ここでぶつける適任が見つからなかったというのが大きな原因と言う話が……。
カイザー敗北。
その知らせはアカデミアの中に燎原の野火のように広がった。
しかも打倒した人間は今まで見下していたオシリスレッドの生徒だという。
その荒唐無稽な話をある者は頭ごなしに否定、ある者は嘘だと笑い、ある者はマグレと言った。
だが、多くの見物人がいたこと、そしてなによりカイザー自身の証言もあり事実だという意見が徐々に優勢になっていくのだった。
その噂の渦中の人物。勝者である遊崎栞は現在――
「うう……大丈夫かな……」
「心配するなって。何とかなるだろ!」
「そんなこと言ってられないッスよー!?」
「気張るしかないんだな!」
「こうなったら神頼みっス!死者蘇生のカードに祈るっスよ!」
オシリスレッドの一室。
明日行われる月一試験対策小規模勉強会と称して行われたその光景は早々にカオスと化していた。
「しかし栞さんって意外と成績悪いっスね」
「確かに、意外なんだな」
「――う、うう……」
確かに私は真面目に授業を受けているという自負はある。
だが、デュエルするたび気絶するという難儀な体質が災いし、実習や体育がある日の授業は半ドンになってしまうことが多い。さらにはカイザーに勝利したせいか野良デュエルを仕掛けてくる人も多く、そのたび倒れる私の出席はかなりギリギリだ。
一部の先輩がデュエルマッスルを鍛えようと様々な課題を課したものの、体力のない私の気絶回数が増えるだけにとどまっている。
「ええと《暗黒界の龍神・グラファ》はコストで捨てたら効果は発生しますか?」
「《グラファ》?美味しいのか?」
「アニキ……手札から捨てたら発動するっスから発動っスね!」
「そう思うんだな!」
残りの三人はこの調子である。
正直一夜漬けで何とかならなそうな気もしなくもないが、やらずに後悔するくらいならやって後悔。
翔君が回収したプリントを眺め、細かくノートに取り直す。
途中で十代に実践と称してデュエルに誘われるがその手には乗らない。実際にはやりたくてしょうがないのだが、デッキ自体を部屋においてきた。これで物理的に時間の寄り道を防ぐやり方だ。
「さて、私はそろそろ戻ります」
数時間ほどノートを取るころには、私以外は全員寝息を立てていた。
これだったら自らの部屋に戻って勉強したほうが良さそうだ。
全員に軽く毛布をかけてから、自らの部屋へと戻る。
「あれ?鍵が――」
鍵を開けてしまったまま出てきてしまったのだろうか。訝しげに思いながら自らの部屋の扉を開け――。
「はにゃぁぁぁぁぁ!?」
そして私は自らの迂闊さを呪った。
――
「クロノス先生!ありがとう御座います!」
「ベネ!しっかりと勉強して立派なエリートになるノーネ!」
オベリスクブルー寮監であるクロノスは、分からないことを聞きに来た生徒を笑顔で送り出した後、深くため息を付いた。
「ううむ……どうすればいいノーネ」
クロノスは悩んでいた。
目下の悩みの原因は二つ。ドロップアウトボーイこと遊城十代&ドロップアウトガールこと遊崎栞である。
両者ともクロノスの鼻を明かした上に成績の悪い問題児。
腐ったりんごは間違いなく全てのりんごを腐らせる。
今はレッドに居るから被害が少ないがもし月一試験で彼らがラーイエロー、そしてオベリスクブルーに編入するようなことがあれば……風紀の乱れきったオベリスクブルーを想像しクロノスは頭を抱えた。
彼らはかなり腕の立つデュエリストである。特にガールの方はカイザーまで打倒してしまっている。下手をしなくても昇格がありうる。
「ドロップアウトボーイにはシニョール万丈目をぶつけるとして……」
