「私はアマゾネスの誇り高き戦士、タニヤ!私と戦うことが出来るのは男の中の男のみ!」
「――ならば俺だ!」
「いやオレだ!」
「俺だな」
「……俺が行こう」
アカデミアの奥に人知れず立てられていたコロッセオの主にしてセブンスターズの一角、タニヤの問いかけに四人の男が我こそはと叫ぶ。
隣で不機嫌そうな顔の明日香、おして何故かほっとした表情の栞がその様子を観察する。
「うーん。アンタね」
「分かった、俺が行こう。悪いな、十代、万丈目、カイザー」
「ちぇっ、こんどこそ戦えると思ったのに」
「ふん、負けるんじゃないぞ」
「三沢、頑張れよ」
数瞬の沈黙の後、選ばれたのは三沢だった。
やや不満そうな顔をする彼らを尻目にディスクにデッキをセットする。
「頑張ってくださいね、三沢」
「ああ、分かっている」
栞の言葉に三沢は深く頷く。
先日の敗北は彼にとって大きなものだった。
負けた直後は悔しさが支配したが、時が経つにつれ、三沢はその敗北は必然だったと考えるようになっていた。
あの時の彼はセブンスターズの襲撃を恐れるが故に、焦り、他人のデッキに当たるという真似をしてしまったのだ。勝てる道理がない。
緊張を失えば決闘は成り立たないが、緊張しすぎればまた力を損ねる。
適度に力を抜くためのメンタルトレーニングを重ね、状況に流されない精神を彼は手に入れようとしていた。
その様子を翔が『賢者モード』と称していたことを彼は知らない。
「さて、私は『力』と『知恵』、二つのデッキを持っている――私は『知恵』で生かせてもらおうか」
「――では俺、三沢大地は変幻自在な風のデッキでお相手しよう」
「決闘!」
コロッセオの中央で二人の決闘者が対峙する。
現代に蘇った剣闘士。その手に握るのは自らの剣(デッキ)である。
タニヤ
LP4000
三沢
LP4000
「私のターン!ドロー!――そういえば言い忘れていたが私は闇の決闘は好かん。故に別の条件を設けようではないか」
「――条件?」
「ああ、三沢。私たちアマゾネスは婿を得るために戦っている」
「稀人信仰。血を混ぜて強化するということか」
「わかって居るじゃないか。三沢が強ければ、婿に迎えてやる。私が勝ったら強引にな」
「では、俺が勝てば?」
「タニヤがお嫁さんになってあげる」
「――チッ」
さっきとは打って変わった口調でしなを作るタニヤ。
不快そうな表情を隠しもせず舌打ちする明日香の後ろから栞が小さく距離をとる。
「――私は《テラフォーミング》を発動!手札に《アマゾネスの里》を加えそのまま発動!――誇りあるアマゾネスよ!集え闘技の場に!」
彼女の号令に併せ闘技場の中に歓声が満ちる。
一人、また一人と女戦士がコロッセオを覆う。皆が皆、我こそはと武器を構え、好戦的な笑みを浮かべる。
「私は《アマゾネスの剣士》を召喚!《アマゾネスの里》の効果で攻撃力200アップ!――さあ、出番だ!」
アマゾネスの剣士
ATK1500→1700 DEF1600
彼女の声にしたがアマゾネスの一人がコロシアムの中央へと躍り出る。
食らったダメージを相手に反射する能力を持つ彼女は、倒されても戦線を維持するアマゾネスの里と併せて中々の戦力となる。
「カードを二枚伏せてターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー!永続魔法《炎舞‐天璣》を発動してデッキから手札に《妖仙獣‐鎌参太刀》を手札に加える。またこのカードが場にあるとき獣戦士族モンスターの攻撃力は100上昇する!」
「サーチしつつ能力を上げる、面白いカードだな」
「それはどうも――俺は《妖仙獣‐鎌弐太刀》を通常召喚!さらにこのカードの召喚に成功したとき効果を発動!妖仙獣と名のつくカードを召喚する。現れろ《妖仙獣‐鎌壱太刀》!そしてこのカードも同じ効果を持っている――来い!《妖仙獣鎌参太刀》!」
「いきなりモンスターが三体も――!」
妖仙獣 鎌壱太刀
ATK1600→1700 DEF500
