「・・・よし」
衣玖が持ってきてくれた狩装束に着替え、部屋を出る
これから天界を降りて博麗神社を目指すのだ。そこの博麗の巫女に頼み元の世界に帰るのが目的だ
衣玖と天子の2人と合流し、屋敷を後にする
「しかし、不思議なものだ。雲の上に大地があるとはな」
「まぁ、初めて来る人なら誰でもそう思うでしょうね。私たちからしたら当たり前の風景だけど」
そんな会話をしながら数分、先頭を歩いていた衣玖が足を止めた
「さて、ここから下に降りますが持ち物は大丈夫ですかヘンリックさん?」
「あぁ、大丈夫だ。いつでも行ける」
持ち物はと言っても持っているのはノコギリ鉈と獣狩りの短銃と予備の散弾銃、愛用の投擲道具スローイングナイフだけだ
「では行きま・・・ッ!」
「「ッ!」」
ガンッッッ!!
突然の轟音が鳴り響き、三人が居た場所から砂煙があがる
ヘンリックは横ローリング、衣玖と天子は宙に飛んで回避した
「ウオオォォォォォオオオォォォォォォォォ!!!」
「な、何よこいつ」
三人が居た場所から姿を現したのは骨ばかりの長い体に皺だらけの頭蓋、体中から黒い毛が生えバチバチと蒼い電光を纏いながら四つん這いで立っている異形の姿をした化け物だ
「・・・こいつ、まさか」
この時、ヘンリック唯一人だけが感じていた。この異形の化け物が現れた瞬間、覚えがある感覚を
「獣・・・なのか」
確信があるわけではない。だが、この化け物から発する異常な感覚はヤーナム市街で何度も味わってきた
だが、化け物から放つものはただの獣とは段違いのものだった
「ウオオォォォォ!」
また叫び声を上げた瞬間、今度は体中からひときわ強く蒼い電光を発し長い体を覆い始めた
「衣玖、何だか知らないけどやるわよ!」
「待ってください総領娘さま!下手に手を出すのは危険です!」
「ほっといたら天界で何するか分からないじゃない!もういい!私がやってやるわ!」
天子は剣を取り、衣玖の言葉も聞かず獣に向かっていく
獣は向かってくる天子をなぎ払う様に両腕を無造作に振るう
(単純な攻撃ね。この程度なら!)
攻撃を掻い潜り、懐まで入り込んだ天子は剣を長い背骨に突き刺そうとした
バチバチッ!
「なっ」
剣を突き刺さそうとする寸前にあばら骨の中心から青い電光が集まる
電光は一気に膨れ上がり天子は攻撃を中断し逃げようとするが背後に獣の顔が天子を覗きこむ様に体を丸めていた
背後には獣の顔、左右は両腕によって逃げ道を阻まれ、前方には今にも爆発しそうな電光の塊がある
もはや逃げ道がない
「総領娘さま!」
衣玖は弾幕を獣に放つが、効果はほとんど期待出来ない
そしてついに電光が弾けそうになる
チャキ
「・・・え?」
背中から聞こえる妙な音にまた後ろに振り返る天子
目にしたのは先ほどの皺だらけの顔ではない、見慣れた黄味がかった狩装束
「ヘ、ヘンリ・・・」
バンッ!!
「きゃあ!!」
ヘンリックの名を呼ぶ前に左手に持つ短銃の引き金をひく
その瞬間、大きな炸裂音が鳴り響き天子は両耳を両手で押さえる
バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!
ヘンリックは無言で引き金をひき、皺だらけの顔に弾丸を撃ち続けた。ただ引き金をひくヘンリックの顔は無表情
彼が元の世界で誰かが呼び始めた異名、「静かなる古狩人」の名のごとく獣に対して表情を変えず喋る事もなく、容赦ない様はまさに異名通りだ
「ウオオォォ!!!」
顔面に弾丸が数発も直撃し怯みだした獣
怯るんだ瞬間、あばら骨の中心に溜まって電光の塊が霧散し消え、体中に纏っていた電光も消えた
好機と見たヘンリックはその場から飛び上がりひるんだ獣の顔面に右拳を突き刺す
ほとんどの狩人が得意とするテクニックの致命の一撃
通常は敵の攻撃の瞬間に合わせて銃を撃つか背後から強烈な攻撃を与えて怯ませた後に獣の内臓を掴み、引きちぎりながら吹っ飛ばすというやり方だ
だが、この大型の獣は攻撃する瞬間や背後から一撃のやり方でも簡単には怯まない
なら方法は一つ
怯むまでただ攻撃を繰り返すだけ
吹っ飛ばした瞬間まではいいが吹っ飛ばす方向に問題があった
獣とヘンリックの足下には着地出来る足場がないのだ
獣が落ちていき、ヘンリックもまた同じように落ちて行った
「へ、ヘンリック!」
「ヘンリックさん!」
耳を塞いでいた天子に衣玖は獣と共に落ちて行ったヘンリックの名を叫びながら彼女たちも下に降りて行った
獣戦はまだ続きます
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