クロノスが持っているのは月一試験での対戦表だ。
月一試験は同レベルのデュエリスト、つまり同じ寮に居る人物を当てるのが基本だが、そんなことをしたら確実な昇格を約束してしまうようなものだ。次善の策として彼ら同士を戦わせる手もあるがそれはどちらかが必ず昇格するだけになる。
「もう一人、ガールの相手は……ムムム!思いつかないーノ!」
中等部最強の決闘者である万丈目にカードをわたせば十代に対抗できる。そう目算をつけながらクロノスは対戦表を漁る。
「シニョーラ明日香……は力不足になりそうなノーネ。シニョールカイザー……もしまたカイザーが負けたらこのアカデミアは終わりなノーネ!?」
何ページもめくるが適役のデュエリストが見つからない。
勝たせないのならカイザーが適役なのだが、もし大観衆の前でもう一回まけるようなことがあれば昇格は確定してしまう。
最悪の可能性を考え、クロノスは頭を抱える。
どうにかいい案がないか彼が頭を抱えていると、不意に彼の顔に影がかかる。
「ならば、わたしにやらせてくれないかしらあ……」
「シニョーラ……」
クロノスが顔を上げると、そこには一人の少女が居た。
彼はクロノスの返事を聞いて、顔の端にも届きそうな歪な笑みを浮かべたのだった。
「その代わり、一つだけ、条件を付けさせてもらうけどね」
――
部屋は完全に荒らされていた。
机の上だけでなく、ベッドの上やカーペットまで荒らされている。
そしてカードを収めていたリュックはひっくり返され、カードがそこら中に散乱している。
「あ……デッキ……デッキは……」
荒らされた部屋を夢遊病者のような足取りで歩く。
途中で転ばなかったのは一種の奇跡だ。
ゆっくりと確認したデッキケースの中身は……空になっていた。
床に散らばったカードを必死にかき集めて確認するが、リチュアや影霊衣と書かれたカードはすべてが跡形もなく消え去っていた。
「あ、う、ああ……」
意味のない言葉が唇の端から漏れる。
私のデッキ。
前の世界からずっと持ち歩いていたカードたち。
そして、この世界に来た私と一緒に戦い、私にこたえてくれた大切な仲間達。
「おい!?どうした栞!」
「――栞さんっ!?ってこれは……」
「め、滅茶苦茶なんだな!?」
私の悲鳴に起こされたのか、十代たちが部屋に駆け込んで来ていたことに、私は気づいていなかった。
――
「う……うう……デッキが……みんなが……」
「少し落ち着いたか?」
「ほら、お茶もってきたッス!」
泣き晴らした栞を十代はベッドに座らせ、詳しく事情を徴収。その間に翔は深夜だというのに茶を注いで渡していた。隼人は散らばったカードや荷物をまとめて片付ける。
まさに流れるような連係プレイで、彼らは栞を落ち着かせることに成功していた。
「つまり、部屋に戻ったらデッキを盗まれていたってことか」
「部屋に散らかってたカードは全部きっちり戻しておいたんだな」
「ひどいッス!絶対見つけてとっちめてやるっスよ!」
「私が……見ていなかったばっかりに……みんなが……」
「あんまり自分を責めるな栞。前を向いてないと見つかるものも見つからないぜ」
「分かってます、探さないと……」
「分かってない!今日はもう試験なんだ。栞は自分の身体を休ませろ。俺達も探すの手伝うから」
「でもっ!」
「待てっていってるだろ!」
立ち上がろうとしてふらついた栞の身体を十代は強引に座らせる。
顔面は蒼白、涙を流し続けた目は真っ赤で、その声は何処までも弱弱しい。
明らかにまともな様子ではなかった。
「栞――今日の試験で休んだりしたら、お前のデッキは喜ぶと思うか?」
「――っ!」
だからこそ十代は彼女を引き止める。