妖仙獣 鎌弐太刀
ATK1800→1900 DEF200
妖仙獣 鎌参太刀
ATK1500→1600 DEF800
三沢の場に現れたのは狸の姿をした妖怪たち。
カマイタチの伝承に伝わる三人一組のモンスターが稚気を孕んだ不敵な笑みを浮かべていた。
一人目の鼬が転ばせ、二人目は切りつけ、三人目は薬を塗る。
その伝承を継承した能力は凶悪なもの。その威力を三沢は十代や栞相手に証明済みだ。
「――《妖仙獣 鎌壱太刀》の効果を発動!このモンスター以外の妖仙獣モンスターが居るとき、一ターンに一度相手フィールドの表側表示のカードを手札に戻すことが出来る!」
「罠発動!《救出劇》!このカードは相手がアマゾネスと名のつくモンスターを対象にしたとき、発動できる。アマゾネスを手札に戻して別のモンスターを手札から特殊召喚!現れよ《アマゾネス訓練生》!」
「上手く回避されたか……!」
アマゾネス訓練生
ATK1500→1700 DEF1300
突風に吹き飛ばされるアマゾネスの仇を取るかのごとく。若いアマゾネスが躍り出る。自らの策を上手くかわされた三沢はぎりりと歯をかみ締める。
「だってえ、三沢っち本気みたいなんだもーん。全力で行かないとぉ!」
「……ええと、どっちが本性なんだ」
「ふふ、本性ならさっきから見せているだろう?さて、どうするつもりだ、三沢っち」
「三沢っち言うな!バトルだ!――《妖仙獣 鎌弐太刀》で《アマゾネスの訓練生》を攻撃する!」
「ふふっ!情熱的な男は嫌いじゃないわ。――罠発動!《アマゾネスの弩弓隊》!このカードは相手の攻撃宣言時に使用でき、相手のモンスターの攻撃力を500下げる!さらに相手は全てのモンスターで攻撃しなければならない!」
「不味いっ!三沢のモンスターは全て下級モンスター。このままだと全滅するぞ!」
「……ぐ、打つ手がない……!」
「ならば、全員で攻撃してもらうわぁ。あと《アマゾネスの訓練生》は相手を破壊した場合墓地に戻さずデッキの一番下に送る。そして破壊した数だけ攻撃力が200アップする!」
「三沢!?」
タニヤの宣言に栞が小さく悲鳴のような声を上げるが、全てが遅かった。
自身のミスに三沢は苦い顔をする。
妖仙獣 鎌壱太刀
ATK1700→1200
妖仙獣 鎌弐太刀
ATK1900→1400
妖仙獣 鎌参太刀
ATK1600→1100
鎌鼬三兄弟の足元に矢が突き刺さり、その退路を断つ。
行き場を失った彼らは次々と訓練生に吸い込まれるように攻撃を行ってしまう。
「反撃、三連打よ!」
「ぐっ……ああっ……!」
アマゾネス訓練生
ATK1700→1900→2100→2300
三沢
LP4000→3700→2900→2000
「俺はカードを一枚伏せてターンエンドだ!」
「ふふ、諦めないその瞳も素敵ねえ……」
だが、三沢の目に諦めはない。
在るがままを受け入れ、それを活かす。そのためには絶望している時間など無い。
「――私のターン、ドロー!――私は《サイクロン》を発動!右のセットカードを破壊する!」
「罠発動!《強制脱出装置》だ。《アマゾネス訓練生》を戻してもらう!」
「きゃー!三沢っちやるー!――だがその程度!私は《アマゾネスの聖戦士》を召喚!このカードは場のアマゾネスの数だけ攻撃力が100アップする!聖戦士よ!この決闘に引導を渡せ!」
アマゾネスの聖戦士
ATK1700→1800→2000 DEF1600
りりしい雰囲気をまとう戦士が観客の歓声を受けながらタニヤの場に現れる。
その攻撃力は二重のバフにより三沢の残りLPの等しいものとなっていた。
「攻撃力2000か……!」
「この攻撃が通れば三沢のLPは0だ……だが、あいつがこの程度で終わるとは思えん……」
「バトルだ!《アマゾネスの聖戦士》で三沢っちにダイレクトアタック!」
「手札の《妖仙獣‐鎌弐太刀》を捨て《妖仙獣大幽谷響》の効果を発動!手札からこのカードを守備表示で特殊召喚する!」
妖仙獣 大幽谷響
ATK? DEF?
