胡蝶の夢 遊戯王GX世界   作:くらげ(仮)

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新パックでデッキを組む今日この頃。
占術姫を入りゴストリを組んだところ友人が逃げていきました(遠い目)


16話 VS神楽坂

 

「長い間お疲れ様でした、遊崎さん――しかし、一年生が相手、とは」

「はい、間違いなく一年生の彼があの学園最強の決闘者でした」

 

 デュエルアカデミア校長室。

 やや豪奢だが、同時に質素さを感じるその場所で鮫島校長が小さくため息をつく。

 隣では、クロノス教諭がぐぬぬ、とハンカチをかみ締めていた。

 

「では、こちらもカイザーをぶつける、と言うのは得策ではなさそうですね」

「そうなノーネ。こっちが3年生をぶつければそれはそれで卑怯扱いされるのーノ」

「しかし一年生と言いますと――遊崎さんに勝利していると言うことはかなりの実力者の筈です」

 

 今までアカデミア本校ではカイザーを出して対抗戦で2連勝。

 このままカイザーを出す予定であったが計画が狂った。

 1年生に3年生をぶつけると言うのは得策ではない。勝てて当然、負ければ地獄。勝てたとしても卑怯者のそしりは免れない。

 

「誰か、候補は思いつきませんか?遊崎さん」

「そうですね……私は十代か三沢が適役だと思います」

「ドロップアウトボーイ!?マンマミーア!?――ちょっとドロップアウトガール!シニョール三沢はともかくとして同じドロップアウトから選んでどうするノーネ!ほら、校長も!」

 

 栞の言葉にクロノス教諭が思わず校長の方を向く。

 最高クラスであるオベリスクブルーや、外部生からなるイエローの実力者から選ばれるのならばまだ分かるが、最低クラスのオシリスレッドから選ぶと言うのは舐めているとしか言いようがない。

 

「――良い案かもしれませんね」

「ゴルゴンゾーラチーズ!?」

 

 しかし、校長の口から出たのはクロノス教諭の期待を裏切るものだった。

 慌てるクロノスを尻目に校長は得心が行ったとばかりに笑顔で何度か頷く。

 

「十代君は強力なデュエリストです。そして何よりデュエルを楽しんでいる――確かに良い戦いを見せてくれるでしょう。それに三沢君だって負けていません。万丈目君を下したあのデュエルはまさに理想的でした」

「シカーシ!?それでは生徒達の支持が!?」

「それに、彼らだったら勝てる可能性が高い。私はなんとしても『褒美』が欲しいのです!」

「ま、マンマミーア……」

 

 がっくりうなだれるクロノス教諭。

 どうやら、代表選手はそのどちらかで確定したようだった。

 

「あ、そうそう遊崎さん。一応留学のご褒美、と言う形でプレゼントがあります」

「――これは……!」

「そ、それはワタシも欲しかった物なノーネ!?」

 

 栞は鮫島校長から渡されたチケットを見て目を輝かせる。それをにこにこと眺める校長。

 その隣で彼女の精霊はやれやれと首を振っていたのだった。

 

 

――

 

LP4000

 

場 伏せカード1枚

手札5枚

 

神楽坂

LP4000

 

場伏せカード2枚

手札4枚

 

「ワターシは!《大嵐》を発動っ!全ての魔法・罠を破壊するノーネ!」

「罠カード《和睦の使者》を発動!このターンボクの受けるダメージは0になるッス!」

「ちっ!フリーチェーンのトラップか!だかワタシの場のセットカード、《黄金の邪神像》二枚が破壊されたことでトークンが二体発生する!」

 

邪神トークン

ATK1000 DEF1000

 

「二体のトークンを生贄に《古代の機械巨人》を召喚なノーネ!」

 

古代の機械巨人

ATK3000 DEF3000

 

「く、クロノス教諭のモンスター!?」

「というか話し方まで同じだぜ……」

「召喚方法も、見たことがあります……」

「あいつ、神楽坂は無意識に誰かのデッキを真似るんだ――秀才ゆえに、いつの間にか教材として提出される、彼らの動きが染み付いてしまっている。今回はクロノス教諭のデッキなのだろう――」

 

購買前、二人の決闘者が向かい合う。

彼らが求めているのは、たった一枚のチケット。

即ち『武藤遊戯』のデッキの展示会チケットである。

 

「カードを1枚セットなノーネ!」

「ボクのターン、ドロー!――ボクはカードを二枚セット、ターンエンドッス!」

「ふふ、このクロノス教諭のタクティクスに恐れをなしたようなノーネ!ですが!このカードはバトル中罠の効果を受けない!ワタシのターン!ドロー!」

「トラップカードオープン!《強制脱出装置》を発動するっス!《古代の機械巨人》を手札にバウンスするっス!」

「――チッ!?」

 

 罠を戦闘中無効化する《古代の機械巨人》であるが、フリーチェーンでバウンスされては手も足も出ない。

 特殊召喚のできない《古代の機械巨人》は、手札にある場合中々召喚できないのがネックだ。

 

