胡蝶の夢 遊戯王GX世界   作:くらげ(仮)

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新パックが来ました。
……目当ての蟲惑魔とスカーレットは見事に空振り(遠い目)


22話 VS門の護り手

「……うにゅ?」

「――起きて、栞」

「……ウィンダ?」

 

ゆさゆさと揺すられる感覚で私は目を開ける。

見れば、やたら必死な表情のウィンダが私の身体を何度も揺すっていた。眠気に満ちた脳が衝撃でガンガンと鳴る。

久々の自室での睡眠。もっと眠りたい所なのだが……。

 

「ねえ!起きて!早くしないと――」

「――早くしないと?」

「爆……っ!」

「……スタンバイよし。発射!!」

 

私はそれ以上の言葉を口にすることは出来なかった。

 

「はにゃぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

爆音が私の耳を破壊する。

キーンと言う音が私の頭の中に響き、眠気をかなたまで吹き飛ばす。

 

「ほら、朝だぞ遊崎」

「三沢……」

「決闘の朝練だ」

 

目を下に向けると、その元凶。《可変機獣ガンナードラゴン》のソリッドヴィジョンを出現させていた三沢はにやりと笑むのが見えた。

私の隣ではウィンダが「だから言ったのに」と肩をすくめる。

 

「――セブンスターズは今は大人しいが、何時出てくるとも分からない。七星の鍵が二本失われた現在、出来ることはやっておかないとな」

「あの……悪いのですが、既に私は鍵を奪われてしまいましたので……」

「だからこそ、だ。戦いから抜けたといっても、狙われる可能性もある。相手は無法者だ。気を抜いて人質になったら目も当てられない」

「……そう……ですね」

 

カミューラさんとの戦いの敗因はどちらも人質によるもの。参加していないからといって人質にならない可能性はない。身体は鍛えておくべきだろう。

 

「じゃあ、分かった所で朝練するか」

「はい。先に行っていてください」

 

三沢の言葉にうなずきながら私は部屋のドアを閉める。

寝巻き代わりのジャージをいつもの制服に着替えるまで30秒。

簡単なスキンケアをした後、髪を梳いて一部を三つ編んで鏡を覗けば普段の自分だ。

中学生までの頃は眼鏡、高校では高校デビューをもくろんでコンタクトレンズ(デビューには失敗した)の私だがこの学校に来てからはもっぱら裸眼だ。この学校、空気がいいのか視力が劇的に改善している。

ちなみにレッド寮の鍵に関しては気にするだけムダだ。カード一枚隙間に挟めばあけられるし、それがなければちょっと角度をつけて叩くだけで充分な隙間が開く。門限を良く破る十代が考え出したらしいが、他の生徒を見る限り似たようなことが横行しているようだ。……かく言う私も使用したことがあったりする。

 

「――さて、行きますか。ウィンダ」

「意外と付き合いいいね」

「『友達』ですから」

 

呆れたように声を出すウィンダに曖昧な笑みを返す。

私にはこうして苦労を共にする友人は居なかったので、こういうイベントでもすこしだけワクワクしてしまう。

伸びを一つして、部屋の外へ出る。

外は抜けるような青空だった。

 

――

 

「――1.2.ドロー!」

「「「1.2.ドロー!」」」

「1.2ドロー」

「こら!遊崎!手が下がってるぞ!」

「は、はいっ!」

 

私と三沢、そして十代、翔君、隼人君が左手に決闘盤を置き、何度も何度もドローする。引いたカードは瞬時に手札、墓地、除外ゾーン、魔法ゾーンなどにおいていく。

ドローの素振り。この世界では小学生からプロになるまで誰もが行う行為でアカデミアのカリキュラムの基本編にも盛り込まれている。

 

「はぁっ……はあっ……」

「やっぱり素振りが足りないようだな、遊崎」

「……っ……はい……っ」

 

最初は何のためにやっているのか分からなかったが、今となっては良く分かる。

決闘盤は意外と重い。三沢曰く1200gである。最新技術の塊としては随分軽いがそれでも重いものは重い。

短時間持つ分には全く問題はないが、問題は長時間持った場合である。いくらベルトで重さを分散させているとはいえ、だんだんと手は垂れ下がり、ドローのときに身をかがめなければならなくなる。下手をすれば墓地のカードが排出される際取り損ねたり、体勢を崩して手札をさらすという事になりかねない。