彼だって早く探しに行きたいのだ。
だが、すぐに出て行ったところで見つかるわけがないことも彼はわかっている。
「退学にでもなってみろ!二度と探すことが出来なくなっちまう!お前とデッキの絆は本物だ。絶対にお前の目の前に現れる……だから今は休むんだ」
「……わかり……ました」
その必死の説得が通用したのか、栞はゆっくりとうなだれる。
「さあ、もう寝ようぜ、栞」
「……はい……」
彼女がベッドに横になったのを確認し十代は電燈を消す。
「絶対……絶対に見つけます……」
彼女の寝言は弱く、痛々しかった。
――
「うう……やっぱりダメでした……」
月一試験。
午前中に行われていた筆記試験を受けた私は頭を抱えていた。
憔悴した心のまま受けたテストではいい結果が出るわけもなく、結果は散々だった。
隣を見れば翔君、そして隼人君もぐったりした表情だ。
唯一十代がけろりとした顔だが、あれは明らかに開き直った顔だ。
「どうだった……と聞くだけ無駄だなその表情だと」
「はい……」
席に着いたまま、三沢のセリフにぐったりと返事をする。
見れば既にレッドの三人組は購買へと走っていった。どうやらテストに向け新カードを買う気らしい。
私はソレに付いていくわけにも行かず、手荷物のリュックを開く。
まだ構築中のしてない試験用デッキ。それを今から完成させなければならない。
「あれ?遊崎は今から構築か」
「デッキを盗まれてしまって……」
そう言うと三沢は心の底から同情したような表情に変わった。
私の落ち度も大きいというのにしっかりと心配してくれる様を見て、少し申し訳ない気分になってしまう。
「それは災難だ。構築なら手伝うが……」
「すみません。お願いします」
三沢の心遣いが温かい。
リュックから取り出したカードを説明しながら二人で即席の戦術を練り上げていく。
「あと、三沢。このカードなのですが……」
「――ああ、そのカードなら確かにあまっているが……成る程な」
「本当にありがとう御座いました」
「いや、いいんだ。あのカイザーを倒したやつのデッキ構築を生で見られたんだ。安いものさ」
数分後、出来上がったデッキをデュエルディスクにセットする。
ほぼ即興に近く、一人回しをしたこともないという不安なデッキ。
だが、私の直感――そして、私の隣に立つ彼女は大丈夫と告げていた。
「しばらく宜しくお願いします――ウィンダ」
「ええ、友達のためだもん!絶対助けるんだから――!」
聴こえる声は幻聴ではなく、確かに私と共に戦うと告げてくれていた。
――
「宜しくお願いします」
「宜しくお願いしますねえ」
試験会場。頭を下げ、デュエルディスクを構える。
この試験会場は、普段と違って観客がほとんどいない。観客は一緒に入った三沢だけだ。
観客席では、三沢が私のことを応援してくれていた。デッキ作りにも手伝ってもらった。彼の善意が本当にありがたいと思う。
試験表に出されていた相手は青崎 晃と書かれていた。どうも2年上の先輩らしい。
正直、人と殆ど話す機会のない私が知っている相手ではない。
ただ、その名を見た三沢は随分とあわてたような表情で私を見ていた。「かなりの危険人物」らしい。
「今日はあのカイザーを倒したって言う栞ちゃんが相手なんてわたしとってもうれしいわあ」
彼女――青崎さんも微笑みながらデュエルディスクを構える。
だが、なんとなくその柔和な笑みに私は違和感を感じていた。
なにか、どす黒い何かが、皮膚の下に隠れている。
「その顔がどんな風に歪むのか楽しみい……大切なものを奪われたときの表情もそそるけどお……」
彼女が目を見開く。
この人は何を言っているんだ?