「デスが、この程度ではこのデッキは止まらないノーネ!《トレードイン》で《古代の機械巨人》を墓地に送り二枚ドロー!さらに《天使の施し》を発動して3枚ドローして2枚捨てるノーネ。そして《磁力の召喚円LV2》を発動!手札から《古代の歯車》を特殊召喚、さらに《古代の歯車》が場にあるとき手札の《古代の歯車》を特殊召喚するノーネ!」

「――生贄をこんなに早く集めるなんてっ!」

「……流石クロノス教諭のタクティクスだ……」

「いや、あいつもなかなか凄え決闘者だと思うぜ。唯の真似であそこまでになれるわけがねえ」

 

古代の歯車

ATK100 DEF800

 

 現れたのは小さな古びた歯車。

 下級モンスターが二体、そして残された召喚権。なれば行うことは一つしかない。

 

「二体の《古代の歯車》を生贄に現れよ!――《古代の機械巨人》!」

 

古代の機械巨人

ATK3000 DEF3000

 

「ぐ……!」

「バトルフェイズ!《古代の機械巨人》で攻撃なノーネ!」

「うわぁぁぁぁっ!?」

 

LP4000→1000

 

巨大な巨人の一撃を喰らい、翔君の体が大きくぐら付く。

だが、すぐに立ち上がり、鋭い瞳で神楽坂君を見据えていた。

 

「――カードを1枚セットしてターンエンドなノーネ!」

「ボクのターン!」

「……しかし、何で翔はモンスターを呼ばないんだな?たとえ能力が低くても壁になったはずなんだな」

「――事故の可能性もあるが、それだけとは確かに考えにくいな」

 

隼人君の疑問に、私と三沢は頷く。

あの顔は、まだあきらめていない。

何所までも喰らい付く決闘者の顔だ。

 

「ドロー!ボクは《未来融合‐フューチャーフュージョン》を発動!《極戦機王ヴァルバロイド》を指定して墓地に《トラックロイド》《サブマリンロイド》《キューキューロイド》《ドリルロイド》《パトロイド》を送り、2ターン目のスタンバイフェイズにそのモンスターを召喚する!」

「はっ!お前に二ターン目が来ると思っているノーネ?」

「それはどうかな!――ボクは《サイバネティックフュージョンサポート》を発動!LPを半分にする代わり次に行う融合素材を墓地のカードで代用する!さらに《パワーボンド》で5体のロイドを融合!――現れろ!《極戦機王ヴァルバロイド》!」

 

LP1000→500

 

極戦機王ヴァルバロイド

ATK4000→8000 DEF4000

 

「《パワーボンド》によって呼び出されたモンスターの攻撃力は元もとの分だけアップする!」

「攻撃力8000だとっ!?」

「やるなっ!翔!」

 

 召喚されたモンスターの攻撃力は8000――《古代の機械巨人》を突破してなお一撃の下に相手を屠り去る威力である。

 カイザーの決闘くらいでしか中々見ないような値に、周囲の生徒たちがざわめく。

 そのざわめきすら聴こえないとばかりに翔君は攻撃の命令を下した。

 

「バトルフェイズ!《極戦機王ヴァルバロイド》で《古代の機械巨人》を攻撃!」

「――甘いっ!速攻魔法《リミッター解除》なノーネ!例え破壊されても《パワーボンド》の代償でお前のLPは0だ!過ぎた力はその身を焼く!勝負を急いだな!」

「翔っ!?」

 

古代の機械巨人

ATK3000→6000

 

神楽坂君の伏せたカードが開く。

攻撃力を二倍にする《リミッター解除》。その結果、たとえ《古代の機械巨人》が破壊されてもLPは2000のこり、バーンで1000削られてもまだ余る。ターンが終了すれば、《パワーボンド》で4000のダメージを受け、翔君の敗北である。

だが、翔君はそれを読んでいたとばかりにディスクのボタンを押す。

 

「――トラップ発動!《魂の一撃》っス!――LP半分を払ってモンスターの攻撃力を4000から今の値引いた分だけアップする!さらに《リミッター解除》を発動!」

 

LP

500→250

 

極戦機王ヴァルバロイド

ATK8000→11750→23500

 

「攻撃力――23500!?何だそれはっ!?」

「も、もうわけが分からないんだなっ!?」

「……流石に、見たことないです……」

 

 最早計算するのも馬鹿馬鹿しいレベルの攻撃力に三沢と隼人君、そして私が驚愕する。

 その一撃はたとえLPが8000であっても問題なく削り飛ばす。

 間違いなく翔君はサイバー流の一族である。火力へのこだわりが尋常ではない。

 

「凄い攻撃力だ――。だがそれだけに過ぎない!墓地の《ネクロガードナー》を除外して攻撃を無効化する!」

 

 しかし、神楽坂君、そして彼のデッキは諦めない。

 本来クロノス教諭が使っていないカード。

 きっとこれは彼が自ら考え、デッキに入れたカード。彼の呼びかけにこたえるように黒い戦士が墓地から攻撃を防ぐ。

 

「――まだだ。速攻魔法!《ダブル・アップ・チャンス》を発動!」

「何だと!?」

 

 だが、その戦略を翔君は上回っていた。

 発動したカードに、神楽坂君は自らの渾身が破れた驚愕の表情を浮かべる。

 