また、体力の減衰による思考能力の低下も問題だ。長いターン持ち続けてプレイングミスをしたら目も当てられない。

事実、体力不足でデッキの最後のカードを引き終わって息を切らしている今の私が冷静にカードを操れるかといえば無理である。私は小さくため息をつく。釣られて三沢も小さく肩を落とした。

 

「まあ、ここで動きすぎてオーバーワークされても困るから素振りは少し休憩にしよう」

「漸く休みかあ!」

「残念だが、今からデッキのチェックだ」

「ちぇ、そういうことか」

「……というか護り手じゃないボク達は何で参加してるんスか」

「なんだな」

 

許しが出たので、近くの岩に適当に腰をかける。ほてった身体を海風が撫でる感覚が心地いい。

お互いのデッキを交換して内容をチェック、採用について考えていく。

 

「――ええと、このデッキだったら《一回休み》を3枚積んで《ライオウ》を削るのはいかがでしょうか」

「しかし、《一回休み》だけだとどうしても特殊召喚されてしまう。君が《エルシャドール・シェキナーガ》を呼んだら効果を使われてしまう上に防御力3000だ。容易な突破が難しい。《クラウソラスの影霊衣》や《グングニールの影霊衣》でも同じだ」

「ですが、カウンタートラップの条件もありますし、なにより自らのサーチ封じも痛いですよ。このデッキはサーチ効果を連打しますし……あれ、このカードは……」

「……ピケル、ね」

「どうした?遊崎」

「い、いえ、なんでもないです」

 

三沢のデッキの構築について議論を交わす。

途中で何かデッキコンセプトにあわないカードがあったような気がするが全力で見なかった事にする。

誰しもついつい入れたくなるカードがある。そういうことだろう。

下手に突っ込むのは野暮……というよりも薮を突いて蛇を出す趣味はない。

三沢に訝しげな顔をされるが、見てないものは見ていないのだ。

 

「あ、栞さん。このモンスターはやっぱかわいいっスね」

「本当なんだな」

「《リチュア・エミリア》ですか」

 

丁度いい事に隣で私のデッキについて翔君がこっちに話を振ってくれた。

赤髪の少女、翔君に見せられたカードを私は手に取る。

前の世界でリチュアデッキは何度も組んでは解体したが、このカードと《リチュア・エリアル》は中々抜くことがなかった(とはいえ、対戦はしたことはなかったので抜く、抜かない以前の問題ではあったのだが)。

この世界に来てからと言うもの抜いたことは一度もない、大切なカードだ。

 

「《イビリチュア・ガストクラーケ》はちょっとこわいっスけどこっちはアイドルって感じっス」

「確かに可愛いカードなんだな」

「そういえば翔君も《雷電娘々》を積んでいましたね――たしか隼人君は《治療の女神 ディアンケト》でしたか」

「えへへ……」

「なんだな。このカードを見てると故郷のガールフレンドを思い出すんだな」

 

私の言葉に二人は苦笑する。

雷電娘々は可愛らしいイラストを持っている上に、攻撃力1900と《ライオウ》《ブラッドヴォルス》に並ぶ攻撃力、かつ4レベル光属性というアドバンテージを持つカードだが中々使われないカードだ。

理由はその欠点。光属性以外のモンスターを出していないとこのカードは自壊してしまうのだ。特に翔君のデッキの主軸は地属性の機械族モンスター、出してもあっという間に居なくなってしまう。《スキルドレイン》さえあればアタッカーとして運用できなくもないが、それであったらより高相性かつ属性、種族が翔君のデッキと被る《深夜急行列車エクスプレス・ナイト》あたりを採用したほうが能率的だし、もしデメリットがいやだったら《アレキサンドライドラゴン》などの2000打点モンスターが居る。

隼人君の持つカード《治療の女神 ディアンケト》も1000のライフアドバンテージが得られるカードだが、分かりやすい上位互換である《ご隠居の猛毒薬》がある。あちらは速攻魔法な上に1200のライフゲインか稼げ、オマケとして800のバーン効果を選ぶことが出来る。

即ち、採用理由は愛に他ならない。

二人は恥ずかしそうに苦笑するが、正直私はそれでいいと思っている。

本人が選んだカードで、負けたときの言い訳にしなければそれでいいのだ。

 

「そういえばアニキも好きなカードあるっスか?」

「勿論!あるぜ――ほら!」

 