「攻撃力守備力の決まっていないモンスター……?だがここで止まったりはしない!攻撃しろ!《アマゾネスの聖戦士》!」
「《妖仙獣 大幽谷響》の攻撃力守備力は攻撃を行ったモンスターと等しくなる。破壊されるがこのときもう一つの効果が発動!デッキより手札に《妖仙獣 鎌壱太刀》を加える!」
「――うーん、三沢っちやるぅ!私はこれでターンエンドだ」
「上手く凌いだな……だが、これで三沢が打てる手は殆どなくなった――あとは」
「――あいつのドロー次第ってことか」
「だったら大丈夫だ。あいつ――三沢は強いぜ」
手札から飛び出した黒い影が聖戦士の一撃を受け止め、砕かれる。
しかし、その程度では転ばないのが妖怪だ。
墓地から飛び出した黒い影は三沢の手にカードを握らせていた。
「俺のターン、ドロー!俺は《強欲で謙虚な壷》を発動!デッキトップを三枚めくりそのうち一枚を手札に加え残りをデッキに戻す。そしてこのターン俺は特殊召喚できない。――俺が引いたのは《一回休み》、《強欲で謙虚な壷》――」
「……!」
引いたカードはどちらも有用だが、このターンにおいては意味のないカード。
宣言をされるたびに栞の顔が暗くなる。
残りは一枚。このカードによって勝敗が決まる。
「――最後だ!――《炎舞 天璣》!」
「サーチカードを引き当てた――!」
ドローしたカードを見て三沢は歯を見せて笑みを浮かべる。
この一撃で、終わらせる。
もとより妖仙獣はターン終了時に手札戻ってしまうのだ。
今の状況ではがら空きになってしまう。
「俺は《炎舞 天璣》を発動!俺が手札に加えるのは《妖仙獣 辻斬風》!そして《妖仙獣 鎌壱太刀》を召喚!効果で《妖仙獣 辻斬風》を通常召喚!」
妖仙獣 鎌壱太刀
ATK1600→1800 DEF500
妖仙獣 辻斬風
ATK1000→1200 DEF0
彼の呼びかけにこたえる二体の鼬。
飄々と構えた鎌から風が吹き荒れる。
その迫力にタニヤは思わず汗を流していた。
「《妖仙獣 鎌壱太刀》の効果を発動!《アマゾネスの聖戦士》を手札に戻す!」
「――っ!だがまだ私のLPは4000!削りきれまい!」
「さらに《妖仙獣 辻斬風》の効果を発動!《妖仙獣 鎌壱太刀》の攻撃力を1000上昇させる――!」
「攻撃力2800だと……!」
罠の加護もなく、アマゾネスが風によって吹き飛ばされる。
残るはがら空きのフィールドのみ。
「ダイレクトアタック!《妖仙獣 辻斬風》!そして《妖仙獣 鎌壱太刀》で攻撃だ!」
「ぐ……あああああっ!……見事な、ジャストキルだ……!」
タニヤ
LP4000→2800→0
直後、二体の妖怪がタニヤを切り裂き、そのLPを0へと落としたのだった。
「あと、半分だな」
三沢は自らのデッキをディスクにしまいながら小さく呟いた。
――
「この万丈目サンダーの目を誤魔化せるとでも思っていたのか?」
「ぐ――!ばれてしまってはしょうがない!行くぜ野郎共!」
「「「「応!!!!」」」」
「黒蠍一の力持ち、寡黙な眼帯、強力のゴーグ!」
「黒蠍一の器用者!めがねがキラリな罠外しのクリフ!」
「足では負けない臆病者、意外な実力者チック!」
「黒蠍の紅一点!色気を放つ大人の女性!茨のミーネ!」
「――そして俺、首領にしてセブンスターズの一角!ザルーグ!!!」
「五人合わせて――」
「「「「「黒蠍盗掘団!」」」」」
「……ふん、さっさとはじめようか」
レッド寮の前、正体を現したセブンスターズと万丈目が対峙する。
5年もの潜伏を瞬時にして看過したのは、決闘者特有の周到さ故か、それとも――
(《光と闇の竜》、お前もざわついているな――)
自らの精霊との繋がりゆえか。
デッキをセットし、しばし万丈目は瞑目する。
栞から譲り受けた切り札、その切れ味を確かめるかのように。
(だが、お前に頼らずとも――)
万丈目は瞳を開き、相手を見据える。
恐らく強い決闘者ではない。彼はそう判断した。
ここで《光と闇の竜》を使っていたら、自らの限界などそこが知れる。
闇のゲームの恐怖に負けていては意味がないのだ。
「「――決闘!」」
こうして万丈目にとって初めての闇のゲームは幕を開けた。
万丈目
LP4000
ザルーグ
LP4000
「俺のターン!ドロー!俺は《竜の霊廟》を発動!デッキから《ラビードラゴン》を送りさらに《ダークストームドラゴン》を墓地に送る。さらに《デコイドラゴン》を通常召喚!」
デコイドラゴン
ATK300 DEF200
「攻撃力300だと?ふざけやがって……!」
「ふん、攻撃力でしかモンスターを測れない決闘者か。俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」
「俺のターン!ドロー!俺は《増援》を発動して《黒蠍盗掘団》をサーチ!そのまま《黒蠍盗掘団》を攻撃表示で召喚!」
黒蠍盗掘団
ATK1000 DEF1000
「さらに《強制転移》を発動するぜ!お互いのモンスターは一体。ゆえにそれぞれのコントロールを入れ替える!」
盗掘団と瓜二つの姿をしたモンスターたちが、不意をついてドラゴンとの場所を入れ替える。
自らのほうを向いてにやりと笑う盗掘団の姿に、万丈目は不快さを隠す気もなく眉をしかめた。
「――どういうことだ?わざわざモンスターを明け渡すとは……」
「これから掘り出すのよ、俺のデッキから俺達の宝をよ!俺は《カバーカーニバル》を発動!3体のカバトークンを特殊召喚する!」
「いやーん、陽気なモンスターねえ」
「……」
「ひっ!アニキ!オイラをどうする気!?」
カバトークン
ATK0 DEF0
続いて現れたのはカーニバルの装いに仮装したカバ。
陽気な音楽を踊り出すカバに、自らの精霊が踊る姿を見た万丈目は冷たい目で精霊を睨む。
この状況は恐らく何らかの布石。
万丈目の頭は激しく回転し――そして一枚のカードを搾り出す。
