胡蝶の夢 遊戯王GX世界   作:くらげ(仮)

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サイバー流ストラクを購入しました(今更)


4話 VSカイザー亮

(ここは静かです――)

 アカデミア埠頭の灯台。

 漣の音と潮風。

 十代や翔と話す時間は楽しいけれど、そうなると一人の時間も恋しくなる。

 なによりこの作業は一人でやるのが楽しいのだ。

 

「さあて、やりますか」

 

 まず耐水シートを地面に敷き、石で固定。

 リュックの中からデッキを取り出し、持っているカード群の入ったケースを取り出す。

 即ちデッキの手直し。

 デッキは決闘者にとって唯一無二の相棒。

 向かい合うときは出来れば一人でいたいのだ。

 少しばかり潮気がきついのが玉に瑕だが、この静けさが得られるならば安いものだ。

 

「《アイス・ハンド》《ファイアーハンド》を採用するとして……これだと事故の確率が上がる。レベル9の《トリシューラの影霊衣》をレベル8の《ヴァルキュルスの影霊衣》に替えてみる?……うーん」

 

 あーでもない、こーでもない。

 ぶつぶつ呟きながらデッキのカードを吟味する。

 展開力を下げないように、相手の行動を阻害する汎用罠を絞る。

 

「展開用カードを積む……これだと罠に対する耐性が少なくなってしまうし……」

「《王宮のお触れ》なんてどうだ?」

「ああ、成る程。これであれば採用枚数が3枚に絞れます……ってはにゃ!?」

 

 不意にかけられた声に、思わず持っていたデッキを取り落としかける。

 振り返ると、そこには蒼い髪が特徴的なイケメンが居た。

 オベリスクブルーで一般的な蒼ではなく、白を基調とした制服を着こなし、鋭い瞳はまっすぐと私を射抜く。

 カイザー亮こと丸藤亮。

 弟である丸藤翔の兄にして、この学園最強のデュエリスト。

 正直、オシリスレッドのドロップアウトガール(命名:クロノス教授)の私からすれば雲の上の存在である。

 

「か、カイザー先輩。ど、ど、どうしてこちらに……」

「ここが静かだからだ。ここだったら中々取り巻き連中も来ない平穏なときが過ごせる。後、カイザー先輩はやめろ。亮で良い」

「成る程。では丸藤先輩、私はこれで……」

 

 早々に退散を決める私。

 現在私は明日香さん相手に先攻全ハンデスを決めたことにより多くの人間から非難される立ち居地に居る。

 席に座れば後ろからボールペンでつつかれ、教師たちからは反リスペクトデュエルの例として教材にされる。私が《イビリチュア・ガストクラーケ》を使ったことについて謝らないのがその状況に拍車をかけた。

 ちなみに誰が拡散したのかは未だに不明。ジュンコさんやももえさん、明日香さんでないのは確かだ。彼女達は私を庇ってくれた。明日香さん曰く「何も知らずに人を一方的にたたくのはブルーの誇りとして許せない」だそうだ。

 ともかく、今の状況でカイザーと話すのは不味い。

 現在最悪な状況の私が、学園最高の人気者である彼と話しているのを発見されたら更なるやっかみの嵐が炸裂。この学校に精神的にいられなくなる。

 

「ちょっと待て」

 

 しかし、私の腕は無情にも掴まれてしまう。

 その腕力は洒落にならないほど強く、振り払うのは不可能のようだ。

 

「丁度お前とデュエルがしたかった。この場所なら誰もいまい。何、時間は取らせん」

「な、何故私!?」

「――クロノス、そして明日香に勝つほどのデュエリストに興味を持つな、という方が可笑しいだろう。それに、もし上手くいけば悩みのひとつくらいはどうにかできるかもしれん」

「はあ……」

 

 ここで下手に逃げれば、さらに状況は悪化する。

 私の気分はまな板の上の鯉だ。

 ならば、デュエルでまかりとおるしかないだろう。

 

「デュエル!」

 

遊崎 栞

LP4000

丸藤 亮

LP4000

 

「私の先攻、ドロー」

 

 デュエルディスクが示したのは先攻の文字。

 サイバー流は《サイバードラゴン》の特性上、後攻有利だ。

 ため息をつきつつも、手札を確認、即座に行動に移す。

 

