獣になった神父狩人が幻想入り   作:BATTU

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過去の遺物

数十分後

 

 

「おまたせ、できる限り集めて来たよ」

 

 

「じゃあ、さっそく頼む」

 

 

「よし、じゃあまずはこれ」

 

 

最初に取り出したのは片手剣のようなもの。ただ、刃の中心と柄の中心が合わさっていないし厚さも薄い方だ

 

 

「これは銃剣。バヨネットとも呼ばれていて基本は銃に取り付けて接近戦も出来るようにする武器だ」

 

 

遠距離の銃と近接の剣の組み合わせ、かつてカインハーストの騎士が剣と銃が合わさった仕掛け武器を使っていたと聞く、そしてその武器を見真似で工房の異端『火薬庫』が作り出したのが「銃槍」らしい

 

 

しかしこのバヨネットは銃に取り付けるものらしい。刃の厚さも薄い性で長く使えるとは思えない。その証拠に後ろの箱から同じような物が何本も見える

 

 

「使い捨ての剣としてならいいだろうが・・・一体これの何がいいんだ?」

 

 

「うん、確かに長く使う物としては不向きだね。でも、実はこのバヨネットにはある術式が施されていてね、祝福儀礼の術式が施されていて悪魔や吸血鬼と戦うのには貴重な品だよ。君も神父だと聞いたし持っていても損はないんじゃないかな?」

 

 

悪魔や吸血鬼と戦うなら、か。俺もかつては神父だったからそういった存在は知っている、実際見たことはないが

 

 

それと医療教会には神父という敬称は使われていない。俺は元々、異邦の聖職者であったからこそヤーナムでは神父と呼称されていた

 

 

まぁ、それはいいだろう。俺が戦う相手はあくまで獣だ、これでは奴ら相手には不向きだろう

 

 

「・・・別のを頼めるか?」

 

 

「お気に召さなかったかな?じゃあ、これなんてどうだい」

 

 

次に取り出したのは聖職者が使いそうなメイスやモーニングスターなどだ

 

 

まさか、聖職者として合いそうな物を選んでいるのか?

 

 

・・・いや、だったら最初の銃剣はおかしい。考え過ぎか

 

 

「うーん、僕が選んで来た物の中ではこれが最後かな。はい」

 

 

最後に渡して来たのは一つの大斧だ。だが、これには見覚えがあった

 

 

「これは・・・」

 

 

「それは獣狩りの斧。仕掛けを動かすことによって持つ柄の部分を伸ばして攻撃範囲を広める事が出来る品だよ、ただどうやって仕掛けを動かすのか分からな」

 

 

ジャキィ!!

 

 

「・・・驚いた。使い方が分かるのかい?」

 

 

「元の世界で俺が使っていた仕掛け武器だ。使い方はよく分かっている」

 

 

仕掛けを動かし、霖之助は驚いた表情になった。まさかこんな所でかつて愛用していた物があるとは思わなかった

 

 

「しかし、名称と特徴が分かっていながら仕掛けの動かし方をしらないとはな」

 

 

「僕は能力持ちでね。「道具の名前と用途が判る程度の能力」のおかげで名前と用途はわかるんだけど使い方は分からないんだ。便利そうに見えて不便でもあるんだよね」

 

 

霖之助自身もやれやれっと困った表情をしていた

 

 

「・・・よし、これを貰おう」

 

 

「分かった。お代は・・・これくらいかな」

 

 

「これでいいか?」

 

 

「ちょうどだね。まいど」

 

 

とりあえず、武器は手に入った。これなら獣を狩るのにさほど苦労はしないだろう

 

 

しかし、特に獣の襲撃報告は紫からないが獣は本当に幻想郷に来るのだろうか?

 

 

「霖之助さーん、ちょっといいですか?」

 

 

「ん?何かな文さん」

 

 

「この箱ってなんですかね?箱にしては小さいけどいい出来みたいですけど」

 

 

「それはオルゴールと言って、機械仕掛けによって自動的楽曲を演奏する楽器の一つだよ。自鳴琴(じめいきん)とも呼ばれるんだ。蓋を開ければ音楽は流れるよ」

 

 

「へぇ、ではさっそく」

 

 

射命丸は蓋を開けた

 

 

♪~♪~♪~・・・♪~♪~♪~

 

 

箱から音楽が流れ始める。数秒程メロディが流れ、少し止まったあとまた最初からメロディが流れる

 

 

「おお、なかなかいいですね。これならにとりにも作れますかね」

 

 

ガシッ!