そういって十代がデッキから取り出したのは《カードエクスクルーダー》だ。てっきり《E・HEROバーストレディ》だと思っていたのだが、アイドルといえばこっちらしい。……謎の寒気が私の背筋を襲ったのでそれ以上は深く考えないようにしよう。

 

「――こら!デッキ構築にアイドルカードだと!?ちょっとたるんでるんじゃないのか!」

 

そんな風景にじれたのか三沢が叫ぶ。

勝つことに関してストイックな彼にとっては中々受け入れがたい文化であるのは間違いない。

厳しい顔をして私達を睨む。

 

「セブンスターズが来ているんだぞ!そう遊びを入れる余裕なんて……」

「でも、こういうカードって引いたときになんか安心するっス。プレイングが安定するというか、カードに見守られてるって感じがするっス」

「このライフゲインで勝てた試合があったりするんだな」

「《カードエクスクルーダー》の効果で栞がうっかり墓地に残した《リチュアの儀水鏡》を除外したことならあるぜ」

「う……だ、だがそれでも別のカードを入れたほうが絶対勝率はいいはずだ!」

 

とはいえ、多勢に無勢。

他の人たちのセリフに三沢がたじたじになる。

 

「もういい!決闘だ!その勝敗で決めよう!お前らの中で誰かアイドルデッキを持っている奴は居るか?」

「えー?オレ決闘はやりたいけどアイドルデッキなんて持ってないぜ?」

 

だが、彼とて決闘者、自らの言葉は中々曲げない。

ディスクを構え、すでに臨戦態勢。その瞳には信念がこもっていた。

 

「ねえ、栞。あいつ《白魔術師ピケル》をデッキにいれていなかった?」

「……そういえばデッキのカードは全部収めていましたね……」

「おい、遊崎、誰と話してるんだ?」

「い、いえ何でもありません」

「まあいい。……だが、この中で一番女性型のモンスターを積んでいるのは遊崎だったな」

「まあ、そうなりますね」

 

端末世界の中でも人型モンスターを多数使いたがるのは私の特徴。必然的に私のデッキは少女モンスターが沢山居る。

観念した私もディスクを構える。

 

――

 

「――決闘!」

 

遊崎 栞

LP4000

 

三沢 大地

LP4000

 

 

「私のターン、ドロー……私は《テラフォーミング》を発動し《脳開発研究所》をサーチ。そのまま発動します。そして手札から《霊獣使いの長老》を通常召喚」

 

霊獣使いの長老

ATK200 DEF1000

 

私が呼び出したのは長いひげと髪を持った壮年の男性。

厳しさと独特の稚気を纏った彼はにやりと笑った。

かつて端末世界で起こった騒乱の生き残りの一人。ガスタの少年が長い時を経て老人となった姿だ。

 

「やっほー、カムイ君」

「ようウィンダ姉ちゃん久しぶり……随分と変わったな。なんというか趣味が悪くなった」

「久々にあって言う第一声がそれ。相変わらず生意気ねえ」

「ま、三つ子の魂百までって所か。……実際紫ってどうよ。オマケに年齢詐称だし」

「あ・の・ね・え!」

「うわ!ちょっと待った。姉ちゃんの効果はワシに効く。ちょっと決闘が終わるまで待ってくれ!ほら!栞も何か……」

「……はぁ」

 

精霊同士の会話に私はため息をついた。

長年越しの感動の再会だと思ったが、そうでもないようだ。

助けを求めるようにカムイに見られるが私がかける声はない。

ただ単に呆れたというのもあるが、それ以外にも理由がある。

このデッキ、回すのが凄まじく難しいのだ。

アカデミアに来てから何ども練習したが、いまだに最適解が見つからない。さらに最近は負けられない決闘が多かった分、デッキを他の人と回す機会もなかった。

ここを逃したら、練習する機会は訪れない。

私は厳しい顔で対戦相手の三沢を見る。

 

「お、また新しいデッキか!」

「なんか前に見たガスタのモンスターに似ているんだな」

「……そうッスね。ダークネスの時は使ってなかったけどあのあと見せてもらったデッキに入ってる《ガスタの希望・カムイ》にそっくりっス」

「攻撃力の低いモンスター、ということは何かあるな……」

「《脳開発研究所》の効果によりサイコカウンターを置く事でさらにサイキック族モンスターを通常召喚できます《霊獣使いウェン》を通常召喚。そして《霊獣使いの長老》の効果で霊獣モンスターをもう一体召喚することができます――《精霊獣カンナホーク》を通常召喚します」