「このカードは攻撃が無効になったとき、もう一度攻撃を行わせるカード!そして、その時の攻撃力は2倍となる!」

「2倍……ってことは攻撃力47000!?」

「再び攻撃せよ!《極戦機王ヴァルバロイド》!」

「く、ぐあああああああああああっっっ!?」

 

神楽坂

LP4000→0

 

巨大なロボットの一撃により、巨人が吹き飛ばされる。

四万を超える超過ダメージの演出により、轟音が周囲に満ち、視界が煙に塞がれる。

 

「よしっ!チケットゲットっス!トメさん!」

「はい、最後の一枚」

「やった!寝過ごしかけたときはどうしようかと思っていたっス……」

「しかし翔、さっきのデュエル見事だったぜ!今のはカイザーみたいだ!」

「--へへ!やったっス!」

 

 十代の言葉に翔君は鼻を掻いて笑った。

 

「攻撃力40000越えとか初めて見たぜ!」

「――いつか、あのカードに相応しい男になるため、全力っス!」

「それってサンタが持ってきたアレか?」

「それはアニキでも秘密っス!」

 

 そんな話をしながら歩き去る翔君と十代。

 私と三沢はなんとも言えない表情で敗者――神楽坂君を見つめるのだった。

 

 

――

 

「く……何故勝てない!」

 

 神楽坂はよろよろと立ち上がる。

 40000を超える超過ダメージのソリッドヴィジョン、その迫力によって未だに頭がくらくらする。

 

「俺は、俺は完璧だった筈だ!」

 

 クロノス教諭のカード、そしてタクティクスを模倣。再現して見せた。

 イエロー最高のデータマンに相応しい戦いだったはずだ。

 特殊召喚の出来ない強力なモンスター、《古代の機械巨人》を何度も召喚する完璧な動き、レッド寮の生徒ごときに負ける道理はない。

 ――しかし現実はどうだ?

 見事なワンショットキルを喰らい、無様に敗北した。

 周囲の生徒たちのざわめきが全て彼を嘲笑のしているように聴こえ、彼は足早に購買を去ろうと歩きを進める。

 

「――神楽坂」

「何だ?お前も俺を笑うのか!三沢!」

 

 声をかけてきた三沢に棘のこもった声を返す。

 本当に心配しているのであろうが、その表情が不快でならない。

 同情という感情は人を深く傷つける。そう神楽坂は考える。

 それは、上から物を見ているということの証明に他ならないからだ。

 

「――お前には分かるまい!俺の気持ちなんて、何もな!」

 

 言葉を吐き捨て、何か言おうとしている三沢の言葉も聞かずに足早に購買を出る。

 分かっている。

 これはただの八つ当たりだ。

 ――それを知れば、余計惨めな気持ちになる。

 足がだんだん速くなり、寮に戻る頃には息は完全に切れていた。

 

「――はぁ、はぁ……」

 

 部屋に戻り、ディスクに入れていたデッキをテーブルの上にぶちまける。

 先人のデッキを研究し、何度も練ってくみ上げたデッキでも勝てなければただの紙束に過ぎない。

 

「何度も!何度も!何度もっ!先生のデュエルを研究した!負けた決闘も勝った決闘も全て――!」

 

 彼の机の上には大量の記録媒体が積まれていた。

 その中からクロノス教諭の決闘が刻まれているものを乱暴に取り払う。

 乱暴な扱いに、机の記録媒体が雪崩を起こし、散乱する。

 

「これは――!」

 

 手にぶつかった記録媒体を持ち上げる神楽坂。

 その目が開かれる。

 

「本物だったら、勝てるというのか――?」

 

 頭に浮かんだ言葉を、頭を振って打ち消す。

 それはやってはいけないことだ。

 人のデッキを――

 

「俺でも、勝てるというのか――」

 

 だが、一度浮かんだ思いは消えない。

 いつの間にか彼の中ではその計画が立案されていた。

 

――手の中の『武藤遊戯』の決闘履歴を彼は強く握り締めた。

 

 

 

――

 

「おーい。栞、起きてるか?」

「――はい」

 

深夜、デッキの調整を終えてベッドに潜ろうとする私をノックの音が遮った。

眠い目をこすりながら、ドアを開けると十代が満面の笑みで立っていた。

 

「ほら、もう来てるらしいじゃん!あの決闘王の武藤遊戯さんのデッキ!朝九時から展示ってことは既に置かれてるはずだ!ちょっと早いけど見に行こうぜ!頼み込めば、見せてもらえるかもしれないぜ!」

「ええと……」

 

つまり、展示会が行われるより前にデッキを見に行こうと言う話らしい。

一秒でも早く見たいのはファンとしての共通心理だろう。

 

「でも、私もうチケットは持っていますし……」

「それはそれ、これはこれ。栞って人ごみは苦手だろ?じっくり見るなら今しかないぜ?」

「――うにゅう……ちょっと待っていてください」

 

 確かに、人が多い場所でデッキを見てもじっくり眺めることは難しい。

 私は微かな背徳感とともにゆっくり頷いたのだった。

 

 

――

 

「マンマミーア!?」

「アレは……クロノス先生の声!?」

「どうしたんだ!早く行こうぜ!」

 

