竜は彼の前に現れた。
何処までも清純で、邪悪な竜の精霊。
一声の咆哮とともに、かの竜は彼に従う。
「よし、これで40枚だ」
38枚の上に、《おジャマイエロー》と《光と闇の竜》を乗せ、彼はデッキを完成させる。
不満の残る構築だが、それはデッキを取り戻す中で解消されるはずだ。
「――俺を、満足させてくれよ――!」
門の前に立ち、デッキを掲げる。
ゆっくりと開かれる門を前に、彼は凶暴な笑みを浮かべていた。
――
「お前ら、やっちまえ!」
「はっ!?どうせ寄せ集めデッキだろ!オレ――佐々木が相手してやる!」
ロットンの取り巻きである生徒の一人、佐々木が万丈目の前に躍り出る。
解体された万丈目のデッキの一部を手にしたのだ。以前と比べてデッキは格段に強化されている。
相手が寄せ集めデッキなら彼が負ける道理はない。
「かかって来い!」
万丈目がディスクを構える。
その口元には笑みが浮かんでいた。
「デュエル!」
佐々木
LP4000
万丈目
LP4000
「オレの先攻だ!ドロー!オレは《二重召喚》を発動!このターン二回通常召喚が出来るようにするぜ!――《ミンゲイドラゴン》を召喚し、即座に生贄にする。このモンスターは二体分の生贄になるので高レベルモンスターが呼べるぜ!《オッドアイズ・ドラゴン》を通常召喚!」
オッドアイズ・ドラゴン
ATK2500 DEF2000
「はっ、俺のカードか」
召喚された双色の眼を持つ竜を見て、万丈目は不機嫌そうに鼻を鳴らした。
その様子を見て、相手はにやりと笑う。
「今はオレのカードだ!オレはこれでターンエンド!さあ、万丈目、お前のカードにやられて負けるんだな!」
「誰が負けるか!俺のターン、ドロー!LPを800払って《魔の試着部屋》を発動!デッキトップから四枚をめくり、そのうちレベル3以下の通常モンスターを特殊召喚する!――現れろ雑魚共!《おジャマイエロー》《マッドロブスター》《ハウンドドラゴン》を特殊召喚!」
万丈目
LP4000→3200
おジャマイエロー
ATK0 DEF1000
マッドロブスター
ATK1700 DEF1000
ハウンドドラゴン
ATK1700 DEF0
「はっ!本当に雑魚だらけじゃねえか!特にそこの黄色いのとか!」
「酷いわっ!?」
「確かに、こいつらはある意味救いようのない雑魚カードだ。だがな貴様!そういうカードでもこの万丈目さんの手にかかればキーカードへと変貌する!装備魔法《団結の力》と《下克上の首飾り》を《マッドロブスター》に装備する!そしてバトルフェイズ、《マッドロブスター》で攻撃だ!」
マッドロブスター
ATK1700→4100→6100
佐々木
LP4000→400
「攻撃力6100だと!?」
「《団結の力》は俺の場のモンスターの数だけ攻撃力を800アップする装備魔法。そして《下克上の首飾り》はレベルの差×500だけ攻撃力をアップする装備魔法だ。雑魚たちの連携によってこの力は生み出される!たとえ攻撃力0の通常モンスターでも居るだけでも800点分のゲインを稼ぐ!」
「くっ……!」
「これが万丈目サンダーの華麗なるタクティクスだ!《ハウンドドラゴン》でダイレクトアタック!」
「ぐわああああっ!?」
佐々木
LP400→0
「さあ、次はどいつだ!」
倒れた佐々木のデッキから素早く自身のカードを回収して万丈目は叫ぶ。
その言葉に応じるように出てきたのは多くの生徒。
「次はオレ――佐藤が相手してやる!」
「かかって来い!」