 

《霊獣使いウェン》

ATK1500 DEF1000

 

《精霊獣カンナホーク》

ATK1400 DEF600

 

次に現れたのは杖を持った女の子と、稲妻を纏った鳥。

女の子がウィンダを大分恐れのはらんだ目で見ると、ウィンダはあからさまに目を逸らした。

 

「一気にモンスターが3体っス……!」

「でもみんな能力はそこまででもないんだな」

「ウェンというのか……結構可愛いな……いや!なんでもない!遊崎のことだ。ここで終わらないだろう?」

 

頬を染める三沢に、ウェンがくすりと少しだけ微笑む。

恐れている顔より、こっちのほうがとても可愛らしい。

 

「私は《霊獣使いの長老》と《精霊獣カンナホーク》を除外し騎乗融合――《聖霊獣騎カンナホーク》を融合召喚します」

「まっかせろ!」

 

聖霊獣騎カンナホーク

ATK1400 DEF1600

 

「何!融合召喚とは融合カードが必要なのではないのか!?」

「霊獣の融合に、融合のカードは必要ありません」

「融合カードを使わない!くぅー!かっこいいぜ!ワクワクしてきた!」

 

巨大化した雷鳥の上にカムイが跨る。

能力こそ低いがこのデッキの要だ。

 

「私は《聖霊獣騎カンナホーク》の効果を発動します。このカードをエクストラデッキに戻して除外されている霊獣使いと精霊獣を守備表示で特殊召喚します――《霊獣使いの長老》と《精霊獣カンナホーク》を特殊召喚します。《精霊獣カンナホーク》の効果によりデッキから《精霊獣アペライオ》を除外します」

 

《精霊獣カンナホーク》

ATK1400 DEF600

 

霊獣使いの長老

ATK200 DEF1000

 

「――あれ?元に戻ったんだな」

「いや、除外したカードが増えているぜ。あの融合カードの条件だと――」

「私は再び《霊獣使いの長老》と《精霊獣カンナホーク》を除外し《聖霊獣騎カンナホーク》を融合召喚します」

 

聖霊獣騎カンナホーク

ATK1400 DEF1600

 

「そして《聖霊獣騎カンナホーク》の効果を発動します。除外ゾーンのカードを二枚墓地に戻す――《精霊獣カンナホーク》と《精霊獣アペライオ》を墓地に戻すことで霊獣と名のつくカードを一枚デッキから手札に加えます。さらにこの効果にチェーンし《聖霊獣騎カンナホーク》のもう一つの効果を発動しますこのカードをエクストラデッキに戻すことで除外ゾーンの《精霊獣アペライオ》と《霊獣使いレラ》を特殊召喚――。チェーンの逆順処理により《精霊獣アペライオ》と《霊獣使いレラ》を特殊召喚します。そして《精霊獣カンナホーク》を除外ゾーンから墓地に送り《霊獣の連契》を手札に加えます」

 

精霊獣アペライオ

ATK1800 DEF200

 

霊獣使いレラ

ATK100 DEF2000

 

続いて現れたのは金髪の少女と赤毛の獣。

バトンタッチするようにしてライオンに乗って現れた彼女はりりしく杖を構えた。

 

「分離したときに違うモンスターを選ぶことも出来るのか……《融合解除》とは大分違うな」

「墓地に戻るモンスターが一匹になってるんだな」

「恐らく《聖霊獣騎カンナホーク》の効果にチェーンして分離することで戻す数を減らしたっスね。……墓地と除外があべこべっス」

「レラ、か。なるほど可愛い……いや、なんでもない」

「ねえ、栞。あの三沢って男……」

(何もいわないで上げてください)

 

心の中で言葉を紡ぎつつ、次の手を考える。

打点重視かサーチを狙うか。

しばしの思考。

 

「――私は《霊獣使いウェン》と《精霊獣アペライオ》を騎乗融合し――《聖霊獣騎アペライオ》を融合召喚します」

 

聖霊獣騎アペライオ

ATK2600 DEF400

 

「攻撃力2600か……!」

 

私が呼んだのは霊獣のメインアタッカー。

最上級には及ばないもののそこそこの打点と攻撃を阻害されない力を持っている。

 