 夜中、校舎に忍び込んだ私達5人(隼人君、翔君だけでなく、途中で三沢が合流した)が見たのは、割れた硝子ケース。

 何も乗っていないデッキの展示台。

 

「――わ、私じゃないノーネ!?」

 

 そして、その隣で憔悴するクロノス教諭だった。

 涙を浮かべて私達を拘束せんとばかりに駆け寄ってくる。

 

「そんなこと分かっているよ。だって硝子ケース割る必要ないだろ?クロノス教諭なら」

「――クロノス教諭が、他人のデッキを強奪するとは到底思えないです」

「ドロップアウトボーイ&ガール!?……貴方達が庇うなんて……」

 

 誤解を解きつつ、部屋の外へと出る。

 早く見つけなければクロノス教諭の首まで危ない。

 ちょっとした探検のつもりが、とんだ状況になってしまった。

 

「――手分けして探そうぜ!翔!隼人!いくぞ!」

「三沢――私達も一緒に探しましょう」

「わかったッス!」

「なんだな!」

「行くぞっ!」

 

 まだ時間はそれほどたっていない。

 犯人を捜すべく、私達は島内の探検を始めるのだった。

 

――

 

 アカデミア沿岸部――

 夜中にここによるものは少ない。岩場中心であるため滑りやすく、足場が安定せず危険である上、視界が悪く、また、声も届かないため下手を打てば死の可能性すらあるためだ。

 その人が殆ど居ない沿岸部において、二人の決闘者は対峙していた。

 

「《黒魔術のカーテン》を発動し《ブラックマジシャン》を特殊召喚!さらに《ブラックマジシャン・ガール》が場に居るので《黒・魔・導・爆・裂・波》を発動!相手の場のモンスターを全て破壊!――そして《ブラックマジシャン》でダイレクトアタック!『黒魔導』!」

「うわぁぁぁぁぁっ!?」

 

神楽坂

LP1600→800

 

LP

1300→0

 

 黒魔道師の少女が魔力の波動を放ち翔の場のモンスターを全て破壊。

 直後、その師である黒魔道師が敵の身体をその魔力を持って貫いていた。

 

「残念だったな!《進化する人類》と《サブマリンロイド》のコンボは確かに素晴らしい。レッドにしては良くやったと褒めてやる――だがオレには届かない!それも当然のこと!オレはこの最強のデッキが付いているからな!」

 

 神楽坂は哄笑を上げる。

 全能感が全身を支配し、自信が満ちる。

 デッキ内容を見たときの確信。

 これは誰にでも回せるデッキではなく選ばれしものだけに使うことのできる物――そして、決闘王の戦い、その総てを知り、100%の再現ができる自らこそその使い手に相応しいと言う思い。

 罪悪感はとうに消えていた。

 

「ぐ……悔しいっス……!」

「オレはもう負けない!誰にもな……!カイザーにも!クロノスにも!そして――」

 

 神楽坂は、悲鳴を聞きつけ、走って来た少女を指さす。

 かつてカイザーに勝利した、オシリスレッド唯一の女子。

 以前の自分だったら勝負する気も起きないが、今の自分には最強の力がある。

 デッキの試し切りには丁度いい相手だろう。

 

「――お前にもだ!遊崎栞!」

「……ええと、その」

 

 何か話そうとあたふたしている彼女を無視し、ディスクを構える。

 

「勝負が受けられないのか?もう怖気づくとは大したことのない奴だな――それとも、自分デッキの貧弱さでも思い知ったか?大してアドバンテージの取れない儀式召喚を使う非効率さ、それにようやく気付いたか?」

「――受けましょう。ただし、私が勝った時の条件を二つ付けさせてくさい」

「何だ?万に一つもないだろうが聞いてやるぜ」

「一つは、デッキをちゃんと返却すること――今なら、まだクロノス教諭も事を荒立てずに済ましてくれると思います。そしてもう一つは」

 

 安い挑発、だがその効果は覿面だった。

 少女が一つ呼吸を置く。

 その瞳には、神楽坂に対する闘争心が浮かんでいた。

 

「――私のデッキの子達を貧弱といったことを取り消していただきます――!」

「上等っ!」

 

「デュエル!」

 

 

――

 

遊崎 栞

LP4000

 

神楽坂

LP4000

 

「私のターン、ドロー。私は《ヴィジョン・リチュア》を墓地に送り、デッキから《イビリチュア・ガストクラーケ》を手札に加えます。さらに《シャドウ・リチュア》を墓地に送り《リチュアの儀水鏡》を手札に――手札の《イビリチュア・マインドオーガス》を生贄に、《イビリチュア・ガストクラーケ》を儀式召喚します」

 

イビリチュア・ガストクラーケ

ATK2400 DEF1000

 

 呼びかけに応じ、現れたモンスターが私のほうを向いてにやりと笑った。

 攻撃力こそ控えめだが、手札バウンス能力を持つ強力なモンスターである。

 冬休みの間に制限カードに指定されてしまっていたが、その強さは健在だ。

 

「栞、やっちゃおう――全力で!」

「勿論です……!」

 