「さっきのはマグレだって証明してやるぜ!」
「デュエル!」
佐藤
LP4000
万丈目
LP4000
「オレの先攻――ドロー!オレは《未来融合‐フューチャーフュージョン》を発動!《FGD》を指定し、デッキから《暗黒竜-コラプサーペント》と《ダイヤモンドドラゴン》《エメラルドドラゴン》《ミンゲイドラゴン》《オッドアイズセイバードラゴン》を墓地に送る!さらに墓地の《暗黒竜コラプサーペント》を除外して《輝白竜‐ワイバースター》を特殊召喚!」
輝白竜‐ワイバースター
ATK1700 DEF1800
「さらに《輝白竜‐ワイバースター》を生贄に《ストロング・ウィンドドラゴン》を生贄召喚!」
ストロング・ウィンド・ドラゴン
ATK2400→3250 DEF1000
「《龍の鏡》を発動して墓地の五体の龍を融合!――現れろ《FGD》!さらに手札を一枚捨てて《D・D・R》を発動!《ダイヤモンドドラゴン》を特殊召喚!--オレはこれでターンエンド。見たか!これがオレのタクティクスだ!」
FGD
ATK5000 DEF5000
ダイヤモンドドラゴン
ATK2100 DEF2800
1ターンで並んだのは三体の巨竜。
かつての万丈目のようなタクティクスに周囲の生徒たちが驚愕の声を上げる。
「ふっ、俺のタクティクスを表面上なぞっただけだ!俺のターン、ドロー!」
だが、万丈目は揺らがない。
かつて自分が生み出した戦術であれば突破方法も自分の中にある。
「俺は《増援》を使用し《重装武者ベン・ケイ》をサーチ。そしてそのまま召喚!そして《流星の弓‐シール》を装備する!このカードは直接攻撃を可能にするかわり攻撃力を1000下げる装備魔法だ!」
重装武者・ベン・ケイ
ATK500→0 DEF800
「弱小モンスターにさらに弱体化装備魔法?直接攻撃できても攻撃力0じゃ意味はない!気でも狂ったのか!?」
「アニキ!?ほんとに大丈夫!?」
「黙ってみていろ!俺はさらに攻撃力を1000上げる《デーモンの斧》と《魔道師の力》を装備!このカードは自分フィールド上の魔法・トラップの数×500だけ攻撃力を上昇させるカード。現在《デーモンの斧》《流星の弓・シール》そしてこのカードが存在するため攻撃力は1500上昇!」
重装武者ベン・ケイ
ATK500→2000→3000→2000
「――バトルフェイズ!《重装武者ベン・ケイ》で攻撃!ダイレクトアタック!」
「けっ!たとえ攻撃できたとしても次のターン、その弱小モンスターじゃオレの攻撃は防げない!終わったな、万丈目!」
「《重装武者ベン・ケイ》は装備カードの数だけ追加攻撃できる!つまり――」
「合計四回のダイレクトアタックだとぉ!?」
「さあ、これで終わりだ!『万丈目スラッシュ』4連打ァ!」
「うあぁぁぁぁっ!?」
佐藤
LP4000→0
いくら圧倒的な布陣でも、無視されれば全く意味はない。
龍の間をすり抜けた矢が佐藤の身体に突き刺さる。
「さあ、次の相手だ!」
「――!本人のカードをぶつけても意味はないな。今度は私、坂上が相手だ!」
「ふんっ!どっちにしろ自身のカードを使わない奴に万丈目サンダーが負けるか!」
「デュエル!」
坂上
LP4000
万丈目
LP4000
「私の先攻!ドロー!……私は《リチュアの儀水鏡》を発動!《イビリチュア・ジールギガス》を生贄に《イビリチュア・ジールギガス》を召喚!さらに墓地の《リチュアの儀水鏡》をデッキに戻し《イビリチュア・ジールギガス》を手札に加える。さらに《シャドウ・リチュア》を墓地に送り《リチュアの儀水鏡》を手札にサーチ!再び《リチュアの儀水鏡》を発動!手札の《ヴィジョン・リチュア》を生贄に《イビリチュア・ジールギガス》を召喚!」