「カードを3枚伏せてターンエンドです」

「俺のターン、ドロー!――俺は《ヘカテリス》を手札から墓地に送りデッキから《神の居城‐ヴァルハラ》をサーチ、そして発動!このカードが場に存在し、俺の場にモンスターがないとき天使族を手札から特殊召喚できる!--出でよ!《光神テテュス》!」

 

光神テテュス

ATK2400 DEF1800

 

「上級モンスターをいきなり……凄い効果なんだな」

「いや、違うぜ隼人。あのカードは最上級モンスターも呼べるはずだ。それをしないってことは三沢が狙っているのは……」

「というか、なんか三沢君も可愛いモンスターを使っている気がするっス」

「十代、やっぱり鋭いな……行くぞっ!俺は《リロード》を発動!手札3枚をデッキに戻しシャッフル――そして3枚ドロー!このとき《光神テテュス》の効果を発動!引いたカードを見せ、それが光属性天使族であればもう一枚ドローできる!手札の《神秘の代行者アース》を見せてドロー!《シャインエンジェル》!さらにドロー!《コーリングノヴァ》!ドロー!《天空の使者ゼラディアス》!ドロー!《マスターヒュぺリオン》!ドロー!《大天使クリスティア》!ドロー!《力の代行者マーズ》!ドロー!《神聖なる魂》!ドロー!《ジェルエンデュオ》!ドロー!……ここで止まったか」

「……っ!」

「て、手札が12枚になったっス……!?」

「――さて、ここから三沢が何を仕掛けてくるか楽しみだぜ!」

 

《凡骨の意地》の天使族光属性版の効果を持つ《光神テテュス》。元のカードと違いドローフェイズに発動する必要がないため《リロード》とは高相性。デッキの内容を調節すれば大量ドローを可能にする。

 

「俺は手札の《天空の使者ゼラディアス》を墓地に送り《天空の聖域》をサーチ!そして発動!――さらに《神秘の代行者アース》を召喚!その効果により手札に《マスターヒュぺリオン》をサーチ!」

 

神秘の代行者アース

ATK1000 DEF800

 

「また可愛いモンスターっス」

「なんだな」

「ち、違う!俺はこのモンスターが必要だから……!」

「はいはいそうッスね」

「……もういい!俺は手札の《力の代行者マーズ》を除外して手札の《マスターヒュぺリオン》を特殊召喚!さらに場の《神秘の代行者アース》を除外してもう一体の《マスターヒュぺリオン》を特殊召喚!」

 

マスターヒュぺリオン

ATK2700 DEF2100

 

天空の聖域に炎を纏った天使が降臨する。

そのままでも墓地の天使を除外することで相手の場を一枚除外する効果を持つが、彼の本拠地である天空の聖域においてはその効果を1ターンに二度使用することが出来る凶悪なカードと化す。

 

「いきなり最上級の天使が二体も……!」

「まだだ……!俺はカードをセットして《手札抹殺》を発動!手札を6枚捨てて6枚ドロー!《光神テテュス》の効果で手札の《神聖なる魂》を見せてさらにドロー!……ぐ、ここで止まるか――!」

「いや、引きすぎっス」

「だが素材は揃った!俺は手札から《神秘の代行者アース》を除外して三体目の《マスターヒュぺリオン》を特殊召喚する!」

 

マスターヒュぺリオン

ATK2700 DEF2100

 

一気に並ぶ三体の大天使。

その能力を発揮すれば一気に6枚のカードが除外ゾーンに送られる。そのままダイレクトアタックを決められれば私の負けだ。

 

「罠を発動します――《霊獣の連契》。さらにチェーンして《聖霊獣騎アペライオ》の効果を発動して相手ターンに融合を解除し《精霊獣アペライオ》と《精霊使いウェン》を守備表示で特殊召喚します。そして《霊獣の連契》の効果で場の霊獣の数まで場のモンスターを選んで破壊します」

「融合解除を使って破壊する数を増やしてきたか……!」

「――三体の《マスターヒュぺリオン》を破壊します――!」

 

虚空を切り裂くように現れた霊獣と霊獣使いが大天使を切り裂く。

フリーチェーンの上対象を取らない破壊は強力だ。

隣でウィンダが小さく口笛を吹いて見せた。

 