 ウィンダの呟きに大きく頷く。

 私が弱いことはあってもこの子達が弱いとは、絶対に言わせない。

 

「手札の《天よりの宝札》をデッキに戻してください」

「くっ――小賢しい真似を!」

「今日の栞さんのデッキは――リチュアか!」

「さらに《リチュア・アビス》を召喚します。その効果により私は《シャドウ・リチュア》をデッキから手札に加えます。――墓地の《リチュアの儀水鏡》をデッキに戻し、《イビリチュア・マインドオーガス》を手札に加えます。――カードを2枚セットしてターンエンドです」

 

リチュア・アビス

ATK800 DEF500

 

「オレのターン!ドロー!」

「罠カード《水霊術―葵》を発動します。《リチュア・アビス》を生贄に、手札の《苦渋の選択》を墓地に送ります――さらに《マインドクラッシュ》を発動します。私は《天使の施し》を宣言、手札にそのカードがあった場合そのカードを墓地に捨てます」

 

 ドローと同時に二枚のハンデストラップを発動する。

 蒼の魔方陣が神楽坂君の手札を白日に曝け出し、見えざる手が打ち抜く。

 ピーピングを同時に行う《水霊術‐葵》を併用すれば《マインドクラッシュ》のリスク――宣言した札がなく、手札を失うこと――を避け安全にハンデスを出来る。

 神楽坂君が苦い顔をするが知ったことではない。

 

「チっ――!ハンデス特化か!だがその程度でこのデッキは止まらん!オレは《融合》を発動《パフォメット》と《幻獣王ガゼル》を融合し《有翼幻獣キマイラ》を融合召喚!――ターンエンドだ」

「まさか手札を半分削られたのに融合召喚だって!?」

 

有翼幻獣キマイラ

ATK2100 DEF1800

 

 決闘王を支えた融合モンスターが場に現れる。

 二つの頭を持つ獣が、かりそめの主を守るように寄り添った。

 手札の半分を削っても融合をこなす。

 まさに決闘王のデッキである。

 

「私のターン……ドロー。《シャドウ・リチュア》を墓地に送り《リチュアの儀水鏡》をデッキから手札に加えます。さらに《リチュア・ビースト》を通常召喚します。《リチュア・ビースト》の効果を発動、墓地の《リチュア・アビス》を守備表示で特殊召喚します――さらに《リチュア・アビス》の効果を発動し、デッキから手札に《シャドウ・リチュア》を加えます」

 

 連続サーチで材料と生贄を揃える。

 相手の手札は0――畳み掛けるのみだ。

 

「《リチュアの儀水鏡》を発動します。《リチュア・ビースト》と《リチュア・アビス》を生贄とし《イビリチュア・マインドオーガス》を儀式召喚します」

 

イビリチュア・マインドオーガス

ATK2500 DEF2000

 

 透き通るような蒼い髪の少女が、赤髪の少女と並び立つ。

 白い肌が月の光を受けて、煌く姿はとても美しい。

 

「――下半身さえ見なければ美少女のなのに……」

 

 後ろに居る翔君がなんともいえない表情で私を見ていた。

――《イビリチュア・マインドオーガス》はカサゴのような生き物が下半身である。

 ……私はそれも含めて凄く可愛い子だと思うのだけれど……。

 

「――《イビリチュア・マインドオーガス》の効果を発動します。墓地の《シャドウリチュア》1枚をデッキに戻します」

「墓地のデッキバウンス能力……!」

 

 翔君の呟きに、かすかに頷く。

 《サルベージ》を行うのであれば墓地にある《シャドウリチュア》の数は2枚程度で十分と言う判断だ。《リチュア・アビス》でのサーチが行えるのは大きい。

 本来は相手の墓地のカードをデッキに戻し展開を遅らせるカードであるが、こういう使い方もありだ。

 

「バトルフェイズ――《イビリチュア・マインドオーガス》で《有翼幻獣キマイラ》を攻撃します」

「チッ!だが唯ではやられん!――《有翼幻獣キマイラ》は破壊されたとき《バフォメット》を特殊召喚できる!」

 

バフォメット

ATK1400 DEF1800

 

キマイラの体が分離し、悪魔が防御形態をとる。

たとえ倒れても素材、もしくは壁モンスターを残す。

低ステータスであっても能力でカバーする――まさに、決闘王らしいカードだと思う。

 

「――《イビリチュア・ガストクラーケ》で《バフォメット》を攻撃します」

「くっ――!」

「ターンエンドです」

 

赤髪の少女の魔術によって悪魔が砕け散る。

これで神楽坂君の場、そして手札はがら空きである。

だが、彼は目をつむり、口角を吊り上げて見せた。

 

「バフォメット、お前の犠牲は無駄にはしないぜ!――オレのターン!――ドロー!……ターンエンドだ」

「ええっ!?なにもしないんスか!?とはいえ、このままだったら栞さんの勝ちっス!」

 

 何もせずターンを終了する神楽坂君に対して、翔君が驚きの声を上げる。

(多分あのカードを引きましたね――!)