「《魔界発現世行きデスガイド》を召喚、効果により《儀式魔人リリーサー》を特殊召喚します」

 

魔界発現世行きデスガイド

ATK1000 DEF600

 

儀式魔人リリーサー

ATK1200 DEF2000

 

 何処からともかく現れたバス、バスが停車すると中からバスガイドと小太りの魔人が現れる。

 3レベルエクシーズから素材の調達まで果たす、様々なデッキに出張する出来る女だ。

 

「《増援》発動。手札に《クラウソラスの影霊衣》をサーチ、《クラウソラスの影霊衣》を手札から墓地に送り《影霊衣の反魂術》を手札に。そのまま《影霊衣の反魂術》を発動。場の《儀式魔人リリーサー》を生贄に墓地から《クラウソラスの影霊衣》を守備表示で儀式召喚します」

 

クラウソラスの影霊衣

ATK1200 DEF2300

 

怪鳥を模した鎧の戦士。

もしかしなくても《影霊衣の術師シュリット》である。

術師なのに戦士族な点に突っ込んだら負けである。

 

「さらに手札を一枚捨て、魔法カード《マスクチェンジ・セカンド》を発動。《魔界発現世行きデスガイド》を《M・HEROダーク・ロウ》に変身させます」

 

M・HEROダークロウ

ATK2400 DEF1800

 

 さらに現れるのは暗黒のHERO。

 その精悍な肉体は、まさかデスガイドがマスク被っただけとは思うまい。

 ……いや、ソリッドビジョンの動きにちょっとだけデスガイドの動きが残っていて、女の子っぽい動きになっている。……さすが海馬コーポレーション。

 

「カードを一枚伏せて、ターンエンド」

 

 顔を上げ、相手を見据える。

 相手はカイザー、この学園最強のデュエリスト。

 ほかの事を考えている時間はない。

 

――

 

「俺のターン。ドロー!」

 

(随分厄介なフィールドを作るものだ。流石十代が言っていただけはある)

 亮は一人ごちる。

 融合モンスターの効果を無効化し、攻撃力を0にする《クラウソラスの影霊衣》に、儀式素材になったとき特殊召喚そのものを封じる《儀式魔人リリーサー》、極め付けに手札を補充するたびにハンデス効果を持っておりその上墓地送りのカードを一方的に除外する《M・HEROダークロウ》だ。普通の生徒だったらあきらめるような布陣だ。

 だが、心に浮かぶのは諦めではない。強敵と戦えるという高揚である。

 目の前の少女は知らないが、亮は先日十代とデュエルした。

 久々の心躍る相手とのデュエルだった。そう十代に伝えたところ

 

「あいつ――栞って女の子なんだけどさ、あいつもワクワク出来るぜ!」

 

 と、教えてもらったのだ。

 その人物がたまたま人のいない灯台に居た。

 本当に僥倖である。

 

「俺は《サイバードラゴン・コア》を召喚」

 

《サイバードラゴン・コア》

ATK400 DEF1500

 

 サイバードラゴンの原核。丸みを帯びた蛇のような機械龍が現れる。

 本来は《サイバードラゴン》を呼ぶところだが、上手い手段をとられた物だ。

 

「《サイバードラゴン・コア》の効果発動!俺は《サイバーネットワーク》を手札に加える」

「では《M・HEROダークロウ》の効果で一枚カードを除外します――左端のカードを」

「除外されたのは《サイバードラゴン》だ。――魔法カード《エヴォリューションバースト》を発動!《クラウソラスの影霊衣》を破壊だ」

 

丸っこい機械龍。

だが、その口から放たれたのはサイバードラゴンそのものと同じ凶悪なブレス。

抗いようもなく戦士が呑み込まれる。

 

「クラウソラスが……」

「《機械複製術》でデッキより《サイバードラゴン・コア》と同名カード。このカードは《サイバードラゴン》として扱われる――即ち二体の《サイバードラゴン》を呼び出す。――さらに《パワーボンド》を発動!このカードは機械族の融合カード。その効果で召喚されたモンスターの攻撃力はもともとの攻撃力分アップする!《サイバードラゴン・コア》と《サイバードラゴン》を融合し――現れよ《サイバー・ツイン・ドラゴン》!」