 

 

「へっ!?」

 

 

オルゴールを持つ射命丸の腕を掴む者がいた。ガスコインだ

 

 

射命丸の腕を掴む手は力強いが、どこか弱々しそうに震えてもいた

 

 

「ま、まさか・・・これは」

 

 

腕を掴んでいる逆の手でオルゴールを手に取ったガスコイン。次第に射命丸の腕を掴んでいた手も離し、両手でオルゴールを壊れやすい物を持つかのように震えながら持った

 

 

ドサッ

 

 

ガスコインの膝が折れ、そのまま床に座り込み動かなくなった。顔もずっとオルゴールから離れはしない

 

 

「あ、あの・・・ガスコインさん?」

 

 

「・・・待って、文さん」

 

 

「あや?どうしました?」

 

 

「少し・・・外に出よう」

 

 

「は、はい・・・」

 

 

霖之助は射命丸を連れ、ガスコインを残し店の外に出る

 

 

「で、なんなんですか一体?」

 

 

「・・・ガスコインという名前とあのオルゴールを見てふと思い出したんだ。あれはガスコインの・・・いや、ガスコインと“もう一人”にとって大切な宝物なんだ」

 

 

「ガスコインさんともう一人の宝物?いったいそれは?」

 

 

「あのオルゴールをあけて、蓋の裏側に何か書いてあっただろう?」

 

 

「えぇ、文字はよく分かりませんが何かが書いてありましたね」

 

 

「少し前、あれを無縁塚で拾ったあとに人里の貸本屋「鈴奈庵」でこの言葉が分かるような本を借りてきて解読してみたんだけど・・・内容は二人を祝福するような文だったよ。その二人の名前がヴィオラとガスコインなんだ」

 

 

「え!?じゃあ、そのヴィオラさんって・・・」

 

 

「奥さんなんだろうね・・・これは僕の推測だけどあのオルゴールが無縁塚で見つけたという事は少なからず、ガスコインが居た世界ではあのオルゴールを知っている人はもういない。つまり・・・」

 

 

霖之助は続けずに黙り込んでしまった。だが、そこまでを聞いて射命丸も察した

 

 

無縁塚は外の世界で忘れ去られた物が流れ着く場所、そこにあのオルゴールがあると言う事は外の世界でオルゴールを知る者が誰一人いない。つまりガスコインの妻であるヴィオラは死んでいるか少ない可能性でオルゴールを忘れてしまっているか

 

 

どちらにせよ、ガスコインは既に死んだ人間。もはや元の世界で生きることは出来ない。そんな状況の中で自分にとっての宝物、それが愛した女性と深く繋がりのあった物ならどんな歴戦を誇る戦士であろうと悲しみの感情は抑えられはしない

 

 

ガチャ

 

 

店のドアが開き、ガスコインが中から出てきた

 

 

「悪いな店主、迷惑を掛けた」

 

 

「・・・いいさ。そのオルゴールは持っていっても構わないよ。元は君の物だからね」

 

 

「すまない・・・」

 

 

ガスコインはオルゴールをしまい、斧を背中に背負った

 

 

「悪いな射命丸、取材は・・・」

 

 

「いいですよ、また今度にします。2、3日経ってからまたお邪魔しますね。今は何処にお住まいですか?」

 

 

「人里の慧音の家だ、そこで居候させてもらっている」

 

 

「分かりました。では、私はこれで」

 

 

話を付け、空へ飛んでいった射命丸を見送ったあと、俺も人里に戻ることにした

 

 

霖之助からは何かあればいつでも来てくれと言われ、また欲しい物があれば寄ると言ってその場を後にした

 

 

帰りの道中、オルゴールの蓋を開けてもう一度音楽を聞きながら歩いた。好きだったこの曲を聞いているときは何より平穏で幸せな気分になれた

 

 

今では、心の奥から湧き出て来るのは悲しみと温もりを求める孤独な感情ばかりだ

 

 

そんなガスコインにも構わずオルゴールはただただ、メロディを奏でるだけだった

 

 




オルゴールの話を書いてたらすごく悲しい気分になりました

神父一家には救われて欲しかったです
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