 恐らく手札誘発のカードを引いているのだろう。

 その表情は自信に満ちたものだった。

 

「――お、やっぱりここだ!」

「やっと追いついたんだな!」

「悪い、遅れた!」

「……」

 

 戦闘の音をききつけた十代、隼人君、三沢が現れたことに気づかないほど、私は全力で神楽坂君のほうを見据えていた。

 決闘は始まったばかり、両者のLPはまだ削られていない。

 

――

 

「しかし栞の奴いいなあ!オレも遊戯さんのデッキとやりたかったぜ!」

「あはは……アニキらしいや」

「ええと状況は――遊崎のバトルフェイズか!場ががら空きで攻撃力2000越えが二人って事は、このまま通れば遊崎の勝ちなんだな!」

「そうっスね。やっぱり本人じゃないと使いこなせないんっスよ」

「……どうかな。あの決闘王のデッキがそう簡単に通すとは思えないが……」

 

 栞がボードアドバンテージに大きく勝ることを確認し、笑顔を浮かべる隼人と翔。

 だが、三沢は厳しい表情で場を見据えていた。

 この程度で終わるデッキが決闘王の剣であるはずがない。

 

「《イビリチュア・ガストクラーケ》でダイレクトアタック――!」

「くっ……!」

 

神楽坂

LP4000→1600

 

「よしっ!半分以上削ったっス!」

「次で終わりなんだな!」

「手札の《冥府の使者・ゴーズ》の効果を発動!このカードはダメージを受け、自らの場にカードが存在しない時特殊召喚できる!――さらにダメージが戦闘ダメージであった場合、ダメージと同じ攻守を持つカイエントークンを同時に特殊召喚できる!」

「――やはり、ただでは済ませないか……!」

「最上級モンスターが一気に二体!やっぱり遊戯さんのデッキはすげえ!」

 

冥府の使者ゴーズ

ATK2700 DEF2000

 

カイエントークン

ATK2400 DEF2400

 

主の危機を察する如く現れたのは冥府の使者。

直接攻撃を受けなければならないリスクがあるが、その能力は場のどのカードよりも高い。

栞がかすかに眉を寄せる。

 

「――《イビリチュア・マインドオーガス》で《カイエントークン》を攻撃します」

「ぐっ……臆せず向かってきたか……!」

 

神楽坂

LP1600→1500

 

「――ターンエンドです」

「オレのターン!ドロー!《強欲な壷》を発動してさらに二枚ドロー!……来たか!オレのエースを見せてやるぜ!LPを半分払い《黒魔術のカーテン》を発動!」

 

神楽坂

LP1500→750

 

 神楽坂は自らが引いたカードを高く掲げ、ディスクにセットする。

 髑髏の飾りを持つ、黒いカーテンが彼の場に現れ、直後閃光を放つ。

 

「現れろ!《ブラック・マジシャン》!」

 

ブラックマジシャン

ATK2500 DEF2100

 

「あれが……決闘王のエースカード……!」

「すごい迫力なんだな……」

 

 黒帽子を被った魔術師の男が神楽坂の場に現れていた。

 決闘王とともに幾多の戦場を駆けた伝説のモンスター。

 彼の名を知らない決闘者は居ないといっていい程の有名なカードである。

 そのままでは2500打点のバニラだが数々のサポートカードがその力を引き上げるのが特徴だ。

 

「――バトルフェイズ!《冥府の使者ゴーズ》で《イビリチュア・マインドオーガス》を攻撃!――さらに《ブラックマジシャン》で《イビリチュア・ガストクラーケ》を攻撃――『黒魔導』!」

「ぐ……あっ……!」

 

LP

4000→3800→3700

 

黒魔術師と冥府の使者の連撃によって栞の場ががら空きになる。

その隙を見逃すデッキではない。

神楽坂は更なる追撃をかけるべくカードをディスクへセットする。

 

「――速攻魔法!《光と闇の洗礼》を発動するぜ!《ブラックマジシャン》を生贄にすることでデッキから《混沌の黒魔術師》を特殊召喚!」

 

混沌の黒魔術師

ATK2800 DEF2600

 

黒魔術師に光と闇が交じり合い、新たな魔術師が現れる。

蒼い肌、鋭い瞳――数段上がった威圧感を持つそのカードはかつて禁止も経験した凶悪な魔術師である。

 

「まだオレのバトルフェイズは終わっていないぜ!《混沌の黒魔術師》でダイレクトアタック!『デス・アルテマー』!」

「はにゃぁぁっ!?」

 

LP3700→900

 

「エンドフェイズに《混沌の黒魔術師》の効果を発動!墓地から手札に《強欲な壷》を加える!オレはこれでターンエンドだ!」

「ドローソースの補給まで……流石決闘王のデッキ……完全なバランスを持っている……遊崎にこれが破れるのか……?」

 

強力な魔術師の攻撃によって栞のLPが一気に危険水域まで落ちる。

ライフアドバンテージを同等にした上でボードアドバンテージを圧倒的に塗り替えるそのタクティクスに三沢が唸る。

 

「栞なら大丈夫だろ」

「えっ何でそんなこと言い切れるンスか?アニキ?」

「――あいつはまだあきらめてないだろ。なら、大丈夫だ」

「私のターン…ドロー《強欲なウツボ》を発動します――2枚水属性モンスターをデッキに戻し、三枚ドローします。……《浮上》を発動して《リチュア・アビス》を蘇生します、効果でデッキから《シャドウ・リチュア》を手札に――さらに墓地の《リチュアの儀水鏡》をデッキに戻し、手札に《イビリチュア・マインドオーガス》を加えます」