 

《サイバー・ツイン・ドラゴン》

ATK2800→5600 DEF2100

 

《サイバー・ドラゴン》

ATK2100 DEF1600

 

 降臨する双頭の機械龍。

《エヴォリューション・バースト》を使った《サイバードラゴン》は攻撃できないが融合素材にしてしまえば問題はない。

 

「《サイバーツインドラゴン》は二回攻撃できるモンスターだ――さあ行くぞ!エヴォリューション・ツイン・バースト!二連打ァ!」

「――《ヴァルキュルスの影霊衣》を手札から捨て効果発動。墓地の《影霊衣の大魔道士》を除外して攻撃を無効にしバトルフェイズを終了します。さらに《影霊衣の大魔道士》の効果でデッキから墓地に《影霊衣の術師・シュリット》を送ります」

 

 二条の光線が闇のHEROに届く直前、墓地より白髪の老人の幻影が現れ、その攻撃を弾き返す。

 

「――防がれたか」

 

 心底楽しそうに亮は笑う。

 この学校で、彼と同等に戦えるデュエリストは少ない。

 かつては吹雪と言うライバルがいたものの、彼もいなくなった今では対等なデュエルなど夢のまた夢だ。この小手調べすら突破できないデュエリストすらいなかった。

 

「カードを二枚伏せ、ターンエンド。《パワー・ボンド》の効果により俺は2800のダメージを受ける」

 

LP4000→1200

 

《パワーボンド》の効力によって一気に亮の体力が削られる。

(《サイバージラフ》でダメージを0にしたかったが……)

儀式召喚のコストになると特殊召喚を封じる儀式魔人リリーサーは厄介な存在であった。

 相手の少女を見据える。

 最初こそおどおどしていたが、今は明らかに戦うものの目だ。

 次はどんな事を仕掛けてくるのか。亮は楽しみで仕方がなかった。

 

――

 

「私のターン」

 

 軽く息を吸い、吐く。

 私の背中には嫌な汗がじんわりと浮かんでいた。

(危ないところでした……)

 攻撃力5600の連続攻撃はたとえLPが8000あっても耐えられない領域の値。《ヴァルキュルスの影霊衣》が手札になければワンキルが成立するところだ。

 LPで差をつけることには成功したが、ボードアドバンテージは明らかにカイザーが上。

 そして伏せられているのは十中八九《サイバー・ネットワーク》だろう。《M・HEROダークロウ》が居るうちは問題ないが、いなくなってから破壊されれば大量展開によって即座に勝負が決まる。

 

 

「――ドロー。《儀式の準備》を発動。デッキから《クラウソラスの影霊衣》を手札に加え墓地から《影霊衣の降魔鏡》を手札に加えます。――そして発動。《影霊衣の術師・シュリット》を生贄に《クラウソラスの影霊衣》を儀式召喚。効果により手札に《ブリューナクの影霊衣》を加えます」

 

クラウソラスの影霊衣

ATK1200 DEF2300

 

「《クラウソラスの影霊衣》の効果発動《サイバー・ツイン・ドラゴン》の効果を無効化して攻撃力を0に。バトルフェイズ。《M・HEROダークロウ》で《サイバーツインドラゴン》を攻撃『HEROスマッシュ』!」

 

攻撃力を0として通せば終わり。

だが、それを簡単に許す男がカイザーと呼ばれるわけがない。

 

「罠発動!《サイバネティック・ヒドゥン・テクノロジー》。このカードは《サイバードラゴン》を素材とするモンスターもしくは《サイバードラゴン》を生贄に捧げることにより攻撃モンスターを破壊する!《サイバードラゴン》を生贄に《M・HEROダークロウ》を破壊!」

「さらに《クラウソラスの影霊衣》で《サイバーツインドラゴン》を攻撃!」

 

「サイバーツインドラゴン》を生贄に《クラウソラスの影霊衣》を破壊だ!」

「バトルフェイズ終了《ブリューナクの影霊衣》を手札から捨て《ヴァルキュルスの影霊衣》を手札に加えターンエンド」

「エンドフェイズに永続罠《サイバーネットワーク》を発動しておく」

 

