「――デュエル!」
万丈目 準
LP4000
遊崎 栞
LP4000
夕刻の街に二つの影が並ぶ。
生徒達の姿はない。
この決闘は自分だけの力で行いたい――そんな決意に満ちた言葉を万丈目から聞いた彼らは、ひっそりと窓の中から二人の決闘を見守っていた。
「三度目はない!遊崎栞!今度こそお前を倒す!――ドロー!」
ノース校の校長が万丈目に《アームドドラゴン》を貸与する条件としてあげたのが『《アームドドラゴン》を用いて遊崎栞を打倒すること』であった。
栞と言うかなりの実力をもつデュエリストがスパイとして使われると言うことは、それ以上の実力者が本校に居る可能性は高い。
《アームドドラゴン》という至宝を晒すのであれば、簡単に負けることは許されない。
「俺は《未来融合‐フューチャーフュージョン》を発動!《FGD》を指定し、デッキから《ミンゲイドラゴン》《アームドドラゴンLV5》《ダークストームドラゴン》《アームドドラゴンLV3》《ラビードラゴン》を墓地に送る。さらにモンスターをセットしカードを四枚伏せてターンエンドだ!」
「私のターン、ドロー……《影霊衣の万華鏡》を発動します。エクストラデッキから《FGD》を墓地に送り《クラウソラスの影霊衣》と《トリシューラの影霊衣》を儀式召喚します」
「召喚時にトラップ発動!《奈落の落とし穴》を発動!《トリシューラの影霊衣》を除外する!」
「……っ!」
呼び出された戦士が即座に落とし穴に落ち、消えていく。
(事前にハンドレスにしているあたり、完全に対策されていますね……)
栞が静かに呻く。《トリシューラの影霊衣》は召喚された際、相手の墓地、手札、場の三大アドバンテージに打撃を与える強力な戦士だが、どれかひとつが欠けていれば発動することができない。
全て場を埋め魔法罠を使えない状況になるかなりリスキーな戦術。
だが、その賭けはこの上なく有効に機能していた。
クラウソラスの影霊衣
ATK1200 DEF2300
「――私はカードを1枚セットし、ターンエンドです」
「俺のターン!……防御を固めたところで意味はない!俺はセットしていた《仮面龍》を生贄に《アームドドラゴンLV5》を召喚する!」
アームドドラゴンLV5
ATK2400 DEF1700
「バトルフェイズ!《クラウソラスの影霊衣》に攻撃!」
「――っ!」
戦士が成す術もなく竜の武装に呑み込まれる。
敵を倒したと言う事実を皮切りに、全身の武装が組み変わるぎちぎちという音を響かせ、竜は喜びの咆哮を上げた。
「――エンドフェイズ時に進化せよ!《アームドドラゴンLV5》を墓地に送り《アームドドラゴンLV7》を特殊召喚!」
アームドドラゴンLV7
ATK2800 DEF1000
現れたのは巨大な竜。
手札のモンスターを捨てることでその攻撃力以下の相手モンスターを全て破壊する凶悪なモンスター。
だがそれは、場にあっての話だ。
「エンドフェイズに《強制脱出装置》を発動します。《アームドドラゴンLV7》を手札に戻してください」
「タイミングを計っていたか――!」
即座に手札に戻された切り札に万丈目は歯噛みする。
強力なモンスターは原則として召喚に厳しい条件が課せられる。
特に《アームドドラゴンLV7》などのレベルモンスターはデッキまたは手札から召喚するモンスター。手札にあっても殆ど意味はない。
「俺はターンエンドだ」
「私のターン。ドロー――私は《ブンボーグ003》を通常召喚します」
ブンボーグ003
ATK500 DEF500
「何だそのモンスターは?」
おもちゃのようなロボットが栞の場に現れる。
口ではあざけるようなことを言いながらも現れたモンスターを鋭い視線で見る万丈目。
低能力のモンスターをそのまま出すようなことはないはずと、注意深くトラップに手をかける。
「《ブンボーグ003》の効果を発動し、デッキから《ブンボーグ001》を特殊召喚します」
ブンボーグ001
ATK500 DEF500
「《ブンボーグ001》は自分フィールド上の機械族モンスター×500攻撃力を上昇させます。さらに《ブンボーグ003》の効果を使い、ターン終了時まで場のブンボーグの数×500だけ《ブンボーグ001》の攻撃力を上昇させます」
「攻撃力……2500か!」
ブンボーグ001
ATK500→1500→2500
二体のおもちゃが合体し、凄まじい輝きを放ち始める。
青眼には及ばないもののそれでもこの攻撃力は凶悪だ。