「――ぐ、やるな……!だがまだ展開が終わったわけじゃない。墓地の《ヘカテリス》《天空の使者ゼラディアス》を除外して《神聖なる魂》を特殊召喚!さらに《一族の結束》を発動!墓地のモンスターは全て天使族のため攻撃力は800アップする!」

 

神聖なる魂

ATK2000→2800 DEF1800

 

光神テテュス

ATK2400→3200

 

「攻撃力3200っスか!?」

「同じ種族に縛る必要があるとはいえ、強力な効果なんだな……」

「――でも、栞。これって……」

 

分かったよね。と視線を向けるウィンダに頷きを返す。

全体攻撃力800上昇と言う強力な効果を持つ《一族の結束》だが種族統一という欠点を持つ。故に《エフェクトヴェーラー》《幽鬼うさぎ》などのハンドトラップを採用している可能性はかなり低くなるという意味とも取れる。

 

「――バトルフェイズ!《神聖なる魂》で《精霊獣アペライオ》を攻撃!」

「速攻魔法《霊獣の相絆》を発動します。《霊獣使いレラ》と《霊獣使いウェン》を除外し――《聖霊獣騎ペトルフィン》を守備表示で融合召喚します。さらに《精霊獣アペライオ》の効果を発動します。墓地の《精霊獣カンナホーク》を除外して霊獣モンスターの攻撃力守備力を500上昇させます」

 

聖霊獣騎ペトルフィン

ATK200→700 DEF3300

 

精霊獣アペライオ

ATK1800→2300 DEF200→700

 

「攻撃を巻き戻す!《神聖なる魂》で《精霊獣アペライオ》を攻撃!」

「――っ、敵はとります」

 

炎の獅子が天使のコーラスの前に沈む。

だが、彼は最後にカンナホークを除外ゾーンに送り込んだ上にペトルフィンを残した。

このままでは終わらない。

 

「――俺はバトルフェイズを終了、メインフェフェイズ2にカードを一枚伏せてターンエン……」

「エンドフェイズに《聖霊獣騎ペトルフィン》の効果を発動します。融合を解除して《精霊獣カンナホーク》と《霊獣使いの長老》を特殊召喚します。そして罠カード《霊獣の騎襲》を発動し墓地の《精霊獣アペライオ》、除外されている《霊獣使いレラ》を特殊召喚します」

 

霊獣使いの長老

ATK200 DEF1000

 

精霊獣カンナホーク

ATK1400 DEF600

 

精霊獣アペライオ

ATK1800 DEF200

 

霊獣使いレラ

ATK100 DEF2000

 

「……俺はこれでターンエンドだ」

「私のターン、ドロー。《サイクロン》を発動して《一族の結束》を破壊します」

「ぐ……」

 

神聖なる魂

ATK2800→2000 

 

光神テテュス

ATK3200→2400

 

「《精霊獣カンナホーク》の効果を発動しデッキから《精霊獣ラムペンタ》を除外します。そして《精霊獣カンナホーク》と《霊獣使いの長老》を除外し《聖霊獣騎カンナホーク》を融合召喚します」

 

聖霊獣騎カンナホーク

ATK1400 DEF600

 

「《聖霊獣騎カンナホーク》の効果を発動します。《精霊獣カンナホーク》と《霊獣使いの長老》を墓地に戻し霊獣カードをサーチ、その効果にチェーンして《聖霊獣騎カンナホーク》のもう一つの効果を発動、融合解除し《精霊獣カンナホーク》と《霊獣使いウェン》を特殊召喚します。そして《霊獣使いの長老》を墓地に送り《精霊獣ペトルフィン》をサーチ」

 

精霊獣カンナホーク

ATK1400 DEF600

 

霊獣使いウェン

ATK1500 DEF1000

 

「さらに《精霊獣カンナホーク》の効果を発動します。デッキから《英霊獣使い‐セフィラムピリカ》を除外します。さらに《精霊獣アペライオ》の効果により墓地から《霊獣使いの長老》を除外しこのターンの間霊獣と名のつくモンスターの攻撃力守備力を500上昇させます」

「このターンの間のモンスター全てか……!」

「地味だけど大きな差なんだな」

「さらに《精霊獣ペトルフィン》を通常召喚します」

 

精霊獣ペトルフィン

ATK0→500 DEF2000→2500

 

「《精霊獣ペトルフィン》の効果を発動します。手札の霊獣と名のつくカードを除外し、相手の場のカードを一枚手札に戻します――手札の《影霊獣使いセフィラウェンディ》を除外し《光神テテュス》を手札に戻してください」