理解できてしまっている。だが、認めたくはない。
思わず私は一歩下がってしまう。
「もし信じていたものに襲われたらどんな顔になっちゃうのかなあ……」
――こうして、はじめての月一試験のデュエルは開始した。
青崎 LP4000
栞 LP4000
「わたしの先攻。ドロー……わたしは《リチュア・アビス》を召喚するよ。効果で《シャドウ・リチュア》を手札に加えるの。そして《シャドウリチュア》《ヴィジョンリチュア》を墓地に送って《リチュアの儀水鏡》《イビリチュア・ガストクラーケ》をサーチするの。――さあ。絶望の表情を見せて頂戴?手札の《イビリチュア・ガストクラーケ》を生贄に捧げて《リチュアの儀水鏡》を発動。《イビリチュア・ガストクラーケ》を儀式召喚」
イビリチュア・ガストクラーケ
ATK2400 DEF1000
リチュア・アビス
ATK800 DEF500
それは私にとって見慣れたモンスターだった。
美しい赤髪少女の上半身。そして烏賊のような下半身。
私は自らの体温が下がるのを感じていた。
再会できて嬉しいのに。それ以上に悲しい。
「うふふ――いい表情ねえ。効果を使ってあなたの手札を2枚ピーピングして1枚デッキに戻すわあ――《マスマティシャン》をデッキに戻して頂戴。――《リチュアの儀水鏡》の効果で手札に《イビリチュア・ガストクラーケ》を加えて《リチュアの儀水鏡》をデッキに戻してシャッフル――さらに《シャドウ・リチュア》を手札から墓地に送って《リチュアの儀水鏡》をサーチして発動《イビリチュア・ガストクラーケ》を生贄に《イビリチュア・ガストクラーケ》を儀式召喚。また手札を2枚見て1枚デッキにぽいっとしちゃうの――《溶岩魔人・ラヴァゴーレム》をデッキに戻して頂戴」
それは、いつかの再現だった。
触手が手札を貫き、デッキへと戻していく。
違うのは私に対してそれが行われているということ。
「カードを2枚伏せてターンエンド。――どう?手札を捨てさせられる気分は?悲しいよねえ?悔しいよねえ?あなたってぼっちなんでしょ?わたしそういうの良く分かるもん――ねえ、ねえ!ねえ!今どんな気持ち?」
「――私のターン――ドロー」
「あはは!都合が悪くなったら無視するんだ!さっさとこっち向けよこのぼっちが!トラップ発動!《水霊術―葵》。《リチュア・アビス》を生贄に手札を全て確認して一枚捨てさせる――《終末の騎士》を墓地に送れよ!これでぼっちの手札には弱小モンスターだけ!あっははー!ぴったりだよねえ!どんなデッキにも入れないようなくずモンスターがピッタリ!ジャストフィットだよ!」
あっという間に手札は3枚。
しかも全てピーピング済みという状況。
ほぼ最悪といっていい。
何より、私の大切な子が相手に奪われているのだから。
――だが、相手はミスを犯している。
ビートダウン主流のこの世界が、私の戦術を看過させなかった。
「私はフィールド魔法《影牢の呪縛》を発動」
染み渡る。堕ちて行く。
闇が、私の足元から溢れ出して行く。
相手の場を埋め尽くす漆黒。
影は、《イビリチュア・ガストクラーケ》を呑み込もうと、その周囲をぐにゃぐにゃと蠢く。
「な、なんだ……これ……」
「さらに《クリバンデット》を通常召喚」
クリバンデット
ATK1000 DEF700
「カードを一枚セットし。エンドフェイズに《クリバンデット》を生贄に捧げ、デッキトップから5枚めくり魔法、もしくは罠カードがあった場合1枚を手札に加えそれ以外を墓地に捨てます。――返してもらいます。私の大切な子を」
「はっ……ただの墓地肥やしじゃねえか」
「私は5枚のうち《神の写し身との接触》を手札に加えます。そして、残り四枚は墓地に――《シャドール・ヘッジホッグ》、《シャドール・ファルコン》、《シャドール・リザード》《シャドール・ビースト》の効果が発動します」
糸が、墓地の中から次々と這い出していく。私はソレを手繰り寄せる。
気分は滑稽な人形遣いだ。
かつて端末世界を戦った者たちを取り込んだ『人形』たちが、今の私の剣だ。