イビリチュア・ジールギガス
ATK3200 DEF0
黒い巨人が万丈目の前に二体並ぶ。
栞が使用する【リチュア】のエースモンスターだ。
かつて万丈目を二回破った少女が使用したカード。
その事実を知っているロットンと坂上はにやりと笑む。
「私はこれでターンエンドだ!」
「――俺のターン!ドロー!……俺はLPを800払い《魔の試着部屋》を発動!4枚をめくりレベル3以下の通常モンスターを特殊召喚!……めくったのは《強欲な壷》《リビングデットの呼び声》《おジャマ・イエロー》《ハウンド・ドラゴン》だ!」
「またまた登場!イエロー!」
「――この二体を生贄に《オッドアイズドラゴン》を召喚する!さらに《メテオ・ストライク》を装備!貫通能力を付与する」
「ちょっと、アニキ!?オイラの出番それだけ!?」
万丈目
LP4000→3200
オッドアイズ・ドラゴン
ATK2500 DEF2000
自らの精霊の抗議を聞き流しつつ万丈目は取り返したばかりのカードを召喚する。
双色の瞳を持つ龍が高らかに吼える。
「ふっ!早速取り返したカードを使ったか!だが攻撃力はこの《イビリチュア・ジールギガス》には届かない!その装備カードは無駄に終わったな」
「――バトルフェイズ!《月の書》を発動して《イビリチュア・ジールギガス》を裏守備表示にする!《オッドアイズ・ドラゴン》!裏守備になった《イビリチュア・ジールギガス》を攻撃しろ!『スパイラルフレイム』!」
「何っ!?」
《イビリチュア・ジールギガス》は攻撃力こそ高いがその防御力は0、なすすべなく炎に呑み込まれる。
坂上
LP4000→1500
「――さらに《オッドアイズドラゴン》の効果発動!破壊したモンスターの攻撃力、その半分のダメージを相手に与える!……ただそのカードを手に入れただけの人間が!その担い手に及ぶべくもない!」
「ぐあああああああっ!?」
坂上
LP1500→0
「さあ、次の奴は居ないのか!」
周囲の生徒達を見回して万丈目は叫ぶ。
全てのカードを取り返すまで、そしてロットンを倒すまで彼の戦いは止まらない。
(まだだ、お前の出番はこんなところじゃない……!)
彼の手札の中には《光と闇の竜》が握られていた。
――
「く……」
ロットンは静かに後ずさりする。
万丈目によって部下が又一人、一人と倒れ、既に残されたのはたった一人。
そいつも今現在――
「僕のまだLPは2000残っている!」
「手札を全て捨てて速攻魔法発動!《狂戦士の魂》!――さあ行くぞ!《モリンフェン》!《レオ・ウィザード》!《おジャマイエロー》!《シーホース》!」
「ぎゃぁぁぁぁあ!?」
「さあ!カードを返して貰うぞ!」
異形の悪魔によって吹き飛ばされる。
残されたのは、ロットン唯一人。
「サンダー!」
「「万丈目サンダー!」」
そして、周囲の生徒は万丈目コールを続けている。
彼は追い詰められていた。
「さあ、残るはお前だけだ!ロットン!」
「チッ!デュエルごっこはここまでだ!」
ロットンは門へと向けて走り出す。
彼が選んだのは逃走だった。
デュエルで敗北しなければ負けではない。そして、夕刻に挑まれなければデュエルは強制ではなくなる。
いずれ打倒のチャンスは訪れる。それまでは氷原に身を隠して――!