防御用札を手札に入れてターンをわたす。

伏せカード一枚、モンスターはいない。

そして彼の手札は0枚。場のカードは《サイバーネットワーク》のみ。

 

――

 

「さあ、俺のターンだ。――良い目をしている。デュエルに没頭し、勝つと言う欲望が見える。最初見たときのお前はただの弱気な少女だったが、そうではないらしい。――栞」

「――はい」

「一点のライフも削っていない俺が言えるセリフではないが――勝たせてもらうぞ!こんな気持ちは久しぶりだ!」

 

 カイザーが高らかに吼える。

 二人は気づかない。

 彼と栞の対戦を見ている多くの人々がいたことを。

 

「栞のヤツ、カイザーにLPで勝ってる!?すっげえな。やっぱりあいつは強いぜ」

「あわわわ……栞さんに勝ってほしい気もするけど兄さんが負ける姿なんて見たくないッス」

「遊崎栞、只者じゃなかったんだな……」

「儀式モンスター対策を今度のデッキに組み込まなきゃな。要チェック人物が増えたよ」

「こら!みんなもう少し下がりなさい。見つかったら邪魔になるでしょ」

 

 草陰に隠れて観戦しているのはレッド寮の三人。

 昼間に誰にも告げずフラフラと寮を出て行く栞を見た翔が何か彼女が思いつめていると勘違いし、十代に報告しにいったのだ。

 彼女の最近の事情を知っている翔には、それが自殺志願者の動きに見えたのだろう。

 そのただ事ではない様子を説明された十代は、すぐに栞の居場所を探し始めた。ついでに手が多いければいいかと、偶々道であった明日香と隼人、三沢にも協力を要請。

 イエロー寮最強である三沢とブルー女子寮の実力者である明日香、二人が声をかければ多くの生徒が集う。特にブルー女子寮ではひそかに悪くいっていたことを後悔している生徒が多く、進んで栞探しを手伝った。

 そして、数分後灯台でデュエルをしている二人が発見されることとなったのだった。

 開始されているデュエルを中断するほどデュエルアカデミアの生徒は無粋ではない。

 ましてやカイザーのデュエルなのだ。中々見る機会のない彼の本気のデュエルを彼らは食い入るように見つめていた。

 

「俺は《天使の施し》を発動し3枚ドローして2枚捨てる。さらに《強欲な壷》を発動!2枚カードをドローする!」

 

 引いたカードを見てカイザーの目が細められる。

 自身のデッキが答えてくれたことを知る最高の笑み。

 

「魔法カード《サイクロン》発動!俺の場の《サイバーネットワーク》を破壊する」

「自らの場のカードを破壊!?」

「どういうことなんだな!」

 

《サイクロン》の暴風が《サイバーネットワーク》を吹き飛ばす。

その直後、《サイバーネットワーク》のあった場所から黒い渦が出現、中から機械の竜たちが飛翔する。

 

「《サイバーネットワーク》は破壊されたとき除外されている機械族・光属性モンスターをできる限り召喚するカード!《サイバードラゴン》3体と《サイバードラゴン・コア》を特殊召喚する!」

 

サイバー・ドラゴン

ATK2100 DEF1600

 

サイバー・ドラゴン・コア

ATK400 DEF1500

 

「なんだって!?」

「やっぱり兄さんは凄いや!」

 

 驚愕する三沢、そして目を輝かせる翔。

その二人に気づかないまま亮はさらに魔法カードを発動させる。

 

「魔法カード《融合》発動!《サイバードラゴン》3体を融合――見せてやろう俺のパーフェクトを!《サイバー・エンド・ドラゴン》!」

 

サイバー・エンド・ドラゴン

ATK4000 DEF2800

 

「サイバーエンドキター!」

「カイザー!カイザー!カイザー!」

「亮様―!」

 

フィールドに現れた機械龍。そして流れるように現れたサイバー流最強のモンスター。

その姿を見て興奮するなと言うほうが難しい。隠れてギャラリーに徹していたはずの生徒たちが歓声を上げる。

 

「どうやら、ギャラリーがいたようだな」

「……はにゃ!?」

 

 歓声に気づいた栞の顔が真っ青になる。

(ああ、もうダメかもしれません……)

 カイザーとデュエルしていたなんてバレたらどれだけやっかまれるか分からない。

 このままアカデミアに居ることが出来ない未来を想像し、首を垂れる。

 

「《サイバーネットワーク》で召喚したターンは攻撃が出来ない。俺はこれでターンエンドだ――遊崎」

「は、はい……」

「デュエル中、お前が考えなければいけないことは周囲に怯えることか?」

「!?」

「デュエルの時、デュエリストが考えるべきことは相手をリスペクトし自らのデッキを信じることだ!」

 

 その言葉に栞ははっとした表情で自らのデッキを見つめる。

(そうだ、この子達のために全力を尽くさないと。私に答えてくれるこの子達のために――!)