「宝を掘り出す……攻撃力が0のモンスター……しかも攻撃表示……まさか、貴様!」
それはとある特殊勝利カード。
相手のカード効果によって墓地に送られることで効果を発揮するカード。
そのカードについての講義を佐藤先生がしていたことを万丈目は思い出していた。
「このカードを使うときは《強制転移》を使ったり――」
佐藤先生の言葉を頭で反芻する。
「そのまさかを見せてやるよ!俺は《デコイドラゴン》で《黒蠍盗掘団》を攻撃するぜ!」
「――っ!」
ザルーグ
LP4000→3300
小さなドラゴンが盗掘団に突貫。
ドラゴンを倒して気勢を上げた彼らはザルーグに襲い掛かりダメージを与える。
ダメージを受けたはずの彼はにやり、と顔の端まで届く笑みを浮かべていた。
「そしてお前の場の《黒蠍盗掘団》の効果が発動!ダメージを与えたときデッキから魔法カードを一枚墓地に送る!――俺が墓地に送るカードは《ジャックポット7》!」
「――やはりその特殊勝利カードか……!」
「そう、このカードは相手のカードの効果によって墓地に送られたとき除外される――そしてそのカードが3枚になったとき俺は勝利する!」
「……ぐ、お前の場にはまだ……」
「そう!そして俺の場には攻撃力0のトークンが3体居る――この意味が分かるな?青二才――行くぞ!カバトークンで《黒蠍盗掘団》を攻撃!」
「くっ……!」
ザルーグ
LP3300→2300
「さらに《黒蠍盗掘団》の効果で《ジャックポット7》を墓地に送り除外!これで二枚目――そしてこれで最後だ!《黒蠍盗掘団》を攻撃しろ!カバートークン!」
「罠発動!《強制脱出装置》!《黒蠍盗掘団》を手札にバウンスする!」
「ちっ!黒蠍ワンキル術が防がれるとは――!俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ!」
盗掘団が万丈目の罠によって吹き飛ばされる。
普段は相手の展開を止めるためのカードである物の、こういう使い方も出来る。盗掘団の手札に戻ってしまうためアドバンテージこそ取れないが、危機回避には最適だ。
「俺のターン!ドロー!俺は伏せていた《銀龍の咆哮》を発動!蘇れ《ダークストームドラゴン》!」
ダークストームドラゴン
ATK2700 DEF2500
万丈目の場に現れたのは黒い龍だった。
風を纏うその姿は荒々しく、龍の圧倒的な力を感じさせるものだった。
「ぐ……強力なドラゴンを呼んだか、だがこのターンは無理だといってやろう!俺の伏せカードは《聖なるバリア‐ミラーフォース》。攻撃した所でムダだ!」
「――ふん、ならば確かめてやろう。俺は装備魔法《スーペルヴィス》を発動!この効果により《ダークストームドラゴン》は再度召喚状態となる」
「デュアルモンスターか……」
「《ダークストームドラゴン》が得た効果効果は場の表側表示の魔法、罠を墓地に送ることでフィールド上の魔法罠を全て破壊する」
「残念だったな。俺が伏せているもう一枚は《ジャックポット7》だ。お前が破壊すれば負けが決定するぞ?」
効果の宣言に対して不敵に笑う黒蠍盗掘団の長、ザルーグ。
万丈目はしばし瞑目し――そして自らのモンスターに指令を下す。
「《ダークストームドラゴン》の効果を発動!《スーペルヴィス》を墓地に送り全てを破壊する――!」
「何っ!?」
烈風が吹き荒れ、両者の場を荒らしつくす。
数瞬後、そこにあったのは空になった魔法罠。
そして万丈目は自らが敗北していないことを確かめ、鮫のように笑った。
「ふん、伏せていたのは《攻撃の無力化》に《必殺!黒蠍コンビネーション》か……やはり三味線。その程度だな」
「ぐ……!何故破壊した!俺が《ジャックポット7》を伏せていればお前は終わりだったんだぞ!」
「当然の推理だ――お前に語る義理はない」
《ジャックポット7》のもう一つの効果、それは発動することでこのカード自身をデッキバウンスする力だ。
もし《黒蠍盗掘団》でワンキルを狙うのならば効果を発動してデッキにバウンスしてから効果を使った筈。故に彼は嘘をついたと万丈目は考えていた。一つの嘘を見抜けばもう一つを疑うのは必定。しかして彼はザルーグの嘘を見破っていた。
「――さて、《スーペルヴィス》にはもう一つ効果がある」
「もう一つの効果、だと?」
にやり、と笑いながら万丈目は自らのカードを墓地に送る。
同時に竜の咆哮が周囲に木霊する。
その声は、万丈目の墓地から響き渡るものだった。
「このカードは墓地に送られたとき通常モンスターを一体蘇生する――蘇れ《ラビードラゴン》!」
「何だとっ……!っておい!どうしたお前達!?」
「あー、この状況なら見捨てるわねえ」
「そうそう」
「間違いない!」
「お前ら……」
ラビードラゴン
ATK2950 DEF2900
現れたのは青目に次ぐ攻撃力を持つ龍。
高い攻撃力を持つ龍の登場に、ザルーグは周囲を見回す。
部下達はすでに遠いところに退避し、ザルーグを見守るのみ。
その様子に万丈目は小さくため息をついた。
「――これで終わりだ!《ラビードラゴン》と《ダークストームドラゴン》で《カバートークン》二体を攻撃!ダブルドラゴンブレスッ!」
「ぐわぁぁぁぁぁっ!?」
「「兄貴ー!」」
「お頭っ!?」
「あんたっ!?」
ザルーグ
LP2300→0
巨大なドラゴンブレスが直撃し、ザルーグの体が吹き飛ばされる。
数メートル吹き飛んだ後、何度か地面にバウンド、土煙を上げて着地する。
「……ふん」
万丈目は軽く鼻を鳴らすと、自らのカードをデッキケースに戻す。
ダメージゼロでワンショット、初の闇のゲームとしては上場の結果だ。しかし、不満げに万丈目は地面を蹴る。
足りない。
この程度の経験では恐らく遊崎や十代には及ばない。
命を削るような戦いを経験してきたものと、訓練してきただけのものでは必然、その強さは異なる。
(俺は、強くなる。絶対に……!)