「――はにゃっ!?」
「おい!前を見て歩けこのアマ!……っ!?」
「丁度、よかったですね」
もう少しで門、と言うところで彼は一人の生徒とぶつかり、彼は怒鳴る。
本校オシリスレッド特有、赤い制服の女子生徒。長い前髪と、
彼女はにっこりと笑っていた。
「――デュエル、しませんか?」
「……遊崎……栞……!」
夕刻のデュエル申し込み。
断ることが出来ないノース校のルール。
「起きたのか……遅かったな。カードはこの万丈目さんが取り戻しておいたぞ」
「ありがとう御座います」
いつの間にか追いついていた万丈目が彼女にカードを手渡すと、彼女はそれをデッキケースへと仕舞う。
周囲には再び多くの生徒が集まっていた。
彼にもう逃げ場は無くなっていた。
「1ターンで決めろよ?」
「ふざけんじゃねえ!やられるのは手前ェの方だ!」
「デュエル!」
万丈目の冗談めかした問いに、栞が静かに頷く。
日の沈みかけたノース校に、決闘の言葉が響き渡った。
――
「俺のターン、ドロー!《天使の施し》で三枚ドローして二枚捨て、さらに《強欲な壷》で2ドロー!……お前を先に終わらせてやる!《ガトリングオーガ》を召喚!」
「――まずいっ!?」
ガトリングオーガ
ATK800 DEF800
ガトリング砲を構えた鬼が召喚される。
ロットンが好んで使用し、先攻ワンキルをいともたやすく成し遂げるそのモンスターの登場に橘は思わず叫ぶ。その能力によって彼はロットンに挑むことを躊躇していたのだ。
「――さあ、お前を終わらせてやる!カードを5枚セット!」
「私は《エフェクトヴェーラー》を手札から捨て効果を発動します。このカードは相手メインフェイズに捨てることで相手モンスター1体の効果をエンドフェイズまで無効化します」
「――ちっ!俺の必殺ワンターンキルが破られるだと!?だが、この程度では終わらねえ!俺は《ガトリングオーガ》を生贄にし《ビックキャノンオーガ》を特殊召喚!このカードは《フルアーマーオーガ》が墓地に居るとき《ガトリングオーガ》を生贄にすることで特殊召喚できる!――俺はこれでターンエンドだ」
ビッグキャノンオーガ
ATK2400 DEF2400
「失敗したときの策まであるのか……!」
巨大な砲を構えた鬼が場に召喚される。
ガトリングオーガは強力だが相手ターンに場に居た場合唯の弱小モンスターに成り下がる。
それを防ぐタクティクスに橘は舌を巻いた。
「私のターン、ドロー。……私は《影霊衣の降魔鏡》を発動、手札の《影霊衣の術師・シュリット》を生贄に《グングニールの影霊衣》を儀式召喚します。さらに生贄にされた《影霊衣の術師・シュリット》の効果でデッキから私の手札に《ブリューナクの影霊衣》を加えます」
グングニールの影霊衣
ATK2500 DEF1700
彼女の場に現れたのは、長い赤髪の美しい女性。
蒼い鎧を纏った彼女は鋭い瞳でロットンを睨んでいた。
「さらに《E・HEROバブルマン》を通常召喚します。そして速攻魔法《マスクチェンジ》を発動し即座に変身――《M・HEROアシッド》とします。《M・HEROアシッド》の効果発動。このカードが特殊召喚に成功したとき、相手の伏せカードを全て破壊し、相手のモンスターの攻撃力を300下げます」
「何だと!?」
M・HEROアシッド
ATK2600 DEF2100
次に現れたのは水の英雄。
その指先から放たれた酸が、彼の伏せカード――銃弾を悉く砕き散らす。
「だが、それにチェーンして《メタルコート》を墓地に送り効果発動!このターン《ビッグキャノンオーガ》は戦闘で破壊されない!」
「――《グングニールの影霊衣》の効果を発動します。手札の《影霊衣の舞姫》を墓地に送り、場のカード――《ビッグキャノンオーガ》を破壊します」
一瞬金属の煌きが鬼を覆うが、赤髪の女性が放った魔力によりその防御ごと貫かれ、弾ける。
一歩、後ずさるロットン。
「バトルフェイズ、二体のモンスターでダイレクトアタックします」
「くっ……」
全ての策を破壊された彼に、逃げ場は無くなっていた。
ロットン
LP4000→0
「すげえ……」
その様子を橘は呆然と眺めていた。
栞や万丈目、ロットンはワンターンキルを当然のように決める。
それを支えるのは構築、プレイングセンス。
「俺も、あんなドローパワーがあれば……!」
そして、肝心なときにカードを引くドローの力。
それさえあれば、きっと彼のデッキもワンターンキルが出来るようになるのだろう。
「俺にも……!」
彼が死神と契約し、最強のドローパワーを手に入れる数ヶ月前の話だった。
ジェムナイトを組んでワンキルを狙う今日この頃。
毎回ヴェーラーに止められるのがお約束です。