 目に力が戻る。

 どんな状況でも前を向き、全力を尽くすデュエリストの目。

 立ち直った栞の表情を見て、カイザーはふっと笑みを深めた。

 見れば十代や翔たちも笑っている。

 

「丸藤先輩。感謝します――」

 

 感謝の言葉を告げながら、少女はデッキトップに指をかける。

 防御札はあるが、この状況では焼け石に水だ。一ターン凌いだところで先は見えている。

 願うのはこの状況を打破できるカードだ。

 

「私のターン……ドロー!」

 

 

――

 

 ――引いたカードを見て、私は微笑む。

 この世界に来てから、辛い場面になるといつもデッキが適したカードをつれてきてくれる気がする。

 構築の力、確率論と言う人も居るだろう。

 だけど、私はこの現象を引き起こしているのは、きっとデッキとの絆だと思っている。

 デュエルの出来なかった私とずっと一緒にいてくれたカードたちが、今の私のために戦ってくれる。

 

「私は《E-エマージェンシーコール》を発動。デッキから《E・HEROプリズマー》を手札に加え。そのまま召喚します!」

 

E・HEROプリズマー

ATK1700 DEF1100

 

 現れたのは鏡の鎧を纏う英雄。

 姿を模倣し、新たな力を呼び込む能力を持つ。

 

「《E・HEROプリズマー》の効果発動。エクストラデッキの《サイバー・エンド・ドラゴン》を見せることでデッキよりこのカードの素材である《サイバードラゴン》を墓地に送り、このモンスターの名前を《サイバードラゴン》に変更します」

 

 鏡面に機械龍が映りこむ。

 数瞬後そこに現れたのは機械の龍だ。

 

「変身HEROか!くぅー!かっけー!」

「さ、サイバードラゴンなんだな!?」

「でも、攻撃力と守備力は変わってないし、姿を似せただけみたいっス。どうするつもりなんスかね」

「あいつのことだ。絶対何かをたくらんでいるに違いない」

「そうね。ただ単純に姿を似せるなんて行為はしないはず……」

 

ギャラリーたちがそれぞれ反応をしているとき、ただ一人丸藤亮は驚愕に目を見開いていた。

かつてサイバー流道場で行われた数々の試合。

その中で『奥の手』として繰り出されるとあるモンスターの存在に彼は思い至っていた。

 

「まさか……遊崎、お前は……」

「このカードは融合を必要とせず自分・相手フィールド上の《サイバードラゴン》と機械族モンスターを墓地に送り特殊召喚できます――」

 

 私が召喚条件を告げる。

 原初の核が、究極の機械龍が、私の機械龍に飲み込まれていく。

 

「――《キメラテックフォートレスドラゴン》を融合召喚します!」

 

キメラテック・フォートレス・ドラゴン

ATK0→3000 DEF0→3000

 

 その龍は不恰好な円盤に3つの機械龍の頭を持っていた。

 機械で出来た龍の咆哮が灯台に木霊する。

 かつてエクストラデッキには必須と呼ばれた対機械族最強のメタカードである。

 蒼眼と並ぶ超巨大モンスターの登場にギャラリーの歓声が一層大きくなる。

 

「バトルフェイズ。《キメラテック・フォートレスドラゴン》ダイレクトアタック『エヴォリューション・レザルト・アーティラリー』!」

「兄さんっ!?」

「まだ負けん!墓地から《超電磁タートル》を除外してバトルフェイズを強制終了する!」

 

 翔君の悲鳴のような声にこたえる様にカイザーが墓地のカードで攻撃を防ぎきる。

 打てる手はない。手札もたった一枚。

 