「二体のブンボーグでダイレクトアタックします!」
「ちっ……やるな……!」
万丈目
LP4000→1000
一気に危険水域まで落ちる万丈目のLP。
だが、彼にとってはその程度安いものだ。
最終的に発ってさえすればLPは1でもかまわないのだから。
「エンドフェイズに《サイクロン》を発動し《未来融合‐フューチャーフュージョン》を破壊します。ターンエンドです」
「ふん、どうせそちらはオマケだ。俺のターン、ドロー!俺の場にモンスターは居ない!スタンバイフェイズに墓地の《ミンゲイドラゴン》が復活する!」
《ミンゲイドラゴン》
ATK400 DEF200
「さらに《七星の宝刀》で《アームドドラゴンLV7》を除外して2枚ドロー!まずは《銀龍の咆哮》を使用して《ラビードラゴン》を蘇生だ!そして……さあ行くぞ!光と闇、両方の力を持つ竜よ!俺にお前を使わせてくれ――!ダブルコストモンスター、《ミンゲイドラゴン》を生贄に現れろ《光と闇の竜》!」
ラビードラゴン
ATK2950 DEF2900
光と闇の竜
ATK2800 DEF2400
光を纏う竜とともに現れたのは光と闇、二つの力を持つ竜だった。
竜は万丈目の呼びかけに鋭く吼える。
「このタイミングで《ブンボーグ003》の能力を使います」
「《光と闇の竜》の効果発動!魔法罠モンスター効果を攻撃力守備力を500下げることで無効にする!」
光と闇の竜
ATK2800→2300
再び重なろうとするおもちゃを闇の一喝によって打ち消す。
残されたのは下級モンスターが二体。
竜の力の前では塵に等しい。
「バトルフェイズ!《ラビードラゴン》で《ブンボーグ001》を攻撃!」
「手札から《ヴァルキュルスの影霊衣》を捨て墓地の《クラウソラスの影霊衣》を除外して攻撃を無効化――!」
「まだだ!もう一度打ち消せ!《光と闇の竜》!」
光と闇の竜
ATK2300→1800
「これで障害はない!今度こそ攻撃だっ……!」
「くっ……」
墓地から飛び出した幻影を光のブレスが貫く。
これでもう障害はない。
ドラゴンの攻撃はおもちゃを破壊し、栞の体を直撃していた。
栞
LP4000→3700→1250
「ターンエンドだ!」
「私のターン――ドロー。墓地の《影霊衣の万華鏡》と《ヴァルキュルスの影霊衣》を除外して手札に《影霊衣の降魔鏡》を加えます。――私は《影霊衣の舞姫》を通常召喚します」
影霊衣の舞姫
ATK1600 DEF800
栞の場に降り立ったのは美しい紅の髪を持つ少女。
いつか彼女の使っていた《リチュア・エミリア》に良く似た雰囲気を感じさせる。
少女を見つめる栞の表情はどことなく柔らかいものだった。
「さらに《影霊衣の降魔鏡》を発動します」
「無駄だ!《光と闇の竜》が居る限り魔術は無効化される!――何っ!?」
栞の発動した儀式魔法を打ち消そうと竜が咆哮をあげる。
しかし、その咆哮を受け流すように舞姫が自らの杖を振るう。
しばしの拮抗、勝ったのは舞姫であった。
「――《影霊衣の舞姫》が場に存在するとき影霊衣の儀式魔法は妨害を行うことができません――。私は場の《影霊衣の舞姫》と手札の《影霊衣の術師・シュリット》を生贄に《グングニールの影霊衣》を儀式召喚します。そして贄となった《影霊衣の舞姫》と《影霊衣の術師・シュリット》の効果を発動し、手札に除外されていた《トリシューラの影霊衣》を加え、デッキより《ブリューナクの影霊衣》を加えます」
グングニールの影霊衣
ATK2500 DEF1700
舞姫が蒼い鎧を纏う。
手札を代償に破壊能力を持つ強力なモンスター。
万丈目は忌々しげな目を向ける。
「バトルフェイズ。《グングニールの影霊衣》で《光と闇の竜》を攻撃します」
「ぐっ……やるなっ……!」
万丈目
LP1000→300
《光と闇の竜》が破壊され、万丈目は苦々しい顔になる。
かの竜は彼と同じく唯では転ばぬモンスター。
しかし、この状況では相性が悪い。
「《光と闇の竜》は破壊されたとき自らの場のカードを全て破壊し、墓地からドラゴンを呼び出すカード。《ラビードラゴン》を蘇生!」
「――メインフェイズ2に手札の《トリシューラの影霊衣》を捨てて《グングニールの影霊衣》の効果発動します。《ラビードラゴン》を破壊します!」
最後に呼び出した高レベルモンスターが、氷の魔術によって砕き散らされる。
万丈目の場には文字どおりなにも残されていない。
手札も0である。
(《光と闇の竜》よ……すまなかった……!)