あと3人の七星を思い浮かべ、万丈目は強く手を握り締めた。
――
「神と言われる決闘者かあ!やってみたいな!」
「どうせ一ターンで負けるんだ。意味がないな」
「そんなことないさ!オレのHEROは強いぜ。むしろビビッてるのか万丈目?」
「万丈目さんだ!――そんなわけないだろ!」
「ねえ、アニキ達、まだ授業中――」
「そろそろ止めないと先生に怒られますよ……」
「そこ、五月蝿いんだにゃ。そこの4人は居残りなんだにゃ」
「は、はにゃ!?」
「僕と栞さんまでッスか!?」
授業中騒いだ罰として居残りに狩り出された私と翔君は素っ頓狂な声を上げる。
切欠は最強の決闘者といわれたファラオについて大徳寺先生が話したことだ。
最近決闘の相手がマンネリ化している十代には魅力的な話らしく、やりたいと騒ぎ出す十代。そしてからかって結局熱くなる万丈目さん。止めようとした私と翔君が巻き込まれた形だ。
「そうだにゃ、どうせ居残り掃除なら人数が多いほうがいいからにゃ」
「――そういう理由っスか!?」
「……はぁ」
無茶な理由をでっち上げる大徳寺先生に私はため息をつく。
遠くの席で三沢が同情の視線を向けていた。
――
「ひ、ひええ!ヤバイっス!」
「ミイラ共がどうしてこんな所に!」
「カギヲ……カギヲヨコセ……!」
「こいつら、七星門の鍵を狙っている……!つまり七星の連中か!」
「……!」
「ちょっとした手伝いのつもりだったがこうなるとはね……」
数時間後、掃除を終えた私達を待ち受けていたのは大量のミイラの集団であった。
乾ききった咽喉の闇、その奥から掠れた声が響く。
一歩下がる私の前に手伝いと称して私達についてきてくれた三沢が護るように立った。
「下がれ遊崎っ!」
「ヨコセ……」
「カギヲ……!」
「三沢っ!?」
「大丈夫だ――!決闘者を舐めるなぁぁぁぁ!」
殴りかかってきた一人目のミイラを手刀で崩した後膝を鳩尾に叩き込む。その勢いを殺すことなく肘を二人目のミイラの後頭部に打ち込み動きを止め、踵で後ろに吹き飛ばす。二人目を足蹴にして跳躍した三沢は三人目をその勢いのまま裏拳で殴り倒す。倒れたミイラはしばらく痙攣した後、動きを止めていた。
流れるような動きでミイラを倒していく三沢の姿に私は思わず瞠目する。
決闘者が強いと思っていたがまさかこれほどとは。
みれば十代と万丈目さんもそれぞれミイラを仕留め終わっていた。
「コノ……!」
「三沢!後ろですっ!」
「――ちっ!」
数体を倒した三沢の後ろにミイラが迫る。
ミイラの右拳が無防備な後頭部を直撃するさまを想像して私は目を瞑る。
「詰めが甘いわね――!」
だが、直後に響いたのは鈍い打撃音ではなく、硬いもの同士が激突する音。
恐る恐る目を開くと、ウィンダがミイラの一撃を杖で受けとめ、弾き返していた。体勢を崩したミイラを風竜星ホロウの人形が噛み千切り、投げ捨てる。
「カギヲ……!」
「ああもう五月蝿い!」
「今のは一体――?だが、好機ッ!」
「よし、行くぞ万丈目!――おらあッ!」
「万丈目さんだ!おい!お前らもこの万丈目サンダーについて来い!」
「わかったッス!」
「は、はいっ!」
十代のアッパーと万丈目さんの蹴りが切り開いた道に全力で駆け込む。
みんな強い。このまま進めば何とか人の居るところに出る――そんな甘い考えが脳裏に過る。
だが、その期待は直後に裏切られる。
「何だ?あの光は」
「――っ!吸い込まれるぞ、気をつけろ!」
「わ、私まで吸い込むつもり!?栞!栞――!?」
不意に金色の光が周囲に降り注ぐ。
天空には巨大な飛行船が鎮座していた。中心から放たれた光は私を除く決闘者たち、そしてウィンダを包み、吸い込んでいく。
「――」
全員を吸い込んだ船がいずこへと消える風景を私はただ見ることしか出来なかった。
その周囲に立つのは、大量のミイラたち。
「シヌガイイ……」
「キエテシマエ……!」
「は、はにゃっ!?」
さっきより三割り増しで怖い言葉を吐きつつミイラたちは私との距離を詰める。
こういうとき頼りになるウィンダもさっきの船に吸い込まれてしまった。
「……ひっ……」
「キエロ!」
「クタバレ!」
「イナクナッテシマエ!」
亡霊たちのシュプレヒコールが私の周りをこだまする。
一歩、また一歩と下がるたびに輪が小さくなり、私は追い詰められる。
乾ききった四肢が見える。
落ち窪んだ眼窩が私を睨む。