 

リチュア・アビス

ATK800 DEF500

 

「墓地の水属性モンスターが5体丁度――《氷霊神ムーラングレイス》を特殊召喚します」

 

氷霊神ムーラングレイス

ATK2800 DEF2200

 

「攻撃力2800――!」

「《混沌の黒魔術師》に並んだんだな!」

 

 白い鎧を纏った海龍が栞の場に降臨する。

 高攻撃力モンスターの登場に、隼人たちは驚きの声を上げる。

 

「――《氷霊神ムーラングレイス》の効果を発動します、相手の手札をランダムに2枚捨てさせます」

「姑息な真似を……!」

 

 神楽坂の手札は一枚。

 何も抵抗できないまま、海龍の尾の一撃が手札を叩き落す。

 

「バトルフェイズ――《氷霊神ムーラングレイス》で《冥府の使者・ゴーズ》を攻撃」

「くっ……ゴーズがっ……!」

 

神楽坂

LP750→650

 

「カードを一枚伏せてターンエンドです」

「オレのターン!ドロー!……《疾風の暗黒騎士ガイア》を召喚するぜ!」

 

疾風の暗黒騎士ガイア

ATK2300 DEF2100

 

「また上級モンスター!」

「本当に召喚合戦なんだな……」

 

馬に乗った騎士が風を切り、戦場へと馳せ参ずる。

手札が一枚の時生贄なしで召喚できる能力を持ち、やはり決闘王を支えたモンスターである。

たとえモンスターが破壊されても、ハンデスされても即座に場を整え、ひっくり返す。

まさに決闘王そのものである。

 

「バトルフェイズ!《混沌の黒魔術師》で《氷霊神ムーラングレイス》を攻撃するぜ!」

「迎撃してください――っ!」

 

 海龍と魔術師、二つの力が交錯し空中で爆発を起こす。

 爆発が晴れた後、そこには何も残されていない。

 

「さらに《疾風の暗黒騎士ガイア》!《リチュア・アビス》を攻撃せよ!」

「うっ――!」

 

 続いて守備表示になっている鮫を暗黒騎士の槍が貫く。

 殆ど抵抗できずに消える鮫の姿に、栞は奥歯をかみ締めた。

 

「ターンエンドだ!」

「私のターン、ドロー。……手札の《シャドウ・リチュア》を捨て、《リチュアの儀水鏡》をサーチそしてそのまま発動。《ヴィジョン・リチュア》を生贄に――来て!《イビリチュア・マインドオーガス》。そして効果を発動します――神楽坂君の墓地にある《ブラックマジシャン》をデッキにバウンスします」

 

イビリチュア・マインドオーガス

ATK2500 DEF2000

 

「また呼びやがったか!しつこい奴め!」

「《氷黎神ムーラングレイス》が場を離れた次のターンはバトルフェイズが行えません。ターンエンドです」

 

蒼の少女が栞を守るように立ちはだかる。

その攻撃力は暗黒騎士よりも上、さらに《ブラックマジシャン》を墓地からデッキに戻すと言う嫌がらせまでこなす。

神楽坂は大きく舌打ちをし、デッキトップに指をかける。

 

「オレのターン!ドロー!――オレは《天からの宝札》を発動!このカードはお互いの手札が6枚になるようにカードをドローするぜ!」

 

 最強のドローソースを発動し、増やした手札を確認する神楽坂。

 相手にドローさせてしまうという欠点があるが、それでもこの枚数は破格である。

 デュエルモンスターズにおいて手札とは可能性。

 6枚もあれば、それは充分必殺の威力を持つ。まして決闘王のデッキならばなおさらだ。

 

「ドローしたカードの中に《ワタポン》があった、このカードはカードの効果で手札に加わった場合特殊召喚できる!」

 

ワタポン

ATK200 DEF300

 

「《ワタポン》を生贄に出でよ!《ブラックマジシャン・ガール》!」

「わあ!ブラックマジシャンガールだ!」

 

 綿毛のような天使を即座に生贄とし、現れたのは黒魔術師の少女。

 黒魔術師とにているものの、何所となく少女らしさを感じさせるデザインに多くのファンが居るモンスター。そのファンの一人である翔が、思わず目を輝かせた。

 

「――ふっ!さらに《賢者の宝石》を発動!場に《ブラックマジシャンガール》が居るとき、デッキから《ブラックマジシャン》を特殊召喚する!弟子に導かれ現れよ!最高魔術師よ!」

 

ブラックマジシャンガール

ATK2000 DEF1700

 

ブラックマジシャン

ATK2500 DEF2100

 

 決闘王を支え続けた二人の魔術師が並ぶ。

 その様は壮観と言うほかない。

 栞の額から一筋の汗が流れていた。

 

「さらに手札から《魔術の呪文書》を発動!《ブラックマジシャン》の攻撃力を700アップ!」

 

ブラックマジシャン

ATK2500→3200

 