「ターンエンドです」

「俺のターン――まさか《キメラテック・フォートレスドラゴン》とはな。サイバー流までつかいこなすとは……師範とのデュエルを思い出した。――だが!俺は負けん!サイバー流なら俺に一日の長がある!ドロー!」

 

 カイザーがカードをドローする。

 彼とデッキの絆もどうしようもないほど深い。

 恐らく彼の手に握られているのはこの状況を打破するカード。

 

「このカードは、もう一つの切り札。あえて言うなら裏・切り札だ――墓地の《サイバードラゴン・コア》《サイバードラゴン》3枚《サイバーツインドラゴン》《サイバーエンドドラゴン》を除外し現れろ《サイバーエルタニン》!」

 

サイバーエルタニン

ATK3000 DEF3000

 

 かくして現れたのは巨大な龍の頭部を持つ機械龍。

 周囲に浮かぶのは材料とされた龍で作られたビットだ。

 

「このカードは特殊召喚したときこのカード以外の表側表示モンスターを全て墓地に送る!『コンスティレーション・シージュ』!」

 

 星座の形に作られたビットの包囲網。

 機闇龍を包囲したソレは、巨大な光の柱を作り出す。

 一声吼えた異形の龍は墓地へと姿を消した。

 

「さあダイレクトアタックだ!『ドラゴニスアセンション』!」

「きゃ、きゃあああああっ!?」

 

LP4000→1000

 

「俺はこれでターンエンドだ!」

 

 攻撃とともに凄まじい歓声が上がる。

 ついにLPは逆転された。

 手札は1枚。そしてずっと伏せていたカードが一枚。

 このターンのドローですべてが決まる。

 

「私のターン……」

 

 さあ、どうなるか。

 不安が全身に染み渡る。

 だが、私の心にあるのはもう一つの感情だ。

 強敵とデュエルできるという喜び――。

 

「ドロー!」

 

来たカードを確認する。

《サイバーエルタニン》を破壊し、勝利するために必要なカード。それが私の手札に来ていた。

 

「私は墓地の《影霊衣の反魂術》と《クラウソラスの影霊衣》を除外。手札に《影霊衣の降魔鏡》を手札に加えます。丸藤先輩――本日はデュエルをしてくださり、ありがとう御座いました」

「――来い!」

 

 遠まわしな勝利宣言。

 ソレを聞いた生徒達から悲鳴と歓声が上がる。

 

「伏せカードオープン《ヒーローアライブ》。LPを半分支払うことで《E・HEROエアーマン》を特殊召喚!」

 

栞 LP1000→500

 

E・HEROエアーマン

ATK1800 DEF300

 

「さらにこのカードの召喚時HEROを手札に加えます《E・HEROブレイズマン》を手札に加えそのまま召喚。効果により手札に《融合》をサーチ」

 

E・HEROブレイズマン

ATK1200 DEF1800

 

「《融合》を発動《E・HEROエアーマン》と《E・HEROブレイズマン》を融合し《E・HERO Great TORNADO》を融合召喚。さらに《影霊衣の降魔鏡》を発動。手札の《カタストルの影霊衣》と墓地の《儀式魔人リリーサー》を生贄に《ヴァルキュルスの影霊衣》降臨!」

 

E・HERO Great TORNADO

ATK2800 DEF2200

 

ヴァルキュルスの影霊衣

ATK2900 DEF1700

 

現れたのはマントを纏った風の英雄。そして機械の鎧を纏った壮年の男性だ。

その姿を見た瞬間、カイザーは目を見開く。

 

「《E・HERO Great TORNADO》の効果発動!このモンスターが召喚に成功した際相手モンスターの攻撃力を半分にします『ダウン・バースト』!」

 

《サイバー・エルタニン》

ATK3000→1500

 

「――二体のモンスターで攻撃!『ヴァルキュルスアームドスーパーセル』!」

「ぐわああああああっ!」

 

LP1200→0

 

 二人のモンスターによる連携攻撃。

 彼らの一閃は、この学園最強と言われるものの咽喉に届きうるものだった。

 

「やった、やりました……」

 

 彼らの一撃が決まる瞬間を見届けて、私の意識は闇の中へと落ちた。

 




列車対策にエクストラに入れていた、と言うのが真相です。
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