「《シャドール・ヘッジホッグ》は墓地に送られたときデッキからシャドールモンスター一体を手札に加えます。《シャドール・ファルコン》を手札に。そして墓地に送られたほうの《シャドール・ファルコン》の効果発動。このモンスターは墓地に送られたとき裏側守備表示で特殊召喚できます。《シャドール・リザード》の効果発動。デッキから《影依の原核》を墓地に送ります。さらに《影依の原核》の効果発動。デッキから《影依融合》を手札に加えます。最後に《シャドール・ビースト》の効果で1ドロー」
糸を引きずり出すたびに、効果が処理されていく。
糸が指に巻きつくたびに、まるで自分が人形になったような錯覚すら覚えていく。
人形使いの人形。なんとなく可笑しくなってしまう。
「《影牢の呪縛》の効果発動。このカードはシャドールモンスターが墓地に送られるたびに相手に魔石カウンターを置きます。このターンに4枚送ったのでカウンターは4つ。カウンターの数だけ相手はそのターンの間攻撃力を100ポイントダウンさせます――私はもう一つ、カウンターが三つ以上載ったモンスターに対する効果を使用します」
黒い泥が、《イビリチュア・ガストクラーケ》にまきついていく。
もう殆どその原型が分からないほどだ。
蠢く闇の中から見えた指は、既に人形のように硬質化していた。
一緒に堕ちよう。闇の中へと。
だから、私は気づかない。相手がうろたえるふりをしていることに。
そして、隠し切れない愉悦をたたえた笑みを浮かべていることに。
「――!?ダメっ、このタイミングだと――」
ウィンダの声が、やけに遠く聞こえる。
私は早くあの子を取り戻さないといけないのに。
「――カウンターが三つ置かれたモンスターを、私の融合素材として使用できます。速攻魔法《神の写し身との接触》発動。場の《イビリチュア・ガストクラーケ》と手札の《シャドール・ドラゴン》を融合――水の人形『よるのまもの』――《エルシャドール・アノマリリス》」
エルシャドール・アノマリリス
ATK2700 DEF2000
異形の人形が、そこに降臨していた。
その能力は魔法カードによる特殊召喚の抑制である。対儀式、融合に対して異常なまでの性能を誇る水属性モンスター。
「ターンエンドです」
「ふうん――こんなモンスターを呼ぶなんて。確かに実力はあるみたいだねえ。だが、ぼっちごときの限界はそこなんだよ!ドロー!」
――
「……拙いな。完全に冷静さを失っている」
二人の決闘を見ながら、三沢は静かに呟いた。
遊崎栞は確かに強い。何度かデュエルをしたことがあるが、そのすべてで三沢は土をつけられていた。
あのデッキもおそらく学園において上位に位置するものだ。
だが、それはまっとうに戦った場合だ。
デュエル以外のところでの戦闘に彼女はとことんまでに弱い。
いつも戦うとき、どこかわくわくした様子の彼女が、まったくデュエルを楽しんでいるようには見えない。
何か、開けてはならない蓋をあけてしまった。そんな気がしてならないのだ。
「――まず《強欲な壺》で二枚ドロー!《リチュアの儀水鏡》をデッキに戻して《イビリチュア・ガストクラーケ》を回収。さらに《天使の施し》で三枚ドローして二枚捨てる――さあ、もっと絶望しろ!伏せていた《月の書》を発動して《エルシャドール・アノマリリス》を裏側守備表示に。《サルベージ》を発動して《シャドウリチュア》《ヴィジョンリチュア》を手札に加えどちらも即座に捨てて《リチュアの儀水鏡》《イビリチュア・シールギガス》をサーチ!そして《リチュアの儀水鏡》を発動。《シャドウリチュア》を生贄に《イビリチュア・シールギガス》を儀式召喚!」
イビリチュア・シールギガス
ATK3200 DEF0
「攻撃力3200……!?」
「さらに《イビリチュア・シールギガス》の効果発動!LPを1000払ってデッキからカードを一枚ドロー。引いたカードがリチュアと名の付くカードだった場合場のカードを一枚バウンスする。――ラッキー!引いたカードは《シャドウリチュア》その目障りな人形を吹っ飛ばせえ!」