万丈目は心の中で叫ぶ。
儀式魔法を封じられる《光と闇の竜》さえ出せれば栞を倒せると考え、即座に召喚したのは自分のミスだ。
結果として伏せカードが使われる前に消えてしまっている。
(しかし、もっと、もっと上手くお前と戦いたい――!だから――!)
「《ブリューナクの影霊衣》の効果で《トリシューラの影霊衣》を手札に加えてターンエンドです」
「俺のターン!――ドロー!《強欲な壷》を発動!」
ドローソースを引き当てた万丈目はデッキトップに指をかける。
震える指がカードに触れる。
おそらくこれが、この二枚が最後のドローだ。
(万丈目のアニキ!――アニキにみんながこたえるわ!)
どこか、五月蝿い精霊が叫ぶ声が聴こえ、彼は苦笑する。
(俺に力を貸してくれ――!)
「ドロー!」
引き当てたカードを見て万丈目の目が見開かれる。
「俺は《死者蘇生》を発動!蘇れ《アームドドラゴンLV5》!」
アームドドラゴンLV5
ATK2400 DEF1700
墓地から呼び出されたのは機械龍。
能力を見るならば間違いなく《ラビードラゴン》と考えていた栞の表情が驚愕に染まる。
「――このターンで終わりだ!バトルフェイズ!《アームドドラゴンLV5》で《グングニールの影霊衣》を攻撃――!さらに墓地の《スキル・サクセサー》を使い攻撃力を800上昇させる!」
「――っ!?」
アームドドラゴンLV5
ATK2400→3200
栞
LP
1250→550
墓地から発動した罠が栞のLPを削る。
だが、そこで終わりではない。
万丈目は必殺の意思をこめて速攻魔法をディスクに差し込む。
「さらに速攻魔法《レベルダウン!?》を使用して《アームドドラゴンLV3》を特殊召喚!ダイレクトアタックだ!」
アームドドラゴンLV3
ATK1200 DEF900
「はにゃぁぁっ!?」
巨大の武装を脱ぎ捨て現れた子竜が、栞を横なぎに薙ぐ。
それだけで彼女の身体はへたりと膝をついたのだった。
栞
LP550→0
「――俺の、勝ちだ!」
既に日が沈んだ街で万丈目は叫ぶ。
三度目の正直を彼は成し遂げたのだった。
「――そういえば、今日は、移動の日――」
そして、倒れこむ栞。
彼女の意識にあったのは、ここで気絶したら恐らく始業式に間に合わないと言う事実であった。
彼女の予感どおり、栞は長いこと気絶してしまったため潜水艦に乗り遅れ、取り残された。
彼女がアカデミア本校に戻れた時期には始業式がとっくに終わっており、クロノス教諭からたっぷり絞られるのはまた別の話である。
ノース校編はこれにておしまいです。
次回から通常運行に戻る予定です。
デュエル内容修正しました。
……このミスは酷いですねorz