掠れた声帯から呪いの声が響く。
「――ぐっ!」
背後からの一撃、思わずうつむいた私に連続して乾いた拳が叩き込まれる。
全身を貫く痛みに私は意識を手放していた。
――
「――」
暗い部屋で私は目を覚ました。
死の匂いが鼻をつく、乾いた空気が咽喉に入って気持ち悪い。
薄く目を開ける。
全身はくまなく打撲あり。口の中には鉄の味が広がっていた。指先こそ動くが他の部分は動かせない。視線を向けると太い鎖によって石版らしきものに繋ぎとめられている。
「――起きたか」
聞き覚えのない声が周囲に響く。
視線を上げると豪奢な装飾をつけた浅黒い肌をした男が立っていた。眼球だけが炎の照り返しを受けてぎらぎらとした光を放っている。
パンドラの使っていた《ブラックマジシャン》とほぼ同じ姿だ。
「みんなは?」
「まず聞くことがそれとはな……安心しろ。今頃我らが王――アドビス三世と闇の決闘をしている所だろう」
「アドビス三世って……たしか無敗の……」
「大丈夫だ、我が王は弱い。勝てていたのはいままで手加減をした神官としか戦っていない故だ。本気の決闘になれば負けてしまうだろうよ」
「は、ハあ……」
我が王、と表現したことから恐らく彼はその部下なのだろう。
しかし自らの主を弱いと表現するとは中々凄まじい精神である。私はほっとすると同時に曖昧な返事を返した。
「――それより、自らの心配をしたほうがどうだ?」
「……エ?」
咽喉から出たのは掠れた声。
自分のものとは思えないほど、その声は可笑しなものだった。
視界の端に黒い紐のようなものがうつる。その元を辿るように視線を動かすとそれは私の額にある黒い『なにか』から伸びていた。
「邪悪なる魔術師よ――お前のような存在と我が王を戦わせることは出来ん――お前はここで封印する」
「……ククク……」
声帯から私とは思えない声が漏れていく。
可笑しくて仕様がない。
彼は私を封印すると言った。
その事実が滑稽で、愉快だ。
――コノ程度ノ拘束デ『我々』ヲドウニカ出来ルとデモ?
「アハハハハハハハハハハハッ!!」
黒い闇が私の額の『それ』から吹き出す。
闇は鎖を侵蝕し、石版を染め、私の手に黒いディスクを形作る。
収められているデッキは、私がこの世界において使ったことのないもの。
端末世界を破滅へと走らせた禁断の力。
――ココハ好都合ダ。我ラノ力ヲ振ルッテモ見ル者ハダレモイナイ。
「ぐ――!最高級の封印を破るか――!ならば俺自身の力で戦うのみ!最強の戦士よ――俺に加護を!」
相手の男もその手にディスクを構える。
その様子を確認し、私は口の端まで届くような歪な笑みを浮かべていた。
打撲によって流れていた血を舐めると、塩辛い味がした。
それを美味しいと感じてしまう自分に気づいて、それが余計可笑しく感じられてしまう。
まるで、たちの悪い夢を見ているかのようだ。
「「決闘!!」」
――
黒魔術師
LP4000
遊崎 栞
LP4000
「俺のターン!ドロー!俺はフィールド魔法《混沌の場》を発動!手札に《超戦士カオスソルジャー》をサーチ!さらに《マンジュゴッド》を召喚!効果で手札に《超戦士の儀式》を加える!そして《増援》を使用してデッキから《宵闇の騎士》を手札に加える――」
「ククク……」
マンジュゴッド
ATK1400 DEF1000
連続サーチで手札を整えつつ、黒魔術師は歪な笑みを浮かべる少女を睨む。
王に隠れて悪を誅するのは神官の役目。たとえ世が変わろうと悪を見逃すことは出来ない。少女を発見できたのは幸いだ。――いつか爆発する爆弾は、爆発する前に叩き潰したほうがいい。
彼女を捕まえられたのは僥倖だ。普段彼女を守護している精霊は強力な闇の力を持っている為近づくことすら難しい。鍵のために動員したとはいえ、ミイラたちはいい仕事をした。
「――俺は《超戦士の儀式》を発動!手札の《宵闇の騎士》と場の《マンジュゴッド》を生贄に――光と闇をまといし出でよ!ディアハ最強の戦士!《超戦士カオス・ソルジャー》!」
超戦士カオス・ソルジャー
ATK3000 DEF2500
彼の声に応じ現れたのは剣を構えた戦士。
決闘王を支えたカオス・ソルジャー。その新たなる姿。
その剣は贄となった闇を纏い、栞の手札を貫く。
「――生贄となった《宵闇の騎士》の効果を発動!このモンスターを生贄として召喚したモンスターは相手の手札を一枚、相手のエンドフェイズ時まで除外する効果を得る!行けっ!『ダークネスナイト』!」