青崎
LP4000→3000
裏側守備表示にされ、効果の発動ができない《エルシャドール・アノマリリス》に巨人の効果を防ぐすべはない。
手札に戻れず、即座にデッキへと戻されていく。
「まずいっ!――!」
「バトルフェイズ、そこの屑モンスターに攻撃ぃ!さっさと巣に帰りやがれ!」
「……《シャドール・ファルコン》のリバース効果。このモンスターがリバースしたとき墓地からシャドールモンスターを一体裏側守備表示で蘇生させます。《シャドール・ビースト》を召喚。」
「ターンエンド――しつこいよ。そんなんだから嫌われるんじゃない?もしかしてストーカーの気でもあるの?やだ、付きまとわないでよ」
「落ち着けっ!相手の話を聞くな!」
「――ええ、ありがとうございます。三沢」
栞の表情は変わらない。
むしろ笑っているようにすら見える。
ただ、その下にどす黒いものが見えたような気がして、三沢は気が気でならなかった。
「私のターン。――《貪欲な壺》を発動。《クリバンディット》《シャドールリザード》《シャドールファルコン》《シャドールヘッジホッグ》《シャドールドラゴン》を墓地からデッキに戻して二枚ドロー。そして《シャドールビースト》を反転召喚します。効果で二枚ドローして一枚捨てます。《暗黒界の魔神・グラファ》を捨てて相手のモンスターを破壊」
墓地から出てくる糸が巨人を拘束し――そして破壊する。
「ねえ、先輩。私言いたいことがあるんです」
「――なんだよ。気持ち悪く友達になってほしいとか?」
「……黙れよ」
低く、呟かれたその声に、初めて青崎の動きが止まった。
三沢も、何も口にすることができなかった。
「《影依融合》発動。手札の《シャドール・ビースト》と《シャドール・ヘッジホッグ》を融合し――ウィンダ。お願いします。『さがしもとめるもの』――《エルシャドール・ミドラーシュ》を召喚します」
エルシャドール・ミドラーシュ
ATK2200 DEF800
呼びかけに答えたのは少女の人形。
その佇まいは可憐だが、どこか邪悪な印象を感じさせる。
「《シャドール・ビースト》の効果で1枚ドロー。《シャドールヘッジホッグ》の効果で《影依融合》を手札に。さらに《シャドール・リザード》を通常召喚」
シャドール・リザード
ATK1800 DEF1000
「――バトルフェイズ。《シャドール・リザード》で攻撃――!」
「は、はははっ!その程度でわたしを倒すことなんてできないんだよ!」
青崎
LP3000→1200
「世迷言を――《エルシャドール・ミドラーシュ》でこうげ――」
「これを見ろぉ!」
とどめを刺すべく動いたミドラーシュの杖が直前で止まる。
青崎の手に握られていたのは懐から取り出された一枚のカードだった。
「《リチュア・エミリア》――」
「そう、もし攻撃なんかしてみろ!このカードを破り捨ててやるよ!お前の大切なカードをな!」
「貴様ぁ!それでもデュエリストか!」
三沢が叫ぶ。
遊崎がカードを何よりに大切にしていて、特に《リチュア・エミリア》を大切にしていることを彼は知っていた。
もしそうでなかったとしても、その行為はもっともとがめられなければならない。リスペクトどころか人として劣る行為だ。
もしかしてそのための観客のいない試験会場なのだろうか。
他の生徒は何処にいっているんだ。三沢は観客席を左右に見回し、とあることに気づき、走る。
「デュエリストかって?わたしはリアリストだよお。こんなボッチに負けるとかありえないし」
「――!私はバトルフェイズを……」
「はっ!その程度で済ませるかよ!サレンダーしろよサレンダー。ほら、そうしないと破っちゃうぞー?」
栞の表情は、今まで三沢の見てきたどの表情よりも、危険ななにかを感じさせていた。
――
どうすれば、どうすればいい。
私は必至で思考する。
攻撃すればエミリアがいなくなってしまう。
かといって負けてしまえば、おそらく彼女は帰ってこない。
「――私は――」
彼女が破られずに、私が勝つにはどうしたらいい?