「攻撃力3200――!」

「青目を超えたんだな!」

「し、栞さん!?」

「バトルだぜ!《ブラックマジシャン》で《イビリチュア・マインドオーガス》を攻撃!」

「うっ……ぐっ……!」

 

LP900→200

 

「さらに《ブラックマジシャンガール》で追撃!これで終わりだぜ!」

 

魔力の強化された一撃が、栞を庇った少女ごと彼女を吹き飛ばす。

そこに更なる追撃を加えるべく、魔術師の少女が宙を駆け――目の前に現れた赤髪の少女に遮られる。

 

「罠カード《儀水鏡の幻影術》を発動します――手札の《イビリチュア・ガストクラーケ》をターン終了時まで特殊召喚します」

 

イビリチュア・ガストクラーケ

ATK2400 DEF1000

 

「くっ――カードを一枚伏せてターンエンドだ!」

「し、凌いだっス!?」

「な、いっただろ、栞は強いって」

「――だが、手札に《イビリチュア・ガストクラーケ》は戻る。絶体絶命なのは変わらない――どうする、遊崎」

 

 三沢は栞のほうを見つめる。

 荒い息を吐きながらも、彼女は自らのモンスターにこたえるべく、相手を見据えていた。

 

 

 

――

 

「私のターン――」

 

 ウィンダの手を借りながら、私はよろよろと立ち上がる。

 視界がぼやける。

 長いデュエルの影響だろう。

 全身が綿で出来ているみたいだ。

 

「大丈夫?栞」

 

 ウィンダの問いかけに、小さく頷く。

 幸い手札の枚数は多い。

 これならば逆転の目はある。

 

「――ドロー!」

 

 引いたカードを確認、即座に戦術をくみ上げる。

 このターンで、終わらせる。

 

「《サルベージ》を発動します。墓地の《シャドウリチュア》と《ヴィジョン。リチュア》を手札に加えます。さらに《リチュアの儀水鏡》を発動します。手札の《ヴィジョン・リチュア》を生贄に《イビリチュア・ガストクラーケ》を儀式召喚します」

 

イビリチュア・ガストクラーケ

ATK2400 DEF1000

 

赤髪の少女が、私の場にあらわれる。

彼女も心配そうに私のことを見てくれていた。

こんなにも私のことを気にしてくれる子が居ることが、とても嬉しくて仕方がない。

 

「――効果を発動し、神楽坂君の手札の《クリボー》をデッキに戻します」

「くっ――!相棒!」

 

 これでハンドトラップの心配はない。

 あとは、攻めるのみ。

 

「――墓地の《リチュアの儀水鏡》をデッキに戻し、《イビリチュア・マインドオーガス》を手札に加えます。そして《シャドウ・リチュア》を捨て、《リチュアの儀水鏡》を手札にサーチ――《リチュアの儀水鏡》を発動。手札の《リチュア・アビス》と《イビリチュア・マインドオーガス》を生贄に、《イビリチュア・ソウルオーガ》を儀式召喚します!」

 

イビリチュア・ソウルオーガ

ATK2800 DEF2800

 

「大型モンスターを呼んだか!だが攻撃力は《ブラックマジシャン》のほうが上だぜ!」

 

 目が霞む。

 手が震えて上手く動かせない。

 何か神楽坂君が言っているような気がするが、今の私の耳では聞き取れない。

 

「――墓地の《リチュアの儀水鏡》をデッキに戻し手札に《イビリチュア・マインドオーガス》を加えます。そして《イビリチュア・ソウルオーガ》の効果を発動します。手札の《イビリチュア・マインドオーガス》を墓地に送り、《ブラックマジシャン》をデッキに戻します」

「――何だと――!?」

 

 頼もしい咆哮が、相手の魔術師を吹き飛ばす。

 別に破壊しなくても、バウンスすれば問題のない話である。

 《魔術の呪文書》で1000回復するが、場が開いてしまえば関係はない。

 

神楽坂

LP650→1650

 

「さらに《リチュア・エミリア》を通常召喚します」

 

リチュア・エミリア

ATK1600 DEF800

 

 最後に、赤髪の彼女を召喚する。

 彼女は振り向かずにただ、ぎゅっと杖を握り締めていた。

 

「バトルフェイズ――《イビリチュア・ガストクラーケ》で《ブラックマジシャンガール》攻撃します」

「――トラップ発動!《聖なるバリア・ミラーフォース》!」

「《リチュア・エミリア》が居るとき、トラップの効果は無効になります」

「何だと!?」

 

神楽坂

LP1450→1050

 

「《イビリチュア・ソウルオーガ》で《疾風の暗黒騎士ガイア》を攻撃――!」

 

神楽坂

LP1050→550

 

連続攻撃でモンスターを一掃する。

残されたのは、がら空きの場。

 

「《リチュア・エミリア》でダイレクトアタックします――!」

 

神楽坂

LP1450→0

 

赤髪の少女の一撃が、神楽坂君を貫く。

その様子を見届けて、私の意識は闇へと消える。

きっと今回の気絶は長いんだろうな、そんなことを考えながら。

 




デュエル内容修正しました。
ううむ、なにやっているんだか……orz
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