「小賢シイ真似ヲ……!」
吹き飛ばしたカードは裏側ゆえ確認できないが、相手の不快な表情から良いカードが落とせたのだろう。
彼は表情を引き締め、カードを宣言する。
「さらに俺は墓地の《マンジュゴッド》を除外し《カオスソルジャー -宵闇の使者‐》を特殊召喚する!このモンスターは墓地の光とが同数の時片方の属性を除外して特殊召喚できる!」
カオスソルジャー 宵闇の使者
ATK3000 DEF2500
「カードを1枚セットしてターンエンドだ」
――
「ワタシノターン――ドロー。私は《ハーピィの羽箒》ヲ発動します――相手の場の魔法罠を全テ破壊します」
掠れた声でカードを宣言する。
額から伸びた何かが私の指を動かそうとうごめく。
ウィンダの影糸とも違う、侵蝕される感覚。
精神を侵す哄笑が脳に叩きつけられる。
「ぐ――!《超戦士の盾》を発動!《ハーピィの羽箒》の効果を無効にして破壊する!」
「――ククク――《ヴェルズ・マンドラゴ》ヲ召喚スル!コノカードハ相手ノモンスターヨリ数ガ少ナイ時特殊召喚出来ル!」
ヴェルズ・マンドラゴ
ATK1550 DEF1450
「さらに《ヴェルズ・サンダーバード》ヲ召喚!」
ヴェルズ・サンダーバード
ATK1650 DEF1050
「なんだこの戦術は……?雑魚モンスターを守備表示にもせず並べるとは……」
相手の男がうろたえている。
無理もない。
このデッキは『この時代には存在し得ないもの』だからだ。
「ククク――私は二体ノモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ――邪悪に染まりし龍ブリューナク!ランク4《ヴェルズ・バハムート》!」
ヴェルズ・バハムート
ATK2350 DEF1350
「エクシーズ、召喚だと……!?どういうことだ……!」
「これから死に行くものに、説明ハ必要?――《ヴェルズ・バハムート》の効果ヲ発動!オーバーレイユニットと手札のヴェルズモンスターを墓地に送り――《超戦士カオスソルジャー》のコントロールを奪イ取ル!」
「なんだと……っ」
「さらにコントロール奪取した《超戦士カオスソルジャー》が《宵闇の騎士》を生贄トシタ時ノ効果ヲ発動!――《カオスソルジャー 宵闇の使者》を除外!――バトルフェイズに入ルっ!《超戦士カオスソルジャー》でダイレクトアタック――!」
「手札から《クリボール》を捨てて効果を発動!《超戦士カオスソルジャー》を守備表示に変更!」
「ダガ《ヴェルズバハムート》の攻撃は受ケテ貰ウ!」
「ぐ――っ!」
黒魔術師
LP4000→1650
龍の一撃が相手を直接焼き払う。
その風景を私はぼんやりとした目で見ていた。
口が、体が勝手に動く。
「カードを一枚セットしてターンエンド。ソシテハンデスされた手札が加ワル」
「ちっ……」
相手の人は舌打ちを一つすると、自らのデッキに手を置く。
まるで居合いの選手のように静かに、彼が集中の世界に入っていくのが見える。
どんな状況でも心はクールに、そんなことを三沢が言っていたのを思い出す。
「俺のターン――最強の戦士よ!我が戦いに勝利を――!ドロー!俺は《天使の施し》を発動!3枚ドローし2枚捨てる!《混沌の場》のカウンターを3つ取り除き手札に《カオスの儀式》を加える!――行くぞ!《カオスの儀式》を発動!墓地の《クリボール》と手札の《覚醒の暗黒騎士ガイア》を生贄とし――現れろ原初の戦士!ファラオを支えし練達なる魂!――《カオス・ソルジャー》!」
カオス・ソルジャー
ATK3000 DEF2500
「そして生贄となった《覚醒の暗黒騎士ガイア》の効果を発動!墓地、手札よりカオスソルジャーを特殊召喚する!宵闇よ――今一度我が場にて降臨せよ!《カオスソルジャー 宵闇の使者》を特殊召喚!」
カオスソルジャー 宵闇の使者
ATK3000 DEF2500
「バトル!《カオスソルジャー》で《超戦士カオスソルジャー》を攻撃!そして《ヴェルズバハムート》を打ち破れ!《カオスソルジャー宵闇の使者》!」
「グ……ッウ……!」
栞
LP4000→3350
痛みが全身を貫く。
ああ、これは闇のゲームだ。
だけれども、実感が伴わない。
あるのは、何処までも高揚していく心と、それをどこか覚めた目で見ている自分。
追い詰められているというのに、何も魂に波風が立たない。