「――ウィンダ」
私とともに戦ってくれた彼女のほうを見る。
人形の体になっても、友人のためと手を差し伸べてくれた彼女。
彼女は私のフィールドに戻ると、ゆっくりと肩を叩いた。
「ごめん。力になれなくって」
そのセリフを聞いて私は泣きそうになる。
あなたは悪くない。
悪いのは――私だ。
ゆっくりと、カードをデッキトップに持っていく。
きっと彼女が生き残る道は、ソレしかないのだから――。
――
「はぁっ、はあっ、はあっ……」
息を切らせながら三沢は試験会場の入り口にたどり着く。
最初は上位者同士のデュエルを独り占めできると軽い気持ちだったがまさかこんなことが起こるとは夢にも思っていなかった。
「くっ!もうちょっと耐えるだけなノーネ」
「……クロノス教授」
「シニョール三沢!ワタシは今忙しいノーネ!デュエルが終わるまでちょっとここを通行止めにしなきゃいけないーノ!」
試験会場の入り口では、クロノスがドアを相手に格闘していた。
ドアの向こう側ではデュエルを見たい一般生徒たちが何度もドアを相手に突貫している。
誰も引き受けないであろう試験の相手を青崎がやってくれたのは僥倖であるとクロノスは考えていた。できる限り観客を入れないようにするという妙な条件を提示されたが、どうせ結果は誰も見ていない。適当にやっておけば昇格もなしで済ませられる。
まさか、会場でそんなことが起こっているとは彼は心にも思っていなかったのだ。
「先生。ちょっとついてきてください!」
「モッツァレラ!?ちょ、ちょっと強引過ぎるノーネ!?シニョール三沢!どうしたノーネ!」
「先生じゃないと、あの事態は解決できません!とにかく!はやく来てくださいっ!」
クロノスを引きずって三沢は走る。
彼女の精神は強くない。もう既にサレンダーしているかもしれない。
一旦勝敗が決まってしまえば、水掛け論になる。もしそうなれば立場の弱い栞はいいようにされる。
「栞っ!」
三沢はデュエルフィールドにたどり着く。
そこにいたのは、倒れ伏した栞。
いつもどおりデュエルが終わったので気絶してしまったらしい。
「あれ――?シニョーラ青崎は――」
そして、青崎の居た場所には、散らばった大量のカード。
クロノスが拾い上げたそれには《リチュア・エミリア》と書かれていた。
友人(遊戯王未経験)と一緒にクラッシュタウン編DVDを視聴。
↓
二週間経過
↓
友「先攻もらった。《ブリキンギョ》召喚、効果で《サモンプリースト》特殊召喚。《俊足なるカババリキテリウム》特殊召喚。カードを一枚伏せて《サモンプリースト》効果を使用。手札の魔法カードを墓地に捨ててハンドレスになりつつ《インフェルニティデーモン》を特殊召喚。《インフェルニティ・デーモン》効果で《インフェルニティガン》をサーチ。《インフェルニティ・デーモン》と《ブリキンギョ》で《ラヴァルバルチェイン》をエクシーズ召喚。素材の《インフェルニティ・デーモン》を墓地に送って効果発動《インフェルニティ・ビートル》を墓地に。《インフェルニティガン》発動。墓地の《インフェルニティ・デーモン》と《インフェルニティ・ビートル》を特殊召喚《インフェルニティ・デーモン》の効果で《インフェルニティ・ブレイク》をサーチ。そのまま伏せてから《インフェルニティビートル》の効果で本体をリリースしてデッキから二体《インフェルニティ・ビートル》を召喚。《インフェルニティ・デーモン》に《インフェルニティ・ビートル》でシンクロ召喚《大地の騎士ガイアナイト》。さらに素材にして《煉獄龍・オーガドラグーン》召喚。《俊足なるカババリキテリウム》と《サモンプリースト》を素材にエクシーズ召喚《ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン》。--なんか満足できないなあ」
くらげ「」(今ココ)