「……ぐっ……バウンスか……!」

 

宙を舞う桃色の海豚がその尾で天使を弾き飛ばす。

能力で劣っていても、効果で何とかする。それが霊獣の強みだ。

 

「さらに《霊獣使いレラ》と《精霊獣ペトルフィン》を除外して《聖霊獣騎カンナホーク》を召喚、効果を発動します。そして除外された《英霊獣使いセフィラムピリカ》と《精霊獣ペトルフィン》を墓地に戻し手札に《精霊獣アペライオ》をサーチ、その効果にチェーンして融合解除、《精霊獣ペトルフィン》と《霊獣使いの長老》を除外ゾーンから特殊召喚します。さらに《霊獣使いウェン》と《精霊獣アペライオ》を融合し《精霊獣騎カンナホーク》を融合召喚し効果を発動。除外されている《霊獣使いウェン》と《精霊獣アペライオ》を墓地に戻して《霊獣の相絆》をサーチ、その効果にチェーンして《精霊獣アペライオ》と《霊獣使いレラ》を特殊召喚します。そして《精霊獣アペライオ》の効果で墓地から《霊獣使いウェン》を除外して霊獣モンスターの攻撃力守備力を500上昇させます。さらに《精霊獣ペトルフィン》の効果を発動し手札の《精霊獣アペライオ》を除外して《神聖なる魂》を手札に戻します」

 

融合解除と連結を連打して三沢の場を開け、手札にカードを加える。

これで準備は整った、あとは畳み掛けるのみ。

フィールドに立つ長老に目を向けると彼はどうよとばかりに不敵に笑んで見せた。ウィンダがちょっと気に喰わないとばかりに鼻を鳴らす。

 

「私は《霊獣使いレラ》と《精霊獣アペライオ》を除外し《聖霊獣騎アペライオ》を融合召喚します。さらに《精霊獣カンナホーク》と《霊獣使いの長老》を除外して《聖霊獣騎アペライオ》を融合召喚します」

 

精霊獣騎アペライオ

ATK2600 DEF400

 

私の前に現れたのは炎をまとう獅子。

その背に金髪の女性を乗せ、彼は高らかに吼える。

 

「攻撃力2600が二体……!」

「バトルフェイズ、二体の《聖霊獣騎アペライオ》でダイレクトアタックします」

「……まだだ!速攻魔法発動!《光神化》!手札の《大天使クリスティア》を攻撃力を半分にして特殊召喚!」

 

大天使クリスティア

ATK2800→1400 DEF2300

 

三沢の場に赤色の翼を持つ天使が現れる。

特殊召喚封じの力を持ち、一時は準制限になった強力なモンスターだ。

 

「うまい!《天空の聖域》があればダメージを受けないんだな!」

「だけど、《光神化》で呼び出されたモンスターはエンドフェイズに破壊される。不利なことは変わりないッスね」

「――バトルフェイズを続行します《聖霊獣騎アペライオ》で《大天使クリスティア》を攻撃します」

「ぐ――!」

「そしてもう一体の《聖霊獣騎アペライオ》でダイレクトアタックします!」

「ぐあああっ……!」

 

三沢

LP4000→1400

 

「そして速攻魔法《霊獣の相絆》を発動します――場の《精霊獣カンナホーク》と《聖霊獣騎アペライオ》を除外し――《聖霊獣騎ガイオペライオ》を融合召喚します」

 

聖霊獣騎ガイアペライオ

ATK3200→4200 DEF2100→3100

 

精霊獣が速攻魔法にあわせ、獅子へと吸い込まれる。

新たな力を得た獅子の咆哮が朝の光の中、こだました。

その圧力に三沢が後ずさるのが見えた。

 

「――攻撃力4200だって!?」

「《聖霊獣騎ガイオペライオ》で攻撃します――!」

「ぐ――ーぐあああああっ!」

 

三沢

LP1400→0

 

「私の、勝ちですね」

 

決闘の終了を確認し、私は膝を付く。

いくら体力を鍛えた所で、この体質は治ることがない。

 

「――そうみたいだな」

 

私の顔に影がかかる。

霞む視界に三沢の姿が映った。

その表情は逆行なこともあり私からは良く見ることが出来なかった。

 




タニヤをかくことに苦戦して茶を濁しました。
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