「俺はこれでターンエンドだ――次のターンで、お前を殺す」
相手の男が鋭い瞳で私を射抜く。
ああ終わりか。
そんな言葉が私の中に響いた。額の上の闇は何かをしようと必死だが、恐らくムダに終わるだろう。
彼の顔を見ているとそれが良く分かる。
「私ノターン。ドロー」
私はデッキトップのカードに指をかけ、引いた。
――
「……!このカードは……!」
引いたカードを見て、私は目を見開く。
この状況で有用だから、それだけではない。
視界が急に開けたからだ。
闇が身体に満ちている感覚は変わらないが、脳が、肉体が思い通りに動くようになって行く。
右手に握ったカードが私に力と、言葉を送り込んでくれる。
「ガスタの巫女が居ないだけでこうなってしまうとはな――」
「にゅ、にゅう……すみません」
「否、責めている訳ではない――。命の危機に面すればその力はおのずと暴走する。それは仕方のないことよ……さあ、今すべきことは語らうことではない!――私を召喚するのだ!遊崎栞!」
頷く。小さく目を瞑り、深呼吸を一つ。
乾いた空気も、全身の痛みも変わらないけれど。
それでもやることは見えた。
闇に支配されてる場合ではない。
帰らなければ、会わなければ、ウィンダに、十代に、三沢に、みんなに――!
「私は《ヴェルズケルキオン》を通常召喚します」
ヴェルズケルキオン
ATK1600 DEF1550
私の場に現れたのは、セイクリッドを思わせる白い人型のモンスター。
その手に握られているのはリチュアとセイクリッドの杖。
端末世界の戦い――その終末にうまれた存在。破壊の力を持ち、神を討ったもの。
彼は私に振り向くと、頷いて見せた。
「《ヴェルズケルキオン》の効果を発動。墓地の《ヴェルズ・サンダーバード》を除外して墓地の《ヴェルズマンドラゴ》を手札に加えます――そして手札に加えた《ヴェルズマンドラゴ》を特殊召喚します」
ヴェルズ・マンドラゴ
ATK1550 DEF1450
「また4レベルのモンスターを二体――!」
戦慄する相手の顔が見えるが、ここで終わりではない。
あの伏せカードを鋭く見ているということは、対策を打たれているということだ。
「《ヴェルズケルキオン》のもう一つの効果を発動します。このカードが墓地のカードを手札に加えたターンヴェルズと名のつくモンスターを通常召喚できます――《ヴェルズヘリオロープ》を通常召喚します」
ヴェルズ・ヘリオロープ
ATK1950 DEF650
「三体のモンスター……まさか!?」
「さあ、行くぞっ――!この鏡を持て!遊崎!」
「私は三体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築――《ヴェルズ・ウロボロス》をエクシーズ召喚します!――さらに罠カード《エクシーズ・リボーン》を発動。このカードをオーバーレイユニットとし墓地の《ヴェルズ・バハムート》を蘇生させます」
ヴェルズ・ウロボロス
ATK2750 DEF1950
ヴェルズ・バハムート
ATK2350 DEF1350
黒を纏う竜二体が立ち上がる。
凶暴にして破滅の化身――そう表現された竜は、私の指先にあわせてフィールド内を飛び始める。
――彼が私の手に握らせた鏡が、その制御を可能にしているのだ。
「ぐ……だが攻撃力は下だ――!」
「《ヴェルズウロボロス》の効果を発動し墓地の《超電磁タートル》を除外します」
「なんだとっ……!」
「さらに《ヴェルズ・バハムート》の効果を発動。手札のヴェルズを捨て《カオスソルジャー》をコントロールを奪い取ります!」
「くっ……またコントロールを……!」
二龍のおぞましい咆哮が相手の墓地と場を荒らしていく。
黒い意思が私を乗っ取ろうとするのを理性と鏡の力で捻じ伏せる。
「《カオスソルジャー》で《カオスソルジャー・宵闇の使者》を攻撃します」
「……ぐ、ぐあっ……!」
奪い取ったモンスターで完全に場を空にする。
あとは――攻撃するのみ。
「《ヴェルズ・ウロボロス》でダイレクトアタックします――!」
「……ぐああああああああっ!?」
黒魔術師
LP1650→0
「……勝ちました、でも……」
黒魔術師の人が倒れるのを確認して、私はほっと息をつく。
それに伴い暗転する意識。
次は、どうなってしまうのだろうか――。
私の髪の色が変わっていたことを、その時の私は知らない。